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令和6年度第5回畜産部会議事録

令和6年度第5回畜産部会議事録(PDF : 575KB)

1. 日時及び場所

日時:令和6年10月4日(金曜日) 13時00分~15時44分

会場:農林水産省 第3特別会議室(web併催)

2. 議事

〇新井畜産総合推進室長
それでは、定刻になりましたので、ただいまより令和6年度第5回食料・農業・農村政策審議会畜産部会を開催いたします。
委員の皆様におかれましては、御多忙中にもかかわらず御出席を賜りまして、ありがとうございます。それでは、小針部会長より議事をお進めいただきたいと思いますので、どうぞよろしくお願いします。


〇小針部会長
部会長の小針でございます。本日もどうぞよろしくお願いいたします。
まず初めに、松本畜産局長から御挨拶をお願いいたします。


〇松本畜産局長
御紹介いただきました畜産局長の松本でございます。
委員の皆様におかれましては、日頃より農林水産行政、特に畜産行政に対しまして御理解、御協力賜りまして、まずは御礼を申し上げます。また、お忙しい折に御参集いただき、またリモートで御参加いただいておりますことにつきましても、改めて御礼を申し上げます。
先月の10日に開催いたしました食料・農業・農村政策審議会畜産部会におきまして、酪肉近、また家畜改良増殖目標につきまして、大臣からの諮問をさせていただいたところでございます。最近の畜産・酪農をめぐる状況につきましての御説明をさせていただき、御議論頂きました。
これまで数々の御議論を頂いた中で、これからはテーマ別にこの酪肉近等を含めた議論を深めていくことを考えております。まず本日は酪農の関係につきましての議論を集中的に行うということで、資料の御説明などもさせていきたいと思っております。テーマごとに区切りながらいろいろと御議論を進めていくという形につきまして、御理解いただいていると思っておりますが、それぞれにつきましてこちらからできる限り情報・資料なども提供いたしまして、議論を進めていきたいと思っております。
限られた時間ではございますが、委員の方々から闊達(かったつ)な御意見をいただきますことを期待いたしまして、冒頭の私からの挨拶とさせていただきます。本日はよろしくお願いいたします。
 

〇小針部会長
ありがとうございました。
撮影の方はここで終了となりますので、御退室をお願いいたします。
 

(報道退室)
 

〇小針部会長
それでは、議事を進めます。
まず、本日の配付資料の確認、委員の出欠状況の報告などについて、事務局からお願いいたします。
 

〇新井畜産総合推進室長
それでは、本日配付しております資料について確認させていただきます。
会議資料、お手元の端末に資料1から4、また参考資料1から4、計8個のシートが表示されているかと思いますので、御確認いただければと思います。
また、パソコンの使用について御不明点などありましたら、遠慮なくお問合せを頂ければと思います。
次に、出席状況ですけれども、本日、12名の委員の皆様に出席を頂いております。そのうち椛木委員、二村委員、石田委員、井上委員、畠中委員、丸橋委員におかれましては、リモートにて参加を頂いております。よろしくお願いいたします。
また、本日は、宮島委員、大山委員、川田委員、里井委員、庄司委員、羽田委員、彦坂委員におかれましては、御都合により御欠席との連絡を受けております。
審議会に関する規定では、委員及び議事に関係のある臨時委員の3分の1以上の出席がなければ、会議を開き議決することができないと定められておりますが、規定数を満たしておりますことを御報告いたします。
私からは以上です。
 

〇小針部会長
ありがとうございました。
本日は、前回諮問されました酪肉近の見直しに向けて、酪農・乳業を中心に議論してまいりたいと思います。
それでは、まず事務局より資料3の酪農・乳業の現状と課題の整理の説明をお願いいたします。
 

〇須永牛乳乳製品課長
牛乳乳製品課長でございます。私から資料3、酪農・乳業の現状と課題の整理について説明させていただきます。
資料3、1ページ目から御覧ください。初めに、論点として本日の説明内容の要点を紹介し、その後論点に関連するデータなどを紹介していきます。資料が少し多いので、若干スピードが速いかと思いますが、その後の意見交換の時間などで質問していただければと思います。
まず、1ページ目の(ア)の項目から順に御覧ください。
需給ギャップに関しては、この数年間、全国で協調した対策により対応をしてきましたし、現在でも対策がなければ乳製品の在庫が積み上がるといった状況です。ですので、当面はこれまでの取組を維持・拡充していくことが必要ではないかと考えています。
二つ目、需要に関してです。できる限り国産生乳を供給し、現在の700万トンを超える生乳の生産を支えていくためには、最低限、飲用と脱脂粉乳の需要を好転させていくということが不可欠だと考えています。この後、状況をデータで確認します。
三つ目のチーズに関してです。これまでも脱脂粉乳とバターの価格に近づけるべく、チーズ仕向けの乳価を上げてきました。また、この数年間の過剰生産は年数十万トンに達しましたが、そのうち数万トンの引受けと、チーズは需給調整においては補完機能にとどまったという実態がございます。これらを踏まえていくことが今後に向けて重要だと考えています。
続きまして、輸出に関しては、国産生乳の量で見ますと、700万トンという生乳生産量に対して、輸出は2万トン弱と僅かでございます。今は将来に向けた着実な取組が重要なフェーズにあると考えております。
続きまして、飼養頭数に関してです。1頭当たり乳量の伸びという要因が大きくございます。そうしますと、向こう数年間は、この牛の能力が発揮できれば、現在の生乳生産量を下回る可能性は低いのではないかという推計ができます。このような情報の共有を進めていくことが必要かと考えています。
続いて、長期的な経営環境です。10年に一度危機が生じておりますので、これへの備えが必要だと考えております。
続いて、右上の(キ)の持続的な経営という観点ですが、飼料などの経営資源を確保するということ、そしてまた適切な飼養管理を通じた収支の安定が重要だと思っています。その中で特に収支が悪い経営体の特徴を整理・発信できないかと考えております。
続いて、改正畜安法に関してです。この数年間、全国協調対策を実施してきました。その他、牛乳需給の安定のために全国で必要な取組が幾つかございます。このようなものを国の様々な施策ツールを通じて促していこうと考えております。
続いて、その下、牛乳価格に関してです。小売価格、小売段階で現在100円程度の差で売られていると承知していますが、この価格差が生まれるのは、主に乳業、小売の流通過程で生じていると認識しています。牛乳の価格と価値を訴求していくためには、このような現状を理解し、また関与していく必要があると考えています。
最後、乳業工場に関しましては、引き続き飲用向けの工場の稼働率の向上は必要だろうと考えています。

