7 情報通信技術等の活用による農業生産・流通現場のイノベーションの促進
(1)スマート農業の加速化など農業現場でのデジタル技術の利活用の推進
アスマート農業を実現するため、ロボット・AI・IoT等の先端技術を活用したスマート農業の生産現場における実証に取り組み、これまでに開発された先端技術の社会実装を推進します。
イ生産現場と産学官がスマート農業についての情報交流を行うプラットフォームを創設し、スマート農業技術の実証・導入・普及を推進するとともに、スマート農業技術の導入コスト削減のため、シェアリングやリースによる新たなサービスの創出が進むよう、必要な施策を検討・実施します。
ウ明確な開発目標の下で現場での実装までを視野に入れた技術開発を進めるとともに、先端技術を活用した高度なロボット農機等による新しい技術体系を創造するための研究開発等を実施します。
また、現場実装に際して安全上の課題解決が必要なロボット技術の安全性の検証やルールづくりに取り組みます。
エ関係府省協力の下、大学や民間企業等と連携して、農業データ連携基盤の機能を生産部分だけでなく、加工・流通・消費まで含めたフードチェーン全体に機能拡充するための研究開発に取り組むとともに、農林水産省が保有・収集するデータの実装を進めます。
オ「スマート農業プロジェクト」を立ち上げ、生産性や収益性の観点からも現場実装が進むよう、必要な施策を検討・実施します。
カ農業者と連携しデジタル技術の開発・普及に取り組む企業が活躍できる環境整備や、農産物の生産・流通・消費に至る様々なデータの連携による生産技術の改善、農村地域の多様なビジネス創出等を推進します。
(2)農業施策の展開におけるデジタル化の推進
ア農業現場と農林水産省が切れ目なくつながり、行政手続にかかる農業者等の負担を大幅に軽減し、経営に集中できるよう、法令や補助金等の手続をオンラインでできる農林水産省共通申請サービス(eMAFF)の構築や、これと併せて徹底した行政手続の簡素化の促進を行います。
イ農業者向けスマートフォンアプリ(MAFFアプリ)を開発し、eMAFFと連動しつつ、個々の農業者の属性・関心に応じた営農・政策情報を提供します。
ウ農業委員会、地域農業再生協議会、農業共済組合が保有する農地情報について、eMAFF、筆ポリゴン(農地区画情報)等による「デジタル地図」を用いた一元的管理やその効果的な活用方法を検討し、結論が得られたものから実行します。
エ農業現場における取組を含め、デジタル技術を活用した様々なプロジェクトを取りまとめ、デジタル技術の進展に合わせて随時プロジェクトを追加・修整しながら機動的に実行し、デジタル技術を活用し、自らの能力を存分に発揮して経営展開できる農業者が大宗を担う農業構造への転換を目指します。
(3)イノベーション創出・技術開発の推進
先端技術のみならず、現場のニーズに即した様々な課題に対応した研究開発を推進していくため、国主導で実施すべき重要な研究分野について、戦略的な研究開発を推進するとともに、異分野のアイデア・技術等を農林水産分野に導入し、革新的な技術・商品サービスを生み出す研究を支援します。
ア 研究開発の推進
研究開発を推進するため、重点事項や目標を定める「農林水産研究イノベーション戦略」を策定するとともに、内閣府の「戦略的イノベーション創造プログラム(SIP)」や「官民研究開発投資拡大プログラム(PRISM)」等を活用して研究開発を推進します。
また、Society5.0の実現に向け、産学官と農業の生産現場が一体となって、オープンイノベーションを促進するとともに、人材・知・資金が循環するよう農林水産業分野での更なるイノベーション創出を計画的・戦略的に推進します。
さらに、スマート農業等における研究開発の国際競争力の強化につながるよう、海外における我が国の位置付けを把握しながら、研究成果の海外展開を目指し技術シーズと海外におけるニーズとのマッチングや現地政府機関と連携した取組を推進します。その際、民間企業等の研究成果を確実に利益につなげていくため、知的財産の公開、秘匿、権利化を使い分け、戦略的に海外市場を獲得します。
イ 国際農林水産業研究の推進
国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構及び国立研究開発法人国際農林水産業研究センターにおいて、気候変動に伴う食料・水資源問題、越境性家畜伝染病の防疫等地球規模の課題に対応するため、海外研究機関等との積極的なMOU(研究協定覚書)の締結や拠点整備を推進します。
また、海外の農業研究機関や国際農業研究機関の優れた知見や技術を活用し、戦略的に国際共同研究を実施します。
ウ 科学に基づく食品安全、動物衛生、植物防疫等の施策に必要な研究の更なる推進
(ア)「レギュラトリーサイエンス研究推進計画」(平成27年6月策定)で明確化した取り組むべき調査研究の内容や課題について、その進捗状況の検証・見直しを行うとともに、所管法人、大学、民間企業、関係学会等への情報提供や研究機関との意見交換を行い、研究者の認識や理解の醸成とレギュラトリーサイエンスに属する研究の拡大を促進します。
(イ)研究開発部局と規制担当部局とが連携して食品中の危害要因の分析及び低減技術の開発、家畜の伝染性疾病を防除・低減する技術や資材の開発、植物病害虫等侵入及びまん延防止のための検査技術の開発や防除体系の確立等、リスク管理に必要な調査研究を推進します。
