第5節 輸入の安定化
国内生産で国内需要を満たすことができない一部の食料・農業生産資材については、一定の輸入が不可欠となっており、平時から安定的な輸入を確保するための環境整備が重要となっています。
本節では、食料輸入の状況と食料・農業生産資材の安定的な輸入を確保する取組について紹介します。
(1)我が国における食料輸入等の状況
(農産物の輸入額は前年に比べ3.1%増加)
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令和7(2025)年の農産物輸入額は9兆8,431億円と、前年に比べ3.1%増加しました(図表1-5-1)。このうち農産品は7兆2,319億円と4.3%増加、畜産品は2兆5,963億円と0.3%減少しました。
(我が国の主要農産物の輸入構造は少数の特定国に依存)
令和7(2025)年の農産物輸入額を国・地域別に見ると、米国が2兆450億円で最も高く、次いで中国、豪州、タイ、カナダ、ブラジルの順で続いており、上位6か国が占める輸入割合は約6割になっています(図表1-5-2)。
品目別に見ると、とうもろこし、大豆、小麦の輸入は、世界の上位生産国数か国のシェアが大きく(*1)、特定国への依存傾向が顕著となっています。とうもろこしと大豆については、上位2か国で8割以上を占めています。小麦については、我が国での用途に適した小麦を生産しているカナダ、米国、豪州の上位3か国に99.8%を依存している状況です。
一部の品目では輸入先の多様化が進みつつあるものの、我が国の農産物の輸入構造は依然として米国を始めとした少数の特定国への依存度が高いという特徴があります。
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*1 第1章第1節を参照
(将来の食料輸入に不安を持つ消費者の割合は約8割)
将来の食料輸入に対する消費者の意識について、株式会社日本政策金融公庫(にっぽんせいさくきんゆうこうこ)(以下「公庫」という。)が令和7(2025)年11月に実施した調査によると、80.6%が日本の将来の食料輸入に「不安がある」と回答しました(図表1-5-3)。また、その理由については、「気候変動や自然災害が輸出国における食料生産に影響を与え、必要な輸入量を確保できなくなる懸念があるから」と回答した人が32.1%と最も高くなりました(図表1-5-4)。世界的な食料需要の増加や国際情勢の不安定化等に伴う食料安全保障上のリスクが高まる中、将来にわたって食料を安定的に確保していくことが求められています。
(サプライチェーンの強靱化に向けた取組が重要)
公庫が令和7(2025)年7月に実施した調査によると、食品産業全体における外国産農林水産物の利用・調達に対する企業の影響について、「調達価格が上昇した」と回答した企業が64.1%と最も多くなりました(図表1-5-5)。また、同調査によると、食品事業者が取り組んでいる影響への対策については、「価格転嫁」を挙げた企業が68.5%で最も多く、次いで「商品設計の見直し」、「調達先(取引企業)を変更」の順となっています(図表1-5-6)。実際に、食品事業者がサプライチェーンの強靱(きょうじん)化に向けて、原材料の安定調達等に必要な措置を講ずる動きも見られています。
(2)食料・農業生産資材の安定的な輸入の確保
(食料・農業生産資材の安定的な輸入の確保を推進)
食料・農業生産資材を安定的に輸入するため、農林水産省では、輸入相手国における調達網の強靱化に向け、我が国の事業者が海外現地で行う穀物等の集出荷・港湾施設等への投資案件の形成を支援するとともに、輸入相手国の多様化の観点も含め、輸入相手国との政府間等による対話の枠組みの整備、海外からの情報収集、国内における官民による情報共有等を推進することとしています。
輸入相手国との政府間等による対話の枠組みの整備に向けた取組の一環として、令和7(2025)年6月に外務省と共同でブラジルのサンタ・カタリーナ州との間で意向表明書に署名し、我が国への穀物の安定的な供給のため、港湾や集荷・船積み施設等の物流インフラネットワークを整備することの重要性を認識するとともに、同州で活動する我が国企業の農業・食品関連産業のビジネス環境の改善に向けて協力していくこと等を表明しました。
日伯グレイントークス
また、同年3月の日伯首脳会談において、両国の協力文書である「日・ブラジル戦略的グローバル・パートナーシップ・アクション・プラン2025-2030」が採択され、ブラジル産穀物の我が国への安定的な供給等の強靱かつ信頼性のあるサプライチェーンの構築に関する協力を進めることとしています。同プラン及び令和6(2024)年9月にブラジル農業・畜産省及び農業・開発省との間で締結した「農業・食料分野における協力に関する政府間覚書」のフォローアップとして、令和7(2025)年8月には穀物の安定供給に関する官民合同の対話である「日伯グレイントークス」を行い、両国の政府関係者から、ブラジルからの穀物の安定供給に向けた政策課題及び今後の連携強化の方向性について提言を行ったほか、両国の企業・団体から、ブラジル産穀物の生産・輸出拡大のポテンシャルや穀物輸送のインフラ整備の重要性について発表が行われ、引き続き、連携強化を図ることで一致しました。
令和7(2025)年10月には、アメリカ合衆国小麦連合会との間で、米国から我が国への小麦供給の安定化に関する協力覚書に署名し、両者の連携を強化することとしました。
さらに、官民による情報共有の取組の一環として、農林水産省では、令和6(2024)年6月に開催した食料の安定的な輸入の確保に関する協議会合を実務的にフォローアップするため、我が国への日々の輸入を担っている企業との間で連絡会を開催し、主要穀物等の調達をめぐる国内外の情勢等について継続的に意見交換を行っています。
今後も様々な機会を通じ、我が国の輸入事業者が行う輸入・調達事業をめぐる課題や要望を適切に把握の上、官民の協力・連携の下に関連施策を講ずることとしています。
(主要穀物等の安定的かつ効率的な輸入に向けた港湾機能の強化)
我が国では、食料の多くを海外からの輸入に依存しており、その輸送手段として海運が大きな役割を担っています。特に、輸入穀物の多くはバルク船と呼ばれる貨物船で輸送されており、輸送効率化のため、国際的にバルク船の大型化が進んでいます。一方、我が国の港湾は、岸壁の水深が10~14mであることが多く、大型バルク船が接岸可能な水深14m以上の港湾は限られていることから、安定的かつ効率的な輸入に向け、大型船に対応できる港湾整備等が重要となっています。
国土交通省では、国全体として安定的かつ効率的なバルク貨物の海上輸送網の形成を図るため、大型船に対応した港湾機能の確保や企業間連携により共同輸送を促進する国際バルク戦略港湾政策を推進しています。
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