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農林水産省

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第3節 生産現場を支える多様な農業人材や主体の活躍



地域農業を維持し、持続可能なものとしていくためには、担い手の育成・確保の取組と併せて、地域の話合いを基に、農業を副業的に営む経営体等を始め、多様な農業人材や主体の活躍を促進することも重要です。

本節では、家族経営協定の締結や外国人材の受入れ等の生産現場を支える多様な農業人材や主体の活躍に向けた取組等について紹介します。

(1)多様な農業人材の育成・確保

(農業経営体に占める経営耕地面積1.0ha未満の割合は約5割)

図表3-3-1 農業経営体に占める個人経営体等の割合

データ(エクセル:31KB / CSV:1KB

令和5(2023)年の農業経営体に占める個人経営体の割合は95.6%、経営耕地面積1.0ha未満の農業経営体の割合は51.8%となっており、中小・家族経営等の経営体が農業経営体の大きな割合を占めています(図表3-3-1)。

また、生産現場では農業を副業的に営む経営体を始め、多様な農業人材が産地単位で連携・協働して、農業生産や共同販売を行っており、農林水産省では、地域社会の維持に重要な役割を果たしている実態に鑑み、生産基盤の強化に取り組むこととしています。

(多様な農業人材の育成・確保が重要)

農地を保全し、集落の機能を維持するためには、地域の話合いを基に、担い手への農地の集積・集約化を進めるとともに、農業を副業的に営む経営体等の多様な農業人材が一定の役割を果たしていることも踏まえ、これらの者が農地の保全・管理を適正に行う取組を進めることを通じて、地域において持続的に農業生産が行われるようにすることが必要です。

また、農村地域や農業に人材を呼び込み、地域や農業を発展させていく上では、性別や年齢、障害、国籍、価値観等にかかわらず、あらゆる人材が自分らしく働き活躍できる環境を整備していくことも重要です。

このような中、全国の生産現場では、女性農業者や高齢農業者、障害者等の多様な人材を確保し、それぞれの持つ能力を活かす取組が広がっています。農業・農村分野において多様な人材の参画・活躍がますます重要となる中で、今後も引き続きその推進を図っていくことが求められています。

農林水産省では、地域の実情に応じた生産体制の強化を支援するとともに、多様な経営体に対し、専門的に経営・技術等をサポートする農業支援サービス事業体の育成、農業・農村の多面的機能の維持・発揮に資する地域共同での農地・水路等の保全活動の推進、多様な農業人材から成る集落営農の活性化等の取組を支援しています。

(コラム)多様な人材が各々のライフスタイルに応じて関わる「91農業」を提唱

91農業のロゴマーク

91農業のロゴマーク

資料:全国農業協同組合連合会

さくらんぼ収穫に励む91農業参加者

さくらんぼ収穫に励む
91農業参加者

資料:全国農業協同組合連合会

全国農業協同組合連合会(以下「JA全農」という。)では、人手不足に悩む生産現場を支援し、その地域に人が集まることを目指し、多様な人材が各々のライフスタイルに合わせて農業に関われるよう「91農業(きゅういちのうぎょう)」を提唱しています。

労働力人口の減少、農業就業者の高齢化・減少に伴う農業労働力不足が大きな問題となる中、JA全農では労働力支援の取組を推進しています。生産現場の労働力確保を支援するため、全国を6ブロックに分けてブロック別の協議会を設けるとともに、全国段階の協議会を立ち上げ、各々の活動情報を共有しながら、取組の拡大を進めています。

また、農業に興味・関心のある人材や多種多様な人材を受け入れる取組を推進するため、各県域段階で企業との連携を進めるとともに、全国段階では、令和3(2021)年4月に株式会社JTB(ジェイティービー)と連携協定を締結し、農作業請負による取組の展開や、農福連携の推進も含めた「多様な人材の活用」を図っています。

さらに、JA全農では、人手不足に悩む生産現場を支援し、その地域に人が集まることを目指し、農業へのハードルを下げて農業参加を訴求すること等を目的として、「あなたのライフスタイルに農的生活を1割取り入れませんか?」をコンセプトとする新たなライフスタイル「91農業」を提唱し、PR活動等を行っています。具体的には、休日に副業で働く「9本業1農業」や子育ての合間に働く「9育児1農業」、旅行の合間に農業に関わる「9旅行1農業」といったライフスタイルに合わせた様々な農業への関わり方を提案しています。

JA全農では、今後とも農業に関心のある人々を農業現場とマッチングすることで、農業分野や地域社会への効果を生み出し、地方創生・地域活性化の実現を目指すこととしています。

(家族経営協定の締結数は6万戸に増加)

家族経営協定は、家族農業経営に携わる各世帯員が、意欲とやりがいを持って経営に参画できる魅力的な農業経営を目指し、経営方針や役割分担、家族全員が働きやすい就業環境等について、家族間の十分な話合いに基づき取り決めるものです。

