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農林水産省

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食品中の硝酸塩に関する基礎情報

硝酸塩について

  • 硝酸塩は、土壌を含む自然界に広く分布しています。植物は、窒素を硝酸塩やアンモニウム塩の形で根から吸収し、これと炭水化物からアミノ酸やタンパク質を合成します。
  • 吸収される硝酸塩などの量が多すぎたり、日光が十分に当たらなかったりすると、吸収された硝酸塩などがアミノ酸、タンパク質に合成されないで、植物体中に貯まると言われています。

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土壌、肥料由来の窒素と作物体中の窒素の代謝について

  1. 土壌中にある窒素肥料や土壌有機物等由来のアンモニウムイオン(NH4+)は、一部の植物に吸収されるものの、野菜類では、土壌中の細菌により、酸化されて硝酸イオン(NO3-)になったものが主に吸収されます。
  2. 作物に吸収されなかった硝酸イオンは、アンモニウムイオンに比べて土壌に吸着されにくく、そのため雨などが降ると、地下水等に流れ出すこともあります。また、条件によっては窒素N2となって大気中に放出されることもあります。
  3. 植物は、吸収した硝酸イオンまたはアンモニウムイオンと、光合成により生成された炭水化物からアミノ酸やタンパク質を合成します。動物はこのタンパク質を食物として取り入れ、これを分解して尿素、尿酸の形で窒素を排出します。
  4. この排泄物や生物の死体は微生物によって分解され、アンモニア(アンモニウムイオン)となり、そのまま植物に吸収されたり、再び細菌の働きで硝酸イオンとなって植物に吸収されます。
  5. このように、硝酸イオンは、土壌を含む自然界に広く分布しており、植物や微生物等には重要な窒素源となっています。
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硝酸塩の健康への影響について

  • 硝酸塩は、通常摂取する程度では、それ自体は特に人体に有害なものではありません。しかし、ヒトの体内で還元され亜硝酸塩に変化すると、メトヘモグロビン血症や発ガン性物質であるニトロソ化合物の生成に関与するおそれがあるということが一部で指摘されています。
  • しかし、生体内における硝酸塩から亜硝酸塩への転換のメカニズムは複雑です。食物に含まれる硝酸塩が転換されるばかりでなく、生体内の他の窒素含有化合物(アンモニア、ヒドロキシアミンなど)が酸化されて硝酸、亜硝酸塩が生成されることなどから、食物由来の硝酸塩のうちどのくらいの量が亜硝酸塩に転換するのかは、はっきりとしていません。
  • また、硝酸塩の摂取と発がんについての研究も各国で実施されているところですが、FAO/WHO合同食品添加物専門家会合(JECFA)※1は、硝酸塩の摂取と発がんリスクとの間に関連があるという証拠にはならないと言っています。
※1 国連食糧農業機関(FAO)と世界保健機関(WHO)が合同で運営しています。添加物、汚染物質について科学的データに基づくリスク評価を行っています。

硝酸塩の体内での代謝について

大人の場合

  • ヒトが水や食品を介して摂取した硝酸塩は、主に消化管上部から吸収され、血液に移行し、一部が唾液中に分泌され、大部分は腎臓を通じて尿中に排泄されます。
  • 健康な大人の場合、空腹時のように胃内pHが1~2と低い場合は、微生物がほとんど存在せず、微生物による還元が起きないと考えられていますが、食品が胃内にある場合などpHが上昇した場合は、亜硝酸の生成が認められたとの報告があります。
  • 唾液中に分泌された硝酸塩の一部(4~7%との報告あり。)は、口腔内の微生物により、還元されて亜硝酸塩になります。
  • 亜硝酸塩の一部は、 ニトロソ化合物※1の生成に関与しているとされています。

乳児の場合

  • 生後3か月未満の乳児は、胃酸をほとんど分泌しないため、胃内で微生物による硝酸塩が還元され、亜硝酸が生成することが知られています。
(参考)ニトロソ化合物
ニトロソ化合物の特徴は、N-N=Oという構造をもっていることです。二級アミンまたは二級アミドと亜硝酸イオンが化学反応を起こし、ニトロソ化合物になります。環境中にも多く存在するほか、たばこにも多く含まれています。 なお、我が国では、亜硝酸塩については、亜硝酸ナトリウムとして、食肉製品、鯨肉ベーコン、魚肉ソーセージ、魚肉ハム、いくら、すじこ及びたらこに対する発色剤として、使用が認められています。
(注1)Nは窒素、Oは酸素、-は一重結合、=は二重結合を示しています。
(注2)アンモニアの水素原子二つを、炭化水素を含む基 R 、R′で置換した化合物。一般式 RR′-NH
(注3)アンモニアの水素原子二つを、アシル基R-COで置換してできた化合物の総称

(参考)乳児のメトヘモグロビン血症(いわゆるブルーベビー症候群)
メトヘモグロビン血症については、海外において過去に生後3か月未満の乳児で発生した事例が知られています。これは、3か月未満の乳児は、胃酸の分泌が少なく、胃内のpHが高いため、胃内で硝酸塩から亜硝酸塩が生成され、これが血液中のヘモグロビンと結合して、メトヘモグロビン血症を引き起こすためであると言われています。我が国のように生後5~6か月から離乳を開始する場合には、胃内で亜硝酸が生ずる可能性は低いため、このような事例が生じるおそれは極めて少ないと考えられています。

(参考)生体内でのニトロソ化合物の生成と胃がんとの関係
生体内で、硝酸塩から発ガン物質であるニトロソ化合物の生成の可能性があることから、胃がんと硝酸塩(または亜硝酸塩)の摂取の関係についていろいろな研究がされています。
胃がんと硝酸塩の関係については、関係があるとする研究もありますし、関係が認められないとする研究もあります。大部分の研究は結論が出ていませんし、むしろ硝酸塩の摂取量が増えると、胃がんの発生率が低くなるという逆の相関を示す研究結果もあります。

一般的に、がんについての疫学研究は、胃がんの原因要素がさまざまにあることや、発病する場合でも、摂取してから、発病するまで時間がかかることから、結果が得にくいようです。

野菜は硝酸塩の主要な摂取源ではありますが、ビタミンCなどの保護因子も含むため、野菜を大量に摂った場合には、それに含まれる硝酸塩と同じ量の硝酸塩を添加物等として摂取した場合に比べて、胃がんのリスクは低くなると思われます。

家庭でできること

  • ほうれんそうなどの野菜に含まれる硝酸塩は、ゆでるなどの調理により、減少することがわかっています。調理法を工夫することにより、硝酸塩の摂取量をご家庭で減らすことが可能です。
  • 野菜は、ビタミン、ミネラル、食物繊維等の供給源として、大変重要な役割を担っています。一方で、野菜も偏った食べ方をすると健康に負の影響を及ぼすと考えられます。したがって、健康のためには、数多くの野菜をその生理機能を意識し、バランスよく摂取することが重要です。

お問合せ先

消費・安全局農産安全管理課

担当者:土壌汚染防止班
代表:03-3502-8111(内線4507)
ダイヤルイン:03-3592-0306
FAX:03-3580-8592

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