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農林水産省

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2 グローバルマーケットの戦略的な開拓


(1)農林水産物・食品の輸出促進

農林水産物・食品の輸出額を令和7(2025)年までに2兆円、令和12(2030)年までに5兆円とする目標の達成に向けて、実行戦略に基づき、マーケットインの体制整備を行いました。輸出重点品目について、輸出産地の育成・展開、輸出促進法に基づく認定農林水産物・食品輸出促進団体(以下「認定品目団体」という。)の取組を支援しました。さらに、以下の取組を行いました。

ア 輸出阻害要因の解消等による輸出環境の整備

(ア)輸出促進法に基づき、農林水産省に設置している「農林水産物・食品輸出本部」の下で、輸出阻害要因に対応して輸出拡大を図る体制を強化し、同本部で作成した実行計画に従い、放射性物質に関する輸入規制の撤廃、動植物検疫協議を始めとした食品安全等の規制等に対する輸出先国・地域との協議の加速化、輸出先国・地域の基準や検疫措置の策定プロセスへの戦略的な対応、輸出向けの施設整備と登録認定機関制度を活用した施設認定の迅速化、輸出手続の迅速化、意欲ある輸出事業者の支援、輸出証明書の申請・発行の一元化、輸出相談窓口の利便性向上、輸出先国・地域の衛生基準や残留農薬基準への対応強化等の貿易交渉による関税撤廃・削減を速やかに輸出拡大につなげるための環境整備を進めました。

(イ)東電福島第一原発事故を受けて、いまだ日本産食品に対する輸入規制が行われている一部の国・地域に対し、関係省庁が協力し、あらゆる機会を捉えて輸入規制の即時撤廃に向けた働き掛けを実施しました。その結果、令和6(2024)年度においては、輸入規制措置が仏領ポリネシアで撤廃、台湾で緩和されました。台湾では、日本国内で流通する食品は全て輸出が可能となったほか、静岡県産の茶類、岩手県・宮城県産の水産物等が放射性物質検査報告書なしで輸出が可能となりました。また、令和5(2023)年8月から、多核種除去設備(ALPS(アルプス))等により浄化処理した水を、海水で大幅に希釈した上で、海洋放出したことに伴い、中国、香港、マカオ及びロシアが日本産水産物等の全部又は一部の輸入停止を行いました。中国に対しては、令和6(2024)年9月、我が国と中国の関係当局間でALPS処理水海洋放出に関する「日中間の共有された認識」を公表し、参加国による独立したサンプリング等のモニタリング活動を実施後、科学的証拠に基づき日本産水産物の輸入規制措置の調整に着手し、基準に合致した日本産水産物の輸入を着実に回復させることとされました。令和6(2024)年11月の日中首脳会談において、この共有認識を両国で実施していくことを確認しました。また、令和7(2025)年1月の農相会談等において、本認識に基づき水産物の輸入再開について着実に進めることを確認しました。同年3月の日中ハイレベル経済対話で、この認識が着実に履行されていることを両者が評価し、モニタリング結果に異常がないことを前提に、輸入再開に向けて関連の協議を推進することで一致しました。さらに、中国以外の国・地域に対しても、外交ルートや国際会議の場を通じて、日本産水産物等の輸入回復が早期に実施されるよう働き掛けを行いました。

(ウ)日本産農林水産物・食品の安全性や魅力に関する情報を諸外国・地域に発信するほか、海外におけるプロモーション活動の実施により、日本産農林水産物・食品等の輸出回復に取り組みました。

(エ)我が国の実情に沿った国際基準の速やかな策定、策定された国際基準の輸出先国・地域での適切な実施を促進するため、国際機関の活動支援やアジア・太平洋地域の専門家の人材育成等を行いました。

(オ)輸出先国・地域が求める衛生基準に対応した輸出施設の新規認定や、輸出先の事業者等から求められる食品安全マネジメント規格、GAP(農業生産工程管理)等の認証の新規取得を促進しました。また、国際的な取引にも通用する、コーデックス委員会が定めるHACCPをベースとしたJFS規格の国際標準化に向けた取組を支援しました。さらに、JFS規格やASIAGAPの国内外への普及に向けた取組を推進しました。

(カ)産地が抱える課題に応じた専門家を産地に派遣し、輸出先国・地域の植物検疫条件や残留農薬基準を満たす栽培方法、選果等の技術的指導を行うなど、輸出に取り組もうとする産地を支援しました。

(キ)輸出先国・地域の規制・条件に対応するため、食品製造事業者等の施設の改修・新設や機器の整備に対して支援しました。

(ク)複数の食品製造事業者等が連携して輸出に取り組む加工食品について、PRやテストマーケティング、輸出先国・地域の規制等に対応した商品開発に必要な機械導入等により輸出拡大を図りました。

(ケ)植物検疫上、輸出先国・地域が要求する種苗等に対する検査手法の開発・改善、輸出先国・地域が侵入を警戒する病害虫に対する国内における発生実態の調査を進めるとともに、産地等のニーズに対応した新たな検疫措置の確立等に向けた科学的データを収集、蓄積する取組を推進しました。

(コ)輸出先国・地域の検疫条件に則した防除体系、栽培方法、選果等の技術を確立するためのサポート体制を整備するとともに、卸売市場や集荷地等での輸出検査を行うことにより、産地等の輸出への取組を支援しました。

