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国際機関のその他の取組

更新日:2018年11月28日

国連食糧農業機関(FAO)、世界保健機関(WHO)が中心となり、脂質及び脂肪酸に関して、食品からの摂取目標量の設定や栄養表示について議論しており、トランス脂肪酸も検討の対象です。以下に、その概要をお知らせします。なお、近年の主要な取組については、こちらにも掲載しています。

コーデックス委員会(FAO/WHO合同食品規格委員会)

食品表示部会及び栄養・特殊用途食品部会

コーデックス委員会では、食品表示部会(CCFL)と栄養・特殊用途食品部会(CCNFSDU)の2つの部会が、コーデックスの栄養表示ガイドライン(CAC/GL 2-1985)に関連して、トランス脂肪酸の表示についての検討を進めています。
第26回総会(CAC)(2003年7月)では、脂質に関する強調表示の方法について、栄養表示ガイドラインを改訂しました。この改訂で、脂肪酸の種類及びその含有量、またはコレステロールの含有量に関して強調表示をする際には、飽和脂肪酸、一価不飽和脂肪酸及び多価不飽和脂肪酸並びにコレステロールの含有量を表示することを義務付けました。一方、トランス脂肪酸の含有量表示が必要な場合については、各国の規制に委ねることとなりました。

第29回総会(2006年7月)では、栄養表示ガイドライン及びその他の関連するコーデックス文書におけるトランス脂肪酸の定義として、同ガイドライン(CAC/GL 2-1985)に以下を追加しました。

少なくとも1つ以上のメチレン基で隔てられたトランス型の非共役炭素-炭素二重結合を持つ単価不飽和脂肪酸及び多価不飽和脂肪酸の全ての幾何異性体

(第39回CCFL(2011年5月)では、トランス脂肪酸の由来や最新の科学的知見を考慮したトランス脂肪酸の定義の見直しについて、CCNFSDUに意見を求めることを合意しました。これを受けて、第33回CCNFSDU(2011年11月)では、議論の結果、新しい科学的知見が十分でないことから、現時点では定義を見直す必要はないとしました。)

近年は、CCFLとCCNFSDUが、2004年にWHOが策定した「食事、運動及び健康に関する世界的な戦略」〔外部リンク〕を実行するため、FAOとWHOが策定した行動計画案(CL 2006/44-CAC)に基づいて検討を進めています。この戦略では、「総脂質からのエネルギー摂取量に上限を設け、脂肪酸の摂取を飽和脂肪酸から不飽和脂肪酸に切り替えると共に、トランス脂肪酸を削減する」ことを推奨すべきとしています。また、「政府は、加工食品の食塩含有量、水素添加油脂の使用並びに飲料及び菓子類の糖類含有量の低減を推進するための追加的な措置を検討すべき」としています。

第34回総会(2011年7月)では、任意又は義務的に常に表示される栄養成分リストに関する栄養表示ガイドラインの改定案を最終採択し、常に表示する栄養成分のリストに飽和脂肪酸、ナトリウム及び総糖類を追加したほか、「トランス脂肪酸の摂取量が公衆衛生上の懸念である国においては、トランス脂肪酸の表示を検討すべきである」との記載を追加しました。

現在、CCFLにおいて、栄養及び健康強調表示の使用に関するガイドラインに関し、トランス脂肪酸の強調表示に関する記載の追加について検討しています。第40回CCFL(2012年5月)では、トランス脂肪酸を含まない(トランス脂肪酸フリー)旨の表示をする際の条件設定について、CCNFSDUに意見を求めることを合意しました。これに対し、CCNFSDUは検討を続けており、第38回CCNFSDU(2016年12月)では、トランス脂肪酸フリーと表示できる条件の案を、「脂質100 g当たりのトランス脂肪酸が1 g未満であり、かつ飽和脂肪酸濃度が低いこと」としました。また、この濃度のトランス脂肪酸を分析可能であるかをCCMASに諮問し、その答申によってこの条件を検討することを合意しました。

コーデックス委員会の個別食品規格におけるトランス脂肪酸

コーデックス委員会が策定した食品規格のうち、トランス脂肪酸に関する規定を含むものは以下の通りです。

  • オリーブオイル及びオリーブポマースオイルのコーデックス規格(CXS 33-1981)
    • 脂肪酸組成の規定の中で、総脂肪酸に対するトランス脂肪酸の割合を定めています。
    • 乳児用調製乳及び乳児用特殊医療用調製乳のコーデックス規格(CXS 72-1981)
      • トランス脂肪酸の濃度は、総脂肪酸の3%を超えてはならないとしています。

    食事、栄養及び慢性疾患予防に関するWHO/FAO合同専門家会合

    2002年に開催された「食事、栄養及び慢性疾患予防に関するWHO/FAO合同専門家会合」は、生活習慣病を防ぐために食事からとる栄養素の量の目標(下表)を盛り込んだ報告書を2003年に公表しました。

