第2回カドミウムに関する意見交換会(平成16年6月9日)
議事概要
日時:平成16年6月9日(水曜日)
会場:農林水産省講堂
議 事 次 第
1.開会
2.挨拶
3.議事 「カドミウムの国際基準値案の検討状況と我が国の現状について」
4.閉会
午後2時00分 開会
姫田(農林水産省)
それでは、時間になりましたので、ただいまから食品に関するリスクコミュニケーション(カドミウムに関する意見交換会(第2回))を開催いたします。
本日はお忙しい中ご出席いただきまして、ありがとうございます。
本日は、厚生労働省と農林水産省の主催で実施いたします。リスク管理機関として両省手を携えながらリスク管理をやっておりますので、リスクコミュニケーションも両省の主催で実施いたします。
両省を代表いたしまして、農林水産省消費・安全局審議官の岡島よりごあいさつ申し上げます。
岡島(農林水産省)
本日は、カドミウムに関する意見交換会にご出席いただきましてありがとうございます。食品のリスク管理を推進していく上でリスクコミュニケーションが大切でございます。昨年の7月に食品安全行政の新しい組織体制が整備されて以来、これまで残留農薬、家畜に使用する抗菌性物質についての意見交換会などを開催してまいりました。
カドミウムにつきましては、厚生労働省と共催で、また本日と同じように食品安全委員会と環境省のご協力も得まして、昨年12月に第1回目の意見交換会を実施したところでございます。その1カ月前の11月には、カドミウムを含む汚染物質のリスク管理に関する国際的な考え方につきましての意見交換会も開催したところでございます。
その後、本年3月、国際的な食品の規格設定の場でありますコーデックス委員会の食品添加物・汚染物質部会におきまして、食品中のカドミウムの基準値の検討がなされました。そして、その結果を受けまして、この6月の末にはコーデックス委員会の総会におきまして基準値に関する審議が行われる予定になっております。
本日は、このような国際的な基準値の検討の動向、また我が国におけるカドミウムのリスク管理対策の現状、そして今後の施策につきまして幅広くご意見を頂戴することを目的としております。会場には、消費者の方々、生産者の立場の方々、食品企業の方々、カドミウムにご関心のあるさまざまなお立場の方々にご出席いただいています。
また、アドバイザーとしまして土壌汚染の専門家にもご参加いただいています。それぞれのお立場でご自由にご発言をいただきまして、有意義なリスクコミュニケーションが行われることを願っているところでございます。どうぞ本日はよろしくお願いいたします。
姫田(農林水産省)
どうもありがとうございました。
それでは、ここで出席者をご紹介いたします。お手元に出席者名簿があります。私どもの不手際で、役人から先に書いてしまいまして失礼いたしました。1ページめくっていただきまして、募集による出席者ということで一覧がございます。全員ご紹介したいところでございますが、名簿にてかえさせていただきたいと思います。
それでは、前の方ですが、皆様方から見ていただきまして向かって左側から、 秋田県農業試験場の佐藤生産環境部長でございます。
独立行政法人農業環境技術研究所科学環境部の小野重金属研究グループ長でございます。
お二方につきましては、アドバイザーということで、本日、科学的な見地からのご発言をお願いいたしたいと思っております。
続きまして、皆様方から向かって右側から、環境省水環境部土壌環境課の龍口補佐が出席する予定です。
内閣府食品安全委員会事務局の西郷リスクコミュニケーション官でございます。
続いて主催者側でございますが、
厚生労働省医薬食品局食品安全部基準審査課の中村課長補佐でございます。
基準審査課の中垣課長でございます。
農林水産省消費・安全局審議官の岡島でございます。
お手元の名簿には局長の中川と書いてございますが、本日は国会に行っておりますので、審議官の岡島が出席させていただいております。
消費・安全局農産安全管理課長の細田でございます。
農産安全管理課調査官の新本でございます
消費・安全局総合調整官の山田でございます。
私は本日の進行役を務めさせていただきます消費者情報官の姫田でございます。どうぞよろしくお願いいたします。
まず、本日の進行についてご説明いたします。先ほどの審議官のあいさつにもございましたように、食品に含まれるカドミウムの基準値につきましては、今年の3月の第36回コーデックス食品添加物・汚染物質部会の検討結果を受けまして、今月の28日に開催されます第27回のコーデックス総会で審議される予定でございます。このような国際的な基準値の動向、それから我が国におけるカドミウムのリスク管理対策の現状について、十分ご理解を深めていただくということが一つでございます。
そういう中で皆様方の意見交換を活発にしていただきまして、今後のリスクの低減対策、あるいはコーデックス総会へ臨むために意見交換をしていただきたいと思っております。
まず、基準値検討の背景とか経過、それからカドミウムのリスク評価と基準値の検討、また、今年の3月の第36回コーデックス食品添加物・汚染物質部会と、この後のコーデックス総会における審議についてご説明させていただきます。
それから、我が国で取り組んでおりますリスク低減対策について説明いたします。その後、まず皆さん方から質問をお聞きした後に意見交換をしたいと思いますので、よろしくお願いいたします。
お手元に資料で、議事次第、出席者名簿、そして座席表、その後に資料1としてパワーポイントのものが印刷になっております。それから参考資料、アンケートがございます。アンケートにつきましては必ず書いていただいて、提出していただいてからお帰りになっていただきたいと思っております。
アンケートについては、次回のリスクコミュニケーションに役立てたいと思っておりますので、ご協力をよろしくお願いいたします。
では、これから議事に入らせていただきます。担当の農産安全管理課調査官の新本から説明いたしますので、よろしくお願いいたします。
新本(農林水産省)
それでは、コーデックスにおいて進められております食品中のカドミウムの国際基準値の検討状況、それから我が国のカドミウムに関するリスク管理の状況についてご説明したいと思います。スクリーンの方をごらんください。
まず最初に、カドミウムの国際基準の検討の経緯についてお話ししたいと思います。検討の場であるコーデックス委員会ですが、FAOとWHOが設立した組織でして、その目的としては、消費者の健康の保護、食品の公正な貿易の確保の2つを目的としております。そのための国際食品規格としての基準あるいは食品表示のルールなどについて、各国に対して勧告ということで作成する場でございます。
その組織ですが、分野ごとに幾つかの部会が置かれております。きょうこれからの説明に何度か出てきますが、CCFACという部会がその一つとしてありまして、コーデックスの中で食品添加物なり汚染物質に関する検討をこのCCFACで行っております。
CCFACにつきましては、個々の物質の基準の検討だけではなくて、汚染物質の基準を策定するための手法、それから汚染物質による食品汚染の防止あるいはそれを低減するための行動規範といったものも検討されております。
部会で検討されたものについては、総会で検討するということになります。
次に、CCFACともう一つ、JECFAという言葉がよく出てまいります。JECFAとは、コーデックスとは別の組織でありまして、科学的な助言を行う専門家会議であります。具体的には、食品添加物や汚染物質のリスク評価を実施しております。コーデックスのCCFACは、このJECFAのリスク評価に基づいて基準などを策定します。日本で言えば、JECFAがリスク評価を行う食品安全委員会、CCFACがリスク管理を行う厚生労働省あるいは農林水産省ととらえるとわかりやすいのではないかと思います。
次に、コーデックスでのカドミウム基準の検討経緯について、かいつまんでご説明したいと思います。まず、1998年に予備的な原案を提案しています。ここでは2001年以降について整理していますが、2001年の段階で、原案に対しまして各国の実態等を踏まえて幾つかの変更もありますし、あるいは米、小麦、大豆等を除く穀類、豆類については、実は別の部会で検討が先行しており、これについては2001年で採択されております。一方、基準値の決め方につきましては、第33回のCCFACにおいて科学的なリスク評価に基づいて基準値案を見直すことが合意されております。
次に、2002年の第34回のCCFACでは、リスク評価を行うJECFAに対して、複数の基準値案をいた摂取量評価とそれに基づいて総合的なリスク判定を依頼することが合意されています。そのようなことから、JECFAで摂取量評価を行うことになり、そのために必要となるデータとして、我が国は農作物の実態調査結果をJECFAに提出しました。また、あわせてJECFAにおける性評価に資するため、我が国の疫学的な調査結果も提出しております。
昨年の第35回のCCFACでは、小麦や野菜などの基準値原案を、当時はステップ3だったのですが、これをステップ5で採択するように総会に勧告いたしました。しかしながら、同じ年の夏に開かれた総会におきましては、ステップ3に差し戻しということになりました。これは、リスク評価が十分に行われていないということが一つの理由になっております。
日本は、今年開かれた第36回のCCFACに個別品目の基準値の修正を提案するまでは、個別食品の基準については意見を留保してきました。その理由は、個別の基準値の検討の科学的な基礎として、カドミウムの健康影響評価、それから食品全体からのカドミウムの総摂取量の評価が必要との考え方から、個別基準についての意見を留保してきました。
JECFAで、CCFACから依頼された摂取量評価が十分に行われていない状況の中で、CCFACにおける検討が促進されるように、我が国としては、日本の実態データに基づいた摂取量評価を行い、これに基づいた基準値の修正提案を昨年12月にコーデックスに提出しました。その後、今年3月のCCFACで検討が行われたというのがこれまでの大まかな経緯でございます。
それでは、まずリスク評価と基準値の検討の考え方についてご説明したいと思います。
JECFAにおけるカドミウムの毒性評価とヒトへの健康影響の評価について説明します。JECFAでは、カドミウムについては低濃度でも長期間摂取した場合に腎機能障害が起こる可能性に着目して健康影響の評価を行っています。さまざまな食品からカドミウムが摂取される可能性があるわけですが、摂取された後に体内からの排出が遅いという特性があります。
ですから、たとえカドミウムが低濃度なものでも、長期間摂取した場合には腎臓に蓄積していき、それが健康に悪影響がある濃度に達する可能性があることを踏まえた毒性評価をしています。カドミウムは慢性毒性を示す物質ですが、そういった慢性か、急性かという点は、摂取量評価やリスク管理の選択にも大きくかかわってくる重要なポイントの一つと考えられます。
我が国でもJECFAが行う科学的な毒性評価に貢献するために、カドミウムの生涯摂取の状況と腎機能障害、骨密度との関係などを明らかにする疫学的調査を行ってきました。これまでのところ、耐容摂取量を超える摂取が長期間行われているような地域であっても、腎機能障害が他の地域と比べて明らかに多いとは言えないという結果、それからカドミウム摂取と骨代謝との関係で悪影響は認められていない、カドミウムの吸収率は年齢が大きくなると低下するという結果が得られています。
こういった結果につきましては、平成14年の12月にJECFAに提出しております。
JECFAにおいては、日本が提出した疫学調査結果も含めて、カドミウムの健康影響に関するさまざまな研究成果をもとに、どのくらいのカドミウムを摂取すると腎機能障害が起こる可能性があるかを昨年の6月に改めて評価を行った結果、生涯にわたって摂取し続けても健康に悪影響のない摂取量の指標、これを耐容摂取量と申しますけれども、これについては1週間当たり体重1キロ当たりで換算して7マイクログラムという現行の値が維持されたという結果になっています。ここで言う生涯にわたって食べ続けても問題のない水準というところが一つポイントです。CCFACにおける国際基準の検討はこの耐容摂取量7マイクログラムを基礎として行われることとなります。
次に、食品中のカドミウムのリスク評価には、カドミウムの健康影響評価、すなわちその毒性の評価だけではなくて、実際にカドミウムを食品からどの程度摂取しているのかといった評価が必要です。これを摂取量評価と言うわけですが、こういう摂取量の評価がなければ、リスク管理の対象とする食品をどうするか、あるいはリスク管理措置、基準といったものの妥当性を評価することはできないという関係になります。
CCFACでは、国際規格の検討に用いる摂取量評価を行う際の方針を検討しておりまして、この中で基準値を設定する必要がある食品の選定規準を定めております。具体的には、世界各地域を大きく5つの地域に分けまして、そこでの典型的な食料消費パターンを設定します。その上で、具体的には5つの地域のうち1地域で耐容摂取量に対して10%を超えるような食品、あるいは2以上の地域で5%以上の食品について基準値をつくりましょうという選定の規準が示されております。
これまでJECFAがカドミウムについて行ってきた摂取量評価では、個々の国の推定値を集約するとともに、先ほどお話ししたような5つの地域における摂取量が推定されております。また、先ほどの選定規準を用いて、主なカドミウムの摂取源となる食品の特定も行っています。米、小麦、塊茎類、葉菜を除く野菜がこれに該当します。果実や肉類、大豆については、この規準には該当していないという結果になっております。
ただ、CCFACがJECFAに依頼しましたような詳細な摂取量評価、すなわち基準値を変えたときに摂取量がどう変化していくかという作業については、まだ十分検討されていないという状況です。そこで、我が国は、CCFACにおける基準値の議論の促進が図られるように、日本におけるカドミウムの摂取量評価を実施いたしました。カドミウムの摂取量を把握するためには、まず各食品にどの程度カドミウムが含まれるかを把握する必要があります。
このため、我が国の農産物の実態調査を実施しました。カドミウムというものは、全国の土壌に普遍的に存在するものです。このため、全国規模で実態調査を行いました。ここで示しましたのは米と大豆の例ですが、調査結果をもとに濃度分布をグラフにしたものです。横軸がカドミウム濃度、縦軸はその濃度が検出された試料数の割合です。こういったグラフを作成することで、我が国の米と大豆について、カドミウム濃度の低いものから高いものまで幅を持って分布するということが一目でわかるかと思います。また、その分布の仕方も米と大豆でかなり違いますように、品目によってかなり違うということもわかってまいりました。