続きまして、2枚めくっていただいて、3ページ目を御覧ください。以上の論点に向けたデータなどを紹介していこうと思います。
まず、需給ギャップに関してです。
左は、脱脂粉乳ベースで見た需要量と供給量の推移に、前回の酪肉近で示した姿を赤い点線で重ねております。右は、脱脂粉乳の在庫量の推移に輸入や対策を上下の矢印で示し、そうした調整がない場合の在庫量を緑の線で示したものです。この左右のいずれのグラフからも、令和2年度以降に脱脂粉乳の需給ギャップが課題となり、そのギャップを全国で協調して財源を拠出しながら、値下げなどを実施して乗り越えてきたということを示しています。また、左の図の赤い点線の計画ベースの有無にかかわらず、右の図の上下の矢印のとおり、ある程度毎年の需給を整えていかざるを得なかったということも示しています。
続いて、4ページを御覧ください。
図は、用途別に横軸を量、縦軸を価格にすることで、その面積によって生産者の受け取り乳代の状況を示しつつ、脱脂粉乳、そしてチーズについての対策が、国内外の価格差を埋める形で行われてきたということも示しています。ここ数年のように供給量が国産乳価を前提とした需要量を超えますと、輸入乳製品の価格と直接競合することになります。この国内外の価格差を埋めるために、これまで全国協調対策など対策を実施してきたということです。当面、このような取組を維持・拡大していくことが必要だと考えております。
続いて、5ページ目を御覧ください。需要に関してです。
左は、飲用と加工の仕向け量の大きな動向を、そして右は、仕向け別の推移に前回の酪肉近で示した姿を赤い点線で重ねたものになります。左のグラフでは、直近で800万トン近くの生産をしていた年として平成20年を引用しておりますが、それと比べて令和5年の現状は、加工の量は338万トンとほぼ変わらず、牛乳が60万トンほど落ちているということを示しています。同じグラフでは、前回の酪肉近の将来像、令和12年のところですが、飲用400万トン程度が維持され、代わりに加工が増えていくという姿を描いていたということも示しています。
また、右のグラフからは、牛乳と生クリーム、上の段二つですが、その二つで前回の酪肉近と現状令和5年とのギャップが大きく、16万と19万の合計35万トンほど計画よりも実績が下回っていることを示しています。
続いて、6ページを御覧ください。仕向け別の消費構造を解説したいと思いますが、その前に人口動向についても触れたいと思います。
左図は、総人口について、5年で3%、10年で6%の減少があるという図になっております。また、右図では、人口構成の変化が消費にもたらす影響を示しました。下段のオレンジ色の若年層は、1人当たりの消費は大きいですが、重みが減っていきます。他方で、上段の緑色は、高齢層は増えますので重みが増えていきますが、59歳以下の層の減少を打ち消すほど増えるということではありません。結果、同じ総人口であったとしても、少子高齢化と人口構成の変化によって、5年で1%ほど牛乳の消費量が減少します。子供への消費拡大は大切だと思いますが、他方でほかの世代に対しての取組も大切だと思っております。この左右を合計しますと、この人口要因として、5年で4%ほど下方方向に圧力が加わっていくということになります。
この姿を念頭に置いていただきつつ、仕向け別の消費構造を見たいと思います。7ページを御覧ください。
左の図の二つの上下のグラフの中で、グレーの縦線は実仕向け量で、それを総人口で割ることで算出したのが黒い折れ線で、1人当たり消費量、つまり消費構造を示しています。全てを人口減のせいにしないように、この折れ線で構造を見ていくということが大切だと思っています。なお、これ以降のページも赤い点線は前回の酪肉近のペースを示しております。
左上の成分無調整牛乳の折れ線からは、今のところ前回の酪肉近に近いペースで推移しており、健闘していることが見て取れますが、巣籠もり需要後に下振れしているということも同時に見受けられます。
なお、外国人旅行客には牛乳が飲用の中で一番人気という民間の調査がございまして、現状はインバウンドもこの消費量を一定程度支えているということもあるかもしれないという理解をしております。
他方で、左下の成分調整乳飲料は、長期的に見ますと非常に苦戦をしております。主に他の飲料との競合と、加えて、右下にありますとおり、相対的に生乳使用量が少ない乳飲料が増えているということも相まっているものと考えております。高い乳価を支える牛乳消費若しくは飲用消費が増えることが一番生産者を支えられますので、この飲用向け全体の消費量についての課題感を業界全体で共有していく必要は高いと考えています。
続いて、8ページを御覧ください。この飲用の中の学乳についてです。
