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農林水産省

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令和6年度第4回畜産部会議事録

令和6年度第4回畜産部会議事録(PDF : 604KB)

1. 日時及び場所

日時:令和6年9月10日(火曜日) 13時10分~16時05分

会場:農林水産省 第3特別会議室(web併催)

2. 議事

○新井畜産総合推進室長
時間になりましたので、ただいまから令和6年度第4回食料・農業・農村政策審議会畜産部会を開催いたします。
委員の皆様におかれましては御多忙中にもかかわらず御出席を賜り、ありがとうございます。
それでは、小針部会長に議事をお進めいただきたいと思いますので、どうぞよろしくお願いいたします。
 
小針部会長
部会長の小針でございます。本日もどうぞよろしくお願いいたします。
まず始めに、本日、武村農林水産副大臣に御出席いただいておりますので、御挨拶をお願いいたします。
 
武村農林水産副大臣
皆様、こんにちは。ただいま御紹介を頂きました農林水産副大臣の武村展英でございます。
食料・農業・農村政策審議会畜産部会の開催に当たりまして、一言御挨拶を申し上げます。
まず、委員の皆様におかれましては御多忙の中こうしてお集まりを頂きましたこと、心から感謝を申し上げます。
我が国の農林水産業を取り巻く情勢は、気候変動等による自然災害の多発、国内人口の減少に伴う国内需要の減少、そして農業従事者の減少などの課題が山積しているところです。このような課題を乗り越え、農業の生産性向上と持続可能性の両立、そして農村地域社会を維持していくため、関係の皆様と一体となって全力で取り組んでいるところであります。
近年の円安や物価高の影響によりまして、畜産、酪農におきましては飼料費をはじめとした生産コストが上昇し、高止まりするなど厳しい経営環境にあると認識しております。一方で、生産者や関係機関の方々の御努力と国の支援策等によりまして、畜産分野の産出額や牛肉等の輸出が堅調に伸びているなどの成果が上がっているところであります。
このような中、令和2年に策定されました酪農及び肉用牛生産の近代化を図るための基本方針、また家畜改良増殖目標につきまして、食料・農業・農村基本計画と時を同じくして見直すこととし、本日これをお諮りさせていただきます。
これまでも畜産部会では、酪農、肉用牛の生産者や流通・小売関係の方々から現場の声を幅広く聞いてこられたと承知しております。これまでの部会では、ICTを活用した先進的な経営、そしてまた飼養基盤に基づく安定的な経営、更には環境負荷低減に取り組む経営など、現在の畜産が直面する課題に対応した有意義な取組を発表いただいたと聞いております。
今後、酪肉近等の見直しに向けて本格的な御審議をお願いしたいと存じますが、現場の実態をよく把握しながら、畜産をめぐる様々な情勢の変化に的確に対応した方針を示すことができるように、忌憚なき御意見を賜りますことをお願い申し上げまして、私の御挨拶とさせていただきます。
どうぞよろしくお願いいたします。
 
小針部会長
ありがとうございました。
本日は酪農及び肉用牛生産の近代化を図るための基本方針と家畜改良増殖目標について、農林水産大臣臨時代理より食料・農業・農村政策審議会に対し諮問がございますので、武村副大臣よりお願いいたします。
 
武村農林水産副大臣
(二つの諮問文を読み上げ。)
食料・農業・農村政策審議会
会長大橋弘殿
 
諮問
 
酪農及び肉用牛生産の振興に関する法律(昭和29年法律第182号)第2条の2第1項の規定に基づき酪農及び肉用牛生産の近代化を図るための基本方針を定めるに当たり留意すべき事項について、同条第5項の規定に基づき、貴審議会の意見を求める。
 
食料・農業・農村政策審議会
会長大橋弘殿
 
諮問
 
家畜改良増殖法(昭和25年法律第209号)第3条の2第1項の規定に基づき家畜改良増殖目標を定めるに当たり留意すべき事項について、同条第3項の規定に基づき、貴審議会の意見を求める。
また、鶏の改良増殖目標についてもこれに準じて定めたいので、併せて意見を求める。
 
武村農林水産副大臣
それでは、どうぞよろしくお願いいたします。(諮問文を小針部会長に手交)
 
小針部会長
ありがとうございました。
撮影の方はここで終了となりますので、御退室願います。
 
(報道退室)
 
小針部会長
武村副大臣におかれましては、公務のため、ここで御退席されます。
ありがとうございました。
 
武村農林水産副大臣
どうぞよろしくお願いいたします。
 
小針部会長
それでは、議事を進めます。
まず、本日の配付資料の確認、委員の出欠状況の報告などについて事務局からお願いいたします。
 
新井畜産総合推進室長
まず、本日配付しております資料について確認させていただきます。
御出席の委員におかれましてはお手元のパソコン端末に資料1から12、参考資料1、2と、ちょっと数が多うございますけれども、計14個のシートが表示されているかと思いますので、それらが開かれていることを御確認ください。
また、パソコン端末の使用について不明な点がございましたら、近くにおります職員に遠慮なくお問合せいただければと思います。
次に、本日の出席ですけれども、10名の委員の皆様に出席を頂いております。
このたび本部会の臨時委員に改選がございましたので、御紹介させていただきます。
これまで3年にわたり部会の臨時委員をお務めいただいた日本食肉市場卸売協会の駒井委員が辞任されまして、今回、新たに丸橋委員に御就任いただくこととなりました。
丸橋委員、どうぞよろしくお願いいたします。
 
丸橋委員
よろしくお願いします。
 
新井畜産総合推進室長
なお、農水省側におきましても、7月の人事異動に伴いまして松本畜産局長以下、課長の異動がございましたので、その旨、御紹介いたします。詳細は割愛させていただきますが、座席表など御確認いただければ幸いでございます。
本日御出席いただいている委員のうち、椛木委員、宮島委員におかれましてはリモートにて参加いただいておりますので、よろしくお願いいたします。
また、本日は、石田委員、井上委員、大山委員、川田委員、里井委員、庄司委員、羽田委員、彦坂委員、松田委員におかれましては御都合により御欠席との連絡を受けております。
審議会に関する規定では、委員及び議事に関係のある臨時委員の3分の1以上の出席がなければ会議を開き、議決することができないと定められておりますが、規定数を満たしていることを御報告いたします。
以上でございます。
 
小針部会長
ありがとうございました。
本日は資料が多岐にわたりますが、一通り農水省から御説明を頂いた後に、各委員から全般を通じて御意見を頂きたいと考えております。皆様、本日はよろしくお願いいたします。
それでは、議事に入ります。
先ほど酪肉近及び家畜改良増殖目標の見直しについて諮問を受けまして、これから審議していくわけでございますが、審議に当たっては次期食料・農業・農村基本計画の検討状況も見つつ、当部会において複数回にわたって審議していく必要があります。このため、今後の審議の進め方について事務局から説明をお願いいたします。
 
新井畜産総合推進室長
私から、今後の審議の進め方について御説明、御提案申し上げます。
資料4「今後の畜産部会のスケジュール(案)」を御覧ください。今年度中の酪肉近の答申に向けた今後のスケジュール案をお示ししております。
上に9月の欄がございますけれども、こちらが本日の畜産部会の内容となっております。今後、10月から11月にかけて3回ほど、テーマごとに深掘りした議論を行いたいと考えております。テーマは、1回目が酪農・乳業、2回目が肉用牛・食肉、3回目、最後が飼料・その他で考えておるところです。その後、年明けの1月に酪肉近の構成案、2月に骨子案、3月中旬頃に本文案を御議論いただきまして、3月下旬に答申を頂けるように進めていきたいと考えております。
また、表の右側に「その他」とありますけれども、本日、同じく諮問をさせていただいた家畜改良増殖目標や関連する家畜排せつ物の方針、養豚農業の基本方針の進め方についても記載しております。
これらの具体的な議論については別の会議体で並行して行うことになりますが、こちらについても年明け以降、本部会に提示をした上で答申、決定していきたいと考えております。
なお、下に※がございますけれども、本スケジュールについては議論の進捗状況などにより変更があり得ます。
また、これとは別に、畜産物価格を決定する部会が開かれることになると思います。例年であれば12月頃ですが、現時点では未定ですので、あらかじめ御承知おきいただければと思います。
私からは、以上でございます。
 
小針部会長
ありがとうございました。
今、事務局から示されました審議の進め方の案について、このような形で進めさせていただくことでよろしいでしょうか。
 
(異議なし)
 
小針部会長
それでは、このような形で進めていきたいと思います。
次に、酪肉近の見直しを審議していくに当たり、現行の酪肉近における需要の長期見通し、生産数量目標などの現状、現行の酪肉近策定後の情勢の変化と対応状況について、続けて説明をお願いいたします。
 
木下総務課長
総務課長でございます。私から説明させていただきます。
まず、資料5について御説明させていただきます。
酪肉近では、酪農及び肉用牛生産の振興に関する法律に基づきまして、生乳の地域別の需要の長期見通しと生産数量目標、牛肉の需要の長期見通しと生産数量目標、乳牛及び肉用牛の地域別の飼養頭数目標を設定することとされております。今後、酪肉近の見直しについて御審議いただくに当たり、令和2年3月に策定した現行の酪肉近における需要の見通しや生産数量目標などについて御説明いたします。
1ページを御覧ください。
ここでは、生乳の需要の長期見通しについて記載しています。
現行の長期見通しの設定の考え方としましては、人口減少の影響はあるものの、飲用牛乳は横ばい、健康機能への評価の高まりなどにより生クリームやチーズの需要が増加すると見込んでおりました。現状の評価としては、飲用などの仕向け量がおおむね横ばいで推移する一方、乳製品向けは特に脱脂粉乳の需要が低迷して需給ギャップが生じ、過剰在庫が発生する状況となっています。
このため、生産者団体と乳業者が協調した在庫削減対策を実施しました。
なお、増加が見込まれていた生クリームやチーズの消費量は、おおむね横ばいで推移しております。
2ページを御覧ください。
生乳の生産数量と乳牛の飼養頭数の目標です。
現行目標については乳製品の需要の伸びを見込み、令和12年度に北海道で440万トン、都府県で340万トンの計780万トンと設定しております。また、乳牛の飼養頭数については、780万トンの生乳の生産数量目標のほか1頭当たり乳量の増加などの生産性向上等を考慮し、132万頭と設定しております。
現状の評価としては、改良による個体乳量の増加と飼養頭数の増加により生乳生産量は令和3年度まで増加しましたが、令和4年度及び5年度は需給ギャップが生じ、生産抑制に取り組んだこと等により、飼養頭数及び生乳生産量は減少に転じました。
3ページを御覧ください。
次は、牛肉の需要の長期見通しについてです。
現行の酪肉近では、1人当たりの消費量が増加し、令和12年度における国内消費仕向け量を枝肉換算で134万トンと見込んでおりました。
現状の評価としては、1人当たりの消費量は令和2年度までは増加傾向で推移しましたが、その後、新型コロナウイルス感染症や物価高の影響などにより減少した結果、国内消費仕向け量も減少傾向で推移しています。
4ページを御覧ください。
牛肉の生産量と肉用牛の飼養頭数の目標についてです。
現行の酪肉近において牛肉の生産量の目標は、堅調であった国内需要や輸出拡大に対応するため和牛の生産量を増加させていくとの考えの下、令和12年度に枝肉換算で57万トンと設定しています。また、肉用牛の飼養頭数に関しては、生産数量目標の57万トンのほか1頭当たりの枝肉重量の向上等を考慮し、303万頭と設定しております。
現状の評価としては、乳用種は性判別精液の活用、和牛の精液や受精卵の利用増加等により減少している一方、肉用種は、繁殖経営の規模拡大や酪農経営における和牛受精卵移植の増加により増加傾向にあり、全体として、牛肉生産量、肉用牛飼養頭数ともに増加傾向で推移しています。
5ページ以降は御参考として、酪農及び肉用牛経営の収益性の状況を記載しています。
5ページですけれども、酪農経営については上の北海道、下の都府県ともに、コストの上昇等により所得は減少傾向となっております。
6ページは肉用牛繁殖経営及び肥育経営の収益性についてでございますが、酪農と同様に、生産コストの上昇や子牛価格、枝肉価格の低下により所得は減少傾向、又は低調に推移しております。
現行の酪肉近における需要の長期見通し、生産数量目標などの現状についての説明は、以上でございます。
 