こういった調査を米、大豆以外にも水産物も含めて73品目について実施いたしました。
この実態調査結果をもとに基準値の仮置き値をまず設定し、その上でカドミウム摂取量の推定を実施するということになるのですが、その仮置き値の設定の基礎となる考え方がコーデックスで原則として示されております。「食品中の汚染物質及び毒素に関する一般規格」には、基準値は重要なリスクと貿易問題があるもののみに設定する、あるいは摂取寄与が大きな食品に対してのみ設定するという原則と並びまして、ALARAの原則に従って設定するということが規定されております。
ALARAの原則とは、合理的に到達可能な範囲でできる限り低く設定するということです。具体的には、消費者の健康保護が図れるのであれば、生産や取引の不必要な中断が避けられるように、通常の濃度範囲よりもやや高いレベルに基準値を設定するという考え方です。
妥当な基準値の設定の手順をフローで示しました。ALARAの原則を適用して基準値を仮置きする。その値を用いてカドミウム摂取量を推定し、消費者の健康が保護されるかどうかを判定していくという流れになります。具体的にこの推定に必要なデータとしては3つありまして、1つは農産物などのカドミウム濃度分布、2つ目がカドミウム濃度からALARAの原則に照らして設定される基準値の仮置き案、それから各食品の摂取量分布です。この仮置きの基準値案を使った場合の食品からのカドミウム摂取量の全体を推定して、これが生涯摂取しても問題がない耐容摂取量の7マイクログラムという数字と比較して判定するということになります。仮にこういった作業をやって7マイクログラムを超えるような結果が出れば、仮置きした基準値をさらに厳しいものにして再度検証することが必要となってきます。
それでは、摂取量推定に必要な基準値の仮置き案の設定の考え方についてご説明します。ALARAの原則について説明した中で、通常の濃度範囲を考慮すると申し上げました。作物ごとの通常の濃度範囲を推定するために、カドミウムの濃度の実態調査結果を累積曲線にグラフ化しました。横軸は先ほどの実態調査結果のグラフと同じカドミウム濃度、縦軸は累積の割合となっています。このグラフは米と大豆の例ですが、これによって、ある濃度までに含まれる食品の割合がわかります。このグラフを用いまして、累積割合の変化が小さくなるところを通常の濃度域として推定しました。米ではおおむね0.4 mg/kg、大豆では0.5 mg/kgとなります。
他の作物につきましても、同様の手法で基準値の仮置き案を設定しました。ただ、データが少なくて、累積曲線が作成できないものについては、基準値の超過率から類推して仮置き案を設定しました。その結果、昨年時点でのコーデックスの原案よりも大きくなるや、レタスのように小さくなる食品もありました。
次に、仮置きした基準値を適用した場合のカドミウムの摂取量の求め方について説明いたします。基本は、農作物のカドミウム濃度と、各食品の摂取量の実態調査結果をまず利用することです。それから、さまざまなカドミウム濃度の食品を、人によってさまざまな量を食べるという実態があるわけですが、実態調査結果をもとに、確率計算をもとに実態を推定する、確率論的な手法を用いるということが2つ目のポイントです。
3つ目が、現状の摂取量の把握だけではなくて、仮置きした基準値案を置いた場合に摂取量がどう変化するかということを推定します。この3点が基本になります。また、基準値の妥当性については、国際的に最もよく使われている摂取量の95%値を耐容摂取量と比較することにしております。このパーセント値というのは、累積割合と言ってもいいかと思いますが、摂取量の少ない方から足していって95%目になるところの摂取量が95%値ということになります。なお、アメリカではここでの95%値ではなくて90%値を使うのが一般的となっています。
摂取量評価に係るCCFACの方針においても、複数の基準値案をもって摂取寄与への影響を推定するために、各国の食品消費量を用いて摂取量を推定することとなっております。
カドミウムの摂取の実態を推定するための確率論的な手法について、少し詳細に説明したいと思います。
まず、有害物質の濃度分布、それから食品消費量の分布をそれぞれ統計的な処理が可能なようにモデル化します。横軸が濃度なり、あるいは、消費量、縦軸が頻度です。仮置きの基準値案を適用した場合の摂取量を推定するわけですから、その基準値案を超えるような濃度のものを除外します。次に、カドミウム濃度と食品消費量について、それぞれ無作為に選んでかけ合わせてカドミウム濃度を推定するという計算を行います。このグラフでいけば、左の[1]と右側の[1]、左側の[4]と右側の[4]といったいろいろな組み合わせが考えられるのですが、そういった作業を数万回繰り返すという計算をします。
計算で得られた有害物質の摂取量はどのような分布になるのか。これはイメージ図でありますけれども、ごらんのとおりです。横軸が計算された有害物質の摂取量です。縦軸が、計算の結果その摂取量になる計算の回数、頻度と言っていいかと思いますが、それを割合で示したものです。要は有害物質濃度と食品摂取量のかけ合わせということになるのですけれども、例えば左側の山の左の方は、有害物質濃度が低いものを少なく食べるようなケースが該当します。こうしたケースは頻度としては低いと考えられます。一方、右側の濃度が高くて、それをたくさん食べるというケースは、有害物質の摂取量は多いということになります。これも頻度としては低いということになります。その他の部分は高頻度となり、摂取量の分布としてはこのような山の形になるということをイメージとしてごらんください。
汚染物質が1種類の食品にしか含まれない場合は、その食品だけこのような作業を行えばいいのですが、カドミウムのようにさまざまな食品から摂取される可能性がある場合は、各食品ごとにこのような作業を行います。食品全体からのカドミウム摂取量を推定して、先ほど申した95%値と耐容摂取量7マイクログラムとを比較することが必要になってくるわけです。
以上、考え方について説明しましたけれども、この考え方に立って具体的な研究が昨年度厚生労働科学特別研究において実施されております。実際に使いましたデータは、食品の消費量のデータは、1995~2000年の6年間のデータを使っています。農産物なり水産物のカドミウム濃度は、農水省が行いました実態調査結果を用いました。この農水省が行いましたカドミウム濃度の実態調査の結果につきましては、農水省のホームページでも公表しているところです。
計算方法は、先ほど説明した確率論的な手法を用いました。なお、農作物のカドミウム濃度につきましては、定量下限値未満のものも調査の結果あったわけですが、そういったものの扱いにつきましては、安全側に立ちまして、定量下限値未満でも、それは定量下限値と同じであるとみなして計算しました。それから、食品ごとに基準値を仮置きした場合のカドミウム摂取量の変化を推定するということで、各食品ごとに10万回ずつ計算を行って、推定を行いました。
昨年3月のCCFACで検討されていた基準値原案と、我が国の修正案――先ほど言いました仮置き案を基準値とした場合の計算結果をイメージとして示したものがこれです。日本の修正案を用いた摂取分布は、原案を用いた摂取量分布と比べてわずかに右側にずれておりますが、95%値についてはいずれも7マイクログラムを下回っております。米については、コーデックスの原案では0.2 mg/kg、日本の修正案では0.4 mg/kgということで倍なんですが、カドミウムの摂取量の平均が倍になるとか、あるいは95%値が倍になるわけではないということがおわかりになると思います。
今のグラフを数値で示したものがこの表です。CCFACで検討されていた原案を適用した場合の摂取量は、平均で3.07、95%値では6.10ですが、日本の修正案を適用した場合は、平均で3.29、95%値でも6.88という結果が得られ、いずれも耐容摂取量7マイクログラムを下回っているという結果が得られました。
この結果からわかりますように、コーデックス原案と日本の修正案と比較して、摂取量に明らかな差異は認められません。いずれも平均値は耐容摂取量の半分以下で、また、基準値の仮置き案でも95%対応値でも7マイクログラムを下回っているということで、消費者の健康保護をするには適切な修正案と考えました。この摂取量の推定結果につきましては、昨年12月の厚生労働省の薬事・食品衛生審議会で報告し、検討されました。また、食品安全委員会にも報告いたしました。その後、昨年の12月12日に意見交換会を開催してご説明させていただいてます。
昨年の12月の意見交換会の意見について整理しました。意見交換会の場では、特に日本の修正案の中でも、米についての修正案についていろいろな意見が出されました。消費者の方々からは、推定されたカドミウム摂取量が耐容摂取量7マイクログラムを下回っていても、やはり基準値はできるだけ低い方がいいということで、0.2 mg/kgにすべきではないかという意見もちょうだいしました。これに対してアドバイザーの方々からは、カドミウム吸収を抑えるための対策、あるいは客土といった対策との関係で、この0.2 mg/kgをクリアするというのは技術的に困難だという意見が出されました。また、現実的には0.4 mg/kgでないと達成困難という意見は理解できるのだけれども、低減対策についてはもっと力を入れてほしいというご意見もちょうだいいたしました。以上のような経緯を経て、日本はコーデックスに修正提案をしたわけです。
ここからは今年の3月に行われましたCCFACでの審議状況についてご説明したいと思います。
今年の3月のCCFACに向けて提出しました我が国のコメントを整理させていただきました。我が国の摂取量評価に基づいた基準値修正の提案をしましたけれども、それとあわせて、基準値設定のための摂取量評価、リスク評価がJECFAにおいて実施されるべきというコメントを提出いたしました。
3月のCCFACにおける審議の状況ですが、各国で最も関心が高かったのは、カキなどの軟体動物についてです。軟体動物の分類をどうするのか、あるいはその基準値をどうするのか、多くの国から各国の実態を踏まえて意見が出されました。余りにも多過ぎてまとまらず、軟体動物につきましては次の来年3月のCCFACで引き続き検討するということになりました。
また、基準値設定の対象品目をどうするかという議論もあり、カドミウムの摂取寄与の大きい品目に限るべきとの意見が出され、これまで検討してきた果実、大豆などについては基準値の検討の対象から除外することになりました。先ほどのJECFAでのリスク評価のところでお話しした、摂取寄与が小さいものについては基準値設定の対象とはしないとの原則に従ったわけです。あと、小麦や野菜などについては、原案どおりの基準値案となりました。米については0.4 mg/kgに変更されまして、小麦、野菜とともにステップ5で採択することを総会に諮ることになりました。
先ほどからステップということを何度も申し上げておりますが、お手元の参考資料の資料2の13ページにコーデックスのステップの説明が入っています。基準値の検討に当たっては、こういった段階を踏んで、部会と総会の間を行ったり来たりしてだんだん熟度を上げていって、ステップ8で採択ということになります。
米、小麦、野菜などについてはステップ5として、今年の6月の総会で決定するように、部会として勧告することになりました。あわせて来年の2月にリスク評価を行うJECFAが、基準値案とその上下の値を用いて摂取量評価を行い、総合的なリスク判定をするということが決まりまして、このJECFAのリスク評価結果も踏まえて、来年3月のCCFACで再度基準値を検討するということとなりました。この関係で、JECFAが行うリスク評価に必要なデータ提出が各国に求められております。
結果を整理したものがごらんのとおりのものであります。軟体動物はステップ3のまま。その他についてはステップ5で総会に諮るということが決まりました。
今後の予定ですけれども、総会が6月28日から開催されます。そこでステップ5で採択することについて検討が行われるということになります。来年2月にはJECFAでのリスク評価、摂取量評価が行われますので、この関係で各国からデータを提出するということになっています。来年2月のJECFAを経て、来年3月にCCFAC、その後、来年の夏にコーデックス総会という運びになる予定です。6月末のコーデックスの総会への我が国の対応といたしましては、この3月にCCFACが提案した基準値をステップ5で採択することを支持するということを考えております。
これまで国際基準値の検討状況についてお話ししました。国内の基準値につきましては、昨年の7月に厚生労働省から食品のリスク評価機関である食品安全委員会に、食品中のカドミウムの健康影響評価について依頼しており、現在、食品安全委員会の調査会で検討が行われております。この食品安全委員会での健康影響評価が出された後に、厚生労働省で国内基準値が検討されることになります。
最後になりますが、我が国において実施しておりますリスク低減対策についてご説明したいと思います。
具体的な対策の説明に入る前に、食品のリスク低減にはどのような方法があるかについてお示ししたいと思います。1つは、生産工程や製造・加工工程で汚染を未然に防止する、あるいは低減するという方法です。コーデックスの方でも、生産工程でのリスクを低減するために用いる技術などを実施規範としてまとめる作業が、幾つかの物質で行われています。
もう一つは、基準値を設定することによってある基準値以上の食品の流通を規制するという方法です。この基準値によるリスク管理を行う場合には、基準値の設定とあわせて、基準値以上の食品を見つけるための検査の実施が必要です。カドミウムのような汚染物質については、食品添加物や農薬といった意図的に使う物質とは違いまして、生産者が意図しないにもかかわらず食品中に入ってくるという性格があります。消費者の健康保護が図れる水準となることは当然必要ですが、必要以上に厳しい基準を設定すると、市場流通から除外すべき食品がふえて、経済的な負担も増加することになります。また、基準を設定して検査、モニタリングで対応する場合にも、すべてのものを調べるわけにもいかないという問題もあります。こういったことから、コーデックスや各国においては、リスク管理措置の選択や決定に際して、基準値だけではなくて、実施規範の作成にも重点を置くような方向になっています。
