第20回拡大豚熱疫学調査チーム検討会及び第8回野生イノシシ豚熱対策検討会
日時及び場所
日時:令和6年8月2日(金曜日)10時00分~12時00分
会議方式:オンライン形式
議事次第
1 開 会
2 議 事
(1)佐賀県野生イノシシ豚熱陽性事例の全ゲノム解析の概要
(2)感染経路の推定
(3)今後の対応
(4)その他
3 閉 会
出席者
拡大豚熱疫学調査チーム検討会
津田委員、生澤委員、深井委員、伊藤委員、小寺委員
野生イノシシ豚熱検討会
津田委員(※)、伊藤委員(※)、小寺委員(※)、青木委員、阿部委員、大谷委員、三輪委員、國保委員、中澤委員、早山委員、平田委員、仙波委員
(※)拡大豚熱疫学調査チームと兼務
概要
PDF版はこちらから(PDF : 239KB)
概要 :議事次第に基づき進行。佐賀野生イノシシ感染確認事例における全ゲノム解析の結果を受けた今後の対応等について了承された。主な論点は、以下のとおり。
- 現時点までに確認されている佐賀県の野生イノシシ豚熱陽性事例12例のうち、3例目までの全ゲノム解析が完了。この結果によると、昨年8月31日に発生した89例目の農場で分離されたウイルスに近縁であり、このグループから分岐したと推定される(89例目農場の分離ウイルスに由来する可能性が高い)。
- 佐賀県における野生イノシシへの感染時期については、
(1) 昨年8月の佐賀県における豚熱の初発以降、野生イノシシにおけるサーベイランスが強化される中、本年6月に野生イノシシにおける感染事例が確認されるまで、9か月間豚熱陽性事例が確認されてこなかった。
(2) 本年6月の野生イノシシにおける1例目の感染事例確認後、発見された死体や捕獲された野生イノシシでの陽性事例が相次いで確認された。
(3) 豚熱陽性の野生イノシシから分離されたウイルスは、遺伝子解析の結果から、国内89例目の農場発生に由来する可能性が高いと推定された。
(4) ウイルスの分子系統樹解析の結果は、国内89例目の農場での発生以降に周辺の豚や野生イノシシの集団内で個体間の伝播が繰り返されたことを示唆するほどに大きな遺伝子変異は示していない。
(5) 野生イノシシにおける感染の確認は、一例目の感染野生イノシシを確認した地域に集中している。
といったことを踏まえると、これまでに陽性が確認された野生イノシシの事例は、いずれも最近になって、89例目の農場に由来するウイルス株(またはそれに極めて近しい派生株)に暴露した可能性が高い。 - 感染源としては、
(1) 国内89例目の埋却地で感染性を有して残留していたウイルス
(2) 防疫措置後に何らかの原因で発生農場周辺に残留していたウイルス
(3) (可能性は低いと考えられるが)89例目以降に野生イノシシ群内で維持されていたウイルス
の大きく3つの可能性が推定される。
(1)の可能性については、89例目はワクチン未接種農場での発生であり、かつ、ウイルスの侵入から当局への通報までに長期間が経過していたため、防疫対応の時点ですでに農場内にウイルスがまん延し、大量のウイルスが増殖した状態であったため、当該埋却地にも大量のウイルスが持ち込まれていたことは否定できない。ただし、埋却措置後にも感染性のある豚熱ウイルスが長期間埋却地に残るのかは不明である。
(2)の可能性については、88例目、89例目の農場の防疫措置において、当該農場周辺の農場に対する感染状況確認検査が行われており、その結果、いずれも陰性が確認されている。よしんば89例目の発生以降に周辺農場にウイルスが侵入し、豚群内でウイルスが不顕性に長期に維持されていたとするならば、今般分離されたウイルスで見られた遺伝子の変異の程度を超えてはるかに大きな変異が見られると考えられることに加えて、免疫付与状況確認検査の結果においても、野外ウイルスへの暴露によって誘導されたより高い抗体価を有する個体が確認されると考えられるが、そのような結果は確認されていない。
