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農林水産省

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「科学的に信頼できるデータ」とは?

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平成22年12月21日更新

信頼できるデータは、食品の規格・基準への適合性の評価だけでなく、危害要因の残留基準の設定や摂取量の推定など、リスクアナリシスに基づく適切な行政判断を行うために必須のものです。食品の安全確保は科学的知見に基づいて講じることが国際的な共通認識になっており、そのためにも信頼できるデータが必要となります。

「科学的に信頼できる食品の分析データ」とは?

公的な研究所や試験所が出したデータや有名な大学教授が発表したデータ、これらは一見信頼性が高いように見えますが、権威に基づく主観的な感覚によるものであり、地位や名称は客観的にデータの信頼性を保証するものではありません。しかし、日本では行政や学会等でも、分析値の信頼性について十分に考慮されていない事例がしばしば見られます。 

 

食品安全行政では、リスクアナリシス(リスク分析)に活用するために、サーベイランスやモニタリングによる食品中の有害化学物質や微生物の含有実態に関する分析データ、政策の基礎になる分析データ、さらにはコーデックス基準の作成に資するための分析データなど、数多くのデータを取得する必要があります。国際的には、これらの政策決定の基礎となる重要なデータ作成のための分析を行う際には、試験所や検査所が認定・認証を受けたり、分析の精度管理を実施したり、分析法の妥当性を確認するなどの、分析値の信頼性を客観的に保証するためのシステムを導入していることが当然のこととされています。

 

また、信頼性が高い分析機関で分析を行うだけでなく、そもそも目的とする対象食品を代表する分析値が得られるような適切なサンプリングを行うことが前提となります。基準値が低濃度であったり、食品中の含有濃度が低かったり、不均質性が高い試料の場合には、より多くの試料を採取することが必要です。

 

なぜ科学的に信頼できる分析データが必要なのか?

不適切なサンプリングや分析法による信頼性の低いデータを用いた場合には、どのような不都合があり得るでしょうか? 例えば以下のようなことが考えられます。

 

  • ある食品中の化学物質の濃度の分析結果が、N.D.(不検出)と報告されていたとしても、分析法の検出限界(これ以上低い濃度では検出できない限界の濃度のこと)が、対象とした化学物質の予想濃度範囲よりも高い場合には、リスクを適切に推定できない可能性があります。

 

  • 残留基準値など基準への適合性を評価する際に、真値よりも大きな分析値が報告された場合には、本当は残留基準に適合しているのに食品を廃棄することになり、生産者や製造者に損害が生じる可能性があります。また、真値よりも小さい分析値が報告された場合には、適切に管理されず基準に適合していない可能性がある食品が流通することになり、最悪の場合には消費者に健康被害が生じる可能性もあります。さらに、サンプリングする試料の数が少ないときにも、基準に適合しない食品を市場に流通させてしまう可能性があります。

 

  • 食品の輸出入において、輸出国側が輸出前にチェックした分析値と輸入国側が検疫時に検査した分析値が異なるなど見解に相違がある場合、貿易問題に発展する可能性がありますが、双方の分析値の信頼性が問題になります。

 

  • 法令に基づいて取り締まりを行う規制行政では、分析日や試験所によって結果が大きく異なると、その都度判断が異なることになります。そのため、いつでも、どこでも、一定の技能をもった試験者が分析した場合には、許容できる範囲内の不確かさをもつ分析値が得られることが確認された適切な分析法を採用する必要があります。

 

  • ある危害要因についてどれくらいのリスクがあるのか推定するためには、危害要因の摂取量に関する情報はとても重要です。摂取量推定に用いた食品中の含有濃度データの信頼性が低い場合には、結果としてリスクを過小に評価したり、過大に評価したりすることになります。

 

リスクの程度に応じたリスク管理措置や対策を立案・実施し、不要なコストをかけずに食品の安全性を向上させ、国内外で円滑に食品の流通を行うためにも、行政機関や食品事業者は、統計学的に適切なサンプリングを実施し、信頼性を客観的に保証できるシステムや体制が整った試験所で分析値を得て、信頼できる科学的データに基づいて行動することが重要です。