MAFF TOPICS(2) コラム 和牛の生産を支える女性獣医師の一日
実家の影響で獣医師に。 現在は産業動物の診療を行う 椎葉絢香さんが獣医師を志したきっかけは、実家が宮崎県椎葉村で黒毛和牛の繁殖をする農家だったこと。幼いころから牛に触れていました。 「牛を育てるうえで、予防や治療は欠かせません。しかしながら、椎葉村のような山間地での診療は村外の人にとっては容易ではなく、獣医師が定着してくれません。『獣医師が村からまたいなくなる……』と嘆く父母を見て『だったら私が獣医師になる!』と思いました」 現在は鹿児島県にある個人開業の産業動物診療施設・シェパードで働く椎葉さん。1日の仕事は朝のミーティングから始まり、9時に診療を開始します。18時ごろまでの診療を終えたあとは、カルテや指示書などの事務作業を。月に10日程度は夜間当番があり、夜中でも診療に対応。そのほか繁殖検診、種雄牛検診、農場コンサルティングなどが月に数回入る多忙な毎日です。 大変なこともやりがいも多い 女性の産業動物獣医師 「大変なことは、牛にも男の人にも、力で負けることです。女性獣医師の共通の悩みですが、難産介助では『手が届かない、力が足りない……』と痛感することが多かったです。でも、そのおかげで道具や方法を工夫する診療スタイルを身につけることができました。自分の限界を常に知り、誰かに助けを求める勇気のほうが大事です」 逆にやりがいを感じることも多いのが産業動物獣医師の仕事です。農家の人が喜んでくれたときが何よりうれしい、と椎葉さんは語ります。 「治療によってなんとか出荷できる状態までいけたとき、農家さんから言われる『先生、ありがとう』の言葉にはいつも心がジーンとします。私が指導して受胎率が100%になった、以前治療した牛がA5ランクだった、と言われるとうれしくて、つい農家さんとハイタッチします(笑)」 小規模農家も日本の畜産を支えている。 いつかは地元のために貢献を 椎葉さんは、大規模に効率良く牛を飼うことだけがこれからの日本の畜産を支えていくとは思わない、と小規模農家に期待を寄せます。 「それぞれがそれぞれの場所でオリジナルの和牛を育て、誇りを持った農家さんが増えていけばいいなと思います。そのためにも、農場の衛生指導や飼養管理などのアドバイスもでき、常に農家さんの気持ちに添えるような獣医師を目指したいです。そして、いつか椎葉村に帰り、小規模農家を含め、地元の人のために貢献したいです」 |
毎朝のミーティングでは治療中の牛について報告し、治療方針を全員で検討する。 今日も元気に"MY診療車"で往診!勤務3年目、宮崎県出身の椎葉獣医師。 牛のお尻から検診中。肥育牛への直腸検査。 「牛の病態を分かりやすく説明し、農家さんの気持ちに添えるような診療がモットーです」 |
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