基準値による規制あるいは実施規範によるリスク管理がそれぞれの汚染物質の濃度にどのように作用するかを模式的に示しました。まず、基準値の規制ですと、基準値を超える食品は出回らないわけですが、それ以外の食品の濃度は変わりません。一方、汚染の防止なり低減を行う実施規範の取り組みがふえれば、汚染レベル全体の低減が図られます。こういった汚染物質の濃度分布も低い方へ寄ってくることになります。カドミウムのように自然界に広くあるような汚染物質で、食品から長期間にわたって摂取することで健康影響が出るようなものについては、汚染レベル全体を低減させることが有効だと言えます。
次に、具体的なカドミウムのリスク管理についてご説明いたします。これまでのカドミウムのリスク管理は、土壌のカドミウムの汚染の進行防止と土壌汚染の改善対策を中心に進められてきました。これは、鉱山からの排水等で高濃度に汚染された地域を対象とした公害対策の性格も持っております。一方、公衆衛生の見地に立てば、食品のカドミウムのリスク管理は必ずしも公害対策に限定されません。先ほど実施規範の例を説明しましたけれども、栽培段階の対策として農産物のカドミウム吸収抑制対策も一つのリスク管理と位置づけられます。
まず土壌汚染の進行防止の関係ですが、進行防止のために、鉱山や製錬所、工場などからのカドミウムの排出については、法律に基づく排水や煤煙の排水基準、排出基準を設けて規制が行われています。また、廃棄物中のカドミウムが環境中に広がらないように、埋め立て処分の基準も設定されてます。
次に土壌汚染の改善対策ですが、現在、環境省と農林水産省の共管の農用地土壌汚染防止法に基づいて対策が実施されております。具体的には、カドミウム濃度が1.0 ppm以上の米が生産される地域を対象として、汚染されていない土を農地に盛土する客土などが対策の中心となっています。その費用につきましては、原則汚染者負担となります。ただし、農用地の土壌汚染の場合は汚染原因者がなかなか特定されないようなケースなどもあり、そういった場合には都道府県が負担し、国がその一部を補助するというスキームになっております。
次に、生産現場での栽培段階での対策として、水稲のカドミウム吸収抑制対策を進めております。対策の中心としては、稲の穂が出る前後3週間に田んぼに水を張っておくということが中心です。このような水管理とあわせまして、土壌改良資材を入れて土壌のpH、酸度を矯正することで、カドミウムが水稲に吸収されにくい状態に変化させ、結果として米中のカドミウム濃度が下がるという対策を進めています。
そういった技術によりまして、これまでのところ、比較的米のカドミウム濃度が高かったところでも0.1 mg/kgとか0.05 mg/kgまで下がったような例もありますが、一方で0.2 mg/kg、あるいは0.4 mg/kgよりも下がらないような例もありまして、年によって低減抑制技術の効果が違うこともあります。効果はあるのですが、例えば0.2 mg/kgまで確実に引き下げることができるという技術ではないということです。その要因といたしましては、土壌の複雑性、あるいは栽培状況なり気象条件なりが年によって変動するということが、効果にばらつきが出る要因と考えられております。ただ、確実にある水準まで下げられるということではないのですが、全体のカドミウム濃度を下げる効果があることは明らかでして、こういった点から、カドミウム全体の摂取を下げる観点からは吸収抑制技術というものは大きく意味があるものと考えています。
こういった取り組みに対する支援といたしまして、農水省の方では、技術マニュアルを策定して、地域におけるさまざまな取り組みについて支援してございますし、具体的な技術導入の効果を確認するための検査機器の整備等に対しても支援してきているところであります。
ここからは、研究開発も含めて、今後のリスク低減対策の方向についてご説明したいと思います。まず第一には、リスク低減対策を、カドミウム濃度が高いような農産物が生産されることを未然に防止するような、いわゆる予防的な対策として強化していきたいと考えております。そのための手法の一つとして注目しておりますのが、現在、研究機関の方で、土壌データに基づいてそこで生産する農産物の汚染の可能性を推定する手法を開発中であります。農産物の場合、例えば米については、カドミウム濃度は年次変動がありますけれども、潜在的なリスクがあらかじめわかれば、必要な対策を打つことで、例えば0.4 mg/kg以上のものが発生することを未然に防止できるという点で注目して、今、研究なりデータを集めてきているところであります。
もう一つの低減方法といたしまして、カドミウム吸収量の少ない品種の開発、あるいは植物を用いて土壌中のカドミウムを吸い上げて浄化するという技術についても研究を行っております。こういった手法については、営農現場の方でも取り組みやすい一つの手法ですので、期待しているところであります。
次に、流通段階での対策ということで説明いたします。まず、消費地サイドの取り組みとしては、食品衛生法に基づく1.0 ppm以上のカドミウムの米については、焼却処分という措置がとられています。それに加えまして、0.4 mg/kg以上1.0 mg/kg未満の米については、消費者感情に配慮して、農林水産省が買い入れて非食用に処理しています。この0.4 mg/kg以上1.0未満の買い上げ措置につきましては、昨年度までは農水省が買い上げを行いましたが、今年から若干その仕組みを変えております。一つは、国が直接買い上げをするということを、民間団体が買い上げをし、それに対して国が補助をすることとしたということです。
もう一つは、その地域においてカドミウム米が生産されないような生産防止計画、例えば水管理対策に取り組むとか、そういった計画をつくっていただいて、それを実行するということを前提に買い上げをするという形に変えております。すなわち、流通防止対策と生産段階でのリスク低減対策を連携をとってやるということで、より効果の高い流通防止あるいは生産防止を図っていく形に変えてきているところです。
説明は以上ですけれども、お手元の参考資料の資料2で、厚生労働省の方で作成いたしておりますQ&A、それからこれまでのコーデックスでの基準値案の推移、それからコーデックス総会へ向けた日本政府の意見を載せています。
それから、15ページは農水省の方で、食品のカドミウム対策行動計画として省内の関係課からなるチームがあり、そこで具体的な行動計画を策定し、公表させていただいているものです。先ほどリスク低減対策のところで申し上げたような取り組みを各課が連携をとって積極的にやるということで、こういった計画に即して我々も取り組んでいるところです。それから、18ページは、先ほど申し上げました吸収抑制のための対策技術マニュアルで、農林水産省の農業環境技術研究所が作成した具体的なマニュアルということで、これも広く公表させていただいたところです。
ご説明は以上です。
姫田(農林水産省)
どうもお疲れさまでした。それでは、この後、質問、そして意見交換に入りたいと思います。
それではまず、前回の意見交換会でまとめてするのはいかがなものかとあったんですが、やはり質問について少し時間をいただいて答えるというタイミング上、そして同じ質問に何回も答えると時間がかかるということがございますので、ある程度質問をいただいて、それでまとめてお答えさせていただきたいと思います。
質問等ございますでしょうか。どんどん手を挙げてください。質問につきましては、できるだけ多くの皆さんに意見交換していただきたいので、慣例によりまして2分で簡潔にお願いしたいと思います。それから、ご発言に際しまして、お名前と、それから差し支えなければご所属をお願いしたいと思います。どなたかございませんでしょうか。はい、どうぞ。
比嘉(消費者)
埼玉学校給食を考える会の比嘉と申します。2点聞きたいのですが、使用したもとになるデータの中に20歳以上の成人という条件が入っているのですが、子供についてはどのように考えているのかというのが1点。
それから、最近カドミウムが環境ホルモン作用や、あるいは発がん物質としての危険性など、いろいろなことが指摘されておりますけれども、その辺についてどのようにお考えなのかということをお聞かせください。
姫田(農林水産省)
ありがとうございます。
ほか、ございませんでしょうか。どなたでも結構でございます。はい、どうぞ。
村田
株式会社日吉の村田と申します。まず、カドミウム米の検査体制の中で幾つかお聞きしたいのですが、代表サンプルというものを検査する際に、どのような形で代表性を確立するのかというところでの考え方があったら教えて下さい。
それから、予防対策というもので説明いただきましたが、スライドの51でございますけれども、もう少し具体的なものがあったら教えいただきたいと思います。
それと、湛水の効果としてお話をいただきましたが、いろいろファクターがあってうまくいかないケースもあるということですが、これら湛水の試験調査結果というものはどういうところで確認できるのか、お教え下さい。以上です。
姫田(農林水産省)
どうもありがとうございます。
ほか、ございませんでしょうか。今のパワーポイントでの説明部分だけでなくてもいいかと思っておりますが。どうぞ。
小林(消費者)
仙台から参りました小林と申します。途中の研究結果のところの2で、95%値というところが耐容摂取量の7と大変に近い数字になっていますが、それでも長期摂取して安全だという判断なのでしょうか。この辺のところをもう少し詳しく教えていただきたいと思います。
それから、最後の補助を出すところで、今年から民間団体に移るということで、これは農家サイドでカドミウムを低減させるような育て方をした農家についてだけ補助金を出すということなのでしょうか。そうしますと、そういったあらかじめ防止対策の計画を立てない、出さないような農家が収穫した米については、どのようになっているのでしょうか。教えて下さい。
姫田(農林水産省)
どうもありがとうございます。
では、まず厚労省の中垣課長から、最初のお話と、それから7マイクログラムの長期摂取で大丈夫かという話と、2点あるかと思いますがお願いします。
中垣(厚生労働省)
まず最初の方のご質問が2点ございました。まず1点目は、使用した食品摂取量のデータが20歳以上の者となっているが、子供をどう考えているのかというご質問でした。カドミウムの毒性というのは、中高年齢の女性の腎臓機能に影響を及ぼすということが知られているわけでございます。この腎臓というのも、例えばおしっこが出なくなるとか、たんぱくが出るとか、そういうレベルの問題ではなくて、β2-マイクログロブリンと言われるいわゆる臨床検査値の一つがあるんですが、これが若干高くなるということが一番低用量で出る、すなわち7マイクログラムという耐容量を決める根拠がここにあるわけです。
そういう意味では中高年齢の女性が一番危害の対象となりやすいということですから、またカドミウムの体内に摂取された後の半減期というのは約10年というデータでございますので、そのあたりを勘案して、この場合には成人の摂取量というものをとったわけでございます。
2番目に、環境ホルモン、発がん性のご質問がございました。いろいろなことが言われているのだろうと思いますが、少なくとも科学的なデータとして評価し得るような食品中のカドミウムにおけるご指摘のいわゆる環境ホルモン作用あるいは発がん性作用というのは、私個人は全く承知しておりません。ただ、この点につきましては、食品安全委員会でリスク評価を今行っていただいているところでございますから、当然のことながらご指摘の環境ホルモン、発がんについても評価されていくのだろうと思いますが、そのような可能性があるとは私は考えておりません。
3番目の方から、95パーセンタイルで基準値を決めているということが、もう耐容摂取量の7に近いのではないかというご質問でございました。この95パーセンタイルというのは、例えばEUがいろいろな基準を決めておりますけれども、90%を使ったり95%を使ったりしております。国際基準も90%だったり95%だったりするのですが、アメリカは明文で90%を使うという形になっております。
そういう意味では、国際的に考えても一番厳しいところで基準を設定しているのだろうと考えております。食品摂取量の分布、例えば1日に米を160グラム食べる人が平均だとすると、国民栄養調査によると400グラム食べたという人もおられる。あるいは80グラムしか食べなかったという人もおられて、それを分布で示したわけですが、これを計算していくときには無限大までの分布を考えるわけでございます。
すなわち、ごくわずかだけれども、10キロ食べる、100キロ食べるという人もいると仮定する。こういう分布を無限大まで考えていくわけです。
また、それ以外にも、国民栄養調査というのは1日のデータですから、例えばきょうはご飯をいっぱい500グラム食べたと。次の日も500グラム食べる、その次の日も、一生涯500グラム食べるというのをこれは仮定しているわけですが、通常は、きょうはたくさん、500グラム食べた、次の日はスパゲティーを食べるとか、あるいはきょうはご飯を食べなかった、でも次の日に食べるとかということになりますから、この分布というのは、広がっていくわけではなくて、本当はもっと狭まっていくということを考えられるわけです。
あるいは、規制を導入することによってその規制値以上のものというのは食品衛生法違反になるわけでございますから、当然のことながら生産者は、その規制値にある程度の余裕を持ったところで生産していこうとするわけでして、全体的に分布は左に、少ない方に傾いていくということがありますから、アメリカは90%が耐容量となるところで基準を決める、ヨーロッパは90%を使ったり95%を使ったり、ものによって若干違う。今回はその一番厳しい95%という数字を使ったというところでございます。
姫田(農林水産省)
少し山田総合調整官の方から補足をお願いいたします。
山田(農林水産省)
少々補足をいたします。一番最初の件なんですけれども、中垣課長からお話があったように、カドミウムというのは、一度食べてどうこうということではなく、通常言われております慢性の毒性の問題であるということです。しかも、その慢性の毒性においても、何十年食べ続けることによって影響があらわれるといった毒性を示すものであるということから、どちらかというと、途中でステータスが変わる人を入れるよりも、ずっと同じ視野で見て考慮ができるという人たちを選んだということになります。