引き続きまして、資料6でございます。
現行の酪肉近が策定されました令和2年以降の酪農、畜産をめぐる情勢の変化と対応状況について、資料6に基づき御説明いたします。
1ページを御覧ください。
ここでは畜産全体の産出額の変化を示しています。平成29年から令和4年までの5年間で畜産全体の産出額は2,156億円増加し、農業全体の生産額に占めるシェアも4ポイント増加しています。
2ページを御覧ください。
次に、現行酪肉近策定時からの情勢の変化について御説明いたします。
現行酪肉近策定の背景となった平成27年から令和2年3月までの状況は、畜産物の需要は堅調で国内の乳製品や牛肉の需要が拡大しておりました。また、国際的にも新たな市場開拓や輸出拡大に挑める環境が整いつつある状況でした。供給面においては着実に規模拡大が進み、生産基盤の縮小に歯止めがかかりつつありましたが、これら畜産物の需要増には対応できない状況にありました。これらのことから、需要に応える供給を実現するため意欲ある経営が生産性向上や規模拡大を進め、供給量を増やす努力が行われていた時期でありました。
下段にその後の主な情勢の変化を示しています。
一つ目は、2020年以降の新型コロナウイルス感染症の流行です。需要に応えるべく生産拡大の努力を進め、数年間の取組の成果が見え始めてきた中、消費が落ち込み生乳や牛肉の需給が緩和しまして、特に脱脂粉乳においては過剰在庫が発生する状況となりました。
二つ目として、ウクライナ情勢や円安の進行などによる資材・エネルギー価格の高騰があります。酪農・畜産経営において配合飼料をはじめとした生産コストが上昇したことで、国産飼料確保の重要性が更に高まっております。
三つ目として、温室効果ガス削減などの環境負荷低減に対する世界的な関心の高まりがあります。
農林水産省では令和3年5月にみどりの食料システム戦略を策定しており、畜産においても環境や持続性に配慮した生産を行っていくことが必要となっています。
3ページを御覧ください。
ここから、具体的な項目の現状の説明に入ります。
まず、酪農ですが、生乳の生産と需給についてです。
左の折れ線グラフは、生乳生産量です。上にある北海道での増産が堅調に推移しましたが、都府県の生産量は現行酪肉近の目標ベースを下回っています。他方、隣の折れ線グラフにあるとおり、需要は新型コロナウイルスを契機に低迷し、その結果、右の棒グラフのように脱脂粉乳の過剰在庫が発生し、在庫低減対策が行われてきたところです。
4ページを御覧ください。
牛乳・乳製品の輸出についてです。
左のグラフにあるように輸出額は着実に増加しており、今後もアジアを中心とした旺盛な需要を取り込んでいくことが重要となります。しかしながら、牛乳・乳製品の輸出に占める国産生乳使用量は少なく、約730万トンの国内生乳生産のうち2万トン弱にとどまっています。
5ページを御覧ください。
酪農経営関係についてです。
右下のグラフにあるように飼養戸数は減少しておりますが、飼養頭数が増加傾向にあったことや1頭当たり乳量の増加に支えられ、生乳生産量が増加してきました。令和4年以降は前述の需給ギャップにより生産抑制に取り組み、飼養頭数が減少しています。
なお、飼養戸数は減少しておりますが、右上のグラフにありますように、1戸当たりの飼養頭数は10年前に比べ約1.4倍に増加しております。
6ページを御覧ください。
ここでは収入やコストの推移をお示ししています。それぞれのグラフにおいて赤い矢印でお示ししていますが、令和4年度に飼料費などのコストが急増するとともに、副産物である雄子牛の価格が急落し、収支が大きく悪化しました。こうした状況を踏まえ、令和4年11月以降、乳価の引き上げが数次にわたって行われたところです。
7ページを御覧ください。
ここからは、肉用牛関係についてです。
まずは牛肉の生産・需給関係です。
生産面では、左側の折れ線グラフにあるとおり和牛繁殖雌牛が増加傾向で推移するとともに、真ん中のグラフにある和牛受精卵移植が特に酪農経営において拡大し、その結果、国産牛肉の生産量が和牛肉を中心に増加してきました。一方、牛肉全体の消費量は、右下の棒グラフにあるとおり、新型コロナウイルス感染症や物価高の影響を受け令和2年度以降減少していますが、国産牛肉の消費量は、生産量の増加に伴い増加しております。
8ページを御覧ください。
牛肉の輸出は、左のグラフにあるとおり着実に増加しており、令和5年は過去最高となりました。輸出には輸出先国が求める衛生条件に適合した食肉処理施設の整備、認定が必要であり、施設整備の支援、施設認定の迅速化の推進等により認定施設等が着実に増加しております。
また、輸出額目標の達成に向けて商流の構築や拡大の支援など様々な輸出促進の取組を推進しているものの、右下の囲みに記載があります牛肉の輸出額目標である令和7年に1,600億円、令和12年に3,600億円という野心的な数値に対しては、目標設定時に見込んだ中国への輸出再開が実現していないことなどによりまして、目標と実績に大きな乖離がある状況です。
9ページを御覧ください。
次に、牛肉の価格についてです。
まず、左上の折れ線グラフのように国産牛肉の生産量が増加する中で、物価高騰に伴う消費者の購買力の低下により、国産牛の枝肉価格は弱含みで推移しています。
その下のグラフは和子牛価格の推移ですが、肉用子牛の生産頭数が増加する一方で、枝肉価格の低迷や肥育コストの増加により肥育農家の子牛購買意欲が低下し、子牛価格は大きく下落しています。
右側の小売り価格については、直近では国産牛肉価格はおおむね横ばいとなる一方で、輸入牛肉は円安等を反映して上昇しておりますが、輸入牛肉と国産牛肉との価格の開きは依然大きい状況です。
こうした状況から、増頭奨励や和牛受精卵移植への補助といった政策による増頭支援は一時停止し、若い繁殖雌牛への更新を支援し、成長がよく肉質に優れた肉用子牛の生産を推進しております。
10ページを御覧ください。
次に、肉用牛経営関係です。
左の表で肉用牛の飼養戸数と頭数をお示ししていますが、繁殖農家、肥育農家ともに戸数は減少する一方で、1戸当たりの飼養頭数は増加し、規模拡大は進展しております。
右側のグラフは、繁殖雌牛及び肥育牛の1頭当たりコストの推移です。上の繁殖雌牛、下の肥育牛ともに、緑色の折れ線グラフのとおり令和4年度には生産コストが増加しております。
11ページを御覧ください。
次に、飼料について御説明いたします。
まずは国産飼料の生産・利用関係です。
輸入飼料価格が高止まりする中、畜産経営の安定を図るためには輸入飼料への過度な依存から脱却し、国内の飼料生産基盤に立脚した足腰の強い畜産業に転換することが重要です。一方で、左側の表のとおり、飼料自給率はおおむね横ばいで推移している状況です。
飼料の生産、利用拡大を更に進めるためには労働力の確保や単収等の生産性の向上が課題であることから、耕畜連携や飼料生産組織の運営強化が重要です。
右側のグラフで飼料作物の単収を比較しておりますが、単位面積当たり栄養量の多い青刈りとうもろこしの生産拡大等が重要であると考えております。このため、本年度中に市町村が策定する地域計画において飼料生産を位置付けるよう促し、飼料の産地づくりを推進しております。
12ページを御覧ください。
続いて、配合飼料製造の関係です。
左の表のとおり配合飼料工場数は減少しているものの、近年の生産集約の動きは鈍化しています。また、製造される配合飼料の種類は1万以上、1工場当たりでも平均100以上にもなっていることから、生産者団体が商品数を抑えて配合飼料を共同購入することにより、購入価格を引き下げる工夫をしている事例も見られます。更に、飼料タンクへの補充などの高所作業や突発的な発注といった飼料輸送特有の負担が存在するため、飼料流通の効率化、標準化が重要でございます。
13ページを御覧ください。
配合飼料価格安定制度についてです。
今般の配合飼料価格高騰に伴い、総額5,700億円を超える補塡金を生産者に交付して激変緩和の機能を果たしてきました。一方、価格高騰が急激かつ長期間に渡ったため民間負担分の財源が払底し、1,200億円を超える借入れを行うなど巨額の財源負担を要する場合がある仕組みでありまして、その持続可能性に対する懸念が顕在化したところです。このため農林水産省において各基金の関係者で構成する検討会を立ち上げ、より持続的な制度となるよう、現在、制度の在り方について検討しているところであり、一定の取りまとめができた場合には当部会にも御報告したいと考えております。
14ページを御覧ください。
ここからは、その他の分野になります。
まずは担い手確保・新規就農等の経営支援関係です。
新規参入者数は比較的初期投資の低い肉用牛経営で多く、新規雇用就農者数についても法人化の進む肉用牛系で多い状況です。また、右側のグラフのとおり、今後20年間で現在60歳以上の年齢層がリタイアした場合、従事者数は酪農で約2分の1、肉用牛全体で約4分の1にまで減少する見込です。
15ページを御覧ください。
労働力不足への対応についてです。
畜産の現場では省力化機器の導入が進んでいるものの、1人当たりの年間平均労働時間は酪農、肉用牛ともに増加しております。人手不足に対応するため、外国人材の活用のほか外部支援組織の活用も進んでいます。
16ページを御覧ください。
家畜防疫についてです。
海外悪性伝染病である口蹄疫やアフリカ豚熱については、現在、我が国では発生しておりませんが、アジア諸国で広がっており、我が国に侵入するリスクは極めて高い状況です。このため、国では、水際対策の強化に加えて農場における飼養衛生管理基準の遵守徹底を図っております。
豚熱については、平成30年に我が国において26年ぶりに発生して以降、93例確認されており、昨年8月には佐賀県でも発生したことから、九州全域でもワクチン接種を行っています。
17ページを御覧ください。
アニマルウェルフェアについてです。
畜産局では、昨年5月に国際基準であるWOAHコードに沿った国の指針を新たに発出いたしました。これまで説明会の開催などにより周知を図ってまいりましたが、今年度より実施する取組状況の調査結果を踏まえ、達成目標の設定やクロスコンプライアンスの対象とすることについても検討し、さらなる普及定着を図っていくこととしております。
18ページを御覧ください。
最後に、環境負荷低減への対応です。
先ほども御紹介したとおり、温室効果ガス削減などの環境負荷低減に対する関心は世界的に高まっており、EUにおいては公的機関による温室効果ガス削減の認証制度が検討されるなど、各国においてその取組が進展しております。我が国においても温室効果ガスの削減目標が設定されたほか、令和3年に策定された緑の食料システム戦略などに基づき、取組が進められています。
グラフの中ほどに青色の吹き出しでお示ししておりますが、畜産由来の温室効果ガスは農林水産分野由来の約3割を占めており、畜産業においてもその削減が求められているところでございます。
説明は、以上でございます。
 
