概説
1 施策の重点
「食料・農業・農村基本計画」(令和2(2020)年3月閣議決定)を指針として、食料自給率の向上等に向けた施策、食料の安定供給の確保に関する施策、農業の持続的な発展に関する施策、農村の振興に関する施策、食料・農業・農村に横断的に関係する施策等を総合的かつ計画的に展開しました。
また、「食料安全保障強化政策大綱」(令和5(2023)年12月改訂)に基づき、食料安全保障の強化に向け、過度な輸入依存からの脱却に向けた構造転換対策の継続的な実施に加え、スマート農林水産業等による成長産業化、農林水産物・食品の輸出促進、農林水産業のグリーン化を進めました。あわせて、「農林水産業・地域の活力創造プラン」(令和4(2022)年6月改訂)に基づく施策を展開しました。
さらに、「環太平洋パートナーシップに関する包括的及び先進的な協定」(CPTPP)、日EU・EPA、日米貿易協定、日英EPA及びRCEP(地域的な包括的経済連携)協定の効果を最大限に活用するため、「総合的なTPP等関連政策大綱」(令和2(2020)年12月改訂)(以下「TPP等政策大綱」という。)に基づき、強い農林水産業の構築、経営安定・安定供給のための備え等の施策を推進しました。あわせて、東日本大震災及び東京電力福島第一原子力発電所(以下「東電福島第一原発」という。)事故からの復旧・復興に向け、関係府省庁が連携しながら取り組みました。
くわえて、「食料・農業・農村基本法」(平成11年法律第106号)の検証・見直しに向けた検討については、食料・農業・農村政策審議会に設置された基本法検証部会において、関係各界各層からの意見を広く伺い、国民的コンセンサスを形成しながら、議論を進め、令和5(2023)年9月に同審議会において答申が取りまとめられました。
食料安定供給・農林水産業基盤強化本部では、令和5(2023)年6月に「食料・農業・農村政策の新たな展開方向」を決定しました。また、同年12月には「「食料・農業・農村政策の新たな展開方向」に基づく施策の工程表」及び「食料・農業・農村基本法の改正の方向性について」を決定しました。食料・農業・農村基本法の改正内容を実現するために必要な関連法案については、その見直し・検討を進めるとともに、工程表に基づく施策を進めていくこととしました。
これらを踏まえて、「食料安全保障の抜本的な強化」、「環境と調和のとれた産業への転換」及び「人口減少下における生産水準の維持・発展と地域コミュニティの維持」の観点から食料・農業・農村基本法の見直しを行い、第213回国会に「食料・農業・農村基本法の一部を改正する法律案」を提出しました。
2 財政措置
(1)令和5(2023)年度農林水産関係予算額は、2兆2,683億円を計上しました。本予算においては、<1>食料安全保障の強化に向けた構造転換対策、<2>生産基盤の強化と経営所得安定対策の着実な実施、需要拡大の推進、<3>令和12(2030)年輸出5兆円目標の実現に向けた農林水産物・食品の輸出力強化、食品産業の強化、<4>環境負荷低減に資する「みどりの食料システム戦略」(以下「みどり戦略」という。)の実現に向けた政策の推進、<5>スマート農林水産業、eMAFF(農林水産省共通申請サービス)等によるデジタルトランスフォーメーション(DX)の推進、<6>食の安全と消費者の信頼確保、<7>農地の効率的な利用と人の確保・育成、農業農村整備、<8>農山漁村の活性化、<9>カーボンニュートラル実現に向けた森林・林業・木材産業によるグリーン成長、<10>水産資源の適切な管理と水産業の成長産業化、<11>防災・減災、国土強靱(きょうじん)化と災害復旧等の推進に取り組みました。
また、令和5(2023)年度の農林水産関係補正予算額は、8,182億円を計上しました。
(2)令和5(2023)年度の農林水産関連の財政投融資計画額は、7,727億円を計上しました。このうち主要なものは、株式会社日本政策金融公庫による借入れ7,630億円となりました。
3 立法措置
令和5(2023)年度において、以下の法律が施行されました。
- 「植物防疫法の一部を改正する法律」(令和4年法律第36号)(令和5(2023)年4月施行)
- 「農業経営基盤強化促進法等の一部を改正する法律」(令和4年法律第56号)(令和5(2023)年4月施行)
- 「競馬法の一部を改正する法律」(令和4年法律第85号)(令和5(2023)年4月施行)
4 税制上の措置
以下を始めとする税制措置を講じました。
(1)農業経営基盤強化準備金制度について、対象となる農業用機械等から取得価額が30万円未満の資産を除外した上、2年延長しました。
[所得税・法人税]
(2)「農業競争力強化支援法」(平成29年法律第35号)に基づく事業再編計画の認定を受けた場合の事業再編促進機械等の割増償却について、割増償却率の見直しを行い、1社単独で取り組む事業再編に係る機械等を対象から除外した上、2年延長しました。
[所得税・法人税]
(3)農林漁業用A重油に対する石油石炭税(地球温暖化対策のための課税の特例による上乗せ分を含む。)の免税・還付措置を5年延長しました。
[石油石炭税]
(4)農用地利用集積等促進計画により農用地等を取得した場合の所有権の移転登記の税率の軽減措置を3年延長しました。
[登録免許税]
5 金融措置
政策と一体となった長期・低利資金等の融通による担い手の育成・確保等の観点から、農業制度金融の充実を図りました。
(1)株式会社日本政策金融公庫の融資
ア農業の成長産業化に向けて、民間金融機関と連携を強化し、農業者等への円滑な資金供給に取り組みました。
イ農業経営基盤強化資金(スーパーL資金)については、「農業経営基盤強化促進法」(昭和55年法律第65号)に規定する地域計画のうち目標地図に位置付けられたなどの認定農業者を対象に貸付当初5年間実質無利子化する措置を講じました。
(2)民間金融機関の融資
ア民間金融機関の更なる農業融資拡大に向けて株式会社日本政策金融公庫との業務連携・協調融資等の取組を強化しました。
イ認定農業者が借り入れる農業近代化資金については、貸付利率をスーパーL資金の水準と同一にする金利負担軽減措置を実施しました。また、TPP協定等による経営環境変化に対応して、新たに規模拡大等に取り組む農業者が借り入れる農業近代化資金については、農業経営基盤強化促進法に規定する地域計画のうち目標地図に位置付けられたなどの認定農業者を対象に貸付当初5年間実質無利子化するなどの措置を講じました。
ウ農業経営改善促進資金(スーパーS資金)を低利で融通できるよう、都道府県農業信用基金協会が民間金融機関に貸付原資を低利預託するために借り入れた借入金に対し利子補給金を交付しました。
(3)農業法人への出資
「農林漁業法人等に対する投資の円滑化に関する特別措置法」(平成14年法律第52号)(以下「投資円滑化法」という。)に基づき、農業法人に対する投資育成事業を行う株式会社又は投資事業有限責任組合の出資原資を株式会社日本政策金融公庫から出資しました。
(4)農業信用保証保険
農業信用保証保険制度に基づき、都道府県農業信用基金協会による債務保証や当該保証に対し独立行政法人農林漁業信用基金が行う保証保険により補完等を行いました。
(5)被災農業者等支援対策
ア甚大な自然災害等により被害を受けた農業者等が借り入れる災害関連資金について、貸付当初5年間実質無利子化する措置を講じました。
イ甚大な自然災害等により被害を受けた農業者等の経営の再建に必要となる農業近代化資金の借入れについて、都道府県農業信用基金協会の債務保証に係る保証料を保証当初5年間免除するために必要な補助金を交付しました。
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