トランス脂肪酸の分析結果のばらつきの程度
平成27年6月24日更新
米国油化学会(AOCS: American Oil Chemists' Society)は、第36回コーデックス委員会分析・サンプリング法部会で、最新の分析法であるAOCS Ce 1j-07(注1)について、複数の分析試験所が参加して、様々な食品に適用できるどうか検証試験をしたところ、同じ試料であっても異なる分析機関で測定した場合、食品の種類によっては分析結果が大きく相違した結果となり、このことはトランス脂肪酸の分析は、高度な分析技能を持った分析試験所でないと難しいことを意味すると報告しています。
(注1)油脂のメチルエステル化法としてAOCS Ce 2b-11又はAOCS Ce 2c-11を組み合わせて使用。
表1:トランス脂肪酸の分析結果のばらつきの程度例
(AOCS Ce 1j-07を用い、同じ試料を異なる9分析機関で分析した場合)
試験した試料
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総脂肪の分析値の
平均値(%) |
トランス脂肪酸の分析結果
|
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分析値の
平均値(%) |
標準偏差
|
室間再現精度(%)
|
||
乳脂肪(水分除去したもの)
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88.93
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5.11
|
0.67
|
13.14
|
獣脂
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95.21
|
7.14
|
0.30
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4.20
|
チョコレートケーキミックス
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10.34
|
0.90
|
0.07
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7.43
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チーズパウダー
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28.38
|
7.27
|
0.37
|
5.04
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乳児用調整粉乳(DHA/EPAを添加したもの)
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27.58
|
0.15
|
0.12
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78.48
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オートミールクッキー
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18.33
|
0.05
|
0.02
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44.84
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無糖練乳
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5.97
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0.33
|
0.05
|
15.89
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ピーナツバター
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51.69
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0.06
|
0.04
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75.73
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プレーンヨーグルト
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5.51
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0.32
|
0.03
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7.94
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バターブレンド
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67.76
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2.49
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0.43
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17.29
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全卵粉末
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38.47
|
0.43
|
0.06
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12.99
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大豆粉フレーク
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22.05
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0.02
|
0.01
|
73.10
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DHA/EPA
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53.66
|
0.68
|
0.23
|
33.82
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ランチドレッシング
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44.16
|
0.24
|
0.16
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65.50
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ポテトチップス
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28.69
|
7.20
|
0.14
|
62.69
|
冷凍チーズピザ
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7.66
|
0.37
|
0.07
|
18.70
|
また、現在、AOACインターナショナル、国際標準化機構(ISO)及び国際酪農連盟(IDF:International Dairy Federation)の3者が合同で、主として乳製品を対象とした新たなトランス脂肪酸分析法の規格策定を進めており、2015年末に発行される予定です。この分析法による分析結果のばらつきの程度は、次の表のとおりと報告されています。
表2:乳製品等中のトランス脂肪酸の分析結果のばらつきの程度例
(AOACI、ISO、IDFが合同で策定を進めている分析法。同じ試料を異なる11~18分析機関で分析した場合)
製品
|
使用した試料の脂肪含量
分析結果(%) |
|
トランス脂肪酸の分析結果 (g/製品100g)
|
|||
C18:1
trans |
C18:2
trans |
C18:3
trans |
総トランス脂肪酸
|
|||
乳製品
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3.5~100
|
試料の濃度範囲
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0.134–4.131
|
0.031–0.888
|
―
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0.167–5.056
|
併行精度%
|
2.9–5.3
|
2.7–10.5
|
―
|
2.8–3.7
|
||
室間再現精度%
|
6.8–9.9
|
29.0–36.7
|
―
|
8.7–11.2
|
||
乳児用調整粉乳
大人/小児用栄養製品(注2)
|
3.4~28.4
|
試料の濃度範囲
|
0.003–0.034
|
0.003–0.056
|
0.003–0.047
|
0.009–0.109
|
併行精度%
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5.7–13.4
|
6.9–9.8
|
5.7–26.8
|
5.4–16.6
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||
室間再現精度%
|
16.4–36.2
|
11.0–34.5
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28.5–72.9
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21.3–42.5
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(注2)牛乳、大豆、コメ、小麦、加水分解タンパク質、でんぷん、アミノ酸を組み合わせて原料に用い、乳脂肪と植物油脂のいずれか一方又は両者を含む製品。
併行精度:同じ分析試料を一つの分析試験所内で分析した場合のばらつきの程度を相対標準偏差で示した値
室間再現精度:同じ分析試料を異なる分析試験所内で分析した場合のばらつきの程度を相対標準偏差で示した値
(出典:第36回コーデックス委員会分析サンプリング法部会MAS/36 CRD/16(PDF:143KB))
トランス脂肪酸の分析を依頼する場合は、信頼できる分析機関に、妥当性確認された分析法を使用して測定してもらうことが重要となります。国際的には、ISO/IEC 17025の認定を取得し、適切な内部精度管理を行っており、さらに第3者機関による技能試験に参加し良好な成績であることが信頼できる分析機関の要件とされています。
関連情報
- 理化学分析の際に分析値の信頼性を証明するために行われている代表的な取組をご紹介します。分析機関に分析を依頼する場合には、これらの取組状況を確認することで、分析機関が報告するデータが信頼できるかどうかを評価することができます。
お問合せ先
消費・安全局食品安全政策課
担当:化学物質管理班
代表:03-3502-8111(内線4453)