学校給食牛乳ですが、学乳を飲む義務教育対象年齢に考え方として近づけるべく、若年人口で割った折れ線が右の図になります。学校給食の実施率の上昇に伴って、1人当たりでは着実にこれまで増えてきております。これは関係者の努力が実っているということかなと理解をしています。
なお、前回の酪肉近では牛乳を用途別に細分化したわけではありませんが、単純に牛乳全体のペースを赤い点線で重ねますと、学乳ではこの通り25%増と、やや無理がある数字であったということが分かります。
9ページを御覧ください。今度は脂と脱脂粉乳についてです。
前回の酪肉近のペースと令和5年の実績を比べますと、左図の生クリームの棒グラフで19万トン下振れしていますが、真ん中の図のバターの棒グラフでは33万トンの上振れをしていますので、実際は脂だけで見ますとそんなに無茶な計画ではなかったのかなとも考えています。バターは今後の趨勢(すうせい)を予測しましても、堅調・軟調の両方の可能性があるとはいえ、いずれでも前回の酪肉近のペースと同程度以上となりそうです。趨勢(すうせい)の算出方法は参考資料の先頭ページに置きましたので、必要とあれば後ほど御確認をお願いいたします。
他方で、一番右側の脱脂粉乳は、輸入も合わせて見ますと、令和2年度以降に需要が剥落し、その後バターとの需要差分を対策によって対応してきたということ、さらに、今後の趨勢(すうせい)も軟調方向であるという課題が見受けられます。先ほど申した飲用と併せまして、この脱脂粉乳の需要についても危機感を共有していくことが必要だと考えています。
続いて、10ページ目を御覧ください。チーズについてです。
左は、ソフトなどの高単価チーズ、右は、それ以外の安価なハードチーズを図示しました。ソフトなどの高単価チーズは、前回の酪肉近に近いペースで推移してきましたが、直近は頭をもたげており、やや不安が残ります。他方、ハード系ですが、ハード系は軟調傾向が続いておりまして、近年は対策によって一定の需要を確保してきたという実態がございます。
続いて、11ページ、12ページ目は、1月にこの場でも紹介をしましたので省略します。
13ページ目を御覧ください。現在のチーズの対策の考え方でございます。
上下の図は、縦軸に価格、横軸に数量を取ることで、この面積が生産者の受取り乳代を示しております。国産チーズ仕向けの乳価は階段状の構造になっておりますが、それはハードチーズの抱き合わせ制度が背景にありました。これがTPP合意により解消していくという課題がございますが、それに対しては、これまでのTPP対策では、ソフトなどの高単価の仕向けを拡大するという将来を目指してきたということでございます。
続いて、14ページを御覧ください。同様に現在のチーズ仕向けの状況を整理しました。
これまでもチーズ仕向けの乳価を引き上げ、乳価の維持・安定を図ってきました。また、そのためにもソフトを始めとする高単価チーズの生産・消費拡大が目指されてきたと思っています。また、ここ数年の過剰時には脱脂粉乳・バターに最大30万トンほどが仕向けられ、それを補完する形で数万トンがチーズに仕向けらるにとどまったと考えています。さらに、バターに需要があるという現状では、脱脂粉乳・バターに生乳を仕向けた方が対策費が少なくて済むということも、ここ数年の仕向け結果を生んでいると考えています。チーズについては、このようなこれまでの実態、取組、このようなものを踏まえて、それらを維持・拡大していくことが大切だと思っております。
続いて、15ページも1月に紹介しましたので省略します。
16ページを御覧ください。
輸出の関連ですが、輸出の中では、生乳使用量が約2万トンございますが、その中で一番生乳の需給に影響があるといいますか、一番生乳を使っているのは飲用です。その飲用について、輸出している牛乳の価格帯について紹介します。
主な飲用牛乳の輸出先国での価格帯を並べたものが16ページの図になります。赤が日本産、その他の色が他国産のものとなっています。左の台湾のように大きな価格差がある場合もありますが、右の香港の左から二つ目の日本産のように、競合相手と遜色ない価格帯の場合もございます。現在、価格が高く販売量が伸び悩んでいるというような声も聞きます。このようなものに対しては、物流コストを低減し、それによって価格を下げていく、又は価格に応じた価値の訴求をしていく、そうした取組が課題なんだろうと考えています。必ずしも価格が高くて勝負にならないというわけではなくて、色々なアプローチがあるということだと思っています。
17ページを御覧ください。輸出に向けた取組例です。
左右に並べていますが、輸出の拡大に向けては、オールジャパンでのプロモーション、それから右側にありますチルドでの大量輸送の実証、このようなものに取り組んでおり、政府としてもそれを支えております。
以上が需要についてでございます。