2つ目なんですけれども、実は発がん性はあると言われております。ただ、それは非常に限定的なものです。というのはどういうことかといいますと、職業的な暴露、鉱石の精錬をやっているとか採掘をしているような人が呼吸を通して、つまり吸入してカドミウムを吸収する場合にそういうことが報告されているということで、食品として食べた場合、食品としてカドミウムは食べませんが、汚染物質が食品に含まれている場合に発がん性があるのかどうかということに対しては、まだ確立されたデータがありません。
そこは中垣課長のおっしゃるとおりです。ただ、職業的暴露でカドミウムが空中に散乱しているような状態の中で働いている人が呼吸とともに吸入する場合という制限のもとで発がん性が報告されております。それは吸収経路が違いますので、食品の中に含まれて微量にあるときに同じ影響が出るかどうかというのはまた別の話でございまして、そのための科学データが必要であるということになります。
そして、最後の件なんですけれども、先ほど新本が説明いたしましたように、食品の消費の方も、カドミウムの濃度分布の方も、モデル化というものをしております。実際にある数字を使うのではなくて、それこそとんでもなく高い濃度というのはどこで出るかわからないということを考えまして、分布の尻尾に当たる方を非常に長くとるような、例えばもしも計算で間違うのであったら、消費者の保護がより確保できるような方に間違う方がいいということで、対数正規分布というモデル化をしております。
それは、非常に長い尻尾を引くという形でございまして、ひょっとしたら現実にはないかもしれないような高い汚染濃度のものも食べている可能性があるということで計算しております。ですから、かなりそこの部分でも安全率がかかっているということになります。もちろん、ほかのいろいろな違う分布をやることもありますが、今、世界では対数正規分布というのが主に使われております。以上でございます。
姫田(農林水産省)
それでは、予防対策なり湛水効果についての具体的なお話を小野先生の方からお願いできますでしょうか。
小野(アドバイザー)
農業環境技術研究所の小野でございます。予防対策については、先ほどのスライドでかなり報告があったと思いますけれども、行政的なことはちょっと私は専門ではございませんので、技術的なことでわかる範囲でお答えします。
先ほどございましたように、できるだけカドミウムを吸わせないという予防対策としましては、マニュアルも公表されておりますけれども、まず水管理対策、その次に土壌改良資材を加えるという方法で、今のところ対策を立てております。あと、先ほどのスライドにもございましたけれども、私どものところでプロジェクト研究として、全国といいますか、いろいろな県の方にお願いして試験しておりますのは、一つは、カドミウムをよく吸収する植物に吸わせて土壌の中のカドミウム濃度を下げるというファイトレメディエーションという方法で、外国でも研究されている方法なんですが、そういう方法を現在研究しております。
もう一つは、これは先ほどのスライドにはありませんでしたけれども、土壌の中のカドミウムを特殊な薬品といいますか、我々のところでは塩化カルシウムなどを使っておりますが、そういうもので洗い出して土壌のカドミウム濃度を下げるという方法を研究中でございます。これはまだどちらの方法も現場ですぐ適用できるという段階にまでは至っておりませんが、そういう研究をしているということをご紹介いたします。
あと、湛水対策についてのご質問がございましたけれども、確かに湛水にするとカドミウムは水に溶けなくなりますので、稲が吸収できなくなり、効果はあります。ただし、いろいろ問題点もございまして、先ほどのスライドでもございましたように、水管理によって稲のカドミウムを減少させるためには、稲を栽培するときに中干しということを栽培技術の中でやるのですが、その中干しの期間をできるだけ短くする必要があります。
それから、秋になると、穂が出て登熟してからは水を落とすことになりますが、その水を落とす時期をできるだけ遅くまで引っ張るという方法をとるわけです。しかし、最近はもうみんなコンバインの大型機械の作業になっておりますので、田んぼをどこかで乾かして基盤を固くしてやらないと機械が入れないのです。ですから、それはどの辺で兼ね合いをとるかという、これは土壌とか田んぼの条件にもよりますけれども、その辺が非常に難しいところでこざいます。後で秋田の佐藤部長にも詳しいご説明をお願いしたいと思いますけれども、現場では大変苦労することではないかと思います。
それから、田んぼの水を切らさないというのは意外と大変なことなのです。昔から篤農家は1日3回田んぼを見にいくと言っておりましたけれども、それぐらいしょっちゅう見ておかないと、何かのときに水がぱっと落ちてしまうことになります。そうすると稲がさっとカドミウムを吸収するといったことも起こったりしますので、そういう問題もあります。それから、それだけの湛水を長く保つだけの水が確保できないという問題もあります。日照りの年もあるでしょうし、水の流れてくる期間が決まっている地域もあったりして、そういう問題点がございます。
それから、先ほどのご質問で、湛水効果の確認ということがございましたけれども、これは我々のところで今研究しているのは、湛水して土壌の中の水に溶けているカドミウムを抽出しまして、その濃度を測って、玄米のカドミウムが0.4 ppmを超えるかどうかという予測技術といいますか、まだ稲が収穫できないうちに予測するような技術を検討しております。これもある程度はできるのですが、なかなかうまくゆかないことも多いです。まだちょっと研究段階で、なかなか現場で使えるところまではいっておりません。結局は、収穫して、収穫した玄米のカドミウム濃度を測るというのが現状の技術でございます。あと、佐藤部長、お願いします。
佐藤(アドバイザー)
秋田県の農業試験場の佐藤と申します。今の説明でちょっと補足したいと思います。ちょうどぐあいがいいことに、きょうの資料の後ろの方に水管理の資料が参考資料ということで「水管理のポイント」ということで20ページにありますが、そこにかかしさんのイラストが載っていますけれども、これが一番わかりやすいと思って、この資料で説明をさせていただきます。
実は、出穂前後3週間、つまりトータルで6週間水を張れば完璧に抑えることができるということがわかっています。ところが、20ページの下の方にある慣行のやり方ですと、水を入れたり引いたりしながらだんだん地面を固めていきます。これだと、土壌中にカドミウムがある場合は、このギザギザの谷の部分で田んぼの土壌が空気と触れるところが断続的に出てきます。
極端な例を申しますと、出穂前後3週間といいますと、秋田県ではちょうどお盆のころに相当します。お盆はみんな休みます。その間は田んぼの水を見なかったということで、3日間親類と一緒に会食している間に田んぼの水がなくなって、そこの田んぼからカドミウムが出たという例もあるくらいです。ですから、お盆も休まないできちんとやっていればよかったんでしょうが、そこは人間ですので、やはりちょっと手を抜くと、カドミウムがない場所は問題ありませんが、リスクの高いところからは出る可能性があります。
それで、我々はそういう場所を、あなたのところはお盆も休まないでという言い方はすごく悪いので、お盆にもたまには、自転車ででもいいですから、田んぼの表面を空気に触れないようにしてくださいと。実は出穂前後、穂ができる時期が一番、吸われたカドミウムが直接お米に入っていく時期なんです。この時期さえピシャッと抑えられれば非常によく抑えられるということはわかっていますので、これを守っていただきたいのですけれども、田んぼの条件によっては、1日に3回ぐらい水を入れないと表面が空気と触れるような田んぼもあります。
そういうところは非常にリスクが高いということです。あと、ポンプが壊れてもカドミウムは出ます。ポンプで水を入れている田んぼは結構あります。ポンプが壊れるとカドミウムが出るんです。つまり、そういうレベルのところもありますので、水に関しては非常に気を使うんですけれども、これはかなり有効な手段でありながらも完璧ではないというところがちょっと苦しいかなと思います。6週間水をためているわけですので、その後5週間ほどでもうコンバインが入ってきます。そうすると、水をきちんとためた田んぼほどぬかるみ状態になって、農家の人は難儀するということで、21ページには、そういうことがないようにということで、きちんとすき床を締めなさいということまで丁寧に書いているということだと思います。補足は以上です。
姫田(農林水産省)
どうもありがとうございました。
それでは、新本の方から、カドミウム検査の代表サンプルのとり方と、あと補助事業についての説明を再度お願いします。
新本(農林水産省)
検査体制の整備に対して支援をしているというお話を申し上げました。さまざまな農協等でそういった検査も行われておりまして、そこでの代表サンプルのとり方をすべて我々は把握しているわけではないのですけれども、国の方でもカドミウムの値が0.4 ppmを超えたものがないかどうかというチェックのための調査をやっていまして、そこでの代表サンプルの考え方をお話しさせていただきます。
具体的にはロットという考え方で、その品種なり生産方式が同一の単位で考えるというのが基本ですけれども、その上で、そのロットの大きさによって、例えば500キロぐらいのかたまりのものがあれば30トンとか、それはいろいろあろうかと思うんですけれども、そのロットの大きさに応じてサンプルを3つとるのか、5つとるのか、10個とるのかというルールを決めておりまして、そうしたロットの大きさに応じてサンプルをとってきて、それを合成縮分して、それを検査するという一定のルールをつくって、サンプルをつくっています。具体的には調査の実施要領の方で詳細は決めておりますので、お申し出いただければ用意させていただきたいと思います。
それから、0.4 mg/kgを超えた米の流通防止対策の買い上げの話であります。今年度からは社団法人の方で買い上げの事務をやることになっています。これに対して国が補助をするということなんですけれども、ご質問は、対策計画、防止計画をつくらないとどうなのかということです。基本的には、過去の経験から0.4 mg/kgが出るような地域はそれなりに把握されているということですので、まずは出そうなところは、当然我々の指導としても防止計画をつくっていただくということで、今それをしっかりやっているところです。
ただ、今まで出たことがなくて、初めて出るというケースも考えられるわけですが、この事業の要領の中で、そういった場合は翌年必ずカドミウム汚染が出ないような防止計画をつくってきちんとやりますということを条件としまして買い上げをするということで、たまたま出てしまったものが流通しないよう、対応をとるということになっています。ただ、生産防止計画をつくっていなくても買い上げるということになると、なかなか防止計画をつくっていただくということにはなりませんので、初めて出るようなケースで翌年防止計画をつくるというときには買い上げの額は通常の額よりも若干下げるということで、その辺はモラルハザードが起きないような仕組みをとっております。
姫田(農林水産省)
ご質問された方、よろしゅうございますでしょうか。
ほかにご質問はございませんでしょうか。なければ、意見交換に移りたいと思いますが。
それでは、意見交換ということで、どなたからでも結構ですが、ではそちらの方。質問でも結構です。
亘(消費者)
日本生態系農業協会の亘昌子です。3ページですが、第26回総会で小麦、野菜等の基準値原案をステップ3に差し戻したということで、先ほどちょっとご説明がありましたけれども、よく意味がのみ込めないので、もう一度ご説明していただけるとありがたいんですが。
姫田(農林水産省)
ご質問の趣旨は、3ページのステップ5のところとステップ3のところの話ということでよろしいですね。ほか、ご質問はございませんでしょうか。どうぞそちらの方。
今井(消費者)
NPOの神奈川県消費者の会連絡会から参りました今井と申します。質問の一つは防止の部分でなんですけれども、カドミウム汚染の原因の一つは、今までは鉱山ということも言われていましたけれども、それにあわせて最近ではニッカド電池の問題とか、あとトリクロロエチレンといった問題もあるかと思うんです。そうすると、リサイクル法などとも絡めまして、通商産業省などやっておりますPRTRなどとの関連なども出てくるんじゃないかなと思うんです。
本日は厚生労働省とか環境省の方からも出向いていただいておりますけれども、通産あたりとの関連なども本来は必要ではないかなと思いますので、その辺の対策がどうなっているのかと思うのが1点です。
それともう一つは、今年度から0.4 mg/kg以上1未満の間で出たものについては民間に買い上げができるという話がありましたけれども、民間と言っても一体どこなのかなと思って、これは多分工業用ののりか何かになっている部分なんだろうなと思いますけれども、今までは国だったのが今度は都道府県ということなので、例えば、では秋田県などだったら、そんなものを民間でと言っても、例えばのりだったらどこなのかなとか、その辺のところがちょっと不思議で、もしかしたら行政の中に第三セクターのような、何かそのような機関でもまたつくって、やるのかなと思ったんですが、その辺のところが、一体買い上げるようなところがあるのかなと、ちょっと不思議に思っております。以上です。
姫田(農林水産省)
それでは、すみません。そちらの方お願いします。
成沢(消費者)
中央区消費者友の会の成沢と申します。16ページの後ろの方に、土壌汚染の改善対策のところで、原則として汚染者負担ということで費用がかかるようになっているんですが、先ほどのお話では、お米に関するものとか、水田などは、自然ということが多いですよね。それで、この汚染者負担というのは、特別にカドミウム汚染というのが人為的にされたと分かったときだけなんでしょうか。処理の金額が大きいので、汚染者となった人の負担が心配です。
姫田(農林水産省)
では、そちらの方。
和田(消費者)
主婦連合会の和田です。カドミウムの問題というのは、もう相当長年にわたっていますけれども、非常に消費者としても問題が重いという感じがするんです。それは、先ほどのお話で、長期にわたっての摂取によるということで、まさにお米などというのは本当に私たちにとっての主食という立場がありますし、お話の中に、食品添加物や農薬のように添加あるいは散布することによるということではないという日本の宿命的なものがあるということが問題として大きいと思うんです。
それで、カドミウムの問題が始まったころに情報を完全にオープンにしなかったということがあるものですから、消費者にとっては、情報がこれで本当に出ているのだろうかといった感じを持った時期がありましたので、それが残っていると思うんですが、これから行政としてどのような調査を毎年続けて、その結果をどのようにオープンにされるのか、その辺を伺いたいと思います。