小針部会長
ありがとうございました。
次に、家畜改良増殖の目標見直しを審議するに当たり、家畜改良増殖目標について説明をお願いいたします。
 
冨澤畜産振興課長
畜産振興課長の冨澤でございます。よろしくお願いいたします。
資料7「家畜改良増殖目標について」を御覧いただきたいと思います。
1ページをお開きいただきますようお願いいたします。
家畜改良増殖目標につきましては、先ほど諮問させていただいたところでございますが、食料・農業・農村政策審議会の御意見を伺った上で、牛、馬、めん羊、山羊、豚の畜種ごとに家畜の能力、体型、頭数等について、一定期間における向上に関する目標を定めることになっております。
この目標につきましては、おおむね5年を超えない範囲で見直すこととされておりまして、これまで食料・農業・農村基本計画や酪肉近の見直しに合わせて策定しているところでございます。
前回は令和2年3月に見直しを行っておりますが、家畜改良増殖目標につきましては専門性が非常に高いことから、過去の見直しに当たっては乳用牛、肉用牛、豚などの畜種別に専門の検討の場を設定させていただきまして、そこで御議論を頂いた後に本部会にお諮りする形を取らせていただいたところです。今回もこれまでと同様な審議方法を取らせていただきたいと考えておりますので、よろしくお願いします。
また、先ほどの諮問の中にもございましたけれども、法の規定にはございませんが、鶏についてもこれまでと同様、改良増殖目標を定めることにしておりますので、同様の取扱いをさせていただきたいと考えております。
続きまして、2ページを御覧いただきたいと思います。
現行の家畜及び鶏の改良増殖目標の概要でございます。
主なものを御説明させていただきますが、現行の目標は当時の10年後、令和12年度を目標年度として設定しております。
まず乳用牛でございますけれども、乳用牛につきましては当時、受胎率の低下や供用期間の短縮傾向が続いていたことや、労働負担や担い手不足を背景に酪農経営の戸数減少により生乳生産が減少するといった課題があったことを踏まえまして、こちらにありますように乳用牛の供用期間を延長するための改良の推進や、労働負担の軽減を促進するための搾乳ロボット適合性が高い体型への改良といったことを盛り込んだところでございます。
また、数値目標として乳量や乳成分、具体的には乳脂肪、無脂乳固形分、乳蛋白質等に関する目標値も設定しておりまして、例えば乳量ですと、当時の年間1頭当たり乳量である8,600キロを、9,000キロから9,500キロという水準に伸ばしていこうという目標を設定させていただいたところでございます。
肉用牛につきましては、当時の課題としてTPPや日米貿易協定という経済連携が進展したことや、輸出の拡大を図っていく状況において、生産基盤を強化していくといった課題があることや、消費者ニーズが多様化している中で、いわゆるサシ、脂肪交雑偏重の和牛改良でいいのかといった課題がありましたので、こちらにあるような形で生産性を向上することで、増体性や歩留りなどの産肉能力や繁殖性の更なる改良を促進すること、多様な消費者ニーズに対応するため、不飽和脂肪酸など食味に関する形質の改良ということで、オレイン酸等を考慮したような改良を推進するといった形で定めさせていただきました。
また、能力に関する目標といたしましては産肉能力に関するものとして、こちらにあるように、日齢枝肉重量や繁殖能力等の目標を設定しているところでございます。特に脂肪交雑に関しましては、当時十分な改良水準に達していたということで、消費者ニーズを踏まえて、さらなる向上ではなく現在の水準を維持するという形で設定させていただいたということでございます。
豚や鶏についても当時の消費者ニーズや生産基盤の強化という形で、繁殖性や増体性の向上とか卵質の改良など、それぞれの課題に対応する形で目標を設定させていただいたところでございます。
続きまして、3ページを御覧ください。
こちらが、現行の改良増殖目標で設定した数値でございます。
まず、乳用牛について御説明させていただきますと、こちらにありますような形で牛乳・乳製品の需給動向に即した生産を行うことを旨として、家畜の能力とその需給動向を踏まえた形で頭数目標を設定するということで、乳用牛については132万頭と設定させていただき、肉用牛については、牛肉の需要動向に即した生産を行うということで1頭当たりの枝肉生産量等を踏まえて飼養頭数目標を設定し、総頭数では303万頭と設定させていただいております。
それぞれの畜種についても生産目標を設定させていただきましたが、需給動向に即して、生産数量を踏まえて頭数は設定させていただいている形になります。
目標年度である令和12年度の数値でございますけれども、乳用牛につきましてはおおむね増加傾向で乳量が推移してきたということでございまして、順調に改良は進んでいますが、供用期間や繁殖性については低下するような事態も見られておりまして、更に改良が必要な状況になっていると考えておりますし、肉用牛については増体などの産肉性の改良が順調に進んでおりますが、分娩間隔や肥育期間、出荷月齢については横ばいで推移しておりまして、こちらの改良の推進が非常に重要になっていると考えております。
肉用牛の中には、先ほどお話ししましたオレイン酸などに着目したブランド化の動きも見られているところでございますけれども、いわゆる脂肪交雑、サシ偏重が続いておりますので、こういった課題を踏まえながら目標を設定していく必要があると考えております。
今後、畜種ごとの研究会において改良増殖に係る現状と課題を整理し、御議論いただいた上で本部会に随時お諮りしたいと考えておりますので、よろしくお願いしたいと思います。
以上でございます。
 
小針部会長
ありがとうございました。
今回の諮問事項ではないのですが、家畜排せつ物の管理の適正化及び利用の促進に関する法律に基づき、家畜排せつ物の利用の促進に関する基本方針を定めており、情勢の推移により必要が生じたときは変更することとなっております。酪農及び肉用牛生産を行う上で家畜排せつ物の処理等の畜産環境問題は密接に関わりますので、家畜排せつ物をめぐる現状について説明をお願いいたします。
 
冨澤畜産振興課長
続きまして、家畜排せつ物をめぐる現状について御説明させていただきます。
資料8をお願いいたします。
1ページを御覧いただきたいと思います。
こちらにつきましては現状の御説明ということで、家畜排せつ物の有効利用の状況について御説明したいと思います。
前回、令和2年3月の家畜排せつ物の基本方針の見直し以降、令和3年に策定されましたみどりの食料システム戦略や、令和4年に決定されました食料安全保障強化政策大綱におきまして、2050年までに化学肥料の使用量を30%削減するという目標を掲げておりまして、国内肥料資源としての堆肥の利用拡大を推進しているところでございます。
現状、家畜排せつ物につきましては、左下の円グラフを御覧いただきたいと思いますけれども、年間8,000万トン発生しておりまして、堆肥として農地に還元することなどにより約8割が農業利用されているところでございます。
次に、右の図を御覧いただきたいと思います。
耕地面積当たりでのリンベースでの家畜排せつ物発生量を色分けしたものでございます。赤色が濃いほど耕地面積に比べて家畜排せつ物量が多い地域でございまして、当然ながら畜産が盛んな地域での偏在が見られます。家畜排せつ物の利用を更に進めるためには、堆肥の高品質化やペレット化等による広域流通を進める必要がありますし、堆肥利用が進まない場合には、メタン発酵等によるエネルギー利用も有効な状況かと思います。
2ページをお開きください。
家畜排せつ物の有効利用の今の取組状況でございますが、家畜排せつ物の有効利用には広域流通が重要でございまして、現在は、左側の図にあるように、稲わらや飼料作物との交換による地域内での耕畜連携が主体でございますが、堆肥の有効活用を図るためには右のような形で、地域内での取組に併せましてJAや肥料メーカーとも連携しながら、市町村内から県内、県外へといった形で段階的な広域流通を検討する必要があると考えております。
しかしながら、広域流通を進める上では、一番下の四角で囲んでありますような課題がございまして、特に原料堆肥の品質向上とか、ペレット化施設の導入やそのコスト低減等が課題になっていると認識しているところでございます。
続きまして、3ページをお開きください。
畜産における環境負荷低減の状況でございます。
左の棒グラフを御覧ください。
畜産系由来の苦情発生件数でございますが、件数が一番多いのが悪臭になっておりますし、続きまして水質汚濁の関係ということで、畜産環境規制の適切な対応が必要となっております。特に水質汚濁防止法につきましては、左の先ほどの棒グラフの隣になりますけれども、硝酸性窒素等につきまして、一般排出基準への対応が困難な業種として豚や牛では暫定排水基準が設けられております。
下段中央に折れ線がございますけれども、この暫定排水基準が年々厳しくなっているところでございまして、一般排水基準への移行も見据えながら、低コストな排水処理技術の開発や、各農家段階での排出管理のさらなる改善が求められている状況にあるかと考えております。
また、右の表にございますように、先ほどと重なりますが、地球温暖化にも取り組む必要があるということです。畜産由来のGHGの排出量につきましては右下のグラフのとおりでございますけれども、農林水産由来の約3割を占めておりまして、更にその4割が家畜排せつ物由来でございます。J-クレジット制度の有効活用などを図りながら、GHG排出量を削減できる家畜排せつ物の管理方法への変更等を推進していくことが重要となっております。
続きまして、4ページをお開きください。
家畜排せつ物の利用の促進を図るための基本方針の概要でございます。
この基本方針につきましては、農林水産大臣が定めることとされております。また、情勢の変化によりまして必要が生じたときは、これを変更することになっております。前回、令和元年度の見直し以降、先ほどとも重なりますが、令和3年のみどり戦略、令和4年の食料安全保障強化政策大綱の策定、直近の食料・農業・農村基本法の改正がございましたので、こうした情勢を踏まえまして、このタイミングで基本方針を見直したいと考えているところでございます。
続きまして、5ページを御覧ください。
現行の、家畜排せつ物利用の促進を図るための基本方針の概要でございます。
大きく分けまして、三つの内容について定めております。
一つ目が堆肥の利用拡大ということで、堆肥の完熟化や化学肥料の混合、ペレット化による広域流通等について定めているところでございます。二つ目が、エネルギー利用の推進でございます。堆肥としての利用が難しい場合にはバイオマス発電の原料として、固定買取制度や自身の経営の光熱費削減に利用することなどを記載しております。三つ目が畜産環境問題への対応ということで、悪臭や排水といった環境対策の在り方や、堆肥舎の長寿命化などについて記載させていただいたところでございます。
6ページを御覧ください。
基本方針の見直しのスケジュールでございます。
基本方針の見直しといたしまして、本年6月以降、年度内に全4回、有識者と専門家による意見交換を行いたいと考えております。第1回目につきましては、6月18日に「環境規制への対応」ということで開催させていただいております。第2回につきましては今週13日に開催する予定でございまして、「国内肥料資源としての堆肥の有効活用」について御議論いただきたいと考えております。
その後、第3回、第4回を経まして骨子案を作成いたしまして、来年2月をめどに本審議会畜産部会の委員の皆様に骨子案を、3月に見直し案を御説明させていただくべく作業を進めたいと考えております。
その後、来年3月以降に基本方針を公表できればと考えておりまして、都道府県への説明など所要の取組を進めるという形で検討しているところでございます。
こういったことでございますので、よろしくお願いしたいと思います。
以上でございます。
 
廣岡企画課長
企画課長の廣岡でございます。
私から、養豚農業の振興をめぐる現状について御説明を差し上げたいと思います。
資料9を御覧ください。
養豚農業の振興に関する基本方針でございますが、養豚農業振興法に基づきまして平成27年3月に策定されました。法律では、例えば5年に1度といった見直し時期の規定はございません。必要があるときは基本方針を変更すると規定されているところです。これまで、豚熱の感染拡大などがありましたので見直しを行っていませんでしたが、養豚を取り巻く情勢も変化してきていることを踏まえまして、見直しをすることにしたいと思っております。
養豚基本方針の議論は別の会議体で行うことになりますが、本日は、養豚農業の振興をめぐる現状について御説明させていただきます。
資料9の1ページを御覧ください。
まず、近年の豚の飼養戸数、頭数の推移でございます。
豚の飼養戸数については、減少しております。一方で、1戸当たりの飼養頭数は大きく増加している状況にございます。
2ページを御覧ください。
養豚経営における生産コストについてお示しいたしました。
左側のグラフは1頭当たりのコストを示しております。生産費のうち飼料費が約7割を占めております。そして、ここ2年の生産コストは、配合飼料価格の上昇により増加している状況にございます。
右上のグラフは、母豚の規模別のコストです。規模が大きくなるに従い飼料費あるいは労働費は減少する傾向にございますが、例えば獣医師料であるとか医薬品費、あるいは償却費などから成るその他の物財費についてはあまり減少しない傾向にございます。
右下にありますのは労働生産性についてのグラフですが、規模が大きくなるに従い、従事者1人当たりの販売頭数も労働時間当たりの販売頭数も大きくなっております。
次に、3ページを御覧ください。
こちらは飼料用米やエコフィードといった国内由来飼料の利活用の状況を示してございます。
左上のグラフが飼料用米の作付面積でございます。主食用米の需要によって変動している状況にございます。
右側のグラフは、エコフィードの製造数量でございます。近年はやや減少傾向で推移している状況です。
また、左下になりますけれども、例えば国内由来飼料は、豚肉のブランド化などにも用いられている状況にございます。
4ページを御覧ください。
衛生関係でございます。
国内では、豚熱が平成30年9月に岐阜県で26年ぶりに発生いたしました。それ以降、飼養衛生管理の徹底などもありまして発生数は減少しておりますが、現在も、散発的にではありますが、発生が見られている状況にございます。
また、PRRSといった家畜の生産性を低下させる慢性疾病についても発生が見られている状況にございます。
それから囲みの右の方、(ウ)アフリカ豚熱とございます。アフリカ豚熱については我が国では未発生でございますが、現在、日本など一部を除くアジアの全域で感染が拡大している状況にございます。
5ページを御覧ください。
豚肉のブランド化、差別化、消費の拡大についてです。
左上のグラフですが、国内の豚肉の消費構成割合を示したものです。家計消費、加工、外食などの割合が示されてございますが、家計消費が緩やかに高まっておりまして、テーブルミートとして重要となっていることが示されております。
また、輸入品との差別化あるいは競争力強化のために、特徴のある品種、系統を用いて肉質に特徴のある豚肉も我が国で生産されております。
5ページの右下でございます。豚肉の消費拡大の取組、例えば生産者団体の若手農家が消費拡大のイベントを開催して、国産豚肉の魅力をPRするといった取組もされております。
6ページを御覧ください。
こちらは10年前に策定した現行の基本方針でございます。
養豚農業について、国民の食生活の安定に寄与し、地域経済に貢献する重要な産業である、国内由来の飼料あるいは堆肥の相互利用を通じて循環型社会の経営に寄与する産業と位置付けております。
なお、養豚農業振興法は令和2年に改正されておりまして、豚の伝染性疾病の発生の予防及び豚の伝染性疾病が養豚農家の経営に及ぼす影響の緩和に関する事項が追加されております。今回、基本方針にこの対応を追記するほか、養豚農業を取り巻く情勢の変化を踏まえた見直しを進めてまいりたいと考えております。
以上でございます。
 