    トランス脂肪酸については、冠動脈性心疾患のリスクを増やすとの確実な科学的根拠があるとして、とる量を総エネルギー摂取量の1%に相当する量よりも少なくすることを目標としました。

    WHOは、上記の専門家会合の報告書を受け、トランス脂肪酸の低減を含む「食事、運動及び健康に関する世界的な戦略」を第57回総会(2004年)で採択しました。

    栄養素の摂取目標(脂質に関する部分の抜粋)

    栄養素
    目標(%は、総エネルギー摂取量に対する割合)
    総脂質 15-30%
    飽和脂肪酸
    10%未満
    多価不飽和脂肪酸
    6-10%
    n-6系多価不飽和脂肪酸
    5-8%
    n-3系多価不飽和脂肪酸
    1-2%
    トランス脂肪酸
    1%未満
    一価不飽和脂肪酸
    総脂質 -(飽和脂肪酸+多価不飽和脂肪酸+トランス脂肪酸)
    コレステロール 300 mg/日未満

    (注)これらは世界的な目標値であり、対象となる集団の運動量や年齢、性別によっても目標値は変化します。日本では、厚生労働省が策定する日本人の食事摂取基準で、栄養素の摂取について目標量等を定めています。

    出典:食事、栄養、慢性疾患予防に関するWHO/FAO合同専門家会合報告書(英文)(WHO, 2003)〔外部リンク〕

    トランス脂肪酸に関するWHOの科学的知見

    WHOは「食事、運動及び健康に関する世界的な戦略」〔外部リンク〕に基づき、トランス脂肪酸に関する科学的知見を更新しました。この中では、トランス脂肪酸を代替することの実行可能性のほか、疫学的及び実験的な見地からのトランス脂肪酸の健康影響についても検討しました。2007年に開催された専門家会合で主要論文について評価を行い、次に掲げる6つの総説を作成しました。

    1.  General historical background of the work related to TFA and the Global Strategy. 
    2.  Health effects of TFA: Experimental and observational evidence. 
    3.  Quantitative effects on cardiovascular risk factors and coronary heart disease risk of replacing partially hydrogenated vegetable oils with other fats and oils. 
    4.  Feasibility of recommending certain replacement or alternative fats. 
    5.  Assessing approaches to removing TFA in the food supply in industrialized countries and in developing countries. 
    6.  Summary and conclusions of the Scientific Update.

    これらの総説は、次の科学雑誌に掲載されています(フリーアクセス)。

    European Journal of Clinical Nutrition, Volume 63, (Supplement 2), May 2009〔外部リンク〕

    この中の「6. Summary and conclusions of the Scientific Update」(概要及び結論)では、集団内の平均的なトランス脂肪酸摂取量を総エネルギー摂取量の1%に相当する量よりも少なくする現時点のWHOの勧告は、集団内のトランス脂肪酸摂取量の分布が十分に考慮されておらず、多量のトランス脂肪酸を摂取している人々の健康を保護する必要があるという事実を踏まえて、見直す必要があるかもしれないことが認められたと報告しています。

    出典:WHO Scientific Update on Trans Fatty Acids (TFA)(WHO, 2009)〔外部リンク〕

    人間栄養における脂質及び脂肪酸に関するFAO/WHO合同専門家会合

    FAOとWHOは、2008年11月に、脂質や脂肪酸の摂取量目標の更新に向け、科学的知見を再検討するための専門家会合を開催しました。この専門家会合は、脂質や脂肪酸について、特に新生児及び乳幼児の成長・発達における必須栄養素としての役割や、健康の維持及び非感染性疾患の予防との関連について検討し、2010年に暫定概要報告書を公表しました。この報告書では、総脂質及びトランス脂肪酸を含む各種脂肪酸の摂取と、疾患の発症などの主な健康影響との関連を、最新の科学的根拠の強さに応じて、「確実」、「おそらく確実」、「可能性あり」、「不十分」の4つに分類しました。概要は次の表のとおりです。

    なお、この専門家会合の報告書におけるトランス脂肪酸の定義は、「食品に含まれる主要なトランス脂肪酸であり、典型的には、部分水素添加された植物油に含まれる炭素数が18で炭素間の二重結合数が1の脂肪酸のトランス異性体」です。

      
     