続いて、19ページを御覧ください。供給に移りたいと思います。
このページも以前御紹介したものではございますが、生産量は1頭当たり乳量と頭数、この二つの掛け算により決まりますので、それぞれある程度、数年先を見通すことができると考えています。
20ページを御覧ください。順に頭数と乳量を追っていこうと思います。
まず、種付けからです。左図は精液の使用状況の推移になります。オレンジ線の通常精液と黄色の線の性判別精液の使用割合を合算したのが緑の線となります。緑の線は雌のお腹のうち、次の雌向けに使われる割合を意味しています。例えば令和4年に低下し、令和5年に増加をしていますし、今回の推計には使えませんでしたが、足元では40%を超える形で相当上昇をしてございます。
これを前提に、21ページを御覧ください。種付けとその後の出生についてです。
左図は、緑の線がその前のページの種付け状況を再掲したグラフになっていまして、黒の線がその後の出生状況の推移になります。また、右図は、種付けと出生の間の歩留りの推移になります。出産までおよそ1年掛かりますので、例えば左図のとおり、緑の線の令和4年を軸とする種付けの減少・増加というV字がございますが、それを黒の線の方に移しますと、令和5年度を軸とする出生の変化につながります。ただし、右の図にありますとおり、令和5年には猛暑がございましたので、種が付きづらいということも含めて歩留りが悪化し、種付けの減少以上に出生が減少したという状況があったと思っています。
ですので、今後について考える上では、緑の線の種を付ける量だけではなくて、この歩留りが令和6年以降どのようになっていくのかということも大切な要素です。ここではその歩留りや出生の趨勢(すうせい)を2パターン置いて見ております。
続いて、22ページを御覧ください。頭数の出口である、死廃率、それからもう一つ乳量についてです。
死廃率は生産抑制下で上昇しました。早めに引退する母牛を作っていたということでございますが、令和6年以降の動向については、なかなか確定的に見通し難いところがあります。左の図ではそれを2パターン置いております。
また、1頭当たり乳量は乳牛の改良という要素がございまして、これまで増加基調で推移をしてきましたが、生産抑制、それから猛暑によって令和4年、5年と低下しました。今後を考える際には、令和6年以降、いつどの程度戻るのかということがとても重要になると思っています。例えば令和3年以前の延長線上まで令和8年に回復すれば、それは上の方に9,262kgという数字がございますが、令和5年よりも5%乳量が増えます。また、餌の与え方にも左右されますので、令和4年、5年と減少した、その値を含めて乳量を推計しますと、それがやや落ちて9,080kgと、3.1%ぐらいの増になるということで、二パターン置いてございます。この辺りも、まだこれから乳量が去年よりも戻ってくるという実態が現場であるというように思っていますので、どれぐらい戻ってくるのかというのがこの段階では見通し難いのかなと思っています。
続いて、23ページを御覧ください。頭数をまとめたものになります。
黒の線は2ページ前の出生状況の再掲になります。これに死廃率の情報を加えますと、経産牛頭数というものを計算できます。主な要因で見ますと、令和6年は死廃率が低下をすれば、つまり牛を長持ちさせる動きが多くなれば、経産牛頭数が上昇します。また、令和6年に出生が回復した影響は、その2年後の令和8年に現れていきます。2年ぐらいで乳を出し始めるということでございます。前2ページの出生・死廃のパターンを組み合わせて四つパターンがございますので、それを図示しております。頭数が少なくなるというパターンの組合せであっても、令和8年で令和5年比1.8%の減少という計算ができるということになっております。
続いて、24ページを御覧ください。今までの情報を合わせて生産量を推計した結論のページになります。
図は、前4ページの頭数と乳量の情報を掛け合わせております。令和5年を軸とする出生の増減の影響はほとんど見えません。これは1頭当たり乳量の影響が強く出るということかと思っています。例えば令和8年で見ますと、その生産量は1頭当たり乳量の回復が大きいと、令和5年比で3.2%増。その要因で分解しますと、乳量が5.1%伸び、頭数が1.8%落ちて、差引きで3%となります。この1頭当たり乳量の回復が弱いパターンですと、令和5年比で1.2%増にとどまる。どちらにしても伸びるということだと思っています。ここもやはり1頭当たり乳量がどの程度回復するかによって左右されると思います。このように牛の能力が発揮できるようになれば、少なくとも向こう数年間、令和5年の730万トンという生産量を下回る可能性は低いという計算ができます。
なお、生乳生産の過剰に苦しんだ年が令和3年度でございました。この生産量をグレーの太い縦線で示しています。
恐縮ですが、3ページ前の21ページにお戻りいただければと思います。
令和3年度の生産量につながる種付けが行われたのは、同じグレーの縦線で示しています平成30年度でございました。このときで40%弱ぐらいの種付けです。その上で、本年度、まだ1四半期、4~6月分しかデータはございませんが、40%を超える種付けをしております。この1四半期で平成30年度を超える種付け状況になっているという状態です。もし仮にこのままのペースで残り3四半期進むと、3年後の、令和9年度に生産を相当上振れさせる要因になると思っています。この旨はよく認識を広げながら考えていく必要があると考えています。
冒頭触れましたとおり、需要は飲用・脱脂粉乳に課題があると考えています。一方で、供給についてはこの1頭当たり乳量次第というところが大きいんですが、それなりに供給量は維持できるという推計が可能でございます。ですので、向こう数年間は需要不足に取り組んでいくことが必要であると見ております。
続いて、25ページにお戻りください。頭数に関連しまして、戸数の推移についても触れたいと思っております。
左上の図は戸当たりの頭数、つまり経営規模と、左下図は戸数の推移になります。この10年間で戸当たり頭数、経営体の規模は4割増え、戸数は4割減りました。経営環境もございますが、多くの経営体が乳量と頭数に重きを置いてきたということ、それから人口の減少、労働力人口の減少といった要因も、この戸数の減には影響してきたと、それから戸当たりの規模にも影響してきたと思っています。その上で、このような経営体の移行、それから人口の減少、このような要因は、今後、短期間で大きく変えられるというものでもないだろうとも考えております。