小針部会長
ありがとうございました。
次に、畜産酪農政策の現状と課題を整理するため、本年3月から酪農、肉用牛生産、畜産物流通等をテーマに畜産現場の第一線で御活躍されている方を当部会にお招きし、4回にわたってヒアリングを実施してきたところです。その際の主な御意見について事務局に整理していただきましたので、説明をお願いいたします。
 
新井畜産総合推進室長
資料10について御説明いたします。資料10をお開きください。
1ページになりますけれども、ヒアリング協力者の一覧がございます。御承知のとおり、畜産部会では3月以降、全部で4回にわたって国内各地の酪農、肉用牛生産の皆様、また流通や輸出、小売りなどの皆様から、それぞれの取組や課題について発表いただいてきたところです。本資料は、これらの議論を振り返る意味でテーマごとに意見をまとめたものになっております。
なお、発表者ごとの概要は参考資料1に整理しております。
2ページを御覧ください。
以下、若干駆け足になりますけれども、下線部分を中心に説明してまいります。
最初は、酪農関係の意見です。
ここでは、ICTなどを活用した経営状態や牛の個体ごとの可視化により労働時間を削減し、収益性を追求した経営の実現が可能となるといった意見、また、DX化については組織マネジメントと併せて取り入れることが必要といった意見、耕畜連携などに関し、地域資源を活用して生乳を生産することが重要といった意見、また、産次数を増やし乳量も抑えた経営を行っているが、その方が濃厚飼料多給型より支出が減って、経営によいといった意見があったところです。
次に3ページ、生乳需給の関係になります。
脱脂粉乳の過剰在庫問題については一時の危機的な状況は脱しつつあるが、対策を講じなければ生産が需要を上回る状況か継続するといった意見、また、自主流通業者であっても需給調整として加工を担うことが必要といった意見、需給調整について、酪農乳業関係者の全てに参加を求めるルールが必要といった意見がありました。
次に、4ページを御覧ください。
引き続きですけれども、酪農家間の不公平感や地域の分断が生じているという現場の声があるという意見のほか、系統・系統外にかかわらず、全国の生産者、乳業者、国が一体となった需給調整や公平性、平等性が確保される取組を求める意見があったとところです。また、新たに需要を確保するための新商品開発や輸出の拡大に取り組むことが重要といった意見もありました。
次に、5ページは牛乳乳製品の製造・流通・販売に関する意見です。
消費者に酪農経営の状況を説明していくことが重要といった意見、生産資材コストが高騰しており、製品価格へ転嫁したところ牛乳需要が減少したといった意見、売価を上げ過ぎるとライバル飲料に消費が流れるリスクがあるといった意見、また、NBからPBへの消費動向の変化に関する意見、消費者ニーズを踏まえた商品やBtoBでの商機の掘り起こしに関する意見がございました。
また、都府県の乳製品工場の閉鎖や縮小が相次ぎ、今後の工場の維持への懸念の声もございました。
次に、6ページを御覧ください。
ここから肉用牛の関係になります。
飼料費などの経費が上がっており、家族経営で見合った頭数を飼養することが今の時代に合っているといった意見、地元の肥育農家において青刈りとうもろこしを給与した牛の成績がよかったという意見、また、肥育期間の短縮や短期肥育については、多くの頭数を販売できるので売上が上がる点や1頭当たりのコストが下がる点がメリットである一方、販売価格が安くなるのが難点であり、環境への配慮などブランド化し、生産者が流通業者や消費者を巻き込み、連携することが必要との意見がございました。
また、交雑種は小売業者が取り扱いやすい価格帯であり、今、非常に人気。ただ、酪農家が何を種付けするかで交雑種の頭数が決まるので、供給頭数が不安定といった意見がありました。
7ページを御覧ください。
家畜市場の関係ですが、統合により売る側と買う側の双方にメリットがあるといった意見がありました。また、食肉センターの関係では、経験や技術を持った技術者の不足と施設の老朽化が課題であり、食肉センターが抱える問題は畜産バリューチェーン全体の問題として捉えることが必要との意見がありました。
小売りの関係では、価格が上昇してきている輸入牛肉から国産牛肉に消費がシフトしているといった意見、食肉全体では、牛肉から豚肉、豚肉から鶏肉へのシフトが見られるといった意見、和牛に関して、生産者がA5などを目指して生産する一方で消費者からは赤身の需要があり、ギャップを感じるといった意見がありました。
8ページになりますが、家畜市場の統合には大賛成との意見のほか、衛生条件が整備されたと蓄場を国内に幅広くつくることは更なる輸出の拡大につながるといった意見がございました。
9ページから、飼料の関係になります。
青刈りとうもろこしですが、台風リスクもあるが、調製の手間も少なく乳量の増加に寄与。一方で、収穫機などの投資が必要であるといった意見。良質な粗飼料生産に関し、生産から販売まで安定した品質である必要があり、スマート農業技術を活用しながら進めていきたいといった意見、また、地域資源を活用して生乳生産をすることが重要であり、飼料高騰対策の観点からもエコフィードを活用しているといった意見がありました。
次に、10ページです。
今年度の穀物需給バランスは世界的にも安定しているが、円安の影響で飼料穀物価格が高止まりしているといった意見、自給粗飼料の拡大について、機械、燃料、人件費などのコストも上がっている状況との意見、飼料用米は我が国の国土、気象との相性はよいが、子実用とうもろこしはなかなか単収が上がらない地域も多く、農機具も新たに導入しなければならず大変との意見、配合飼料価格安定制度について、複雑かつ多岐にわたる課題があるためしっかりと議論していくことが大事との意見がありました。
続いて、11ページも配合飼料の関係ですけれども、財政との関係から見ると、配合飼料価格安定制度のような短期的な支援策は必要だが、短期で終わらない事象については中長期的に考えていく必要があり、国民を含めた全体の納得感が得られなければならないとの意見がございました。
次に12ページ、輸出の関係になります。
ここでは、輸出に対応したと蓄場は限られ輸出が伸びない状況との意見、輸出可能国の増加、税関手続きの改善、EU市場の規制等に対する交渉に期待する意見、情勢変化に対応した柔軟な輸出の長期目標の設定と、施設整備等への支援の継続が必要といった意見がありました。
また、生乳や牛肉の需給については人口減少によって需要減が想定されるが、需要創出や輸出の拡大なども含め検討が必要との意見、また、8ページにもありましたが、衛生条件が整備されたと蓄場の整備に関する意見がありました。
13ページを御覧ください。
ここは環境、労働力の関係です。
環境負荷低減の関係ですが、取組が乳価に反映されるなど何らかのインセンティブが必要といった意見、コストが掛かっても他の一般牛肉と同じ価格で取引されており、差別化が難しく価格転嫁は容易ではないといった意見、消費者の理解を得るために環境に配慮した飼養方法を続け、取組に関するアピールを続けていく必要があるといった意見、環境負荷低減については関心がある若い世代への情報発信がポイントといった意見がありました。また、アニマルウェルフェアに関しては消費者に知名度がないので、その価値を伝えることが課題といった意見がありました。また、労働力関係に関しては、生産や製造の現場、施設での労働者及び後継者不足が深刻な問題との意見がございました。
最後になりますけれども、14ページ、価格や消費者理解の関係になります。
販売価格への転嫁が難しいという話をよく聞くといった意見、価格の上昇を消費者が受け入れてくれるかどうかが課題といった意見、コストを価格転嫁しても買ってもらえるよう農業施策と経済施策をセットで考える必要があり、プロダクトアウトな生産だけでは難しいと考えるといった意見、消費者がどのようなものを求めているか考慮した上で、それに見合った価格にするというきめ細やかな対応が必要といった意見がございました。
ヒアリングのポイントは以上でございますけれども、こういった意見も踏まえながら今後の議論を進めていければと考えております。
報告は、以上でございます。
 
小針部会長
ありがとうございました。
引き続きまして、国民からの意見・要望の募集についての説明をお願いします。
 
新井畜産総合推進室長
引き続き、資料11を御覧いただければと思います。
国民からの意見・要望の募集について御説明いたします。
酪肉近と家畜改良増殖目標の検討に際しましては、国民の皆様から広く御意見、御要望を募集しておりまして、今回も同様の意見募集を行いたいと考えてございます。
2枚目に詳細がございますけれども、具体的には、来月10月から12月末日までの3か月間を募集期間といたしまして、農林水産省、法務省及び地方農政局等のホームページにおいて意見募集を行います。郵送も可能としております。
意見募集開始時にはプレスリリースも行うなど、積極的な周知を行ってまいります。
また、2にも記載しておりますけれども、このほかの現場の声、実態の把握といたしましては、先ほど説明したとおり、これまでの畜産部会で国内各地の生産者や流通、小売り等の関係者の皆様からのヒアリングを行って、声を伺ってきたところでございます。また、畜産局といたしましては、通常業務において行う現地調査、意見交換の機会なども引き続き積極的に活用してまいります。
最後、3に記載しておりますけれども、頂いた御意見などにつきましては今後、改めて整理した上で、畜産部会の議論に活用してまいる考えでございます。
以上でございます。
 
小針部会長
ありがとうございました。
次に、食料・農業・農村政策審議会、食料・農業・農村政策審議会企画部会合同会議において、食料・農業・農村基本計画の見直しについて8月29日に審議されておりますので、その概要について事務局から説明をお願いいたします。
 
新井畜産総合推進室長
資料12を御覧ください。
先ほどありましたとおり、先月29日に食料・農業・農村政策審議会と企画部会の合同会議が開催されまして、食料・農業・農村基本計画の変更について審議会への諮問がされましたので、御報告いたします。
1枚おめくりいただきますと、こちらは当日に使われた資料でございますが、審議会では冒頭、坂本農林水産大臣から審議会の会長への諮問を行った後、基本計画の今後の審議の進め方について説明がございました。こちらの資料になります。
ここにありますとおり、9月後半以降、現状分析や課題の分析などを行うための企画部会を開催しつつ、来年3月に答申を頂くという流れで議論が進められることとなっております。
審議会では、次のページ以降に「我が国の食料安全保障をめぐる情勢」という資料がございますが、1枚おめくりいただいた目次のページにある「1.食料安全保障の確保、2.農業の持続的発展、3.環境と調和のとれた食料システムの確立・多面的機能の発揮、4.農村の振興」の項目に基づいて、現状の説明がございました。その上で、各委員の方から所感なりが聴取されたところでございます。
資料の11ページに飼料の安定供給に関する内容がございますけれども、今回は、畜産に特化した議論は行われてはございません。
これから畜産部会で検討する酪肉近に関しましては、酪農と肉用牛に特化した方針になりますけれども、同時期に検討を行う食料・農業・農村基本計画とも関係しており、整合性をよく取りながら議論を進めていく必要がございます。このため、今後、基本計画の議論については畜産部会においても適宜報告させていただきたいと考えております。
説明は以上でございます。
 
小針部会長
酪肉近及び家畜改良増殖に関する事務局からの説明は以上ということで、委員の皆様から御意見を伺う前に10分程度の休憩を取り、休憩後、審議を行いたいと思います。
14時35分に開始ということで、よろしくお願いいたします。
 
午後2時25分休憩
午後2時35分再開
 
小針部会長
これより審議を行います。
進め方ですが、3から4名程度の委員の皆様から挙手制にて発言を頂き、事務局からまとめて回答を頂くこととしたいと思います。できるだけ効率的な運営に努めますので、円滑な議事の進行に御協力のほど、よろしくお願いいたします。
それでは、御意見があれば挙手願います。
馬場委員からお願いします。
 