    健康影響との関連
    証拠の強さ
    確実 おそらく確実 可能性あり 不十分
    総脂質   ・冠動脈性心疾患(CHD)の発症、致死性CHD、がん又はがんのサブタイプとは無関係   ・糖尿病、メタボリックシンドロームの因子、体重増加や肥満のリスクとなる
    飽和脂肪酸 <炭素数12~16>
    シス型不飽和脂肪酸と比べ、LDLコレステロール(LDL-C)及び総コレステロール/HDLコレステロール(HDL-C)比を上昇させる
    炭水化物と比べ、LDL-Cを上昇させるが総コレステロール/HDL-C比には影響しない
      ・糖尿病のリスクを上昇させる ・高血圧、体重増加や肥満のリスクとなる
    一価不飽和脂肪酸 ・飽和脂肪酸(炭素数12-16)と代替すると、LDL-C及び総コレステロール/HDL-C比を低下させる   ・メタボリックシンドロームの因子のリスクを低下させる ・糖尿病、体重増加や肥満、CHDの発症、がん又はがんのサブタイプのリスクとなる
    多価不飽和脂肪酸 ・飽和脂肪酸と代替すると、LDL-C及び総コレステロール/HDL-Cを低下させる
    リノール酸とα-リノレン酸は必須脂肪酸である
    飽和脂肪酸を多価不飽和脂肪酸で代替すると、CHD発症リスクを低下させる
      ・メタボリックシンドローム因子、糖尿病のリスクを低下させる
    特にトコフェノール摂取量が少ない場合、多く摂取すると脂質過酸化反応を活性化させる
    欠乏症予防のための個別の最低必要量は不明
    ・体重増加や肥満、糖尿病、がん又はがんのサブタイプのリスクとなる
    n-6系
    多価不飽和脂肪酸
    ・飽和脂肪酸と代替すると、LDL-C及び総コレステロール/HDL-C比を低下させる
    リノール酸は必須脂肪酸である
    ・メタボリックシンドローム因子、糖尿病のリスクを低下させる ・欠乏症予防のための最低必要量は不明 ・体重増加や肥満、糖尿病、がん又はがんのサブタイプのリスクとなる
    n-3系
    多価不飽和脂肪酸
    ・致死性CHDの発症リスクを低下させる(EPAとDHA)
    αリノレン酸は必須脂肪酸である
      ・CHDの発症や心臓発作のリスクを低下させる
    欠乏症予防のための最低必要量は不明
     
    トランス脂肪酸 ・飽和脂肪酸(炭素数12-16)やシス型不飽和脂肪酸と比べ、HDL-Cを減少させ、総コレステロール/HDL-C比を上昇させる
    CHDの発症リスクを上昇させる
    ・致死性CHD及び心臓性突然死のリスクを上昇させる
    メタボリックシンドローム因子や糖尿病のリスクを上昇させる
      ・体重増加や肥満、糖尿病、がん又はがんのサブタイプのリスクとなる

    また、上記の根拠に基づき、成人、乳幼児及び子どもの別に、食事からの栄養必要量についても勧告しました。トランス脂肪酸については、反すう動物由来と油脂の加工由来とを合わせた総トランス脂肪酸の摂取量を、エネルギー摂取量の1%相当の量よりも少なくすることを勧告しました。

    専門家会合は相当な時間を費やしてトランス脂肪酸について議論したと報告しています。ただし、議論の結果の大部分は、「トランス脂肪酸に関するWHOの最新の科学的知見」の6つの総説からの引用であるとも報告しました。

    出典:人間栄養における脂肪及び脂肪酸に関するFAO/WHO合同専門家会合(WHO, 2008)〔外部リンク〕

     

    第66回 国連総会 非感染性疾患の予防及び対策に関するハイレベル会合

    2011年9月、第66回国連総会において、非感染性疾患の予防及び対策に関するハイレベル会合が行われました。本会合では、特に経済発展途上において生じる課題、社会的又は経済的な影響に注目し、心臓発作、脳卒中、がんなどの非感染性疾患の予防と対策について議論し、非感染性疾患の現状や取り組むべき事項を示す政治宣言を採択しました。トランス脂肪酸については、以下の記載があります。

    • 既存の法律や国内政策を必要に応じて考慮しつつ、子ども向けの食品広告が広範に及ぶこと、脂質、糖分、塩分を多く含む食品について非常に多くのマーケティングが行われていること、テレビ広告が子どもの食品の嗜好、購買欲求、消費傾向に影響を与えることを認識した上で、飽和脂肪酸、トランス脂肪酸、遊離糖類、塩分を多く含む食品も含め、子ども向けの食品やノンアルコール飲料の販売に関するWHO の一連の勧告の実施を推進する。
    • 既存の法律や政策を考慮しつつ、不健康な食生活につながる食品の製造や販売促進活動の抑制も含め、食品に含まれる塩分、糖分、飽和脂肪酸を減らし、油脂の加工由来のトランス脂肪酸を低減するための費用対効果が高い方法について、必要に応じて開発を推進し、実施する。
    • 非感染性疾患の予防と管理を強化する観点から、手頃な価格で入手しやすく、表示基準に従って適切な栄養情報(糖分、塩分、脂質、トランス脂肪酸など)を表示したより健康的な食品を消費者に提供できるよう、健康的な食生活にふさわしい食品の生産や宣伝について、製品の製造方法の変更も含めて検討するよう必要に応じて事業者に呼びかける。

    出典:非伝染性疾患の予防及び対策に関する国連総会ハイレベル会合における政治的宣言 (国際連合, 2011)〔外部リンク〕

    お問合せ先

    消費・安全局食品安全政策課

    担当:化学物質管理班
    代表:03-3502-8111(内線4453)

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