姫田(農林水産省)
ありがとうございました。
それでは回答に入りたいと思いますが、まず最初はCCFACのお話の補足説明と、それから0.4 mg/kgから1の米の買い上げた場合のもうちょっと具体的な話を新本さんの方から説明させていただきます。
新本(農林水産省)
資料の3ページのステップ3に差し戻しというところなんですけれども、3ページの一番上のところで見ると、2003年の3月、去年の第35回のCCFACで、CCFACとしてはステップ5で採択するように総会で勧告したわけですが、その次の6月の第26回の総会では差し戻しということなんですけれども、先ほどステップの表にありましたように、ステップ5ということの決定は総会マターになっています。部会としてはステップ5でいいということで考えたんですが、総会の場ではそれが認められなかったので、3に戻ったと。その背景は、先ほどもお話ししましたけれども、リスク評価、摂取量評価をきちんとやっていないから、まだステップを上げるのは適当ではないという判断を総会の場で議論されて、その結果そうなったということです。
山田(農林水産省)
ちょっと追加で説明致します。このスライドだとちょっと勘違いを起こすような感じに書いてあると思うんです。第35回は、その当時検討されていたすべての基準値案をステップ5として総会に送ったわけではないんです。そのときに、部会では米と大豆とピーナツについては合意が得られなかったので、その3つはステップ5にはならなかったんです。それ以外のものだけを総会に送ったということがあります。したがって、総会では、まず一つは、新本が申しましたように、リスク評価がちゃんとできていないということもあるんですけども、3つだけ除いてほかのものを検討するというのは全体の摂取を考える上で余り都合がいいことはないのではないかといった意見もありましたので、全部まとめて考慮するということで差し戻しになったということでございます。
新本(農林水産省)
それから、米の買い上げの関係ですけれども、昨年までは農林省が直接そういった米を買い上げて、それを工業用ののりとか、そういうものに処理していくということになっていました。今年度からは、食糧法の関係で国が直接特定のものを買い上げるということができなくなりまして、いわゆる入札をかけないといけないというルールがあって、直接国が買い上げができないという中で、消費者感情に配慮した流通防止を図らないといけないということで、民間団体と申しましたけれども、具体的には社団法人全国米麦改良協会というところが事業実施主体になりまして、そこが各地域から0.4 mg/kgを超えた米を買い上げます。
それに必要な経費は、国が米麦改良協会に補助するということになっております。ですから、社団法人の米麦改良協会が買い上げた米については、従来と同じような形で、例えば工業用ののりとか、そういう用途があるところに売却しているということですので、基本的なスキームについては変わっていないというご理解の方がいいかと思います。買い上げる主体が国から社団法人に変わったものとご理解いただければと思います。
姫田(農林水産省)
あと、最初の方にございましたニッカド電池とかトリクロロエチレン、あるいは環境への影響ということなので、環境省の方からお答え願えますでしょうか。
龍口(環境省)
環境省の土壌環境課の龍口と申します。2番目の方からありましたニッカド電池などからの環境放出と、あと、今回は私が環境省の方から参っておりますけれども、工業製品の所管である経済産業省等というお話がございましたが、まずPRTR法の関係で、私ども環境省の方では排出量の把握に努め、またその数値を公表しているところでございます。それとあとカドミウム、ニッカド電池の関係です。当然のことながら、私ども環境省としても、環境中にそういったものが放出されるということは決して好ましいことではないと言うよりも、避けなければならないことだと考えておりますので、通称リサイクル法と言っておりますけれども、その法律の中でニッカド電池をリサイクルの対象製品として、分別回収とか再資源化に努めているところです。
また、このカドミウム関係のさまざまな施策をつくっていくに当たって、先ほど用意されたスライドの中でも出ていたかと思いますが、土壌汚染対策の中で、特にこれまで農用地の汚染というものは鉱山排水から引き起こされたケースというのが非常に多い状況がありますので、鉱山におけるばい煙の排出規制とか排水規制といったものを経済産業省が所管する鉱山保安法といった法律の中でやっておりまして、私ども、日常の業務の中で、農水、厚生だけでなく、経済産業省とも連携して進めているところです。
姫田(農林水産省)
どうもありがとうございました。
それでは、最後にありました、行政として今後の調査と情報の開示についてどう考えるかというのをそれぞれ厚生労働省と私どもの農水省からお願いします。
中垣(厚生労働省)
厚生労働省でございます。厚生労働省といたしましては、先ほど厚生労働科学研究の成果を一部農林水産省の担当の方からご紹介いただきましたけれども、従来からこういった研究の成果あるいは審議会というのはもう10年、20年前から公開で進めてきているところでございますし、今後とも一層の透明化を図っていきたいと考えております。
細田(農林水産省)
今の公表の問題でございますけれども、農林省としても年間2,000~3,000点ぐらいのカドミウムの実態調査をしております。はっきり申し上げて、ちょっと昔は風評被害ということを非常に気にして、ご指摘のような状況もあったかと思いますけれども、新しい体制になって、あるいはそれ以前からもそうなんですけれども、個人情報的なものは若干配慮が必要だと思っていますけれども、市町村名まできちんと公表するという形でここ数年やっております。ただ、発表の仕方ですが、マスコミの方も注目されますので、調査のやり方、ありよう、それからその影響についてきちんと説明しながら、今の情報についてはきちんと公表していくという形で、今後とも当然やっていこうと思っていますので、よろしくお願いいたします。
姫田(農林水産省)
それぞれご質問をされた方はよろしゅうございますでしょうか。どうぞ。
今井(消費者)
今、私の質問の中からお答えいただきまして、環境省からのご説明もあったんですけれども、PRTRの中でちゃんと数値については報告もあるというお話だったんですが、工場などの点源の方の数値というのはかなりもう出ているかと思いますし、出しやすいかと思うんですけれども、農薬とか、あるいはクリーニングなどの方は非点源じゃないかなと思って、非点源についてはまだまだかなり難しいところがあるんじゃないかなと思って、本当にそれも出ていたのかなどと今思いながら、私の情報が不確かかもしれませんけれども、もしもまだその辺が難しくて、あるいは出ていないのであれば、今後より一層その辺のところを進めていただきたいなというのが私の希望です。以上です。
姫田(農林水産省)
では、環境省の方からお願いできますか。
龍口(環境省)
私どもとしてもそういった要望があったということを担当にも伝えます。実は先ほどの回答は基本的にカドミウムという今日の主題についてお答えさせていただいたものですから、例えばVOCですとか、そういったさまざまな物質について今ありましたようなご要望があったことは、担当の方に伝えてまいりたいと思います。
あと、先ほど私が答えるのを忘れていたことを一つ今お答えさせていただきたいんですが、汚染者の負担の話です。実は、現在のところ、カドミウムの農用地の土壌汚染対策地域に指定されているところといったものは、大半が工場の排水だったり、あとは鉱山排水が原因ということで、現在農用地の土壌汚染対策地域というのは67地域を指定しているんですけれども、例えば鉱山が既に閉山になってしまって汚染原因者がいなくなってしまっているケースなどで、汚染原因者不明とされているものはそのうちの28地域になっております。
それ以外の半分をちょっと超えるぐらい、6~7割ぐらいの地域では汚染原因者がはっきりしていまして、ただ汚染原因者がすべての責任とは――要は規制がない時代に排出された分といったことも勘案することができるようになっておりますので、100%ということではないですけれども、現在のところ、大半の汚染対策地域での事業においては、一定の割合の負担を課しているという状況にございます。
姫田(農林水産省)
どうもありがとうございました。
大分ご質問も出たようですので、意見交換に入りたいと思いますが、今お手が挙がったそちらの男性の方。それから、ほかはございますか。そちらの方、そして前の女性の方という順番にしたいと思います。
高橋(食品製造業者)
時間がない中、申しわけございません。カゴメ株式会社の高橋と申します。3点ほど質問というか、基本的な確認になるかと思いますがお願いします。1点目が、私ども加工食品を製造するメーカーにとっては、どうしても複数の原材料を使用して流通する食品ですので、原材料由来のカドミウムというものを今後どのような形でコントロールするかということが関心事でして、この辺に関するご質問が1つです。
2点目が、パワーポイントの14ないし15ページに該当する話かと思いますが、今回畜産物が外れているということについての内容です。3点目は、本来ですとこの場でお伺いすることではないのかもしれないんですが、特に環境省の方にお教えいただきたいのは、加工食品を製造するメーカーとして、このカドミウムの健康危害リスクをトータルに封じ込めるためにも、食品製造用の用水の汚染が関心事なものですから、これに関する情報をお伺いしたいという点です。
1点目の加工食品を製造する際の複数原料に関してなんですけれども、今日のお話は農作物の単一の規格基準を決めるという話だと思うのですが、複数の農作物を原料にしてつくった食品の基準ないしは規制というのは、厚生労働省で今検討されている残留農薬のポジティブリスト制と同じような考え方で、原材料の基準にさかのぼって配合比率から見てどうこうといった今後の方向ということなのかどうかということを教えていただきたいという点です。
2点目は、畜産物が今回外れたということに関してなんですが、CCFACの方針にありますように、5つの地域に分かれてという内容についてはよく理解できたんですが、家畜類も農作物を飼料として摂取します。そうした場合、生体濃縮といったものも考慮されてJECFAの方では外されたといった認識でいいのかという点です。
3点目は、環境省の方に伺いたいのは、用水について今どういう汚染状況かということを、きょうこの場でなくても、国内の水質の汚染状況がわかるような情報はどこを見ればいいかということをちょっと教えていただきたいと思います。 以上です。
姫田(農林水産省)
それでは、そちらの後ろの男性の方。
原(消費者)
日本生協連の原と申します。前回の意見交換会で意見を述べさせていただいたのですが、多くの消費者団体が0.2 ppmでいってほしいと申し上げていたにもかかわらず、日本の修正案が通って0.4 ppmになっているというのは非常に遺憾です。日本側が提案した内容について、私どもは前回の意見交換会で意見を申し上げましたけれども、一つは、日本で影響が出ているかいないかということに関して、現時点でも汚染が高いところでは影響が出ているのではないかという研究報告があるということで、そういった報告も含めてきちんとリスクアセスメントをしていただきたい。これは食品安全委員会の課題で、今日は必ずしもテーマになっていないのかもしれませんけれども、食品安全委員会で現在リスクアセスメントをしている最中ということですので、慎重な評価をしていただきたいということが一つです。
それから、そういった影響についていろいろな意見がある中で、やはりできるだけ安全な側の対策ということで、ALARAの原則について報告がありましたけれども、対策をかなり進めれば0.2 ppmというものも視野に入ってくるのではないかと私どもとしては考えておりますので、なかなか難しい点はあると思いますけれども、研究をぜひ促進していただいて、きょうは先生方にもいらっしゃっていただいているわけですが、早急にこの0.2 ppmが実現できないとすれば、できるだけ早く0.2 ppmを実現するようなプログラムを立てていただきたいと要望いたします。
それから、リスクマネジメントに関しては、先ほどその根拠にされた摂取量評価について、自家産米の消費、それから私どもが1997年に調査したところでは、縁故米の消費者が都市部においても2~3割はあるということがわかっております。そういう意味では、都市部の消費者も含めて、そういった特定の田んぼのお米をずっと食べ続けるということに関して、この摂取量評価に関しては全然考慮に置いていないわけですが、そういったことを考慮に置いて評価のし直しをしていただきたいということです。そういった低減対策を促進するためにも、0.2 ppmという目標をぜひ基準化していただきたいと要望します。
姫田(農林水産省)
前の女性の方、よろしくお願いします。
小林(消費者)
仙台の小林です。パワーポイント37のところに、CCFACの審議から外されているものに大豆があります。それから、軟体動物も今回は除くということになっていますけれども、大豆の場合、減反対策として田んぼで水を抜いてつくるというのが大変にふえていますので、CCFACで審議の対象にならなかったとしても、日本の私たちの食生活の中で占める大豆の割合というのは大変に大きいので、その辺の摂取量の調査とかというのはどのようになっているのかと思います。それと、世界の中で軟体動物も結構日本人が好むもので、多分タコとかも入っているんだろうと思いますので、そういうものも、国際的には余り重要ではなくても、日本人の食生活にとっては重要な位置を占めているのではないかと思うんですけれども、その辺についてもどのようにしておられるのか、これからしていかれるのかといったことについて教えていただきたいと思います。
姫田(農林水産省)
まず一つはコーデックスの関係ということで、畜産物がなぜ入っていないのかとか、今お話があった軟体動物と大豆、大豆については国内のことはまた厚労省の方からお願いしますが、そういうコーデックスの審議とかご議論について、山田総合調整官の方からお願いします。
山田(農林水産省)
コーデックスで、どのような検討をされて畜産物が外されたかということなんですが、まず最初に申し上げましたように、この3月にあった第36回の部会で、暴露評価というか、摂取量の評価をどのようにして、それをどのように基準値の設定に活用するかということは合意に達したわけです。その場合に、そこで決めているモデル食、実際には恐らくそういうものを食べている人は世界中にいないのかもしれないんですけれども、世界の5地域のモデル食というものを作っておりまして、それはWHOの中の組織がやっているんですけれども、その数値を利用して、そしてそれぞれの食品中における汚染物質の分布というものを見ながら、それぞれの食品からのカドミウムがどのように食品全体からのカドミウム摂取に寄与しているかということを求めます。