(サ)投資円滑化法に基づき、輸出に取り組む事業者等への資金供給を後押ししました。

(シ)輸出先国・地域の規制に対応した食品添加物の代替利用を促進するため、課題となっている複数の食品添加物の早見表を作成しました。

イ 海外への商流構築、プロモーションの促進

(ア)GFP等を通じた輸出促進

a農林水産物・食品輸出プロジェクト(GFP)のコミュニティを通じ、農林水産省が中心となり輸出の可能性を診断する輸出診断や伴走支援、人材育成機関と連携した輸出人材の育成、人材マッチングによるニーズに合った輸出人材の確保等を進めました。

b海外の規制・ニーズに対応した生産・流通体系への転換を通じた大規模輸出産地のモデル形成等を支援するとともに、海外の規制・ニーズに対応した農林水産物を、継続的・安定的に輸出する産地を「フラッグシップ輸出産地」として選定・公表しました。

c日本食品海外(にほんしょくひんかいがい)プロモーションセンター(JFOODO(ジェイフードー))による認定品目団体等と連携したプロモーション、複数品目を組み合わせた品目横断的な取組、食文化の発信体制の強化等を含めた戦略的プロモーションを支援しました。

d独立行政法人日本貿易振興機構(にほんぼうえきしんこうきこう)(JETRO(ジェトロ))による国内外における商談会の開催、海外見本市への出展、サンプル展示ショールームの設置、セミナーの開催、専門家による相談対応等を支援しました。

e新市場の獲得も含め、輸出拡大が期待される新規性や先進性を重視した分野・テーマについて、民間事業者等による海外販路の開拓・拡大を支援しました。

f認定品目団体が行う業界全体の輸出力強化に向けた取組を支援しました。

(イ)日本食・食文化の魅力の発信

a海外に活動拠点を置く日本料理関係者等の「日本食普及の親善大使」への任命、海外における日本料理の調理技能の認定を推進するための取組、外国人料理人等に対する日本料理講習会・日本料理コンテストの開催等への支援を通じ、日本食・食文化の普及活動を担う人材の育成を推進しました。また、海外の日本食・食文化の発信拠点である「日本産食材サポーター店」の認定を推進するための取組への支援、認定飲食店・小売店と連携した海外向けプロモーションへの支援を通じ、日本食・食文化の魅力を発信しました。

b農泊と連携しながら、地域の「食」や農林水産業、景観等の観光資源を活用して訪日外国人旅行者をもてなすための地域の取組を「SAVOR JAPAN(セイバージャパン)」として認定し、一体的に海外に発信しました。

ウ 食産業の海外展開の促進

農林水産物・食品に関連する事業者の海外事業展開を推進するため、各種の公的支援措置・優良事例に係る官民間及び企業間の情報交換、農林水産物・食品の輸出に係るサプライチェーンの各段階におけるコスト・利益構造の分析、海外現地における流通・加工施設等に係る投資案件の形成への支援等を行いました。

(2)知的財産等の保護・活用

その地域ならではの自然的、人文的、社会的な要因の中で育まれてきた品質、社会的評価等の特性を有する産品の名称を、地域の知的財産として保護する地理的表示(GI)保護制度について、農林水産物・食品の輸出拡大や所得・地域の活力の向上に更に貢献できるよう、制度の周知と円滑な運用を図り、GI登録を推進しました。また、市場におけるGI産品の露出拡大につなげる情報発信等を支援するとともに、外食、食品産業、観光等の他業種と連携した付加価値向上と販路拡大の取組を推進しました。

GIの保護に向け、厳正な取締りを行いました。

国際協定による諸外国・地域とのGIの相互保護を推進するとともに、相互保護を受けた海外での執行の確保を図りました。また、海外における我が国のGIの不正使用状況調査の実施、生産者団体によるGIに対する侵害対策等の支援により、海外における知的財産侵害対策の強化を図りました。

農業・食品産業関係者の知的財産に関する意識向上、農業分野の知的財産専門人材の育成・確保に向け、セミナー等を実施するとともに、農林水産省と特許庁が協力しながら、知的財産の保護・活用の普及・啓発等に取り組みました。

新品種の適切な管理による我が国の優良な植物品種の流出防止を始め、育成者権の保護・活用を図りました。あわせて、植物新品種の育成者権者に代わって、海外への品種登録や戦略的なライセンスにより品種保護をより実効的に行うとともに、ライセンス収入を品種開発投資に還元するサイクルを実現するため、育成者権管理機関の取組を推進しました。また、オンラインサイトにおける登録品種の個人間取引の増大を始め、昨今の取引実態の変化に対応した品種の開発・保護・活用の取組を推進するとともに、品種保護に必要となるDNA品種識別法の開発等の技術課題の解決、東アジアにおける品種保護制度の整備を促進するための協力活動等を推進しました。

「家畜改良増殖法」(昭和25年法律第209号)及び「家畜遺伝資源に係る不正競争の防止に関する法律」(令和2年法律第22号)に基づき、家畜遺伝資源の適正な流通管理の徹底や知的財産としての価値の保護を推進するため、法令遵守の徹底を図るほか、全国の家畜人工授精所への立入検査を実施するとともに、家畜遺伝資源の利用者の範囲等について制限を付す売買契約の普及や家畜人工授精用精液等の流通を全国的に管理するシステムの運用・機能強化等を推進しました。

「農林水産省知的財産戦略2025」に基づき、農林水産・食品分野における知的財産の戦略的な保護と活用に向け、総合的な知的財産マネジメントを推進するなど、施策を一体的に進めました。



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