26ページを御覧ください。戸数と経営環境について更に少し深掘ったものでございます。
左右の図は、都府県と北海道を分けてございますが、戸数と経営環境についてです。左右の図で、黒い線の収支差とオレンジの線の戸数の減少率のそれぞれの推移を重ねております。両端を薄い丸で囲んでいますが、黒い収支の線が悪化すると、オレンジの戸数の線も通常以上に悪化をしているという状況が見受けられます。戸数減少の悪化を抑えるには、経営を安定させるということが大切だろうと考えています。
続いて、その経営に関してです。28ページを御覧ください。
左上下の図が、収入、コスト、そしてその差の収支差の推移を年別に追ったもので、右の上下の図が、足元数年分を月別に拡大したものになっています。左下図のとおり、10年に一度経営の危機が訪れていますので、これに対する備えを検討していくということが重要だと思っています。また、右の下図にありますとおり、今回の危機は令和5年前半を底に、回復しつつあるようにも見受けられます。
29ページを御覧ください。
左が収入の主な要因の推移、右が支出の主な要因の推移になっています。いずれも北海道の100頭規模をモデルにして図示しております。収入の8割を占める乳代、左上の折れ線は令和5年の途中から明確に上昇を見せていますが、その下の副産物は依然として低迷を続けている状況がございます。また、支出の4割を占める飼料代は、右上の折れ線のとおり、1年以上掛けて漸減してきているものの、高止まりと言っていいような状態になってございます。
30ページ以降の2枚は都府県の状況でして、説明は省略しますが、北海道と大きな差はないと思います。
32ページを御覧ください。この経営状況に関連して、海外との間で経営状況を比較したものになります。
左から、都府県、北海道、フランスの生乳1キロ当たり支出と収入を円換算で並べております。濃い青の所得と薄い水色の補助金などの公的支持、これを比べますと、この3地域のいずれでも大きな差は見られませんでした。日本でも海外並みの支援が必要という論調をまれに聞くことがございましたので、並べてみたものですが、これは我々としては日本は日本で考えましょうと思っております。
続いて、33ページを御覧ください。経営規模と経営悪化についてこの後は触れていきます。
左上のグラフ、1月にも紹介しましたが、経営の悪化度合いは、真ん中の200頭以下が最も小さく、経営の安定性は必ずしも飼養頭数と比例しないと考えています。
34ページを御覧ください。その経営規模と費用について整理したものです。
左右のグラフは、横軸に飼養頭数、規模、それから縦軸に価格指数を取って、主な費用項目が規模とどういう関係があるか、つまりスケールメリットがどこまで働いているのかを確認したものです。労務費は右肩下がりでスケールメリットがあるように見えますが、乳牛償却費、流通飼料費にはそうした規模のメリットは見られません。自給飼料費も逆転するような経営体が出てきます。
35ページを御覧ください。経営規模と利益についてのグラフになります。
左右のグラフは、横軸に飼養頭数、規模、縦軸に利益を取って経営体をプロットしたものです。オレンジの上下矢印で示しているとおり、規模が大きくなると利益のプロットが拡散しておりまして、経営力の差が利益の差、分散度合いを広げているという状況が見受けられます。
36ページを御覧ください。今度は乳量と所得についての関係です。
横軸に乳量、縦軸に所得を取って経営体をプロットしつつ、所得低位・中位・高位を赤、白、青で色分けをしたものです。縦の色塗りをしたものは、乳量別に区分をしたものになっています。このデータでは、例えば乳量8,000キロから真ん中のゾーンの1万キロに増やしても、必ずしもキロ当たりの所得が増えるわけではないと。これは経営効率が必ず上がるわけではないという状況が見られると思います。ただ、売上げは上がるとは思います。
37ページを御覧ください。乳量と費用についてです。
図は、前のページの縦の色塗りの一つ、乳量8,000キロの層で、左に所得が低い経営体、右に所得が高い経営体のそれぞれのコストを並べてみたものです。全コストに占める各費目の比率は、コストの大小で大きな差がないという特徴が見受けられます。コストが低い右側の経営体は、餌だけではなく、乳牛償却費含めて、いずれの費目も低く管理できているという状態が見受けられます。
38ページ以降の2枚は、頭当たり乳量が高い層を見たものですので、傾向は同じになっています。
40ページを御覧ください。この乳量と費用の関係を更に追ったものになります。
関東の50から100頭規模層、これは都府県では標準的な層になりますが、そこの層で、左の図は、左から生産費の低い順に経営体を並べて、それが青い線になります。黄色の点線は、それぞれの経営体の1頭当たり乳量を重ねたものになります。右は、同じデータで生産費の低い層と高い層でどの費目が違っているのかを見たものになっています。一般的に乳量を出すにはコストを掛けるもの、餌をあげるということだと思うんですが、左の図からは、高い生産費でも乳量が下がる場合があるということが見受けられます。右の図では、コストが高い右側の経営体は、餌費、それから乳牛償却費の効率が悪いということが見受けられます。これはあくまでも想像なんですが、多給であったり空胎期間が長かったりと、飼養管理上の課題がこの経営体に何らかあったという可能性がございます。
その次の41ページは、都府県全体でも同様の傾向が見られるということを示したものでございます。
42ページを御覧ください。餌費と経営についてです。これは若干難しいページになりますので、御留意ください。
左上の図は、横軸に自給飼料費、縦軸に乳代に占める餌の比率である乳飼費を取っています。餌の効率といいますか、乳代を稼ぐための効率性を示したものです。その縦横軸に経営体をプロットしたものになっています。
(ア)の右下の矢印と右下に下がっている矢印のとおり、自給飼料率が右に高まるほど乳飼費が下に下がる傾向が見えます。自給飼料の高い経営体ほど、飼料費の負担、影響が低いということが言えると思います。
また、(イ)の矢印を、左右で示していますが、自給飼料が低い経営体と高い経営体では乳飼費のばらつきが異なっておりまして、自給飼料の高い経営体ほど、経営体ごとの差が出にくいと言えるかと思います。