そのときに、寄与率が5つある中の1地域で10%以上を超える場合、または10%に満たないけれども、5%以上で、でも2地域またはそれ以上で超えている場合には、非常に重要な、ちゃんと対処しないといけない摂取源とみなして、そういうものに設定することにしようとなっています。それはなぜかといいますと、当然、基準値を決定するということは、それに適合しているかどうか検査しないといけないということで、寄与が非常に少ないものに対して設定して、それに対して検査をしたり、または試料採取するということにお金と時間をかけて、トータルとしてカドミウム摂取量を減らす効果があるだろうかという感覚がもとになっております。
国際的な5地域のモデル食を使いますと、畜産物からのカドミウム摂取は非常に少ないということで、それには必要ないということになったわけです。また、同じように、大豆もそのような結果になっております。先ほど申しましたようにモデル食ですから、日本でどうこうということと直接かかわり合いがあるわけでは決してないということになります。コーデックスの中に無いから国内でつくってはいけないかというと、そういうことはなくて、SPS協定でもリスク評価の結果必要であるということが証明できれば、WHOの加盟国は国内で独自の基準をつくることはできるわけです。
一つ、今の絡みで、軟体動物は除かれたとおっしゃったんですけれども、恐らく説明が悪かったのかもしれないのですが、軟体動物はステップ5に上げるリストからは除かれたんですが、特に貿易で非常に大事と思っている国が多くて、しかも摂取量としては、汚染の濃度がちょっと高いということもありますので、省かれる中には入っていないわけです。ただ、いろいろな国が本当に好き勝手な、このように分けてくれとか、それから数字はこれがいい、あれがいいというのがあって合意に達しなかったということで、ステップ3でさらに部会で検討するということになっております。だから、合意されてステップ5に上がっているという中には入っていません。それは要するに合意されていないからで、今後さらに詳細な検討がCCFACでなされる予定になっています。
姫田(農林水産省)
あと、今のことに関連して、大豆の国内での基準をどうお考えになるかということ、あるいはその前に加工食品メーカーさんの方からございました、複数原材料由来のカドミウム等について基準値をどう考えるかというお話、それから自家産米とか縁故米が2~3割程度あるんじゃないかということについてどう考えるかということについて、厚生労働省からお願いできますでしょうか。
中垣(厚生労働省)
それでは、まず大豆、軟体動物についてお話ししたいと思います。
資料2の5ページをごらんいただきたいと思います。5ページに厚生労働省で毎年やっておりますカドミウムの1日摂取量を主な分類ごとに区分けしたものが載っております。これで見ますと、確かにここでは「豆・豆加工品」となっておりますけれども、豆からの摂取というのはかなりの部分を占めておりますし、魚介類の多くの部分を軟体動物が占めているということだろうと考えております。
したがいまして、国内の基準は、今お願いしております食品安全委員会の評価結果をもとに、これが大体今年の秋ということに食品安全委員会の計画ではなっているようですので、これをもとに私どもの審議会で議論を始めますけれども、このデータから見ても、大豆あるいは軟体動物というのは外せないだろうと考えております。ただ、軟体動物というのは、今、山田調整官の方からありましたが、定義でございますとか部位、例えばホタテだとどの部分、ウロと言うんですが、この部分がどうも高そうなのですが、これを入れる、入れない、軟体動物だと、イカのワタをどうするかとか、非常に細かい論議が国際的にも国内的にも必要だと言われておりますから、これはそういった動きも少し見ながらやっていく必要があるんだろうと考えております。
次の問題は、先ほど加工食品の議論がございました。加工食品は、食品衛生法上、原材料が食品衛生法違反であれば、それを使った加工食品も違反、すなわち原材料がアウトだったら、それを使ってできた加工食品もアウトというのが基本的なルール化されているところでございます。確かに、カドミウムについて農産物を中心に、あるいは一部の魚介類も使ってつくることになるんだろうとは思いますが、農産物を中心につくっていくということになりますと、その原材料をもって加工食品についても議論していくということになろうと考えております。
3番目は、自家産米、縁故米についてご意見がございました。私は、実は九州の筑後平野のど真ん中の、米をよくつくっているところの生まれなんですが、うちでつくった米というのは、農協の大きなサイロに入れられて、どこの田んぼでつくったのかもわからなくなって出てくるというのが現状でございます。すなわち、ある特定の田んぼのものを食べているというのも、もちろんおられるんだろうと思いますけれども、かなり限られているのかなと思います。
また、これを言うと、実は私どもの審議会の中で委員に「余りに冷たいではないか」と言われたんですけれども、流通しない米というのは食品衛生法の対象の外でございます。「余りに冷たいんじゃないか」と言われて、「だから、我々はその自家産米を食べる方々が健康を害していいと思っているわけではなくて、自家産米といっても、その一部というのは流通に乗ると思います。その流通に乗ったものが検査をした結果高い数値であれば、当然のことながら、その農家の方々に注意を送るとか、そういうことを考える必要があると考えています」ということを申し上げたわけでございますが、何らかの工夫を考えていきたいと思っております。
姫田(農林水産省)
どうもありがとうございました。
用水の汚染という話で、環境省さんの方にお願いできますでしょうか。
龍口(環境省)
先ほど用水の規制に関する動向ですとか、汚染状況に関する情報ということだったんですが、ちょっと今手持ちでそういった資料を持ってきていないものですから、戻って担当とも確認した上で、後日農水を通じて回答をお返しできればと考えております。
姫田(農林水産省)
ありがとうございます。では、私どもの事務局からまたそちらの方にお伝えするとともに、場合によっては、ホームページにきょうの議事概要を載せますので、それにあわせて載せさせていただきたいと思いますので、よろしくお願いいたします。 (以上につきましては、環境省HP「水・土壌・地盤環境の保全」に掲載しておりますので、ご参照下さい。)
あと、原さんの方から安全委員会に、今、評価をどういう方針でやるかとかという答えはできないと思いますが、評価についてお答え願えればと思います。
西郷(食品安全委員会)
食品安全委員会の西郷でございます。食品安全委員会に汚染物質の専門調査会がございまして、そこで評価を始めているところでございます。この前も申しましたが、その中でたくさんあるものですから、カドミウムの担当の専門の先生方を決めていただいて、検討もいただいて、いろいろ膨大な資料などを見ていただいて、その整理をしているところだと聞いております。
また今後、いろいろなデータも出てまいりましょうから、それを参照しつつ、いつできるのかということがご関心かと思いますけれども、基本的には、まだ実はよくわからないんですが、ただ全体としては、先ほど中垣課長からございましたように、今滞っているとは申しませんけれども、依頼を受けた評価につきましては、なるべく半年以内に何とか目処をつけるよう作業をしなければいけないと、これはカドミウムだけではなくてすべてでございますけれども、そういう方針でやっておりますが、しかしカドミウムについては、事が事だけに、いつごろということはなかなか申し上げることができない状況でありまして、鋭意やっているところでございます。
それから、内容につきましては、慎重にやるべきだというご意見もあったかと存じます。もちろん先生方はその辺は踏まえていらっしゃると思いますけれども、本日そのようなご意見があったことにつきましては、評価の関係者に伝えたいと存じます。以上でございます。
姫田(農林水産省)
それから、カドミウムの低減対策について、0.2 ppmが視野に入るのではないかというお話もございましたが、その点について、小野先生、それから佐藤先生、よろしくお願いいたします。
小野(アドバイザー)
最初に、日本のカドミウムの状況というのは、皆さん方はご存じでしょうけれども、おおよそ非汚染土壌と言われるところで0.2~0.3 ppmというのがよく言われる数値ですが、具体的に言いますと、1ヘクタール当たり大体200~300グラムのカドミウムがあるというのが日本のいわゆる非汚染土壌の現状です。1ヘクタールというのは、ご存じのように100メートル掛ける100メートルで、学校の運動場ぐらいの広さです。
それが現状でして、それ以上、例えば400グラムとか、500グラムとか、多いところは1キログラムぐらいのカドミウムがあるわけですけれども、そういうところを汚染土壌と言うわけです。我々が今やっている、例えば植物に吸わせる方法とか、薬品で土を洗う方法というのは、従来の客土などに比べると、かなり環境に優しいといいますか、マイルドな方法でございまして、もちろん労力などもかかるわけですけれども、時間がかかります。
1年でカドミウムをとってしまうなどということはできません。例えば玄米のカドミウム濃度を0.2 ppmの基準にしますと、日本では5万ヘクタールぐらいがひっかかると言われております。1ヘクタールが100メートル掛ける100メートルですから、その5万倍です。これを今我々がやっているような技術で浄化していくというのは、これはもう気の遠くなるような話でございまして、とてもちょっと技術の及ぶ範囲ではないという気がしております。
それで、基準値が0.4 ppmになりますと、面積的にはその10分の1ぐらいになりますので、これはちょっと頑張れば手の届く範囲かなという感じです。
現地の状況については佐藤部長、よろしくお願いします。
佐藤(アドバイザー)
秋田農試の方で、県の中で恐らく一番リスクが高いということでここに座っていると思うんですけれども、私どもの方では、土壌汚染対策事業ということで、今まで1,600ヘクタールぐらい客土してきました。これは玄米中のカドミウムが1 ppmを超えたところです。これを30年間にわたってやって、やっと98%ぐらいまでですか。まだやらなければならないことが残っています。先ほどの資料にもあったんですけれども、10アール当たり560万円、1ヘクタール当たり5,600万円かかります。
今、秋田県で一番高い田んぼが1枚100万円ぐらいしかしません。要するに皆さんの税金を使っていいかどうかという話になっていくのだと思いますけれども、安心・安全を進めるためにはそのぐらいコストがかかるということで、もし0.2 ppmになると、私どもの方の試算では、今言ったようにかなりの汚染地がふえるだろうと予想しています。そうした場合、その土壌をどこから持ってくるんだとか、そういうお金をだれが負担するんだということを今真剣に考え始めています。試算しましたら、奥羽山脈がなくなるぐらいの量が必要です。これは、今、小野先生もおっしゃったんですけれども、物理的に不可能だというところに来ています。
ですから、我々としては、リスクのある場所とそうでない場所と、できることとできないことをきちんと分けながら進めたい。特に食料の安心・安全については、秋田県は非常に敏感に対応していまして、ある市町村では3,000の農家の1軒ごとのカドミウムを全部はかっているくらいです。年によっては出ることはあるのですが、それを1粒たりとも市場に出さないという、これは我々の方で持っているリスク管理意識だと思います。ただし、低ければ低いほど確かにいいんですけれども、限りなくゼロにするためのエネルギーというのは無限に大きくなるというのが物理の法則だと思います。
我々ができることとできないことをどの辺で区分けするのかというのは、研究者としては、幾らコストが高くてもやればいいんだということになればできないこともないのですけれども、恐らく再汚染の問題とか、ダイオキシンがカドミウムと違うのは、ダイオキシンは熱をかければ分解しますけれども、カドミウムは未来永劫必ずどこかに存在するということですから、封じ込めるとかいろいろなことがあると思いますけれども、コストの問題は必ず考えていかなければいけないことだと思っています。
ファイトレメディエーションは秋田県でやっています。カドミウムをいっぱい吸わせた植物を持ち出して、二次汚染がないようにということで、今実際使っている植物はソルガムです。人間が食べることはまずないだろうというものです。3メートルぐらいの高さになります。いっぱいカドミウムを吸います。それを田んぼから持ち出して、二次汚染のないように処理していこうという、一見ばかげた話ですけれども、時間をかければきっとできるんじゃないかと、そういうことを今始めています。何とかご支援ください。
姫田(農林水産省)
どうもありがとうございました。
今の回答は、それぞれよろしゅうございましたでしょうか。
中垣(厚生労働省)
先ほど生協の原さんの方から、0.2 ppmということにしてほしいと、前回の意見交換会でもそのようなことを言ったのに、日本政府として0.4 ppmという修正提案を出したのは遺憾だという意見がありました。また、現時点でカドミウムの濃度が高い米を食べている方々には健康影響が出ているという報告もあるんじゃないかというご意見がありました。こういう意見交換会をするわけですから、多様な意見があるのは当然だとも思っておりますし、前回の意見交換会では生協の原さんからそのようなご発言があったことも覚えていますし、主婦連の和田さんからできるだけ低くといったご発言があったことも覚えております。
また、前回の意見交換会の中で、現時点でカドミウムが高いところで健康影響が出ているか、出ていないかということについての議論もあったわけでございます。前回の意見交換会では、自治医科大学の香山先生というこの分野の研究をされている先生にご出席いただいて、特にカドミウムの高い地域、低い地域等々で行われた健康診断の結果をご報告いただきましたし、一定期間、20数名の方だったと思いますけれども、それなりの方々に2週間閉じこもっていただいて、すべての大小便を分析して、どれぐらいカドミウムを摂取されてどれぐらい出ていったのかということを分析したような結果も報告していただいたところでございます。