馬場委員
テーマごとの議論はこれからということですので、本日は、大きな方向性について何点か申し上げたいと思います。
まず、資料6の2ページに記載されていましたけれども、コロナ禍に端を発した生乳あるいは牛肉の需給緩和や飼料をはじめとする生産資材価格の高騰、高止まりということで、現行酪肉近策定時から情勢が大きく変化しております。生産現場は今、正に経営継続が危ぶまれる危機的状況にあると認識しています。
また、この資料の14ページには、60歳以上のリタイアによって今後20年間において従事者数が酪農で半減、肉用牛で約4分の1まで減少する見込みとも記載されています。高齢化の課題だけでも生産基盤は危機的な状況にあるわけですが、これに加えて経営不振や悪化による離農が加速すれば、生産基盤の弱体化は見込み以上に進んでしまうおそれもあるのではないかと危惧しております。
そうした中で、次期酪肉近等における中長期的な指針の策定に向けて、中小家族経営を含めた持続的な生産基盤の実現を目指して、生産現場が希望を持ち、また意欲を確保できるよう前向きな議論を行ってまいりたいと思いますので、よろしくお願いします。
次に、畜種共通の課題について何点か申し上げます。
国産飼料の生産、利用拡大は食料安全保障の強化や環境負荷軽減、あるいは農地の利用の観点からも重要だと考えますが、今後、こうした意義や地域における課題等についてしっかりと整理を頂いた上で、実現に向けた施策を議論してまいりたいと思います。
このほか持続可能な畜産酪農経営の確立に向けて、事故率の低減などによる生産性向上や、地域の人材不足への対応などについても重要な論点でありますので、今後のテーマごとの議論においても取り扱っていただければと思います。
最後に、畜種別に一言ずつ申し上げたいと思います。
まず、酪農についてですけれども、是非とも改正基本法の理念を踏まえて、持続可能な生産基盤の確保を目指すことが重要であると思いますが、そのためにも脱脂粉乳、バターの跛行性の解消に向けた対応も含めて、牛乳・乳製品の需要創出や全国の生産者、乳業者及び国が一体となった生乳需給セーフティネットの確立等を進めていく必要があると考えております。
次に、肉用牛については、輸出拡大や需要拡大の観点と併せて、消費者ニーズを踏まえた多様な牛肉生産と、生産性の高い持続可能な経営との両立を目指した議論が深められればと考えております。
また、今、正に和牛肉等の需給状況が悪化しており、生産現場が危機的な状況に直面しています。国内外の需要拡大等に向けて早急な対策を講じていただけるようお願いいたします。
最後に、養豚農業の振興に関する基本方針については諮問事項ではありませんけれども、家畜防疫や事故率の低減、種豚の能力向上への対応の強化など、見直しに向けた議論をしっかりとお願いしたいと思います。
 
小針部会長
ありがとうございました。
では、御意見ある方は挙手をお願いいたします。
丸橋委員、お願いいたします。
 
丸橋委員
神戸中央畜産荷受株式会社の丸橋でございます。今回から畜産部会の委員を務めさせていただきます。初めてですので、簡単な自己紹介をさせていただきます。
会社名のとおり、神戸市で食肉卸売市場を運営しております。取り扱っているのは牛、豚になります。委員の中では数少ない食肉流通関係者なので、その視点から議論に貢献できればと思っております。よろしくお願いします。
まず、この会議について、現行の酪肉近の策定後の情勢の変化や対応状況について、事務局の分かりやすい資料作成とその説明に感謝いたします。
私からは、最初に牛肉の生産・需給関係、特に消費者ニーズについてお聞きしたいと考えております。
2020年以降、新型コロナウイルスの発生、紛争や円安による諸物価高騰と、他の食品同様、食肉の需要にも大きな影響を及ぼしました。特に牛肉の消費は停滞気味で、コロナ発生以降、一時的に家計消費が増加はしましたが、その後、前の水準に戻り、枝肉価格も低下傾向で推移しております。一方、豚肉、鶏肉の家計消費の増加は維持されているようでございますが、これらの動向を一時的なものと見るか、また、ある程度定着するのか見極めていくことも重要だと考えております。現時点での農林水産省のお考えを教えてください。
次に、同じく消費者ニーズに関してですが、供給側とずれが生じているように感じております。和牛去勢の卸売価格は平成28年以降低下傾向にあります。また、日本食肉格付協会の報告では、令和4年度、和牛去勢のA-5の格付比率が60%に達しております。長期肥育、特定の種雄牛利用集中など、環境問題、また遺伝の多様性確保など、将来にわたる課題にもなっております。
研究者、また改良現場での脂肪交雑偏重是正の努力があることは承知しておりますが、その努力の一方で、食肉卸売市場ではA-5の牛肉がA-4、A-3より高く取引されているのも実態でございます。生産サイドではなく流通サイドも巻き込んだ対策が必要だと考えております。
次に三つ目、牛肉の輸出についてのお願いです。
牛肉の輸出については輸出対象国も増え、数量も増加していますが、米国、EUを対象とする処理施設に課せられるハードルが高く、現場では依然として資金面、また技術面、両面での課題が重くのしかかっております。政策として息の長い支援が必要であると考えております。
四つ目は、食肉処理施設の再編整備についてのお願いです。
食肉卸売市場も産地食肉センター同様に、老朽化や手狭な敷地により処理の高度化が困難な状況にあることは変わりません。公的な支援が必要だと考えております。
私の発言を終わらせていただきます。
 
小針部会長
ありがとうございました。
では一旦、今の御質問に事務局から御回答をお願いいたします。
 
伊藤食肉鶏卵課長
食肉鶏卵課長の伊藤です。
食肉の関係で4点ほど御質問を頂いたと思います。
まず1点、牛肉の消費動向の見通しですけれども、御案内のとおり、牛肉の消費動向、新型コロナの際に外食需要が落ち込みまして、先ほども説明ありましたけれども、1人当たりの牛肉消費量が6.5kgから6.2kgになりました。その後は物価高の影響もありまして、消費者の方の節約志向が大分進み、回復しない状態で、今では年6.1kgという状況です。
実際の流通の状況を見ましても、牛肉から豚肉、豚肉から鶏肉といった形で、より割安な食肉に需要がシフトしているのが見られます。実際に7月の総務省の家計調査の結果を見ましたが、1世帯当たりの食肉購入量は、牛肉は前年同月比で14%減。豚肉は、前月は調子よかったんですけれども今は4%減、鶏肉は逆に2%増えているといったように、消費者が今の景況感というか、物価高の中で、値頃感のあるものに需要をシフトしていっているんだろうというのは数値から見て取れると思っております。
ただ、今後の見通しという意味で見ますと、牛肉はほかの食肉と比べて相対的に価格が高いんですけれども、食肉の中で何を嗜好するかはそのときの経済状況、例えば景気の動向であるとか実質賃金であるとか、そういったファクトにもよりますし、また、各食肉のその時々の価格の動き方による相対的な値頃感、損得感みたいなところも多分に影響するので、正確に見通すことは困難なんですけれども、少なくとも言えることは、コロナが起きる前までは、長期的な傾向としては1人当たりの消費量はすごく上がってきていまして、かつ、高齢の方が大分お肉を食べるようになってきているというのが今の特徴としてありますので、これまでの増加傾向で推移できるように、消費者ニーズを踏まえた生産の推進を図っていきたいと思っております。
2点目ですけれども、A5等級の偏重は消費者ニーズと乖離があるのではないかという御指摘だと受け止めました。
消費者の中に、少し赤身の多いものを食べたいといったニーズがあることは、そのとおりだろうと思っております。初めに農水省からも御説明させていただきましたとおり、今、定めている国の改良目標でも、脂肪交雑は現状維持として現状以上のサシは推進していない中で、例えば赤身等の食味に関する科学的知見のさらなる蓄積ですとか、あるいは新たな改良形質の検討の推進を打ち出しております。
これまでの食肉の消費の動向とか今後の見通しを踏まえながら、実際にどういう牛肉生産を推進していくかは今後の議論に委ねたいと思っておりますけれども、いずれにしても留意しなければいけないなと思っていることが何点かありまして、1点は、やはりサシの入った牛肉、これはこれで和牛肉は日本の大切なブランドなんだろうと思っております。実際にサシの特徴があることで、例えば安価な輸入牛肉との差別化は確実に図られていると思っておりますので、そこが大きく後退すると輸入牛肉との差別化というところでどうなんだろうということは慎重に考えなければいけない点だと思っております。
また、実際にも、御指摘のとおりですけれども、商取引の中での話ということで、今の市場では、モモやカタ肉といった枝肉を構成する全部の部位を総合的に勘案して、その中で流通関係者の間でA5の枝肉は高く評価されて、やはり価格帯では違っていて、生産者の方も経済合理性があってA5のお肉を作ることを目指すという状況に全体としてなっていると思います。このように、全体がそういう状況にあることにもよく注意しておかなければいけないのかなと思っております。
いずれにしても、国産の牛肉という意味で言いますと、これは馬場委員からの御指摘にも少し近いところがあるんですけれども、和牛肉と交雑、乳用牛、それぞれ特性が異なっていて、全体で消費者の多様なニーズに応えているところもこれまたあると思いますので、いずれにしても、今後の議論の中で全体像を踏まえながら、その中で和牛肉の在り方についても議論していければと思っております。
それから、アメリカやEU向けの牛肉輸出の関係ですけれども、御案内のとおり、輸出でも特にアメリカやEU向けになりますと、衛生基準等を含めてかなり高い水準の食肉処理施設の整備が求められてきます。そういう意味では、輸出対応型の畜産物の処理・加工施設でありますとか食肉処理施設における血斑発生低減の取組でありますとか、それから、今、どうしてもロイン等が中心の輸出をしていますけれども、これから販路未開拓地に輸出していこうと思うと、例えば相手国にスライス肉の状態で売らなければいけないといったときには、きちんとそういったところも手当てしながら、省力化施設など、そういった機械を導入する取組を支援していかなければいけないと思っておりますので、この辺もきっちり進めていきたいと思っております。
最後の点ですけれども、食肉処理施設の再編整備ということです。
やはり食肉の特徴は、家畜そのものでは食べられないということで、食肉処理施設がしっかりと機能することが、サプライチェーンの上では非常に重要な施設だと思っております。しかしながら、もう築30年を超える施設でありますとか、大分老朽化も進んできておりまして、課題になっております。
一方で、人口減少はもう避けられない状況になっておりまして、その中で、食肉処理施設の再編あるいは整備後の稼働率をどう上げていくのかも目指さなければいけないことだと思っております。そういう中で今の国の支援としては、一つ、再編合理化であり、輸出等を切り口にした形での施設整備を推進してきておりますが、その施設の中には、例えば食肉卸売市場の整備もそうですけれども、基幹施設というものがあります。今でも物流の効率化でありますとか、一定の要件を満たすものについては強い農業づくり交付金やその他の事業を活用させていただいて、卸売市場も、せり場や浄化水槽など、いくつか施設整備をしているものもございますので、そういったものも活用しながら、卸売市場も含めて対応させていただければと思っております。
 
小針部会長
ありがとうございました。
丸橋委員、よろしいですか。
 
丸橋委員
ありがとうございます。
 
小針部会長
ほかに御意見ある方は挙手をお願いいたします。
小椋委員、お願いいたします。
 
小椋委員
小椋です。よろしくお願いいたします。
今年、基本法が改正されまして、来年3月に向けて基本計画が作成されていく運びでありますが、やはりこの基本計画と次期酪肉近、これらがどう結び付くか取り持っていかなければならないと思いますし、次期酪肉近の中でそこをどのようにリンクさせていくかということが一番重要なのかなと思います。
また、各畜種別のテーマは来月からの部会でありますので、今日は余り詳しいことは言いませんが、やはり酪農と肉は関連性がありますから、生乳が生産抑制されたことによって和牛の頭数が増加した結果、和牛肉の価格が下落するような状況になっていると思いますので、やはり生乳の生産抑制をしないで済むような需給調整を次期の酪肉近の中で謳っていかなければならないと思います。それにより、先ほど申し上げたような和牛の増頭にはならないと思うので、いかに乳牛と和牛肉、ホル雄もそうですけれども、その整合性を考えた次期酪肉近を農水省としても是非考えていただいて、そこをいかに謳っていくかを考えていただきたいと思います。
また、酪農に関してですけれども、今お話ししましたように生産抑制をしないで済む需給調整、すなわち入口対策でなくて出口対策であります。この出口対策はいろいろありますが、現在、生乳換算で約1,200万トンの取扱いがあり、そのうち450万トン強は輸入に置き換わっております。
そこはチーズでありますけれども、チーズにシフトしていくと当然価格差が出てきますが、入口対策をしないで済む方法はチーズしかないと思います。この価格差をどう埋めていくかの問題は当然出てきますが、そこを農水省の中でも十分協議していただいて、どういう用途別乳価ができるのかも含めて検討いただきたいと思います。来月から各テーマごとの議論も始まりますけれども、その中で詳しく私から意見させていただきたいと思います。
 
小針部会長
ありがとうございました。
ほかに御意見ある方は挙手をお願いいたします。
小山委員、お願いいたします。
 
小山委員
宮城県で繁殖和牛を飼っております小山です。
子牛安定基金や、肥育牛のマルキンで、一体1頭にどのくらい助成金をもらっているのかという話が現場で出ます。昔は牛を飼って年金の足しにするおじいちゃん、おばあちゃんがいましたけれども、今は年金を出してでも、牛が好きだから飼いたいという人さえいるんですね。
そんな中で、どうすればよいのか考えたときに、やはり在庫がある牛肉を消費していただけるような政策をしていかなければならないのではないか。その一つに学校給食や、地域のサンマ祭りがテレビでも放送されています。あれを、例えばステーキをカットして無料で食べさせるたりすることで、人を呼ぶ。そのような取組をしているんでしょうけれども、牛肉のそういうイベントはなかなかテレビでは扱ってくれないなと思っています。
ほかの人にいろいろ話をきくと、「中国に輸出すれば在庫の牛肉なんかなくなるのに」という話をする人もいますし、やはりこれからは、輸出がなければ和牛は増頭していけないんだろうなと思っております。
肉は安心・安全に家庭の食卓に並ぶまでには様々な─魚とはまた違ういろいろなことがありますが、とにかく何かあったときにはお祝いに牛肉を使っていただきたいなと、そのように浸透していければまだまだ大丈夫なのではないかと思っております。
 
