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農林水産省

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第4節 不測時における食料供給の確保


世界的な食料需給の変化や生産の不安定化等により、我が国の食料安全保障上のリスクが高まっている中、食料供給が大幅に減少する不測の事態への対応が必要となっています。

本節では、令和7(2025)年4月に施行された食料供給困難事態対策法等について紹介します。

(1)不測時における食料安全保障の対応の強化

(世界の食料需給等をめぐる事態が深刻化)

昨今、気候変動等による世界的な食料生産の不安定化、食料需要の拡大に伴う調達競争の激化等に、ウクライナ情勢やイラン等を中心とした中東情勢の緊迫化等も加わり、輸入する食品原材料や農業生産資材の価格高騰、産出量が特定の国に偏っている化学肥料原料の調達の不安定化、国際物流の混乱等の世界の食料需給をめぐるリスクが顕在化しています(図表1-4-1)。米国でとうもろこしが、ブラジルで大豆が史上最高の生産量となった一方で、中東情勢の緊迫化による混乱、紅海における船舶航行の不安定化等といった食をめぐる国内外の状況が刻々と変化する中、食料安全保障の確保が国家の喫緊かつ最重要課題の一つとなっています。

図表1-4-1 令和7(2025)年度の諸外国での主な動き

(食料供給困難事態対策法が施行)

近年、食料供給が大幅に減少するリスクが高まる中、食料供給が減少して国民生活・国民経済に影響が生じる事態を防止するため、平時からの対応に始まり、政府一体となって早期から必要な対策を行うための食料供給困難事態対策法が令和7(2025)年4月に施行されました。同法は、食料安全保障の確保に寄与し、もって国民生活の安定と国民経済の円滑な運営の確保に資することを目的としており、深刻度に応じて事態を区分した上で、食料の供給が大幅に減少するおそれが生じた段階(以下「食料供給困難兆候」という。)から食料供給困難事態対策本部(以下「政府対策本部」という。)を設置すること等を定めています。また、同年同月に閣議決定した「食料供給困難事態対策の実施に関する基本的な方針」(以下「基本方針」という。)では、不測時の判断基準や、同法に基づく各種の対策の内容、要請等を行う対象者の明確化といった同法の具体的な運用について示しています(図表1-4-2)。

図表1-4-2 食料供給困難事態対策法の概要

(特定食料・資材を指定し、平時から対策)

食料供給困難事態対策法に基づき、国民の食生活又は国民経済上の重要性や供給確保のための措置の必要性を踏まえ、対策の対象とする重要な食料を「特定食料」、その食料の生産に不可欠な農業生産資材を「特定資材」として政令で指定しています(図表1-4-3)。

その上で、平時から国内生産基盤の強化や、食料・農業生産資材のサプライチェーンの維持・強化に向けた施策を推進していくほか、国内外の食料需給に関する情報の収集・分析、適切かつ効率的な備蓄の運用、国内生産で国内需要を満たすことができない農産物等の安定的な輸入の確保等を進めていくこととしています。

図表1-4-3 政令で指定する特定食料及び特定資材、供給熱量の品目別内訳

データ(エクセル:33KB

(不測時の供給確保対策)

食料の供給不足により国民生活や国民経済に支障が生じる事態を未然に防止し、早期に解消するためには、供給不足が生じ得る兆候を捉えた早期の段階から、関係する省庁が一体となって必要な対策を講じていくことが重要です。このため、食料供給困難事態対策法では、食料供給困難兆候の段階から、内閣総理大臣を本部長、全ての国務大臣を構成員とする政府対策本部を設置し、特定食料の供給目標数量や供給確保対策を盛り込んだ実施方針を策定し、事態の深刻度に応じて、政府一体となって必要な対策を総合的に実施することとしています。

また、食料供給困難兆候の段階では、出荷販売業者や輸入業者、生産業者等の事業者には、あくまで自主的な供給確保の取組を求める「要請」を行う仕組みとなっており、他方、事態が改善せず、食料供給が大幅に減少し、国民生活等に支障が生じる事態である「食料供給困難事態」に至り、要請では必要な供給確保が見込めない場合に限り、事業者に対して、出荷販売等の計画の作成・届出を「指示」することができることとしています。さらに、届出された計画に沿って供給が行われたとしても事態の解消が困難な場合であって、当初の計画の内容等から見て計画変更が可能と認められる事業者に限って、計画変更を指示することができることとしています。

