8 気候変動への対応等環境政策の推進
みどり戦略の実現に向けた基本理念等を定めるとともに、環境負荷の低減に取り組む者の事業計画を認定する制度を創設するための法律である「みどりの食料システム法」が令和4(2022)年7月に施行されました。みどりの食料システム法に基づき、環境負荷低減に係る計画の認定を受けた農林漁業者に対して、税制特例や融資制度等の支援措置を講ずるとともに、みどりの食料システム戦略推進総合対策等により、みどり戦略の実現に資する研究開発や、地域ぐるみでの環境負荷低減の取組を促進しました。
さらに、「みどりの食料システム戦略に関する関係府省庁連絡会議」を設置し、今後も関係府省庁連携の上で取組を進めることを確認するとともに、関係府省庁連携の取組の進捗状況を公表しました。
(1)気候変動に対する緩和・適応策の推進
ア「農林水産省地球温暖化対策計画」に基づき、農林水産分野における地球温暖化対策技術の開発、マニュアル等を活用した省エネ型の生産管理の普及・啓発や省エネ設備の導入等による施設園芸の省エネルギー対策、施肥の適正化、J-クレジットの利活用等を推進しました。また、令和5(2023)年3月に「水稲栽培による中干し期間の延長」がJ-クレジット制度における新たな方法論として承認されました。
イ農地からのGHGの排出・吸収量の国連への報告に必要な農地土壌中の炭素量等のデータを収集する調査を行いました。また、家畜由来のGHG排出量の国連への報告の算出に必要な消化管由来のメタン量等のデータを収集する調査を行いました。
ウ環境保全型農業直接支払制度により、堆肥の施用やカバークロップ等、地球温暖化防止等に効果の高い営農活動に対して支援しました。また、バイオ炭の農地施用に伴う影響評価、炭素貯留効果と土壌改良効果を併せ持つバイオ炭資材の開発等に取り組みました。
エバイオマスの変換・利用施設等の整備等を支援し、農山漁村地域におけるバイオマス等の再生可能エネルギーの利用を推進しました。
オ廃棄物系バイオマスの利活用については、「廃棄物処理施設整備計画」に基づく施設整備を推進するとともに、市町村等における生ごみのメタン化等の活用方策の導入検討を支援しました。
カ国際連携の下、各国の水田におけるGHG排出削減を実現する総合的栽培管理技術及び農産廃棄物を有効活用したGHG排出削減に関する影響評価手法の開発を推進しました。
キ温室効果ガスの削減効果を把握するための簡易算定ツールの品目拡大、消費者に分かりやすい等級ラベル表示による伝達手法の実証等を実施し、フードサプライチェーンにおける脱炭素化の実践とその「見える化」を推進しました。
ク「農林水産省気候変動適応計画」に基づき、農林水産分野における気候変動の影響への適応に関する取組を推進するため、以下の取組を実施しました。
(ア)中長期的な視点に立った我が国の農林水産業に与える気候変動の影響評価や適応技術の開発を行うとともに、各国の研究機関等との連携により気候変動適応技術の開発を推進しました。
(イ)農業者等自らが行う気候変動に対するリスクマネジメントを推進するため、リスクの軽減に向けた適応策等の情報発信を行うとともに、都道府県普及指導員等を通じて、リスクマネジメントの普及啓発に努めました。
(ウ)地域における気候変動による影響や、適応策に関する科学的な知見について情報提供しました。
ケ科学的なエビデンスに基づいた緩和策の導入・拡大に向けて、研究者、農業者、地方公共団体等の連携による技術の開発・最適化を推進するとともに、農業者等の地球温暖化適応行動・温室効果ガス削減行動を促進するための政策措置に関する研究を実施しました。
コ国連気候変動枠組条約等の地球環境問題に係る国際会議に参画し、農林水産分野における国際的な地球環境問題に対する取組を推進しました。
(2)生物多様性の保全及び利用
ア「農林水産省生物多様性戦略」に基づき、田園地域や里地・里山の保全・管理を推進しました。
イ国連生物多様性条約第15回締約国会議(COP15)において、新たな世界目標である「昆明・モントリオール生物多様性枠組」の採択の議論に参画しました。
ウみどり戦略や昆明・モントリオール生物多様性枠組を踏まえ、令和5(2023)年3月に「農林水産省生物多様性戦略」を改定しました。
エ農林水産分野における生物多様性保全の事例や、関連施策等の資料により、農林水産分野における生物多様性保全活動を推進しました。
オ環境保全型農業直接支払制度により、有機農業や冬期湛水(たんすい)管理等、生物多様性保全等に効果の高い営農活動に対して支援しました。
カ遺伝子組換え農作物に関する取組として、「遺伝子組換え生物等の使用等の規制による生物の多様性の確保に関する法律」(平成15年法律第97号)に基づき、生物多様性に及ぼす影響についての科学的な評価、生態系への影響の監視等を継続し、栽培用種苗を対象に輸入時のモニタリング検査を行うとともに、特定の生産地及び植物種について、輸入者に対し輸入に先立つ届出や検査を義務付ける「生物検査」を実施しました。
キ締約国としてITPGRの運営に必要な資金拠出を行いました。また、海外遺伝資源の取得や利用の円滑化に向けて、遺伝資源利用に係る国際的な議論や、各国制度等の動向を調査するとともに、入手した最新情報等について、我が国の遺伝資源利用者に対し周知活動等を実施しました。
(3)有機農業の更なる推進
ア有機農業指導員の育成や新たに有機農業に取り組む農業者の技術習得等による人材育成や、オーガニック産地育成等による有機農産物の安定供給体制の構築を推進しました。
イ流通・加工・小売事業者等と連携した需要喚起の取組を支援し、バリューチェーンの構築を進めました。
ウ遊休農地等を活用した農地の確保とともに、有機農業を活かして地域振興につなげている市町村等のネットワークづくりを進めました。
エ有機農業の生産から消費まで一貫して推進する取組や体制づくりを支援し、有機農業推進のモデル的先進地区の創出を進めました。
オ有機JAS認証の取得を支援するとともに、諸外国・地域との有機同等性の交渉を推進しました。また、有機JASについて、消費者がより合理的な選択ができるよう、有機加工食品JASの対象に有機酒類を追加する見直しを行いました。
(4)土づくりの推進
ア都道府県の土壌調査結果の共有を進めるとともに、堆肥等の活用を促進しました。また、収量向上効果を含めた土壌診断データベースの構築に向けて、土壌専門家を活用しつつ、農業生産現場における土壌診断の取組と診断結果のデータベース化の取組を推進するとともに、衛星画像を用いた簡便かつ広域的な診断手法や土壌診断の新たな評価軸としての生物性評価手法の検証・評価を推進しました。
イ好気性強制発酵による畜産業由来の堆肥の高品質化やペレット化による広域流通のための取組を推進しました。
(5)農業分野におけるプラスチックごみ問題への対応
施設園芸及び畜産における廃プラスチック対策や、生分解性マルチ導入、プラスチックを使用した被覆肥料に関する調査、生産現場における被膜殻の流出防止等の取組を推進しました。
(6)農業の自然循環機能の維持増進とコミュニケーション
ア有機農業や有機農産物について消費者に分かりやすく伝える取組を推進しました。
イ官民協働のプラットフォームである「あふの環(わ)2030プロジェクト~食と農林水産業のサステナビリティを考える~」における勉強会・交流会、情報発信や表彰等の活動を通じて、持続可能な生産消費を促進しました。
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