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農林水産省

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汚染物質の国際的リスク管理手法についての意見交換会(平成15年11月19日)

議事概要 

日時 ・ 場所 : 平成15年11月19日(水曜日)13時30分~15時00分    農林水産省共用C・D会議室
出席者 : 別紙のとおり。
配付資料 : 「汚染物質のリスク管理に関する国際的な考え方」(別紙2)
議 事 : 配付資料「汚染物質のリスク管理に関する国際的な考え方」に沿って、消費・安全局総務課朝倉食品安全危機管理官から説明した後、質疑応答が行われた。
        

質疑応答の概要(14時15分~15時00分)


(Q)
適性な基準値は、その国の飲食量等により異なるので、コーデックスで決まった基準値がその国の実情に合わない場合もあるのではないか。このような場合、オブザーバーが押し掛けて異議申し立てをすることは可能か。

(A)
食品の消費形態、飲食量、汚染実態は国により異なりますが、その違いを考慮して1つの基準を設定しています。しかし、仮に、ある国でたくさん食べる食品があったとして、その国の事情に合わせて低い基準値を設定してしまうと、他の大部分の国では対応できなくなります。

また、コーデックスは裁判所ではなく勧告をする組織なので、異議申し立てはそぐいません。基準値を低く設定したいのであれば、基準値を決める会合の場で他国を説得する必要があります。さらに、WTOのSPS協定ではコーデックスの基準値より厳しい基準値を必要に応じて設定できますが、その場合には、当該基準値の科学的正当性を示し、当該基準値を設定することが国際貿易に係る不当な障害には当たらないことを証明する必要があります。


(Q)
基準の設定に当たっては、国による差を考慮するということだが、設定される基準値は1本である。国による差はどのように考慮されているのか。

(A)
コーデックスは、消費者の健康の保護と食品貿易の公正化を図ることを目的に、世界共通の基準を設定しています。また、WTOのルールによれば、加盟国はコーデックスの基準に従わなければなりません。但し、ある国において、例えば、他国より米をたくさん食べるなどの事情がある場合には、科学的に正当な理由を示せば、この基準より低い基準値を設定することができます。


(Q)
コーデックスの基準値より低く設定したい場合は科学的立証が必要ということだが、現時点で可能な科学的立証のみを対象とすることについて、予防原則の観点から問題はないのか。緩い基準値を設定することによる危険性を完全には否定できない場合は、厳しい基準値とするための科学的立証が現時点では無理であったとしても、予防的に厳しい基準値を設定すべきではないのか。

(A)
科学的な不確実性がある場合、予防的措置-英語のprecaution-をとることには合意があります。
 「予防原則」という用語は、外務省が欧州連合におけるprecautionary prencipleを「予防原則」と訳したのですが、日本においては混乱があり、意味が2つあるようです。漢字の意味から予防のための原則、つまり英語のpreventionのための原則と思われていることが多いのですが、この意味でなら、もともとリスク分析は予防(prevention)を目的とするものです。  欧州連合はprecautionary principleを適用するためのルールを決定しています。それによると、precautionary principleとは、

[1]健康への悪影響があることがわかっている
[2]リスク評価をした結果、科学データが不充分であると判断された条件のときに適用する便宜的な措置で、欠けていたデータが入手された時点でもう一度リスク評価

を行い、措置を継続するかどうかを決定するというものです。
つまり、「危険かもしれないから、念のため、基準値を低く設定しておく」というのは、欧州連合におけるprecautionary principleとは異なります。


(Q)
「汚染物質」の範囲を教えてほしい。水産物は含まれるのか。「ALARAの原則」が適用される前提条件の一つとして、「適切な技術や手段の適用によって汚染しないように生産されていること」(資料P15)が挙げられているが、一次産品の場合に散布される農薬は、この条件に抵触しないのか。

(A)
ここでいう「汚染物質」とは、正確に言うと「環境汚染物質」です。添加物や農薬のように意図的に加えるものは、その段階をリスク管理すればよいので、汚染物質とは別に一般規格を定めています。これに対して、カビ毒やダイオキシンを含む環境汚染物質のように、意図しなくても勝手に混入するものについては、汚染物質の一般規格で定めています。また、今回は農林水産物を中心に説明しましたが、加工食品に関するもの、例えば、缶に使うブリキによる食品のスズ汚染は、この規格で定めています。もちろん水産物に関するものも含まれます。 