また、右上の図は、同じ縦横の軸内に令和元年と令和4年、コストが大きく変動していますので、その二つの経営体をプロットしたものになります。これは母集団と標本数が異なっていますので、数自体にはあまり意味はありません。この2か年で乳飼費の上昇状況を比べたものです。それを(ウ)の矢印で示していますが、自給飼料が低い経営体である左の経営体と、それから高い経営体である右側の経営体では、乳飼費の上昇度合いが異なっております。自給飼料が多い、高い経営体、右側の経営体ほど、飼料コストが上がりづらかったという状況が見受けられます。総じて自給飼料が高い経営体ほど、飼料費は安定しやすいということは言えると考えています。
なお、自給飼料と飼料費又は収益の関係も見ましたが、そこにはきれいな相関がなかなか見受けられませんでした。
続いて、43ページを御覧ください。飼養管理についてです。
左上の図は、実線は除籍産次の推移を、左下の図は除籍理由を示しています。除籍産次の低下の中でも、その理由は疾病などが多いようであります。適切な飼養管理をしていきますと、不要な除籍を減らしていくということができますので、このような取組は全体の経営コストを下げていく上でも大切だと思っております。
続いて、44ページを御覧ください。同じような飼養管理について、今度は子牛です。
左の図は、ホル雄子牛について、横軸に日齢当たりの体重増を、縦軸に売買価格を取ったものになります。右の図は、横軸に日齢当たりの体重増、同じようで、縦軸に売買価格の分布を取っています。この左右のいずれも、増体を大きくしていければ、価格も上がるということを示しております。
続いて、45ページを御覧ください。子牛の飼養管理の例についてです。
よい子牛のためには、母牛の管理、そして出生後の管理、両方が必要だということを示しております。
続いて、流通についてです。47ページ以下になりますが、この場で紹介したものが多いので、省略して幾つかだけ紹介します。
54ページを御覧ください。加工工場についてです。
乳価は、牛乳が高く、加工が低いという用途別乳価を取っております。都府県では牛乳仕向けが優先されて、牛乳にならなかった分が広域的に集められ、加工に仕向けられるという仕組みになっております。この取組が牛乳の安定供給、全てを牛乳に仕向けて牛乳があふれかえるということを防いでおります。ただし、この加工工場がいずれも創業50年を超えて、老朽化しているという課題がございます。
続いて、55ページを御覧ください。
牛乳の安定供給のために、全国的に必要な取組がございます。この場でも御紹介しましたので、内容自体は省略しますが、このような取組は、今後の補正予算、当初予算など、国の様々な施策ツールを通じて促していきたいと考えております。
続いて、牛乳価格についてです。57ページは省略しまして、58ページを御覧ください。流通事業者と乳業との間の価格についてです。
指定団体や、その他の新たな流通事業者、それと乳業との間の売買価格についてです。上段が令和4年、下段が令和6年の指定団体が乳業に販売する価格について、横軸に価格、縦軸に本数を取って、分布状況とその変化を追ったものになります。中央値と取引の中心となる価格帯、下の段で赤い線や丸く囲った部分ですが、やや分散が高まりつつも、価格転嫁自体は進んだということが見受けられます。また、販売価格帯の幅は上下で15%ほどに収まっていたことと、安い価格帯の商品も存在はしますが、量は相当限定的でございました。
続いて、59ページを御覧ください。小売価格についてです。
左側の緑で塗ったところだけ説明しますが、上段が令和4年、下段が令和6年の小売価格です。これはPOSデータから取っております。横軸に価格、縦軸に本数を取って、分布状況とその変化を示しました。中央値は上昇し、価格転嫁が進んだということは見受けられますが、右側の高い価格帯の方が広がっている状況が分かります。上の緑でいうと54円だったところが、下でプラス17円で、71円と、右側の方が広がっているという状態のことを示しています。そうしますと、全体での分布は重心が左、つまり安い方に移動したということが見受けられるということでございます。この背景には右側の図ですが、安いPBのシェアが上がり、高いNBが苦戦している状態があると分析をしています。
続いて、60ページを御覧ください。今紹介しました2ページをまとめた資料がこちらになります。
図の(ア)で示した箇所は、牛乳の小売価格の幅を示しておりまして、100円ほどの価格差がございます。それは、(イ)の箇所、原料乳価、指定団体から乳業に売る際の価格の幅よりもはるかに大きくなっております。また、図の左側の棒グラフ、相対的に安い牛乳の大半は、原料乳価の中央値辺りによって作られているということ、そして牛乳の小売価格の差は、原料乳価の差よりも、主に物流・販売費用の差によって生じているという分析を我々としてはしております。小売価格に関心を向け、高い価値、価格を訴求していくには、生産者、流通事業者においても、乳業、小売に関心を向け、関与をしていく必要があるということを考えております。
最後に、生乳流通についてです。62ページを御覧ください。
右下のプロットは大手乳業とそれ以外の牛乳工場の稼働率を比べたものになります。大手は牛乳を看板といいますか、一つの商品とした上で、事業内容を多元化して利益を出していると承知していますが、一方で中小乳業はそうはならずに、牛乳一本足の中小乳業は相当多いと思っております。そうしますと、そういう乳業はそう簡単にはいかないという状況があるというのが、今の牛乳の構造かと思います。そうしますと、この用途別乳価を取っている日本の生乳制度上は、基本的に牛乳が供給過剰になる構造を持っていますので、そうした中で中小乳業の牛乳工場については、引き続き効率化が必要だろうと考えております。
1枚飛ばしまして、64ページを御覧ください。物流についてです。
2024年問題の影響は、徐々に出てきている状態にあるのかなと承知をしています。昨年、中酪が行動計画をまとめておりますので、そうした取組を拡大させ、支えていくということが重要だと考えています。
最後、65ページを御覧ください。消費者の理解醸成です。
消費者が何を求め、何がヒットするかというのは、あらかじめ、しかもこの役所側の方で、特定し切れるものではないと考えています。ですので、これまでのように、スマイルプロジェクトなどを通じまして、多様な主体が自らの創意工夫と多様な手法で消費者の理解醸成、展開していくということが大切だと思っていますので、引き続きこのようなものを支えていきたいと思っています。