それらの結果は昨年開催いたしました私どもの審議会でも報告していただきましたし、さらには現時点で影響が出ているのではないかということを発表されている先生方にも審議会にご出席いただいて討論をいただいたところでございます。ただ、国際基準という観点から申し上げますと、国際基準は国際的な専門家会議であるJECFAで決められた量をもとに議論するということでございますから、それはそれで7マイクログラムという数字をもとに国際基準はまず対応しました。
一方、国内的には、今申し上げましたように、私どもの審議会でいろいろな議論をしてきたわけでございますが、昨年の7月からは食品安全委員会で議論をして、そこで国内にはそのようなことを報告していただいている先生方がおられるわけですし、研究は引き続き行っていますので新たなデータも提供し、それらの意見やデータも含めて、我が国としてのリスク評価、我が国としての耐容量が議論されていくのだろうと考えている次第でございまして、厚生労働省としては、食品安全委員会のリスク評価を踏まえて基準の設定を考えていくという方針でございます。
姫田(農林水産省)
どうもありがとうございました。
それでは、そちらの方。
田村(生産者)
全中の田村と申します。今の0.2 ppmと0.4 ppmの関係で若干意見なんですけれども、生産者なり産地として、0.4 ppmをできる限り少なくしていくというか、そういう努力を続けていかなければいけないということをまず我々としては受けとめたいと思っているところでございます。ただ、ここで会場の皆さんあるいは国の政府の皆さんにも思い出してほしいのは、BSEというまだ記憶に定かな大問題がありまして、ごく限られた危険性というものをもって、それも非常に0.0幾つという危険性をもって、あたかも牛肉あるいは食肉全体が悪いんだという、ある意味の風評被害というのが起きて、食品産業、あるいはそこに従事する農家、あるいは屠場の方々、あるいは加工業界の方々、すべての生活が壊れてしまうような、そのような危機的なことを経験したわけであります。
そういう意味でいいますと、リスクをできるだけ少なくするということはまず大賛成なんですけれども、その程度についてどう考えるのかということについては、まさしくリスクコミュニケーションということで、わかりやすい説明なり、国民の方々が理解できるような説明を、中立的あるいは公正な機関である政府、あるいは医療関係者の方々の説明なり、いろいろな場面での努力というのをよろしくお願いしたいと思います。このカドミウムの問題が日本の稲作生産なり米に携わる農家の人たちの生活すべてを壊してしまうようなことにならないように、努力を期待するところでございます。
姫田(農林水産省)
どうもありがとうございます。
ちょっと今余り手が挙がっていないようですので、あえて言うのですけれども、今0.2 ppmの対策はどうかというお話で、小野先生、佐藤先生からなかなか難しそうなお話があったんですけれども、この中で農家の方がいらっしゃるような気がしますので、もしよろしければ農家の方からお話がいただければと思うのですが、どうでしょうか。
門傳(生産者)
全国農協青年組織協議会の門傳です。農家サイドからすると、日本国じゅうどこにでもカドミウムがあるということで、当然その対策、きょうの資料にもありましたけれども、出穂前後の水張りというのは、これはカドミウム対策だけではなくて、当然やっていることでありまして、水を張っていなかったら、ちゃんとした米はとれないわけです。なおかつ当然中干しとか間断潅水をやっているんですけれども、環境のことからしても、深く水を張っておけば、多様な動植物が多く生息するというのも我々は経験的にわかっております。
ただ、中干し等々もやらなければいけないというのも、実は両面ありますので、カドミウムだけではなくて、生物多様性の観点からも、できるだけ天気予報と田んぼを見ながら、期間だけではなくて、天気がいい時期にできるだけ早く終わらせて、また水を張って、せっかく田んぼにいるいろいろな動植物が死なないようにしてやる。ですから、かなり環境保全に対する意識が生産サイドでも、今までは点だったものが今は面になって広がっています。
また、我々生産者でも、カドミウムというと、消費者の皆さんもそうかもしれませんが、アレルギーみたいなものがあって、カドミウムと聞いた途端に口があかなくなってしまうといったことも正直ありましたけれども、今後はまさに科学的知見に基づいて生産するということもありますし、こういったリスクコミュニケーションの場にもできるだけ多く出てきて多くのものを学ぶということも我々は必要かと思います。ただ、それには行政を初め多く皆さんのお力が必要でございますので、先ほど言っていましたように、風評被害が決して起こらないように、我々も努力していきたいと思っています。
姫田(農林水産省)
どうもありがとうございました。
ほか、何かございますでしょうか。ではどうぞ、原さん。
原(消費者)
すみません、もう一度、日本生協連の原です。先ほどの中垣課長さんのお答えなのですけれども、摂取量推計に関しては、私どもは自家産米の人が推計から抜けているというのを申し上げているわけで、結果的に影響が出ることに関して食品衛生法がどうのこうのということを申し上げているわけではないんです。推計がちょっとおかしいのではないかということを申し上げているわけです。
それから、影響があるかないかということに関しては、前回もお話しいたしましたし、先ほども申し上げましたので、省略させていただきますが、そこのところはやはり議論のあるところではないかというところを申し上げているわけです。
それから、先ほどお答えいただいた対策で、0.2 ppmになるのかならないのかということに関しては、それは確かに0.4 ppm以上出ている田んぼに関して、今すぐ現時点での技術では0.2 ppm以下に毎年安定して抑えるということは難しいかもしれませんけれども、目標として0.2 ppmというところを目指して技術対策なり、それから生産技術の実施の奨励ということをやっていただきたいということで申し上げているわけです。
姫田(農林水産省)
ありがとうございます。
今の件に関して、農水省の方から少しお話しさせていただきたいと思います。
新本(農林水産省)
0.2 ppmを目標とした対策をやるべきというご意見をいただきました。技術的に、現時点の状況ということについては、アドバイザーの先生方からお話があったとおりであります。きょうお話ししたように、全体のリスクを下げるということが、ご懸念の摂取量の多いような層をできるだけ減らすというところにも効くわけですので、そこは0.4 ppmで満足するのではなくて、それをさらに下げるということで、一つは研究面の推進。あるいはもう一つは、きょう予防的な対策ということでご説明させていただきましたけれども、若干説明させていただきますと、例えば0.4 ppmが出るのも、毎年出るとは必ずしも限らない。
ただ、出るかもしれないという地域がどうもある。それを推定するのに、土壌データ、基本的には土壌のカドミウムの量が米のカドミウムにリンクすると考えがちなんですけれども、実はそれ以外の要素が複雑に絡み合ってなっているという実態があります。そこを研究の世界で、土壌データでカドミウム以外の要素、例えばリン酸吸収係数とか、pHとか、幾つかの要素を取り合わせて、それをもとに一定の土壌としての米への吸収のしやすさの目安ができないかといった研究を進めております。そうしたことによって、ある程度高目に出そうなリスクの高い地域、そうでない地域という色分けができるのではないか。
そうすると、その色分けができたときに、その可能性が高いところ、0.4 ppmが出るかもしれない、年によっては0.2 ppmになったり0.3 ppmとか、いろいろあるようなところが特定できます。そうしたところが特定できれば、対応としては、0.4 ppmが出ないように例えば水管理をするといった対策をするわけですので、結果として本来なら0.3 ppmが出るような年でも0.2 ppmになったり、より低くなるということを通じまして、全体のリスクを下げるという方向でこれからやっていきたいと考えております。
山田(農林水産省)
ちょっとコーデックスでこのところどういうことが起きているかということを追加で申し上げます。例えばカビ毒などの場合に、今まで出ているデータで、それにALARAの原則を適用すると、例えばaという数字になる。でも、それはそれより低いbという数字にしてほしいということで、意見が合わないときなどは、まず現状ではaしかできないからaにする。でも、例えば製造規範とか生産規範を実施することによって、各国でなるべく下げる努力をしてくださいとなります。
そして、何年かたったときに、もう一度新しい汚染実態のデータを集めて、それをもとにしてALARAの原則などを適用して、下げられるのかどうかということを考えましょうということが、特にカビ毒などで一般的になりつつあるわけです。カドミウムは違うのですけれども、多くの昔の基準値というのは、まだリスクアナリシスのシステムができる前に決まったようなものなので、リスクマネジメントのステップの一つとしては見直しというのがあるわけです。
ですから、一遍決まったら、それが永遠にその数字でいいということではなく、新しくいろいろな措置を講じたときに、ちゃんとそれが有効かどうかを知るためにもデータを各国がとるべきであるというのがコーデックスの考え方ですから、その新しいデータをまた集めたときに、そのデータをもとにしたら今度はどういう数字が適切かということをまた考えるというのは、恐らくまた近い将来起きるのではないかと考えております。
原(消費者)
山田さんからそういうお話もあったということで、将来的に基準を下げるということも考えられるのであれば、0.4 ppmだからということでなくて、技術対策等をきちんと進めていただくということは考えられるのではないかと思いますけれども、消費者としては、できるだけ低くということは変わりませんので、きちんとその辺の実施状況なり、常に調査してチェックし、報告もしていただきたいと思います。
中垣(厚生労働省)
議論をまぜかえす気は全くないんですが、先ほど生協の原さんの方から、自家産米が摂取量推計に入っていないんじゃないかというお話がありました。これは国際基準の議論をしている、食品衛生法の基準の議論をしているわけでございまして、先ほどもお答えしましたけれども、自家産米というのは食品衛生法の基準の外のお話でございますから、そういう取り扱いになっているのだけれども、そこはそれで、別途手当てをしなければいかんのだろうということをお話ししたわけでございます。
また、現段階で影響が出ているデータというのを私は持っているというお話がございました。そういうデータというのを私たちも持っております。したがって、またそういうデータを書かれた先生方にも審議会に出ていただいて議論を賜ったところでございますし、食品安全委員会もそういった疑問に答えていくのだろうと考えているところでございます。
姫田(農林水産省)
よろしいですか。どうぞ。
原(消費者)
ちょっと私ばかり発言させていただいて申しわけないんですけれども、中垣課長さんに申し上げたのは、モンテカルロ法というのは、すべての人がすべてのお米を確率的にいろいろ食べるという形で推計されたものなので、自家産米のように同じ米をずっと食べ続けるということが考慮の外になっているのではないかと。実際に高いお米、何%の田んぼかわかりませんけれども、そういった田んぼからずっと食べている人というのは7マイクログラムを超える可能性があるのではないか。そこのところをきちんと、モンテカルロ法と別途でも結構ですから、計算をしていただきたい、その上で評価をしていただきたいというのを申し上げているわけです。
中垣(厚生労働省)
ですから、自家産米は出荷されないわけです。流通しない米というのは食品衛生法の対象にならないわけですから、あるいは国際基準の議論をしていて、国際貿易される米が今議論になっているわけなんで、そこで自家産米の議論をまた個別にやればいいんだろうと思います。
姫田(農林水産省)
モンテカルロ法のデータの話ですので、山田総合調整官からちょっとお話しをお願いします。
山田(農林水産省)
今回の計算の中には、もしも自家産米を食べた人が米を食べたと報告していないのではない限り、数字には入っております。どういうインパクトがあるかといいますと、もしもその自家産米が偶然非常に高い濃度のカドミウムを含んでいるとすれば、そうでないこともあるわけですけれども、もしそうだとして、そしてそれをその人たちが非常に大量に食べているということがもし万が一あれば、すそ野に出てくるということはあり得るわけです。ですから、一応計算には入っているわけです。ただ、自家産米だからといって高いとは限らないし、それが低ければ、当然低い方に出てくるわけですし、計算の中には入っています。それをどう見るかというところはまた別なんですけれども、データとしては当然入っているわけです。
門傳(生産者)
自家産米の話が出ていますけれども、うちの地域でやっているのは、当然出そうなところ、0.4 ppmを超えそうなところというのはわかっていますから、収穫前に全部圃場1枚ごとにチェックするんです。時期になったら全部それをチェックして、0.4 ppmを超えているものは、仮に自家用であっても、それは流通させないようにしているんです。ただ、そこまで法の縛りがないから、それは行政としてはやれないかもしれませんけれども、生産サイドとしては、0.4 ppm以上はもう絶対、仮に流通に乗らない米であっても、そのように仕分けしております。ただ、それが全国的かどうかというのは私はわかりませんけれども、そのようなことは少なくとも私の地域のところではやっております。
姫田(農林水産省)
原さん、よろしゅうございますでしょうか。
どうぞ。
小林(消費者)
仙台の小林です。今の自家産米のことは消費者としてはとても気になるところなんです。どうしてかというと、農家から直接買う消費者が結構ふえています。後ろの方がおっしゃったように、生産者団体で収穫前にきちんと検査されているのが全国規模であれば問題はないかもしれませんけれども、私のところにも生産者の方から、鉱山の近くで支流のところでお米をつくっている農家の方からは、自分の田んぼでとれる米がどうなのかというのは、残留農薬の検査は自分でやっているそうなのですが、カドミウムについてはなかなか自分で検査するとかというのができないので、実際はどうなのかというのをとても気にしておられるんです。農家から直接買う消費者がふえてくると、では、法律では自家販米は対象外だからということになると、消費者と生産者がせっかく近づいてきたのが、逆に不安をあおるような結果になるのではないかなという気がするんです。