小針部会長
ありがとうございます。
ほかに御意見のある方は挙手をお願いいたします。
二村委員。
 
二村委員
御説明ありがとうございました。
何点か、これから議論として必要なのではないかと思う点と、質問を申し上げたいと思います。
一つ目に、やはり価格の問題は消費者としても、とても気になるところです。御説明の中にもありましたが、値段と消費量はある種のバーターのようなところがありますので、やはり何らかの良い形で需要と供給を調整していく仕組みが非常に重要だと思っています。
特に量的なギャップに加えて需要と供給のタイミングのずれが今、価格や消費量に大きく影響を与えていると感じています。そういう意味では、量的なギャップとタイミングのずれをどのような形で吸収していくのか、そういう視点で需給の調整を考えてみることも有用ではないかと思いました。
それから担い手の問題です。大規模化しているというお話と、担い手が少なくなっているという両方のお話がありました。今後のことを考えると担い手の育成は非常に重要だと思いつつ、特に酪農や畜産では大規模化が進んでいるので、リスクや参入の障壁はすごく高いだろうとも思います。そういう意味では、支援策として、経営のスキル等をサポートするとか、あるいは経営上、必要な機能をサポートできるようなことも担い手の支援に入るのではないかと思いました。
三つ目に、環境対策です。環境対策は消費者としても今、とても関心が高いところです。先ほど牛肉が余り食べられなくなってきたという話がありましたけれども、もちろんこれだけが原因ではありませんが、若い人たちを中心に、「牛肉って結構環境負荷が高いよね」というような話は結構聞くようになってきています。
環境対策は非常に重要になってくると思いますので、是非強化していただきたいと思います。そのときに二つありまして、一つは、やはり環境負荷が見える化されないと努力していることも伝えられない。ここが難しいところかもしれません。負荷があると言ってしまうと、先ほどのように「環境によくないよね」と言われやすくなるので、何となく嫌な気持ちもあるかと思いますが、それをしないと努力して負荷を減らしていることも言えません。
もう一つは、農業の分野だけで環境負荷を何とかしようとすると大変な部分もありますので、クレジットの制度や産業間での排出権取引のような、農業の分野を超えた対策や施策も視野に入れていかなければ、農業の分野とそれを使う人の間だけで吸収しようとするのは大変なのではないかと思いました。
それから、飼料の国産化は自給率の向上という点からも非常に重要だと思います。耕畜連携は非常に期待する施策ですが、この施策や、あるいは耕畜連携を進めようと思った時に、環境面で整備しなければいけない課題が見えているのであれば、是非教えていただければと思います。
最後に、とても単純な質問ですが、家畜衛生のところでアフリカ豚熱の話が出ていました。その広がり方を見ますと、単に陸地伝いだけではなく、いわゆる島国にもアフリカ豚熱が広がっていっているので、日本も他人ごとではないと地図を見て思いました。アフリカ豚熱のワクチンの開発というのは可能性があるものなのか、それとも難しいものなのか、素人質問で恐縮ですが、何か研究されているのか、もし情報があればお話しいただければと思います。
 
小針部会長
ありがとうございます。
では、ここまでで事務局から御回答をお願いいたします。
 
伊藤食肉鶏卵課長
小山委員、二村委員から、食肉の需要ということで御指摘いただきましたので、回答いたします。
確かに今、和牛の枝肉の価格は極めて軟調に推移しております。それは先ほど御説明したとおりです。二村委員もおっしゃっていましたが、牛肉は生産するまでにものすごく時間が掛かっており、牛の種付けから考えると3年半ぐらい掛かる中で、枝肉の価格が軟調であるというのが今の状況です。
これで終わりという意味で申し上げているわけではなくて、今、やっている取組を御参考までに御紹介させていただきます。
物価高もありやはり売れ行きが悪いのが、ロイン系の、いわゆるステーキ肉になるような部分です。これを中心に荷動きが鈍いところもありましたので、昨年度の補正予算ではそういったロインのところについて、卸業者さんが新しい商流をつくっったり、あるいは新しい売り方として、例えばスーパーや量販店に1頭買いしてもらったりと、そういった取組を支援しております。
要は、消費の出口をつくらなければいつまでたっても価格が下がっていってしまうので、そこをどうつくるかという視点で、そういう商流をつくっていくところを後押ししているところです。
実際に7月以降これが本格的に動き始めているところもありまして、今、事業者の方にそういった対策に取り組んでいただいているところなので、その効果を見極めた上で今後の方針を定めていきたいと思っています。
特に小山委員がおっしゃったように、やはり小中学校とか、今、こうやって東京一極集中ですとか様々なことが進展してきて、食と農の距離が開いてきている実情にあるので、生産の実態を知ってもらって消費者の方にもできるだけ御理解いただくことは、すごく大切なことだろうと思っております。
そういう意味ではイベント関係についても、体験イベントや小中学校の現場見学の際に併せて試食するといった取組も、微力ながら取組をスタートさせたところであります。
引き続き枝肉は厳しい状況でありますので、消費拡大に向けてどういう対策が効果的なのか、しっかり考えて対策を検討していきたいと思っております。
 
冨澤畜産振興課長
先ほど環境対策について、どうしても牛肉は温室効果ガスの排出面等で環境負荷が高いというお話を頂いております。
私どもが先ほど説明させていただきました資料8「家畜排せつ物をめぐる現状について」の3ページに家畜排せつ物等の温室効果ガス排出量の内訳等も記載しておりますけれども、「見える化」につきましては農産関係で先行しており、畜産関係でも見える化できるのではないかということで、現在、検討会を立ち上げて進めておりますので、消費者の皆様にも今後そういった情報提供ができるのではないかと考えております。
一方で、牛はどうしても草を食べてメタンを排出してしまうという課題がございます。ただ、今、飼料添加物の中でカシューナッツ殻抽出液やEUで開発された3NOPという化学物質などがありまして、それらの審議も頂いているところだと聞いておりますので、そういった手法も今後、出てまいりますし、技術開発の面では、農研機構の方でメタンを減らす微生物を発見するなど、そういったものを使った削減方策も現在、検討いただいているところでございます。
また、家畜排せつ物におきましては既にJ-クレジットの中で方法論が出されていますが、一酸化二窒素の温室効果が高いものですから、アミノ酸のバランスを適正化することにより排せつ物中の窒素分を少なくする取組や、また、排せつ物の処理方法でも、強制発酵することによって温室効果ガス排出量が減る場合もございます。
そういった面を考慮しながら取組を進めていくことが重要であり、J-クレジットの活用という面は検討していくべきかと考えております。
耕畜連携の関係について、堆肥の面からお話しさせていただきます。先ほどの資料の1ページになりますが、やはり畜産地帯で堆肥が余っているところと、例えば東北や北陸の米地帯では必ずしも家畜が多くない地域もございます。先ほど少し説明させていただきましたが、堆肥の面で言えば流通性を高めるために良質な堆肥を生産してペレット化したりするほか、肥料成分を補って使いやすくするために、化学肥料と堆肥を混ぜたような混合肥料などを使いながら耕畜連携を更に進めていきたい。ペレットマシンや、制度的な面でもバックアップしていくことが重要だと考えております。
 
金澤飼料課長
飼料課でございます。
耕畜連携の関係で私からもお答えしたいと思います。委員御指摘のとおり、国産飼料の推進は非常に重要な課題だと思っております。畜産側からもそうでございますが、やはり国内の農地をいかに有効に使っていくか、耕作放棄地とせずしっかり使っていくという面でも重要な課題だと思っております。
その中で、課題は見えているのかという御指摘がございました。ある意味、課題ばかりが見えているというのが正直なところでございまして、やはり畜産農家と耕種農家が近しい場所にいる地域もあれば、距離の離れた地域もある。数が多い少ないといったところや、畑地なのか田んぼなのか、いろいろなところがございます。課題としますと、一つはやはりそういった距離の問題もございますし、また、畜産農家も耕種農家側も労働力をどう確保していくかという人手不足の課題もあります。また、飼料を生産していただくためには、それなりの機械等々が必要になってくるところもあると思います。
一方で、餌自体は中間資材でもあるので、畜産農家は安く餌が欲しいのに対し、耕種農家はしっかり収益を上げたいという価格の面で難しいところもあると思います。
一方で、先ほど堆肥の利用でもありましたが、資源循環のようなことで、また、畑作地帯では輪作体系に入れていただくといったこともあって、ある意味、双方がメリットを感じていけるような関係づくりが非常に重要だと思っております。
そういった意味で、まずは畜産農家と耕種農家が近い距離にいる地域を中心に、今、省全体でも各市町村に地域計画という形で、農地をどう活用していくかという計画づくりを進めていただいているところですが、畜産農家もそういった議論の中に入っていただいて、餌づくりもしっかり地域計画の中で位置付けていただけるような取組を、進めているところでございます。
それから、遠方の地域との耕畜連携というのも課題であると思っています。例えば草地の資源が豊かな北海道で作った餌をどう運んでいくかとか、そういった広域流通みたいなところも一つ重要な課題だと思っております。まず近場の地域計画等の後押しをしながら、耕畜連携で土地をどう使っていくかは今回の基本計画の中でも重要な論点かなと思っておりますので、またいろいろ御意見を頂きながら、我々も対策を検討してまいりたいと思っております。
 
廣岡企画課長
二村委員から、新規参入を含めた担い手のお話がありました。確かに畜産は施設も必要ですし技術も必要ということで、そのハードルは低くはないと思っています。
新規参入の方々のために施設整備の支援をしているんですけれども、施設整備の支援を中心として、例えば地域の協議会で新規参入の方々を支えたり、情報交換をするという取組がなされていると思います。加えて、例えば私どもが支援している酪農ヘルパーというものがありますが、このヘルパーで二、三年、助走期間を経てから酪農に就農される方もいらっしゃいます。いろいろな形があると思います。よく議論していきたいと思っております。
 
須永牛乳乳製品課長
牛乳課です。
酪農のパーツについては次回以降に時間をまとめて御議論いただけるとよいと思っております。
先ほど小椋委員から今後の需給調整についてお話がありましたので、そこで1点だけ回答したいと思います。
生産抑制は平成18年、そして令和4年、5年にあったと承知しております。これが酪農の現場にもたらす苦痛は我々も非常に感じるところでありますし、これが何度も繰り返されることは避けるべく、いろいろな努力を積み重ねていく必要があるだろうというのはいろいろな場面で共感を、それから政策努力をしていくということだろうと思っております。
他方で、コロナや円安という環境の中で、需給が逼迫基調から緩和基調へと転換してきた中で、どういう努力がされてきたのか、そしてまた増産と需給が逆転したことについて、過去から得られる課題は非常に多くあり、どのタイミングで増産がキャッチできたのかというのも一つございます。それから需要、そして生乳の仕向けの面で言いますと、結果的にはチーズに仕向けた量もありましたが、脱脂粉乳とバターに仕向けた量が非常に多くを占めておりまして、需給の大きな調整弁として脱脂粉乳とバターが使われたというのも、この数年の中の記録としてございます。
そして、脱脂粉乳とバターに仕向けた結果として、そこに全国の生産者、そして国も協力・協調しながら跛行性、需要の乖離に取り組んできた。幾つかを踏まえた上で、今後こうしたものをどういう形で維持・発展できるのか非常に苦しいところではありますが、我々事務方の人間としては、そこに将来に向けての課題と光があるんだろうとは思っております。
この辺はまた次回以降のところで議論させていただけると助かります。
 
星野畜水産安全管理課長
畜水産安全管理課の星野です。
二村委員から、アフリカ豚熱のワクチンの開発の可能性ということで御質問いただきました。
現在、農林水産省が行っているレギュラトリーサイエンス研究事業で、農研機構の動物衛生研究部門において正にアフリカ豚熱のワクチン開発に取り組んでいるところでございます。御承知のとおり非常に病原性が高いウイルスでして、これは日本だけでなく世界中、ヨーロッパでもアメリカでも開発に取り組んでおりますが、ワクチン化については正直非常に難しいものだと聞いております。
何が難しいかというと、病原性が非常に高いものですから、その病原性を低くして安全なものにしながら、かつ豚に対して免疫をつけなければいけないというところに非常に苦労しているようです。令和2年度から取り組んでおりまして、今年度を一つの区切りとして行っているところですが、候補となる株につきましては目ぼしいところが幾つかあるようには聞いております。ただ、それをもっと改良して本当に現場で実装できる形にするにはもう少し時間が掛かると聞いておりますので、引き続き研究テーマをしっかり継続しながら支援できればと考えております。
これは日本だけでなく、世界中で研究開発しているところですので、海外の情報等もしっかり収集しながらアジア、また日本に入ってこないように、万が一入ってきたときにもしっかりと防疫対策を行っていきたいと思っております。
 