説明は以上になります。

 
〇小針部会長
それでは、これより審議を行いますが、松田委員と丸橋委員が所用により途中退席されますので、初めにお二人から御意見を頂き、それぞれについて事務局から回答を頂きたいと思います。その後、数名の皆様から挙手制にて発言を頂き、事務局からまとめて回答を行うこととしたいと思います。できるだけ効率的な運営に努めますので、円滑な議事の進行に御協力のほどよろしくお願いいたします。
まず、松田委員から御意見よろしくお願いいたします。
 

〇松田委員
松田でございます。
まず、現行の基本方針が策定されて以来、新型コロナウイルスの感染症の発生あるいは、配合飼料価格等の生産資材価格の高騰など、想定外あるいは、想定を大きく超える現象が相次ぎ、酪農・乳業をめぐる情勢も大きく変化をしてきています。このような情勢変化を踏まえ、2035年度を目標年度といたしました新たな酪肉近の基本方針を策定するに当たりまして、酪農と両輪をなす乳業者の立場から、大きく分けて3点意見を述べさせていただきたいと思います。
まず、一点目は食料の安定確保が次第に困難になっていくと懸念される中で、食料安全保障の確保を基本とした検討が必要ではないかという意見です。輸入に多くを依存する飼料や肥料の価格高騰に併せて乳製品の国際価格も高騰し円安の進行もあって、一時的には輸入乳製品価格が国内乳製品価格とほぼ同水準となるなど、かつてない事態が発生しています。こうした世界的な緊急事態が進行するのと同時並行で食料・農業・農村基本法の検証作業が進められたこともあって食料安全保障の確保が最重要課題になってくいるものと認識しております。このため、今回のような不測の事態はいつでも起こり得ることを前提に、食料安全保障の確保、言い換えれば国民の皆様の安全・安心につながるような、国内生産の維持・拡大を基本とした具体的な政策による裏付けのある基本方針を策定していただきたいと考えております。
2点目は、産業としての活力を維持するためにも、生産者の意欲への配慮が必要であるという意見です。
まず、バター・脱脂粉乳の需要不均衡の解消についてですが、国産バターの需要は生産を上回るため、カレントアクセスはバターに寄せて輸入しているだけではなく、本年度は追加輸入も行われている状況です。一方、国産の脱脂粉乳の需要は依然として生産を大きく下回っているため、生産者団体は過去2年連続で生産抑制を行い、さらに、本年度は生産抑制は行わないものの、引き続き過剰在庫処理対策を講じているところです。言い換えれば、国産バターの需要に合わせて生産をすれば、脱脂粉乳の過剰在庫処理対策が必要となり、そして逆に国産脱脂粉乳の需要に合わせて生産をすれば、大幅な生産抑制とバターの追加輸入が必要になるというジレンマに陥っているところでございます。このような中で生産者の意欲を維持するためには、国産脱脂粉乳の需要を確保することにより需要の不均衡を解消し、生産の維持を図っていくことが必要であると考えております。
また、TPP等に基づきまして、チーズの関税が撤廃に向けて段階的に引き下げられ、近い将来、関税割当て制度の効果はなくなる見込みです。結果的に、プロセスチーズ原料用ナチュラルチーズが輸入品に置き換わることにより、生産抑制が必要になりかねない状況です。乳業者としては、相対的に競争力のあるソフト系チーズの生産拡大を図る所存でありますが、需要拡大には長い時間が必要です。加えて、脱脂粉乳の需要拡大対策を講じたとしても、バターとの需要格差を一気に埋めるような急速な需要拡大は期待できないと考えております。
このような中で、生産者の意欲を維持するとともに、酪農への新規参入者に魅力を感じていただくためにも、脱脂粉乳の需要拡大対策と併せてプロセスチーズ原料用ナチュラルチーズを含めた国産チーズ生産の維持・拡大を図る措置を講じることによって、生乳生産の維持・拡大を図っていく必要があると考えております。
最後の3点目は、持続可能な酪農・乳業確立のための環境整備の必要性であります。
社会的な課題であるSDGs等への対応につきましては、消費者からの信頼確保あるいは、企業価値の向上にもつながることから、乳業各社がそれぞれの企業規模に応じてできることに地道に取り組んでいるところです。しかし、他方、酪農分野については、昨今の酪農をめぐる情勢や経営環境が非常に厳しいものであったことから、組織的に検討を行うこともできずに、取組はほとんど進んでいない状況にあると認識をしております。生産者による取組や業界の自主的な対応だけでは、なかなか前に進みません。
このため、新たな基本方針の中に、推進あるいは、見える化する必要がある取組を明示的に位置付けるとともに、業界とも連携をする中で、生産者を指導・支援し、その成果を対外的に発信していく体制を構築する必要があると考えております。
以上、3点を意見として申し述べさせていただきました。よろしくお願い申し上げます。

 
〇小針部会長
ありがとうございます。
頂いた御意見に対して事務局から御回答をお願いします。
 

〇須永牛乳乳製品課長
松田会長、ありがとうございました。
3点頂きまして、一つ目と二つ目は大きく重なるかなと思っています。今後、生乳生産量をどの辺りに持っていくのか検討していく上で、本日紹介しましたとおり、短期的に最も大きい課題は需要面だと思っています。これまで全国協調対策の形で、脱脂粉乳の不均衡を一定程度カバーするような対策をしてきました。さらに、現状で脱脂粉乳が課題として引き続き残るということ、そして飲用部分の需要にも課題が残るということを業界全体で共有しながら、引き続き取り組んでいくことが大切な要素だと思っています。何か一つ行うと生乳生産全体の需給をカバーできるということはなかなかないと思っていますが、今行っていることをしっかりと維持・拡充し、用途別の対策を考えていくことが、我々としては必要だと思っています。

