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農林水産省

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2 グローバルマーケットの戦略的な開拓


(1)農林水産物・食品の輸出促進

ア 輸出阻害要因の解消等による輸出環境の整備

(ア)「農林水産物及び食品の輸出の促進に関する法律」(令和元年法律第57号)に基づき、令和2(2020)年4月に農林水産省に創設した農林水産物・食品輸出本部の下で、輸出阻害要因に対応して輸出拡大を図る体制を強化し、同本部で作成した実行計画に従い、放射性物質や動植物検疫に関する輸入規制の緩和・撤廃を始めとした食品安全等の規制等に対する輸出先国との協議の加速化、国際基準や輸出先国の基準の策定プロセスへの戦略的な対応、輸出証明書発行・区域指定・施設認定の手続の一本化、輸出向けの施設整備と登録認定機関制度を活用した施設認定の迅速化、輸出手続の迅速化、意欲ある輸出事業者の支援、輸出証明書の申請・発行の一元化、輸出相談窓口の利便性向上、輸出先国の衛生基準や残留基準への対応強化等、貿易交渉による関税撤廃・削減を速やかに輸出拡大につなげるための環境整備を進めました。

(イ)東電福島第一原発事故を受けて、諸外国・地域において日本産食品に対する輸入規制が行われていることから、関係省庁が協力し、各種資料・データを提供しつつ輸入規制の緩和・撤廃に向けた働き掛けを実施しました。

(ウ)日本産食品等の安全性や魅力に関する情報を諸外国・地域に発信したほか、海外におけるプロモーション活動の実施により、日本産食品等の輸出回復に取り組みました。

(エ)我が国の実情に沿った国際基準の速やかな策定及び策定された国際基準の輸出先国での適切な実施を促進するため、国際機関の活動支援やアジア・太平洋地域の専門家の人材育成等を行いました。

(オ)輸出先となる事業者等から求められるHACCPを含む食品安全マネジメント規格、GAP(農業生産工程管理)等の認証取得を促進しました。また、国際的な取引にも通用する、コーデックス委員会が定めるHACCPをベースとしたJFS規格の仕組みを充実し、その国際標準化に向けた取組を支援しました。さらに、JFS規格及びASIAGAPの国内外への普及に向けた取組を推進しました。

(カ)ニーズに応じた専門家を産地に派遣し、輸出先国・地域の残留農薬基準や植物防疫条件を満たす栽培方法、選果等の技術的指導を行うなど、輸出に取り組もうとする産地を支援しました。

(キ)輸出先のニーズに対応したHACCP等の基準を満たすため、食品製造事業者等の施設の改修及び新設、機器の整備に対して支援しました。

(ク)加工食品については、食品製造業における輸出拡大に必要な施設・設備の整備、我が国の農林水産物を活用した海外のニーズに応える新商品の開発等により、輸出拡大を図りました。

(ケ)輸出植物解禁協議を迅速化するため、園地管理等の産地が取り組みやすい検疫措置の調査・実証を進めるとともに、国際基準の策定に向けて、害虫の殺虫効果に関するデータを蓄積して検疫処理技術を確立する取組を推進しました。

(コ)輸出先国の検疫条件に則した防除体系、栽培方法、選果等の技術を確立するためのサポート体制を整備するとともに、卸売市場や集荷地等での輸出検査を行うことにより、産地等の輸出への取組を支援しました。

イ 海外への商流構築、プロモーションの促進

(ア)農林水産物・食品の輸出拡大に向けて官民一体となって「農林水産業の輸出力強化戦略」(平成28(2016)年5月策定。以下「輸出力強化戦略」という。)の着実な実行のため、以下の取組を行いました。また、令和7(2025)年に2兆円、令和12(2030)年に5兆円の輸出額目標を達成するため、「農林水産物・食品の輸出拡大実行戦略」(令和2(2020)年12月決定。以下「輸出拡大実行戦略」という。)を決定し、マーケットインの体制整備を図るとともに、輸出重点品目を定め、品目ごとに輸出目標を設定しました。

a農林水産物・食品輸出プロジェクト(GFP)のコミュニティサイトを通じ、農林水産省が輸出の可能性を診断する輸出診断、そのフォローアップや、輸出に向けた情報の提供、登録者同士の交流イベントの開催等を行いました。また、相手国のニーズや規制等に対応したグローバル産地の形成を進めるため、輸出事業計画の策定、生産・加工体制の構築、事業効果の検証・改善等の取組を支援しました。輸出拡大実行戦略に基づき、重点品目について、輸出産地をリスト化しました。

b国・地域及び品目を絞り込み、売り込むべきメッセージを明確にした日本食品海外プロモーションセンター(JFOODO)による重点的・戦略的プロモーションを支援しました。水産物、米・米加工品、林産物、青果物、花き、畜産物、茶(荒茶を含む)及び加工食品(菓子)の品目別輸出団体に対し、オールジャパンで取り組む日本産品の情報発信や販路開拓の取組を支援しました。

c国内外の商談会の開催、海外見本市への出展支援、セミナー開催、専門家による相談対応、様々な国内支援機関が参画する新輸出大国コンソーシアムによる支援等、独立行政法人日本貿易振興機構(JETRO)による総合的支援を実施しました。

d輸出拡大が期待される具体的な分野・テーマについて、団体・民間事業者等による海外市場の開拓・拡大への取組をJETROを通じて支援しました。

(イ)海外の市場拡大を目指して日本食・食文化の魅力を適切かつ効果的に発信する取組を推進しました。

a日本食・食文化の海外普及を通じて、日本産農林水産物・食品の輸出拡大につなげるため、外国人料理人等に対する日本料理講習会や日本料理コンテストを開催するなど、日本食・食文化の普及活動を担う人材の育成を推進しました。また、日本食・食文化の発信拠点である日本産食材サポーター店については、日本産食材の取扱いの増加を図る取組を推進するなど、輸出拠点としての活用を強化しました。