中垣(厚生労働省)
自家産米と言っているのは、農家の方が自分でつくったものを自分で食べる、すなわち流通が一切ないものです。それを人に売ると、例えば消費者に直接売ろうが、農協に売ろうが、そこは一緒なんですが、売るという行為を食品衛生法は取り締まっておりますから、そこはすべて法律の網の中に入ってくるということでございます。すなわち、農家の方が自分でつくって自分で食べるということ、これを自家産米と考えております。
小林(消費者)
検査の対象になったかどうかを確認したいんですけれども。
中垣(厚生労働省)
外に出ると、食品衛生法上は、農家にとってみると販売という行為になりますから、そこは販売されるもの、販売される食品というのはすべて規制の対象となっていくということになります。
姫田(農林水産省)
ちょっとまだ小林さんは首をかしげておられますけれどもよろしいでしょうか。
原(消費者)
先ほど申し上げたのは、自家産米もあるし、縁故米という親戚とかから送ってもらうのもあるし、それから直売りということで、今仙台の方がおっしゃっていたように、特定の農家からいつも買っているという場合、それが今回の摂取量推計には、方式としては全部がどんぶり勘定になって、反映されていないのではないかと申し上げているのです。同じ田んぼのものをずっと食べる可能性がある、そのことについて、それが0.4 ppmについては基本的には流通しないという関係にはなっていて、自主的に測定されているところもあるということなんですけれども、ではそういう特定の田んぼのものが0.2 ppmと0.4 ppmの間だった場合にはどのような摂取量になるのかというのをきちんと推計していただきたいというのをお願いしているわけです。それは計算上では入っているということでしたけれども、こういうものの計算はないんじゃないかということです。
山田(農林水産省)
その部分は、計算よりも、計算値の解釈の問題になります。
姫田(農林水産省)
ほか、どなたかご意見はございませんでしょうか。できるだけ広く、きょうせっかく来られたので、何も言わずに帰ったら、後で今晩寝られないといったこともあるかと思いますけれども。はい、どうぞ。
和田(消費者)
細かいことですけれども、0.4 ppmを超えたものが工業用ののりなどに使われるということがよく説明の言葉にあるのですが、のり以外に、わずかであってもほかの用途というのは、例えばどういうものがありますでしょうか。
姫田(農林水産省)
新本の方からお答えします。
新本(農林水産省)
合板接着剤の原料用のほかに人工骨材原料用焼却灰の成形用という、ちょっと私もイメージはないんですけれども。そういうものがあるようです。
竹島(農林水産省)
今の部分にちょっと関連して、調査官がお話ししたとおり、いわゆる合板接着剤ののりと人工骨材、この2つに主に使われております。人工骨材というのは、いわゆる道路のアスファルトを固めるところに使用するもので活用されているということです。
姫田(農林水産省)
人工骨材といいますから、多分、建設用の骨材、基盤になるような、セメントを固めたようなものだと思います。はい、どうぞ。
野田(消費者)
生活と文化の会の野田と申します。余り危険、危険というムードでいろいろなお話が進んでいるんですけれども、私などはそんなに米を食べて危険と思ってはいません。ほとんど日本でとれるお米の90何%というか、100%に近いものは安全でしょうし、それからいろいろと検査して、悪いのは食用のお米としては使っていないということだと思うんです。ですから、こういう会議は当然必要だとは思うんですが、会のまとめとしては日本の米は安心で食べられるというムードで終わっていただけた方が私としては安心して帰れるなと思っておりますので、最後にそれだけ、ぜひだれかがしゃべっていただきたいと思います。
姫田(農林水産省)
どうもありがとうございます。
ほか、どうぞ。
小瀧(県職員)
栃木県の小瀧と申しますが、農業関係の仕事をしているんですが、基本的に、ここのリスク評価というか、その中で決められて、0.4 ppmは安全だといった形で、それ以下は、0.2 ppmに下がった方がより安全だということではなくて、通常だれもが安心して食べられるレベルは0.4 ppmというのが現時点の中で国際的にも決められているということであって、販売上とか流通上は0.4 ppmでいいんだよということが大きなポイントで、それ以下のものが欲しい人というのは、個人的な、場合によっては好みとか、そういうもので、安全に食べられるレベルというのは、いろいろな表示をするとか手段があると思うんです。販売戦略上。だから、産地としてカドミウムの低いものを販売したい生産地はカドミウムの表示を別途してもいいかもしれないんですけれども、通常は0.4 ppmで流通しているのは問題ないんだという形で私どもは理解しているというところです。
姫田(農林水産省)
それについてどなたか、私どもで答えるよりもむしろどなたか消費者団体の方とかからご意見をいただいた方がいいかと思うんですが、ございませんか。どうぞお願いいたします。
和田(消費者)
あくまで個人的な思いつきのようなことです。数年前にカドミウムのことで団体で話をしたときに、そういうカドミウムについてのある意味でのセールスポイントとしての表示という話がちょっと出たことがあるんです。そのときの集まっていた会員の人たちの反響は、まだカドミウムについてみんなが十分に理解していないときに、一部の者だけがカドミウムについて、例えば低いという表示、きょうこれだけ情報を出されていてもなかなかわからないことがありますし、私も会員の人たちにどうやって話そうかと思って、本当に難しいなと思っているところですので、今ちょっと不用意にカドミウムについての、しかもプラスの情報ですよね、例えばここまでなんだけれども、これはもうちょっと低いですといった情報は、消費者としては問題が生じるおそれがあるんじゃないかなと思っております。
姫田(農林水産省)
どなたか、例えば流通の方で、そういう表示をもしした場合どんなことが起こるんだろうかといったことで、ご意見はないですか。
原(消費者)
私どもは今のところ直接お米を扱っていませんけれども、私どもの会員生協の方でお米を実際に扱っているということもありますので、ちょっとコメントさせていただきますけれども、お米に対してそういう表示をするということよりも、生産者なりのところできちんと検査を定期的にやって、より低いカドミウムレベルを目指しているということを生産者と消費者の間の信頼としてつくっていただく方がベターなのではないかと思います。
というのは、表示を一部のものだけにしますと、先ほどちょっと和田さんの方からご発言がありましたけれども、BSEで検査済みというのがありましたね。それと同じように、では表示していないものは高いのかという話にもなっていきますので、表示というのは余り現実的な対応ではないと思いますし、また表示されるような大きなロットのまざってしまうようなお米に関しては、それは検査すれば低いのが出ていくんだろうと思いますし、問題になるのは、先ほどもちょっと申し上げましたけれども、自家産米なり縁故米なり、あるいは特定の農家から直売されているところということになりますので、むしろ、先ほどちょっと生産者の方からご発言がありましたけれども、私たちはこのように低減に努力して、水の管理などもやれるところはやって努力して、現時点ではこういうことですというのを場合によってはホームページなり何なりで情報としてまとめて開示していただくような、私どもの会員の生協の方でも、定期的に検査をやって、お米についてはこういうデータでしたというのをきちんと出しているような生協もございます。そういうやり方の方が結果としてはいいんじゃないかなと思います。
姫田(農林水産省)
ありがとうございました。
細田課長、お願いいたします。
細田(農林水産省)
今の話も出たので、栽培全体についてなんですけれども、お米だけではないんですけれども、私どもも、4月にこういうリスクコミュニケーションをやらせていただいたんですけれども、GAPと称するもの、Good Agricultural Practiceという形で、適正農業規範と言っているんですけれども、そういうものをこれから振興していこう、広めていこうと思っています。
その中には、いろいろな微生物汚染の問題あたりが先行的になるんですけれども、あるいは農薬の問題、農薬を記帳することも含めて、そのようなことも入りますし、それからこういう非意図的に入ります重金属についても、先ほどからの水対策などのいろいろな対策技術論などもそういうGAPの中にチェックリストとして盛り込んで、全体で例えばお米の安心・安全生産のための実践マニュアル的なものをつくって、それを各農業者の方に実践していただいて、かつそれをある種の形で私のところはそういう形でやっているんだ、安心・安全なものをつくっているんだという形の仕組みの導入みたいなことをこれからも積極的にやっていこうと思っていますので、ご紹介までしておきたいと思います。
姫田(農林水産省)
時間がそろそろ来ておりますが、ほかにございませんでしょうか。では、そちらの方、それからそちらということで。
門傳(生産者)
全国農協青年組織協議会の門傳です。今ちょっとお話がありましたが、私が一番恐れているのは、まさに科学的知見に基づいてコーデックスの0.4 ppmで合意されたということがきちんとあるわけですけれども、例えばどこかの流通業者であるとか、どこかの都道府県が、「いや、うちは0.4 ppmではなくて、0.3 ppmとか0.2 ppmで」といってしまった場合です。正直、これが一番怖いんです。
きょうお集まりの皆さんは当然カドミウムに関心があるからお集まりになったと思うんですけれども、そういう余りにも過度な要求というんですか、例えばそれが法的にどうなのかは知りませんけれども、そういったことが商取引上要求された場合というのは非常に困る部分がありますので、こういったことはリスクコミュニケーションからすると非常に不幸なことになりかねませんので、そういったことがないような、それは法で縛るのか、行政指導なのか、どういう手段が果たしてあるのかは知りませんけれども、万が一にもそういうことがあった場合には、適正なる指導をぜひお願いしたいと思っております。
亘(消費者)
答えになるようなことではないと思いますが、最近、こういった会合だけではなくて、小さな末端の消費者団体の会合におきましても、先ほどからも出ている風評被害、風評被害という言葉が頻繁に出ております。何か消費者が風評被害の元凶であるかのようなイメージを抱かせられまして、私、消費者といたしましても、ここにいらっしゃる方々は生産者であると同時に消費者でもあるわけなんですが、国民消費者としては大変困惑いたしております。
風評被害というのは本来は、でたらめなうそっぱちを意図的、故意に流して、そのうその情報で詐欺的にお金をもうけるという犯罪性をはらんでいることが風評被害の定義と私は思いますので、ぜひともこういう言葉は慎重にお使いいただきたいな、と今日しみじみ思いました。そして、こういった問題が出てまいりましたのも、非常に新しい問題で、コイヘルペスにしても、BSEにしても、世界規模の大きな問題ですので、私たち消費者もそうですし、生産者の方もそうだと思うんです、行政の方もそうだと思いますが、大変クリエイティブな課題を私たちは突きつけられているんだな、これをどうやったら乗り越えられるのかなと、これは意見とは言えないんですけれども、私は今そんな感想を持って、発言させていただきました。
今井(消費者)
今までの議論を伺っておりまして、私は消費者として、個人的な希望になるかもしれませんけれども、私もやはり0.2 ppmを限りなく望みます。ただ、現状からすると、この0.4 ppmというのもやむを得ないのかなと思うところはあります。だから、理解はするのですけれども、限りなく0.2 ppmに近く持っていってほしいなというのが希望なんです。土壌汚染というのも、今の汚染はこの値ですけれども、汚染するからには何年かかかるわけですから、この値が今後ともこのまま維持できるとは限りませんし。もしかしたらまたもう少し高くなるかもしれない。そんなことも踏まえて、こういった情報をどんどん提供していくこと、そして必ず定期的に持続して情報を提供していくということがすごく大切なことなのではないかなと思って伺っておりましたので、その辺、今後ともよろしくお願いしたいと思います。
姫田(農林水産省)
どうもありがとうございます。
では、そちらの方。
和田(消費者)
たびたびすみません。私も、将来に向かっては、できるだけ0.4 ppmでストップしないようにということをお願いしておきたいと思います。それと、くどいんですけれども、0.4 ppmをオーバーして工業用ののりなり何なりになるものの流通というのは、絶対に食料のお米とまじる心配がないのか。大分前ですけれども、何かで普通に流通するはずのないお米は、初めから色をつけて、絶対にまざらないという区別をした――何の汚染のときだったかは覚えていないんですけれども、そのようなことがあったような気がするんです。例えば、去年のように非常に作況指数が悪いようなときを考えると、本当に大丈夫なのかなという気がするものですから、その点、だめ押しをしておきたいと思います。
姫田(農林水産省)
それでは、少し今の件についてよろしくお願いします。
新本(農林水産省)
0.4 ppm超えの米につきましてはきちんと仕分けして管理していますので、それが横流れするという心配は全くございません。
姫田(農林水産省)
という力強い答えで終わりたいと思います。
それでは、お時間もまいりましたので、また、先ほどご意見もありましたように、これで終わったわけではないということをお約束したいと思っております。またいろいろな機会でカドミウムについてのリスクコミュニケーションを行ってまいりたいと思いますし、この後もそれぞれのいろいろなハザードごとにリスクコミュニケーションをどんどん進めてまいりたいと思いますので、よろしくご参加をお願いします。
それでは、最後になりましたが、お礼のあいさつを兼ねて、消費・安全局の審議官の岡島の方から一言。
岡島(農林水産省)
本日は長時間にわたりまして大変ご熱心なご議論をいただきまして、ありがとうございました。いろいろなご意見をちょうだいいたしましたので、私ども、少しでもいい形になるようにいろいろな形で努力していきたいと思います。本日はどうもありがとうございました。
午後4時40分 閉会
お問合せ先
消費・安全局農産安全管理課
担当者:土壌汚染防止班
代表:03-3502-8111(内線4507)
ダイヤルイン:03-3592-0306