(ウ)レギュラトリーサイエンスに属する研究事業の成果を国民に分かりやすい形で公表します。
また、行政施策・措置とその検討・判断に活用された科学的根拠となる研究成果を紹介する機会を設け、レギュラトリーサイエンスへの理解の醸成を推進します
(エ)行政施策・措置の検討・判断に当たり、その科学的根拠となる優れた研究成果を挙げた研究者を表彰します。
エ 戦略的な研究開発を推進するための環境整備
(ア)「農林水産研究における知的財産に関する方針」(平成28年2月策定)を踏まえ、農林水産業・食品産業に関する研究に取り組む国立研究開発法人や都道府県の公設試験場等における知的財産マネジメントの強化を図るため、知的財産マネジメントに高度な専門的知識を有する専門家による指導・助言を行うとともに、平成30(2018)年度に作成した知的財産マネジメントに関するマニュアルの充実・普及を行います。
(イ)最先端技術の研究開発及び実用化に向けて、国民への分かりやすい情報発信、意見交換を行い、国民に受け入れられる環境づくりを進めます。特に、ゲノム編集技術等の育種利用は、飛躍的な生産性の向上等が期待される一方、国民的理解を得ていくことが重要であることから、より理解が深まるような方策を取り入れながらサイエンスコミュニケーション等の取組を強化します。
(ウ)我が国の「強み」である技術力を活かした新たな品種や技術の開発・普及を進め、かつ知的財産を総合的に活用することにより、日本各地で品質やブランド力等「強み」のある農畜産物を実需者と連携して生み出すため、「新品種・新技術の開発・保護・普及の方針」(平成25年12月策定)に基づく取組等を推進します。
a実需者や産地が参画したコンソーシアムを構築し、ニーズに対応した新品種の開発等の取組を推進します。
また、実需者等の多様なニーズに対応するため、従来の育種では困難だった収量性や品質等の形質の改良等を短期間で実現するスマート育種システムの開発を推進します。
b新品種やICT等の新技術等を活用した「強み」のある産地形成を図るため、実需者、生産者等が連携して新たな産地形成を行う取組を総合的に支援します。
また、実需者等とも連携した新品種・新技術の確立、種苗の機動的な供給体制の整備、農業機械のリース導入、産地基幹施設整備等の取組を支援します。
c海外遺伝資源を戦略的に確保するため、締約国として食料・農業植物遺伝資源条約の運営に必要な資金拠出を行うとともに、条約の機能を改善するための議論等に参画するほか、遺伝資源保有国における制度等の調査、遺伝資源の保全の促進、遺伝資源の取得・利用に関する手続・実績の確立とその活用に向けた周知活動等を実施します。
また、二国間共同研究による海外植物遺伝資源の特性情報の解明等を推進することにより、海外植物遺伝資源へのアクセス環境を整備します。
オ 開発技術の迅速な普及・定着
(ア)「橋渡し」機能の強化
a「知」の集積と活用の場による技術革新
(a)産学官を結び付ける研究開発プラットフォームづくりのため、産学官連携協議会において、ポスターセッション、セミナー、ワークショップ等を開催し、技術シーズ・ニーズに関する情報交換、意見交換を行います。
(b)研究開発プラットフォームから形成された研究開発コンソーシアムで行われる研究開発を国と民間企業等が、資金を出し合うマッチングファンド方式等により重点的に支援します。
b異分野融合研究の強化
工学・医学等異分野の技術を農林水産分野に導入・活用するための共同研究を進めるとともに、これまでの研究成果を社会実装につなげるための講演・セミナーの開催や試作物の展示等を行う機会を設けるなど、研究開発を推進します。
c研究開発・普及・生産現場の連携による技術開発・普及
(a)農林水産業・食品産業等におけるイノベーションにつながる革新的な技術の実用化に向けて、基礎から実用化段階までの研究開発を切れ目なく推進します。
(b)研究開発から産業化までを一貫して支援するため、大学、民間企業等の地域の関係者による技術開発から改良、開発実証試験までの取組を切れ目なく支援します。
(c)全国に配置されたコーディネーターが、技術開発ニーズ等を収集するとともに、マッチング支援や商品化・事業化に向けた支援等を行い、研究の企画段階から産学が密接に連携し、早期に成果を実現できるよう支援します。
(d)農業技術に関する近年の研究成果のうち、生産現場への導入が期待されるものを「最新農業技術・品種」として紹介します。
(イ)効果的・効率的な技術・知識の普及指導
国と都道府県が協同して、高度な技術・知識を持つ普及指導員を設置し、普及指導員が試験研究機関や民間企業等と連携して農業者に直接接して行う技術・経営指導等を推進します。これに当たって、普及指導員による新技術や新品種の導入等に係る地域の合意形成、新規就農者の支援、地球温暖化及び自然災害への対応等、公的機関が担うべき分野についての取組を強化します。
また、普及指導員に求められる役割を発揮し、農業・農村の課題に的確に対応するため、計画的に研修等を実施し、普及指導員の資質向上を推進します。
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