補足して、コーデックスにおける「汚染物質」の定義を紹介すると、「食品に意図的に加えられるものではないが、生産、加工、調製、処理、包装、輸送、貯蔵などの結果として、または環境からの汚染の結果として食品中に存在する物質」となっています。また、昆虫の断片等の異物は含まないとしています。

この定義からすると、カビ毒や重金属は汚染物質ですが、農薬や食品添加物のように食品の生産・製造時に意図的に加えられるものは汚染物質ではありません。また、最近注意をひいているものとして、元々食品中に含まれる物質から、加工の過程で毒性を示す物質になる場合、すなわち、アクリルアミド、クロロプロパノール等も汚染物質に含まれます。


(Q)
合理的に達成可能な範囲でできる限り低く基準値を設定するというのが「ALARAの原則」だと思うが、日本でも容器包装規格などには「ALARAの原則」が適用されるのか。

(A)
食品衛生法に基づく規格基準は、器具・容器包装も含め消費者の健康の保護を念頭において決めております。


(Q)
カビ毒のリスク管理の検討に当たり、食べ合わせや複合汚染についても考慮されるのか。

(A)
カビ毒のリスク管理に当たっては、物質ごとの性質を踏まえた毒性の評価が行われます。生産規範では複数のカビ毒を考慮し、基準値は個々の食品・物質ごとに設定しています。


(Q)
説明の中で、パツリンについては、遺伝毒性はあるが、発ガン性も生殖毒性もないと言っていたと思うが、それでよいか。また、遺伝毒性がある場合は微量でも生殖細胞に働き、数世代後にならないと健康への影響評価がでないといわれている。そのため、ADI(許容一日摂取量)やPTDI(暫定耐容一日摂取量)は決められないということなのに、この場合は決定されている。これはどういうことか。

(A)
JECFAの評価結果によれば、パツリンについては、遺伝毒性はあるが、生殖毒性や発ガン性を示す報告はないということです。また、パツリンについても、オクラトキシンAについても、無作用量を設定できるとの評価結果があります。


(Q)
オクラトキシンAは腎臓の癌に関係があるらしいが、リスク評価に当たっては、生で食べた場合と煮て食べた場合の両方を考慮しているのか。

(A)
摂取量の評価は生で食べた場合を想定していますが、例えば、小麦を粉にしてビスケットにした場合についても考慮されています。


(Q)
オクラトキシンAの基準値は、穀類を粉にして食べた場合の摂取量を基に設定しているのか。

(A)
あくまで粒の状態での基準値です。  補足すると、コーデックスにおける議論は、穀類そのものとその加工品の両方をカバーしています。数値についてだけでなく、加工品をカバーすべきかについても合意は得られておらず、合意に向けた取組が実施されています。


(Q)
ヨーロッパでは、遺伝子組換え作物は、人の健康に悪影響がないと考えられているのか。

(A)
EUのドキュメントによると、人の健康に悪影響があると結論できる証拠はないとされています。なお、環境への影響を考慮することの重要性については、随所に記述があります。


(Q)
今後の政策の検討に当たり、言葉の定義を明確にする必要があるのではないか。既に他の審議会や調査会でのことではあるが、本来同じ意味であるはずの「SRM」と「特定危険部位」が、科学用語と行政用語で定義が異なったため、議論が混乱した事例がある。

(A)
厚生労働省等他省とも連携を図りながら、取り組んでいきます。


(Q)
コーデックスの活動に対して誤解があるのは、政府のコーデックスへの取り組み不足にも一因がある。他の国では、対処方針等の検討や情報収集について、事前に消費者も含めた全ての関係者とコミュニケーションを諮ってから会合に臨んでおり、制度運用としても確立されている。これまで日本はそのことを十分に行ってこなかったから、自国の実情等も結果に反映できなかったのではないか。

(A)
この問題の重要性は十分認識しており、来年3月のCCFAC開催に際して、本日のような意見交換会を予定しています。是非ご参加ください。


(Q)
コイヘルペスについて、リスク評価はどういう形でやっているのか。テレビなどでは、人には安全といわれているが、根拠が示されておらず不安。

(A)
コイヘルペスはコイに特異な病気であり人には感染しないという専門家の知見に基づき、判断しています。
また、この病気がまん延することのないよう、各県とも連携しながら対策をとっているところです。これから気温が下がるとこのウイルスは鎮静化すると見込まれますが、春以降爆発的にまん延することのないよう対策を講じるとともに、本病に感染していないことを確認したコイのみ放流するなどの対応をしています。

お問合せ先

消費・安全局農産安全管理課

担当者:土壌汚染防止班
代表:03-3502-8111(内線4507)
ダイヤルイン:03-3592-0306