沖田動物衛生課長
動物衛生課の沖田です。
小山委員から、中国への牛肉の輸出ができると増産の助けになるのではないかというお話がありましたので、中国への輸出に関する情報を共有したいと思います。
牛肉を輸出するためには、一つは牛肉を取引して家畜に病気を起こさないという安全性を確保する必要があるのと、もう一つは、輸入したものを食べても人間に影響がないという公衆衛生上のリスクの管理の二つが重要になります。現時点での中国への輸出に関する検疫協議の状況としては、動物の病気を起こさないための管理措置については一応評価が終わっていて、現在は、食品の安全性の観点からのリスク評価が中国において行われている状況になっています。
もちろん我々としてはできるだけ早く終わりたいので、あらゆる機会を捉えて中国側に働き掛けをしている状況です。輸出することによって国内の生産者の皆さんの励みになるというのは認識しておりますので、引き続きしっかりと努めていきたいと思います。
 
小針部会長
ありがとうございました。
リモートで宮島委員の手が挙がっていますので、よろしくお願いいたします。
 
宮島委員
日本テレビの宮島と申します。今回からお会いする方もいらっしゃると思いますが、よろしくお願いいたします。
私は畜産そのものの近くで携わっている立場ではないですし、個別の話は次以降かと思いますので、少し広い話をさせていただければと思います。
最近思いますのは、皆さん御存じのように人口減少は激しく、エネルギーや環境においても世の中全体が大きく変わっていく中で、今までどおりやっていくことはどの業界も大変厳しい状況になっているなと思います。そんな中で畜産も状況が変わってきて、いろいろな対策を打たなければいけない状況だと思いますが、まずは需給に応じた形で、世の中のニーズをよくつかみながらやっていくのがいいかと思います。
最近様々な産業が厳しい状況になる中で、農業全体は改めてそのポテンシャルにとても期待が大きい印象を受けます。
その中で、私も農業関係のほかの部会にも参加しておりますが、畜産は、今まで自立してこられた部分が多かったですし、ダイナミックであるため、産業として、格好いいという感じを若い人に伝えることができる産業ではないかと思います。
そもそも都市部でサラリーマンになる若者が多い傾向にありますが、平均給与で見ると多いように見えても、それは都市部では大成功した若者もいるから平均給与が上がっているだけで、待遇や様々な面ではそんなにいいわけでもないですし、やはり地方でダイナミックな挑戦をして大きく人生を回していきたい若い人たちにアピールする部分はすごくあるのではないかと思っており、そこは期待したいと思います。
先ほど経営に入るというお話がありましたけれども、例えば大規模化された経営体では、若干サラリーマンのような気分でまずは参入してくる人も多いのではないかと思います。
そのような中で、逆に言いますと、せっかくこれまで相当自立度が高い産業であったので、必要な部分はあると思いますが、必要以上に何かに頼らなければ永続性がないというように伝わってしまうと、逆に若い人に産業としてマイナスに捉えられてしまうのではないかと思います。なので、それぞれの政策を講じていく上では、そういった様々な業界とかいろいろなところとの整合性の中で、格好よく見えるような状況をできれば保っていただいて、産業が発展していくような高い目標を目指している姿勢を示せるような形だとすごくいいかと思います。
 
小針部会長
ありがとうございます。
リモートで椛木委員の手が挙がっていますので、お願いします。
 
椛木委員
北海道で酪農をやっております椛木と申します。
御説明ありがとうございました。私自身、5年前に酪肉近ができるときに委員になりましたが、そのときから比べると、この5年間で情勢がいろいろ変わってきているなと思っています。酪農のことについては来月からという話をされていましたが、私も農場で働く1人として、やはり生産抑制に入って、更に去年がとても暑くて、今年はそこまで暑さの影響を受けているわけではありませんが、それでも、去年の暑さの影響で妊娠が遅れた牛たちの分娩がこの夏たくさんありました。そういう中で生まれた初生牛が全然売れなくてうまく牧場を回すのはなかなか大変だと日々思っています。
うちは搾乳牛50頭ぐらいなので小さな牧場ではあるんですけれども、生産抑制に入ったときに牛を減らして、様々な影響を受けつつ経営を続けてはいますが、なかなかよかったときまで戻らない、乳業はそういう現状なんです。その中でも続けていきたいし、やりたいから続けますが、そういう意味で、正直結構振り回されている感はあるなと思っています。
個体販売についても、先ほど言ったように今は初生牛の値段が全然つかないし、それでも廃用牛は結構高く売れてしまう。乳牛として販売する値段と余り変わらないぐらいで廃用牛が売れてしまっていたりもします。今やっている人たちが、今後も前向きに続けられるような形になっていったらいいなと常に思っているところです。
そして、先ほど委員の方々からもお話があったんですけれども、担い手のことについて、経営のスキルや、若い人を育てていくことももちろん大事ですが、最近うちに来た、就活をしている学生と話をしたら、畜産関係に進みたい学生は「農場だったらいつでも働けるから、企業に就職活動しています」と言うんですよ。やはりどこの農場も、いつでも人員を募集しているから、いつでも入れるという感覚が畜産関係の学生にはあるのかなと思っています。それならチャンスがあれば企業さんに勤めて、合わなかったら農場に入ろうかなといった感覚を持っている学生さんもいらっしゃるようです。
そういう意味では、先ほど宮島委員がおっしゃったように、本当に夢がある、目指したいと思えるような産業にしていくことが大事だなと思っています。
そして、酪農家さんが減少していく中で大規模化が進んでいるということで、搾乳ロボットなど、そういった機械化が進んでいますが、その大規模化した農家さんたちも、ロボットの切替え時期など更に投資をしなければいけない時期がこの先、五年十年の中で絶対出てくると思います。クラスターや補助金を使って規模拡大した農家さんが、そのロボットの切替えをするときに、その分のお金を貯められているのか、何かそういうことがスムーズに行われないと安定して生産できないのかなと思うので、そういったところも話の中に入っていくといいと思います。
 
小針部会長
ありがとうございます。
まず、ここで事務局からコメントがあればよろしくお願いします。
 
廣岡企画課長
担い手に関するお話がありました。
先ほどお答えしたとおりですけれども、加えて申しますと、例えば畜産では、毎日搾乳があって労働の周年拘束性が高いという特徴がございます。なので、例えば省力化の支援や、コントラクターとか先ほど申し上げましたヘルパーなどの、外部化の強化とか、あるいは継承に向けた施設整備とか初期支援といったことを講じているところでございます。宮島委員や椛木委員からもありましたとおり、何より魅力ある業種、仕事としての発信も重要かと思います。
そういったものに加えて、例えばスマート農業技術の実証等も効果があればよいと考えておりますし、そのためにどういったことができるのかも考えていきたいと思っております。

小針部会長
ありがとうございます。
それでは、御意見ある方は挙手をお願いいたします。
前田委員、お願いします。
 
前田委員
アフリカ豚熱の研究について、今後ともよろしくお願いいたします。
まず、家畜改良増殖目標について、今年はその改正の節目の年であるということで、私も参加させていただくことになっておりますが、今の日本の状況を考えますと、どの畜種であってもコストが下がるという側面もありますので、やはり1個体を大きくしていくことを絶対に前進させていかなくてはいけないと思います。
例えば養豚では、日本食肉格付協会の格付けの規格がありますが、去年実に26年ぶりに改正がかないました。皆様の努力に感謝したいと思います。上限・下限を3kg引き上げることができ、長い活動の中で、やっとみんなほっとしているところです。
今後増殖の目標を立てて実行していく中で、やはり格付と増殖の協議が天秤のようにバランスが取れていないと、生産者は安心して取り組めないと思いますので、今後ともフットワークの良い、柔軟な改善に御協力いただければと思います。
それから、家畜排せつ物をめぐる現状について少し申し上げます。
資源のない日本にとって、家畜の糞尿を活用することは大変重要であると思います。ある研究では、養液土耕栽培の研究も進んでいると聞いています。農研機構においてリンを中心に集めることができる技術の開発を進めておられます。そういう研究が進むと、窒素、カルシウムなども大変環境に適した循環になるのではないかと思っております。
今までは畜産と露地野菜が循環の中心だったと思いますが、これを更に進めて、畜産関係施設の周辺の露地野菜はもちろん、ハウスの野菜にも養液等を活用することによって、資源の有効活用だけでなく、地域の皆さんの理解が得られやすいと思います。浄化槽を通してすぐ河川に放流するよりも、住民感情としては大分いいのかなと思います。
現在、様々な畜種において、新たな畜舎がなかなか建てられない状況ですので、耕種農家さん、施設農家さんを巻き込んで、そういうものができたらいいなと期待しているところです。これには大変高い技術が要りますので、大学や各方面の皆様の御協力が必要だと思います。
最後に、養豚農業の振興をめぐる状況について。
いろいろな御意見が資料の中にも書いてありますけれども、もしかしたらここに抜けているかなと思うのは、地球温暖化の中で成績を維持していくことです。特に繁殖成績が大きく影響を受けることが懸念されます。
私たちは、今年はそれを見越してファンド、債務をかなり付けました。それによって、通常は毎年夏場に豚の増体が落ちるんですけれども、例年以上に増体良く出荷できましたので、豚に限らず牛も、これからはそういう設備改善が必要だと思います。また、暑さに強い品種改良についても研究する必要があるのかなと思っております。
以上で私の意見とさせていただきます。
 
小針部会長
ありがとうございます。
ほかに御意見ありますか。
畠中委員、お願いします。
 
畠中委員
福岡で採卵養鶏をしています畠中です。
この畜産部会ですが、酪肉近がメインで、今日の部会の中でも採卵鶏に関する部分は少し出てきた程度なので、言いたいことは山ほどありながらも、意見しにくい立場だなと思いながら最後まで待っていました。そういうところからも分かるように、養鶏というのは畜産の中でも行政としては特殊なところにあるのかなと思っています。何年間か畜産部会の委員もさせていただきましたが、最近では更に、鳥インフルエンザにしろ飼料高にしろ、とにかく非常に苦しい状況ですので是非知ってもらいたいことが山ほどあります。去年も、その前にも申しましたとおり、対策にしろ何にしろ、私たちの未来がもう少し良くなるような、私たちが光を感じられるようなことをもっといろいろしてほしいと言ってきたものの、なかなか光が見えない状況にあります。
また、最近は配合飼料価格安定制度の改編について捗々しくないことしか聞こえてこず、本当に閉塞感を持って毎日経営しています。
そんな中、鳥インフルエンザに関しては生産者の努力で無くすことはまずできないと思っていて、発生しているところが本当に対策をしていないとは到底思えないような状況です。今行っている対策は全て対症療法みたいなもので、例えばほかの病気で言うところのワクチンや、閉鎖のような確度の高い対策でできることは何もない状況で、この対症療法の努力を日々させられている、強いられています。それでも、ものすごくしっかりしているところでも、一昨年は鳥インフルエンザがたくさん出ました。
それでも何とかやり過ごそうと思ってみんな取り組んでいますが、そんな中で最近、7月3日に農林水産省の疫学調査チームの提言が出まして、それについて日本農業新聞で大きく、「防疫奏功し発生大幅減」というタイトルで記事が出ました。これを見たときに私は生産者としては非常にがっかりしました。防疫が奏功したから昨シーズン出なかったという書き方で、日本農業新聞の記者の方が書いているとはいえ、その方は農林水産省が出した疫学調査チームの提言を要約してそのタイトルを付けておりますので、現場感覚とは全く違う報道になっている、疫学調査チームの報告になっているのかなと感じて、もう本当にがっかりして、精神的にやられるぐらいの衝撃を受けました。
そういう苦しい状況にありながら、この間は農林水産省がされている家畜防疫互助基金支援事業が改編されて、鳥インフルエンザの場合は事業が単年度ごとになって、一昨年のような発生の仕方をしたら、多分互助基金から出る金額がものすごく少なくなる可能性があります。これは再建のための基金なんですけれども、そうすると再建できるほどの金額が出ないかもしれないという改編になっていて、それを見て、生産者は本当にこの基金にお金を掛けるかなと思いますし、結局、発生したら再建はできないのではないかと思ってしまうのではないかと感じています。どんどんそういう苦しい状況が積み重なってきて到底光が見えない状況や餌も高止まりしている状況で、私でさえも、後継者にこの先、続けろと言えないぐらいの精神的負担を持っています。
そういう状況の中で、周りの生産者もみんな「何ならもう鳥インフルエンザにかかってやめたい」と。今のまま普通にやっていたらやめられない、やめるきっかけがないため、台風が来てくれたらそれをきっかけにやめて、精神的に楽になるみたいことを言うぐらいの状況になっています。是非そういう生産者の精神的なことも考えていただき、農林水産省には応援をしていただきたい。金銭的なだけではない、精神的なことも含めて、支援をお願いしたいと思っていて、この委員会も、そういうところが表に出てくるような場にしていただけたらと思います。
農林水産省のビジョンステートメントはすばらしいと思うんですけれども、食とか環境を未来へ継承するというビジョンステートメントに則った政策を、是非今後もっとやっていただけたらと思います。畜産は特に需給バランスを取るのが難しい業種なので、そこも含めて、米不足とか卵不足等が起きてもすぐに戻るような政策をお願いします。
 