b日本人の日本食料理人等が海外展開するために必要な研修の実施や、日本食レストランが海外進出するための取組を支援しました。

c訪日外国人旅行者を国産農林水産物・食品の需要拡大や農山漁村の活性化につなげていくため、農泊と連携しながら、地域の「食」や農林水産業、景観等の観光資源を活用して訪日外国人旅行者をもてなす取組を「SAVOR JAPAN(セイバージャパン)」として認定し、一体的に海外に発信しました。また、コロナ禍を踏まえオンライントリップによる情報発信の手法に取り組みました。

d訪日外国人旅行者の主な観光目的である「食」と滞在中の多様な経験を組み合わせ、「食」の多様な価値を創出するとともに、帰国後もレストランや越境ECサイトでの購入等を通じて我が国の食を再体験できるような機会を提供することで、輸出拡大につなげていくため、「食かけるプロジェクト」の取組を推進しました。

ウ 食産業の海外展開の促進

(ア)海外展開による事業基盤の強化

a我が国の食文化・食産業の海外展開を促進するため、海外展開における阻害要因の解決を図るとともに、グローバル人材の確保、我が国の規格・認証の普及・浸透に向け、食関連企業及びASEAN各国の大学と連携し、食品加工・流通、分析等に関する教育を行う取組等を推進しました。

b輸出力強化戦略に沿った取組を円滑に進めるために、JETROにおいて、商品トレンドや消費者動向等を踏まえた現場目線の情報提供やその活用ノウハウを通じたサポートを行うとともに、輸出先国バイヤーの発掘・関心喚起等輸出環境整備に取り組みました。

(イ)生産者等の所得向上につながる海外需要の獲得

我が国の技術やノウハウを活用したグローバル・フードバリューチェーンの構築等を通じた食産業(食品産業や農業等)の海外展開等、生産者等の所得向上につながる海外需要の獲得のための取組を、食料安全保障の確立や我が国農業の持続的発展の観点から推進しました。具体的には、令和元(2019)年12月に策定された「グローバル・フードバリューチェーン構築推進プラン」に基づき、各国・地域の発展段階と主要課題を踏まえた企業支援の取組の重点化、企業コンソーシアムづくりの支援、地方企業の進出促進、輸出と投資の一体的促進、スマート農業技術の海外展開の推進等に取り組みました。

(ウ)食品産業における国際標準への戦略的対応

我が国の食品事業者の国際的な取引における競争力を確保し、消費者に対してより安全な食品を供給するため、JFS規格の充実とその国際的普及に向けた取組を官民が連携して推進しました。あわせて、JFS規格の海外発信を行うとともに、将来的に国際的な基準の策定等の過程に参画できる人材の育成を見据え、産学官の実務者レベルで議論を行いました。

(2)知的財産等の保護・活用

品質等の特性が産地と結び付いている我が国の伝統的な農林水産物・食品等を登録・保護する地理的表示(GI)保護制度の円滑な運用を図るとともに、登録申請に係る支援や制度の周知と理解の促進に取り組みました。また、GIの活用を促すため、全国のGI産地・GI産品を消費者等に紹介するフェア等を開催し、制度の普及・活用を推進しました。さらに、制度の適切な運用を図るため、登録生産者団体等に対する定期検査を行いました。

各地域・産品の実情に応じた知的財産の保護・活用を図るため、農林水産省と特許庁が協力しながら、巡回特許庁において、出願者に有益な情報や各制度の普及・啓発を行うとともに、独立行政法人工業所有権情報・研修館(INPIT)が各都道府県に設置する知財総合支援窓口において、特許、商標、営業秘密のほか、地方農政局等と連携してGI及び植物品種の育成者権等の相談に対応しました。

我が国種苗の海外への流出を防止するため、登録品種の海外への持ち出しの制限、登録品種の自家増殖を行う場合における育成者権者の許諾制の導入を内容とする「種苗法の一部を改正する法律」(令和2年法律第74号)が第203回国会で成立しました。

また、海外における品種登録(育成者権取得)や侵害対策に対して支援するとともに、品種保護に必要となる検査手法・DNA品種識別法の開発等の技術課題の解決や、東アジアにおける品種保護制度の整備を促進するための協力活動等を推進しました。

家畜遺伝資源の適正な流通・利用を確保し、知的財産としての価値を保護するため、「家畜改良増殖法の一部を改正する法律」(令和2年法律第21号)及び「家畜遺伝資源に係る不正競争の防止に関する法律」(令和2年法律第22号)が、令和2(2020)年10月に施行されました。

また、家畜遺伝資源の適正な流通管理の徹底や知的財産としての価値の保護強化を推進するため、新たな仕組みについて周知徹底を図ったほか、全国の家畜人工授精所への立入検査、家畜遺伝資源の利用者の範囲等について制限を付す売買契約の普及や家畜人工授精用精液等の流通を全国的に管理するシステムの構築等を推進しました。

我が国のGI産品の海外での保護を図るため、国際協定による諸外国とのGIの相互保護を推進するとともに、相互保護を受けた海外での執行の確保を図りました。また、海外における我が国のGIの使用状況調査の実施、生産者団体によるGIに対する侵害対策等の支援により、海外における知的財産侵害対策の強化を図りました。

知的財産に関する意識を高め、施策を一体的に推進するため、新たな農林水産省知的財産戦略の検討に着手しました。



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