家族経営協定の締結数については増加傾向で推移しており、令和4(2022)年度は前年度に比べ505戸増加し6万20戸となり、令和5(2023)年の主業経営体数(19万800経営体)の約3割に相当する水準となっています(図表3-3-2)。

令和4(2022)年度に締結した協定において取り決められた内容を見ると、「労働時間・休日」が95.5%で最も多く、次いで「農業経営の方針決定」が93.7%、「農業面の役割分担」が87.7%、「労働報酬」が79.3%となっています。同協定において役割分担や就業条件等を明確にすることにより、仕事と家事・育児を両立しやすくなるほか、各々が研修会等に気兼ねなく参加しやすくなるなどの効果があります。

農林水産省では、労働時間・休日や経営方針、役割分担について、家族間の十分な話合いを通じて家族経営協定を締結することを普及・推進しています。

(2)外国人材を始めとした労働力の確保

(農業分野の外国人材の総数は前年に比べ増加)

農村における高齢化・人口減少が進行する中、外国人材を含め生産現場における労働力の確保が重要となっています。

令和5(2023)年における農業分野の外国人材の総数は、特定技能制度の活用が進んだことにより、前年に比べ8千人増加し5万1千人となっています(図表3-3-3)。

図表3-3-3 農業分野における外国人材の受入状況

このうち特定技能制度は、人手不足が続いている中で、外国人材の受入れのために平成31(2019)年に運用が開始された制度で、「特定技能」の在留資格で一定の専門性・技能を有し即戦力となる外国人を受け入れており、令和6(2024)年3月末時点で受け入れる対象分野は16分野に拡大しています。また、令和5(2023)年8月からは、熟練した技能を要する特定技能2号について、農業分野も新たに対象とする運用が開始されました。

法務省の調査によると、同年12月末時点での農業分野における特定技能在留外国人数は、前年同月末に比べ7,402人増加し、23,861人となりました。

農林水産省では、農業分野における外国人材の確保と適正かつ円滑な受入れに向けて、外国人材の知識・技能を確認する試験の実施や働きやすい環境の整備等を支援しています。

(事例)特定技能制度を活用し、労働力の確保と生産拡大を推進(広島県)

広島県北広島町
特定技能制度を活用し農場で働く外国人材

特定技能制度を活用し
農場で働く外国人材

資料:弘法菜園

広島県北広島町(きたひろしまちょう)の弘法菜園(こうぼうさいえん)では、特定技能制度を活用し、労働力の確保を図りながら、ほうれんそう等の生産拡大を実現しています。

同園は、ほうれんそうの周年栽培を主体とした経営を行っており、令和5(2023)年10月時点で栽培面積は露地が6ha、ハウスが1haとなっています。

同園では、経営者が従前にベトナム人と仕事をした際に、その手際の良さや誠実さを評価していたことから、事業拡大時にはベトナム人を雇用することを視野に入れていました。令和2(2020)年9月に特定技能外国人の採用を開始して以降、その数は増加しており、令和6(2024)年3月時点で、6人の特定技能外国人を雇用しています。内訳は男性2人、女性4人となっており、いずれもベトナム国籍を有しています。

農場を担当しているベトナム人は技量が極めて高く、野菜栽培において重要な役割を担っています。

また、同園で雇用している特定技能外国人は、仕事だけでなく、日本での経験を大切にする人材が多く、花見や地域の祭りといった様々な体験を積み重ねています。さらに、近隣への挨拶や地域の清掃活動に参加するなど、地域社会にも順応しています。

同園では、特定技能外国人の受入れを契機として、人手不足の克服のみならず、職場にも活気や良好な雰囲気が生まれていることから、今後とも積極的に活用していくこととしています。

(技能実習制度を発展的に解消し、人材確保と人材育成を目的とする新制度の創設を検討)

令和5(2023)年11月に「技能実習制度及び特定技能制度の在り方に関する有識者会議」が取りまとめた最終報告書を踏まえ、安全、安心に暮らせる共生社会の実現や、外国人のキャリアアップ、人権侵害等の防止・是正等を図る観点から、令和6(2024)年2月に「外国人材の受入れ・共生に関する関係閣僚会議」において、現行の技能実習制度(*1)を実態に即して発展的に解消し、人手不足分野における人材確保と人材育成を目的とする「育成就労制度」を創設するとともに、特定技能制度は、適正化を図った上で現行制度を存続することを決定しました。これを受け、「出入国管理及び難民認定法及び外国人の技能実習の適正な実施及び技能実習生の保護に関する法律の一部を改正する法律案」を第213回通常国会に提出したところです。

*1 外国人技能実習生への技能等の移転を図り、その国の経済発展を担う人材育成を目的とした制度



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