小針部会長
ありがとうございました。
では、事務局から。
 
沖田動物衛生課長
ありがとうございます。
畠中委員から鳥インフルエンザ対策を中心に、養鶏をやっている生産者にも将来が見えるような対策、それから単なる金銭的なサポートだけでなく精神的にも支えるような政策をお願いしたいということで御意見を頂きました。
個別の点についても幾つかコメントさせていただきたいと思います。全体として、やはり我々も生産者の皆さんとよく意見交換をしながら、どういう対策を取るのが一番よいのか相談しながら進めていきたい、これは基本にしていきたいと思っております。
その中で、受け取られ方もあるのかなと思っているのは、例えば今年出した疫学調査報告書においての提言の仕方ですけれども、もちろん表現の仕方に注意しながらというのは肝に銘じてやりたいと思いますけれども、令和4年シーズンが84事例、令和5年シーズン、この冬の事例が11事例と大きく減少したことについて、これが全てバラ色であるということでは決してありません。、専門家の方も、84事例と大きく発生して、その反省に立っていろいろな改善を行った、それが全く効かなかったということではなく、生産者のバイオセキュリティの努力が功を奏して減った部分もあるんだよということがしっかりと認識されたという点、この点はやはり認識してもいいと思います。
ただ、それで全部が解決したということではなく、やはり発生した11事例の中身をよく見てみると、一昨年シーズンは大規模なところで発生しましたが、今シーズンは一番大きいところで36万羽と、比較的小規模なところでした。やはり後で疫学調査をやってみると、小規模なところでやらなければいけないことがしっかりできていなかった部分がある。また、11件しかなかったのに再発したところが2件もあったということで、それはやはり再発するような周りの環境であるとか、そういったことが前提としてあって、こういうことに気を付けなければいけないということも併せて提言させていただいております。決して「うまくいったので、これでよかったね」という結論になったということではありません。
このバイオセキュリティというのは、目に見えないウイルスとの戦いですので、改善が必要なところを継続していくことが非常に重要になります。生産者の皆様ももちろん大変だと思いますけれども、我々もいろいろな支援、指導をするときには県と一緒にこういう指導の仕方をしよう、気を付けなければいけないのはこういうところだということをしっかりお伝えしながら、一つでも発生を少なくしていく努力は続けていきたいと思っております。
そういったところを御理解いただければと思います。
それから、互助基金の単年への見直しというお話がありました。個別の制度についてここでいろいろ議論するというよりは、むしろこれも生産者の関係団体の皆様とよく意見交換をしながら進めているところですので、そういった中で改善点があれば、それは改善していこうということでございます。単年で見直すのも一つの改善の方向です。3年経たないと締められないという状況から、もっと機動的にするという観点から「こうした方がいいのではないか」という工夫をしてきたのがこの単年への変更ですが、どういうやり方がよいのかは、引き続き生産者の皆様ともよく意見交換しながら、どういうものがいいのか探っていきたいと思っております。
 
廣岡企画課長
前田委員から、暑熱環境時における繁殖成績の確保についてお話がありました。これは、大きく言えば飼養管理の改善ですとかそういった話になるかと思います。それから、最初の方で馬場委員から、養豚農業基本方針に関連して、防疫措置の確保や事故率の低減が非常に重要だというお話もあったと思います。これは非常に重要な指摘だと思います。これらは養豚農業基本方針の検討の中で議論されていくことになると思いますし、前田委員等々よく御存じのとおり、養豚の経営者さんの間にはかなり差があって、それを改善していくような取組もなされています。そういったことも議論の中でしていきたいと考えています。
 
冨澤畜産振興課長
前田委員から、家畜改良増殖目標の関係で御意見を頂いております。
豚の格付けと改良の関係でございますが、家畜改良増殖目標を設定する中で、産肉性や肉質の面を目標として設定することになっていますので、その指標となるものが一つ格付けだと思います。
御指摘のとおり、成果としての格付けは、家畜改良増殖目標の検討においては参考にしつつ検討を進めていきたいと考えております。
また、家畜排せつ物の関係で、養豚関係の中で浄化処理した後の処理液の活用のお話や家畜排せつ物の中のリン、カリ、窒素、こちらの活用を進めていくということについて、これは非常に重要なことと考えております。今の露地野菜から施設園芸ということで、制御型のガラス温室の中の液肥利用のように、養液としての活用といった取組も一部にあり、そういった面の研究も進みつつあるとお聞きしています。農産関係サイドとも連携しながら、そういったものの支援や活用が進むような形を検討していくことが重要だとと考えていますので、家畜排せつ物の基本指針の中でも検討課題として考えていきたいと思います。
よろしくお願いいたします。
 
金澤飼料課長
飼料課でございます。
畠中委員から配合飼料価格安定制度につきまして言及いただいたところでございます。
御案内のとおり、配合飼料につきましてはその原料の大半が輸入原料であり、海外の国際相場や為替、レートといった、いろいろな影響を受けるということでございます。ですので、そういった影響の激変緩和という形でこの制度が設けられ、これまで運用してきたところです。
令和3年以降の急激な価格高騰の中で、多額の補塡が発動してきたところです。そういった意味で、激変緩和というところでの機能も発揮してきたところではありますが、この間、補塡に際して、やはりメーカーさんの方で借入れをして何とか回しておりまして、この制度の持続性が今後の検討課題として、残っているところです。
それを踏まえて現在、配合飼料価格安定制度の在り方検討会という形で各基金を含めた構成員の皆様と議論を重ねているところでございます。来期からまた新たな業務期間にもなりますので、しっかり議論して一定の見直しを固めて、、改めて御報告させていただきたいと思います。
一方で、今、足元ではアメリカ等のトウモロコシが非常に豊作予測になっておりまして、既にほとんどの地域で収穫が始まったところかなと思っておりますが、相場自体はかなり下がっている状況です。まだ円安基調ではございますが、一時の状況からは大分反転はしているのかなと思っています。
ただ、一方で高止まりについて御指摘があろうかと思いますが、この制度自体、やはり激変緩和という形でございまして、高止まりの部分は畜種ごとにいろいろな状況が異なります。そういった中でいろいろな経営安定対策も設けておりますので、激変緩和、経営安定対策、金融対策などと、いろいろ組み合わせながら生産者の方々の再生産をしっかり確保していくことが重要だと思っています。
見直しの方は引き続き、検討中でございますので、また改めて御報告できればと思います。
 
小針部会長
ありがとうございました。
全ての方から御発言を頂いたかと思いますので、最後に私から発言したいと思います。コメントなので、回答は不要です。
今、皆様方の御意見を伺っていて、まず全体観として、宮島委員から魅力的な産業にという発言もありましたし、馬場委員から希望の持てるというお言葉もありましたが、やはりこれから先、若い人たちが畜産業を自分たちの職業にしたいなと思うような産業にしていく、そのためにはどうしていけばいいのか、そこが大きな目標であるというのはきっと皆様異論がないところではないかと思っています。
ただ、一方で、今日の農水省からの説明資料にもありましたとおり、足元の現状について、様々厳しい状況にあります。ただ、私は、企画部会にも所属しておりまして、そのときにも発言しましたが、例えば今まで飼料を海外から安く輸入できたからこそ成り立っていた産業構造が、これから先、成り立つのかというと、その前提自体が実は変わっているかもしれませんし、今後5年間を考えた場合に、人口減少社会で人手不足や飼料についての課題を前提とした上で、今後の酪農・畜産業はどうしていくべきなのか考えていくという目線で、新しいものをどうつくっていくのかという視点も折り込みながらやっていく必要があるかと思っています。
その意味では、先ほど畠中委員からあった鳥インフル等も含めた疾病の関係や今の気象等の環境問題、その環境においても、新たな様々な国際ルールの中でやっていかなければいけないところも含めて、やはり前提が違う中でどうしていくのかという目線を持った上で考えていくことが一つ大きなポイントであるかと思っています。
そういった視点からもう一つ大事なのは、この先社会が大きく変化していく中で、、この産業をどうしていくかというときに何か一つ特効薬になるような政策というものは恐らくないと思っています。ただ、やらなければいけない政策は絶対あって、それを講じた上で、その事業をつくっている事業者と政策が一体となって畜産業をどうしていくのか、この畜産部会の中で真剣に議論していければいいのかなと思っています。
ここからは事務局へのお願いになりますが、先ほど椛木委員からもあったとおり令和2年から状況は大きく変わっている、それはおっしゃるとおりだと思いますが、ここから先は更にダイナミックに変化していくと思っています。そのときに今回つくった方針や計画、目標がどのように実行されて、それがどうなっているのかをきちんとデータで検証することも必要になっていくと思います。ここで目標をきちんと定めることも大事ですが、その目標や方針をきちんとチェックできるようにデータ面でもしっかりと整備していくこと、やはりその部分も重要になっていくと思いますので、今後の一つのポイントとしてお願いしたいと思っております。
私からのコメントは以上です。ありがとうございました。
ほかに何か言い足りないことや御意見がもしあればと思いますが、よろしいでしょうか。
ありがとうございます。他に特になければ、意見交換は以上としたいと思います。次回以降、テーマ別に掘り下げて議論を進めていきたいと思いますので、よろしくお願いいたします。
本日は熱心に御審議いただき、ありがとうございました。
閉会に当たり、畜産局長より御挨拶をお願いいたします。
 
松本畜産局長
畜産局長の松本でございます。
本日は諮問の回でございましたので、こちらからの説明が長くなりましたことにつきましては御容赦願いたいと思っております。
また、活発な御議論を頂いたことにつきまして、改めて御礼申し上げます。
農政全体としては、今年の通常国会で食料・農業・農村基本法が改正されたところでございます。先月29日には、この改正を受けまして、基本法に基づく基本計画が諮問されたところでございます。私どもの分野におきましては、先ほど事務局からも説明させていただいたとおり、今年から各テーマごとに、いろいろな課題の整理や現状の把握に努めてきたところでございます。基本計画が諮問されたことを受けまして、本日、大臣より酪肉近をはじめとしました目標、各指針について御議論を委ねたところでございます。
今後、酪肉近の検討を進めていくことになりますが、前回の策定は、ちょうど令和元年のこの時期から令和2年の春にかけて行われました。その後の状況を振り返ってみますと、新型コロナが発生しまして物流、人流がかつてないような形で滞ったところでございます。また、ウクライナ等の紛争もございました。これにより地勢学的なリスクも大きくなったところで、違った意味での物の動きが重なってきました。
それに円安の進行がそれに拍車をかける形で、我々畜産の生産現場におきましては生産資材が高騰・高止まりし、皆様の経営が非常に厳しい状況の中で各種取組などもいろいろ行ってきたというのが現状であろうかと思っております。
これらを踏まえまして、今後の酪肉近をはじめとした家畜改良増殖目標、また養豚の基本方針等につきまして現状の把握に努めた上で、先ほど部会長からありました通り、エビデンスをどのように捉えてデータとして実証していくか、このようなことを頭の中に入れながら今後の議論に努めていきたいと思っているところでございます。
最後になりますが、お忙しい中、このような形で活発な御議論を頂いたこと、また、今後、我が国の畜産・酪農の更なる発展、また生産、流通、関係される皆様方の御理解が進みますような御議論をお願いいたしまして、私からの今回の挨拶とさせていただきたいと思います。
本日は誠にありがとうございました。
 
小針部会長
ありがとうございました。
最後に、事務局より御連絡があればお願いします。
 
新井畜産総合推進室長
本日は長時間にわたる御議論、誠にありがとうございました。
先ほど資料4で御承認いただきました日程案に基づいて、今後、議論を進めてまいります。
次回の畜産部会ですけれども、10月初旬に開催し、酪農・乳業をテーマに議論したいと考えております。またメールなどで連絡、調整させていただきたいと思いますので、どうぞよろしくお願いいたします。
 
小針部会長
それでは、これで部会を終了させていただきます。
ありがとうございました。
 
午後4時05分閉会

お問合せ先

畜産局総務課畜産総合推進室

担当者:請川、河田、松山
代表:03-3502-8111(内線4888)
ダイヤルイン:03-6744-0568

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