(3)の可能性については、佐賀県における豚熱の初発例以降強化していた野生イノシシサーベイランスにおいて、本年6月まで豚熱陽性事例が確認されてこなかったこと、ウイルスの分子系統樹からは何代も感染が続いているように解釈できないこと等から極めて考えにくい。
ただし、現時点ではいずれの推察にも決定的な根拠といえるものはなく、真の感染源を特定するのは困難である。 - 系統樹解析の結果からは陽性野生イノシシ3例から分離されたウイルスのゲノム配列は国内89例目の農場に由来するウイルスのグループから分岐する1本の枝にまとまっており、かつ変異の程度も小さいので、飼育豚や野生イノシシの個体間で維持されてきたウイルスが顕在化したというよりは感染性を保った状態で長期間環境中にとどまっていたウイルスに野生イノシシが偶発的に感染した可能性が高いと考えられる。未だ解析が完了していない他のイノシシ由来ウイルスのゲノム解析の結果によっては、上記の解釈が変更される余地はあるが、現時点では当該地域での限局的にウイルスに暴露された感染事例であると考えられる。
- 今後の対応としては、
(1) 豚熱感染野生イノシシ由来のウイルスのゲノム検査を引き続き実施する(同一の感染源から野生イノシシ群への感染が継続して起きていないか、あるいは新たな感染源の存在を示唆する事例が出現していないことを確認)
(2) 埋却地に問題がないか確認するため、改めて現状を確認し、問題があった場合は修復等、適切な措置を講じる。
(3) 周辺農場にウイルスが潜伏していないか確認するため、飼養豚の抗体検査の結果を引き続き検証する。
(4) 九州各県において、野生イノシシのサーベイランスを継続し、豚熱の感染確認状況に応じた経口ワクチン散布を実施する。
(5) 感染地域に立ち入る運送・工事等事業者への洗車や消毒の励行や県外からの狩猟の自粛等の協力を依頼する。
また、これらに加えて、野生動物侵入防止用の柵を設けている一方で、入退場ゲートを開け放しにしている農場が散見されたことから、ゲートの開閉に関する指導を含め、農場におけるバイオセキュリティの強化、徹底を図ることが重要。
配布資料
議事次第(PDF : 95KB)
出席者一覧(PDF : 98KB)
配布資料一覧(PDF : 112KB)
資料1.佐賀県での対応状況について(一部非公表)(PDF : 1,892KB)
資料2.佐賀県野生いのしし陽性事例3例目までの全ゲノム解析結果(系統樹)(PDF : 269KB)
資料3.国内89例目周辺農場(半径3km内)の免疫付与状況検査結果(非公表)(PDF : 96KB)
資料4.国内89例目における埋却地の状況、汚染物品処理・農場の消毒状況及び再導入前環境検査結果(非公表)(PDF : 99KB)
資料5.国内89例目農場における再導入後の飼養状況(非公表)(PDF : 97KB)
資料6.佐賀県における野生イノシシ豚熱感染に関する今後の対応(PDF : 154KB)
参考資料1.佐賀県での野生いのししの豚熱感染確認事例に関する 大臣メッセージ・通知(PDF : 406KB)
参考資料2.佐賀県唐津市における野生いのしし感染事例確認に伴う現地調査概要(令和6年6月7日実施)(非公表)(PDF : 102KB)
参考資料3.国内89例目農場詳細(非公表)(PDF : 103KB)
参考資料4.国内89例目殺処分前検査・環境検査結果(非公表)(PDF : 105KB)
参考資料5.本会合を受けた都道府県等に対する野生いのしし対策に関する通知(案)(非公表)(PDF : 109KB)
お問合せ先
消費・安全局動物衛生課
代表:03-3502-8111(内線4583)
ダイヤルイン:03-3502-5994