(コラム)食料供給困難事態対策法の基本方針において対策の考え方を明確化

食料供給困難事態対策法の適用に当たっては、国や地方公共団体、農業者、食品産業事業者、消費者等の理解と協力が不可欠です。令和7(2025)年4月に閣議決定した基本方針では、不測時の判断基準や平時及び不測時の対策を示すとともに、要請等を行う対象者を明確化しています。

まず、食料供給困難兆候の判断基準については、「我が国における単一又は複数の品目の特定食料の供給が平年と比べて全国的に2割以上減少し、又は減少するおそれがあるため、食料供給困難事態対策を講じなければ、食料供給困難事態の発生を未然に防止することが困難と認められる場合」等としています。2割以上の減少を一つの目安としつつ、2割以上の減少に至らない場合であっても、特定食料の備蓄・在庫の有無やその量、国民生活又は国民経済への影響等を総合的に考慮し、判断することとしています。

平時から行う対策として、主要な農林水産物等の生産国・輸出国における動向を調査・分析するとともに、国際的な物流状況等に関するデータや、食料供給の減少につながる可能性がある気象状況等に係るデータ等も踏まえ、その影響を予測・分析することとしています。また、食料をめぐる現状や課題、同法及び基本方針の内容や考え方を関係者に丁寧に説明し、周知に努めることとしています。

さらに、不測時に行う対策については、備蓄の活用や出荷・販売の調整、輸入の促進によってもなお、供給不足の解消が困難と見込まれる場合に、生産の促進の要請等を行うこととし、要請等を行う対象は、供給確保のために最低限必要な範囲で一定規模以上の事業者としています。特に生産の促進の要請等については、国全体として必要となる生産量等を示した上で、他の農林水産物の生産に可能な限り影響を及ぼさないことを基本として行うこととし、専ら自家消費を目的として小規模に生産を行っている者や、樹木の伐根や施設の撤去を行わなければ特定食料を生産できない者は対象としないことを明確化しています。

食料供給困難事態対策法に基づく基本方針について

(不測時における食料自給力シミュレーションモデルを構築)

農林水産省では、不測の事態が想定される場合に、必要な対策を検討するため、諸外国の事例を参考とし、国内の農地や労働力を始めとする生産基盤の確保状況、品目ごとの輸出入量、食料等の備蓄状況、世界の需給動向を考慮し、品目ごとの食料供給状況や作付構成を最適化する我が国の食料自給力シミュレーションモデルの構築を行っています(図表1-4-4)。

図表1-4-4 我が国の食料自給力シミュレーションモデルの構築

(2)不測時に備えた備蓄の実施

(不測時に備えた穀物の備蓄を実施)

政府は、国内の米の生産量の減少によりその供給が不足する事態に備え、米を100万t程度(*1)備蓄することとしています。政府備蓄米の買入れについて、令和7(2025)年産は需給状況等を鑑みて中止しましたが、令和8(2026)年産については、令和8(2026)年3月に公告し、同年4月に入札することとしています。あわせて、海外における不測の事態の発生による供給途絶等に備えるため、食糧用小⻨については国全体として外国産食糧用小⻨の需要量の2.3か月分を備蓄し、そのうち1.8か月分の保管料を、飼料穀物については配合飼料メーカー等が、約1か月分の需要量に相当するとうもろこし等100万t程度を備蓄し、そのうち75万t分を対象に政府が支援しています。

さらに、基本方針においては、国内に存在する民間在庫も含めた量を官民合わせた備蓄としてトータルで捉えることとしており、不測時における対策を効率的かつ効果的に行うことができるよう、平時から特定食料と特定資材の民間在庫量やサプライチェーンの把握を進めています。

*1 10年に1度の不作や、通常程度の不作が2年連続した事態にも国産米をもって対処し得る水準。特集を参照


お問合せ先

大臣官房広報評価課情報分析室

代表:03-3502-8111(内線3260)
ダイヤルイン:03-3501-3883

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