 
〇小針部会長
ありがとうございました。
松田委員、よろしいでしょうか。
 

〇松田委員
はい。ありがとうございます。
 

〇小針部会長
それでは、丸橋委員、御意見よろしくお願いいたします。
 

〇丸橋委員
今回は酪農関連の検討の場ということで、牛肉の流通に携わる者としては説明をお聞きする場面なのですが、資料3の20ページから25ページ辺りに関係する国産牛肉の供給量の将来予測について、現状の把握に関する考え方を教えてください。
国産牛肉は和牛、交雑牛、乳牛の3種類があります。このうち交雑牛と乳牛が酪農経営由来であると思っております。これを肥育したものが供給され、これが消費者にとっては比較的安価で購入しやすいものとなっております。この動向について、20ページにあるとおり、性判別精液の利用が増加してきていることから、乳牛由来の牛肉の供給量が減ってきているように見えるほか、交雑牛の生産にも影響があるのではないかと考えております。今後の酪農経営由来の乳牛、交雑牛の牛肉供給量をどのように考えているか教えてください。
 

〇小針部会長
食肉鶏卵課長、お願いします。

 
〇伊藤食肉鶏卵課長
食肉鶏卵課長の伊藤でございます。
まず、乳用の雄と交雑牛の生産動向ですが、また次回、肉用牛・食肉をテーマに議論を行いますので、簡単に御説明をさせていただきます。資料3の20ページのとおり、性選別精液の利用の増加があったため、資料には記載していませんが、乳用雄が減少しています。一方で、交雑牛は最近、増加傾向にあります。また、酪農由来の黒毛和種も含めると乳用牛全体では大きな増減は見られないという状況です。
御質問の点とはちょっとずれるかもしれませんが、やはり交雑牛や乳用牛というのは値頃感のある牛肉であることから、消費者の方から一定のニーズがあると認識しております。この円安の状況下においても輸入牛肉との価格差は縮まりましたので、そういう意味ではすごく引きが強かったです。交雑牛と乳用牛の供給につきましては、肉用子牛の繁殖経営とは異なり、酪農経営に大きく影響を受けます。酪農経営の中で肉用子牛を生産する上で、これを踏まえて値頃感のある国産牛肉を求める消費者ニーズをどこまで踏まえて対応していくのかを、酪農経営の中でよく認識を共有していくことが大切だと思っております。
 

〇小針部会長
ありがとうございます。
丸橋委員、よろしいでしょうか。


〇丸橋委員
ありがとうございます。
 

〇小針部会長
ありがとうございました。
それでは、ほかの委員の皆様から御意見があればお願いします。また、本日はかなり細かい説明もありましたので、特に酪農関わっていない方は少し分かりにくかった部分もあるかと思いますので、ご質問があれば御意見と併せて頂ければと思います。
それでは、御意見、御質問がある方は挙手にてお願いいたします。
馬場委員、お願いいたします。

 

〇馬場委員
ありがとうございます。
まず、需給緩和や生産資材価格の高騰、酪農生産基盤の弱体化など、情勢が大きく変化している中、今、正に食料安全保障の確保に向けた議論が求められていると認識しています。次期酪肉近の策定においても、改正基本法の内容に沿って、持続可能な生産基盤を確保することを前提として、検討を進めてまいりたいと思います。
その上で、資料3の論点に沿って幾つか意見を申し上げたいと思います。
論点1の需給ギャップと論点2の需要拡大、そして論点8の畜安法に関わる話ですが、脱脂粉乳・バター需要の跛行性、飲用牛乳や脱脂粉乳の需要低迷、そして新たな流通の拡大など、全国的に大きな課題が山積しております。このような中で生乳需給の安定を図るためには、それぞれの生産者、乳業者がどのような役割を果たすのか、まずはしっかりと次期酪肉近で整理頂きたいと思います。
さらに、全国的な課題に対しては、畜安法運用上の規律の強化に加えて、需要拡大の観点も含めて、現行の対策を拡充していく必要があると思います。生乳需給調整セーフティーネットとして構築するためにも、系統外を含めて、生産者、乳業者、国が一体となった仕組みを確立していただきたいと思います。このことによって、生産抑制によらない生乳需給の安定を図ることが重要だと考えます。
次に、論点3のチーズ対策ですが、チーズの需要は国産を含めて拡大する中、国産生乳の仕向け先を拡大する観点も含めて、需要拡大の取組を着実に後押ししていく必要があると思います。特に脱脂乳からのカッテージチーズ製造など、脱脂粉乳の在庫問題に対応した幅広い需要拡大対策の一つとしても支援を検討していただきたいと思います。
次に、論点5の飼養頭数についてですが、1頭当たりの乳量と経産牛頭数の掛け算により、生乳生産量を推定する場合、1頭当たりの乳量をどのように見込むかということも重要な要素になります。これを過度に大きく見積もってしまうと、経産牛頭数を確保する上で誤ったメッセージともなり得ます。特に国としても、乳用牛の長命連産性向上を支援するなど、乳量偏重からの転換を現在、促進しているところだと思います。また、猛暑等で1頭当たりの乳量が下振れする可能性も十分考えられるのではないでしょうか。生乳生産量の推定に当たってはこのような情勢についても十分織り込んでいただき、搾乳牛を確保するための意欲が損なわれないよう、留意をお願いします。
次に、論点7の持続的な経営についてです。42ページにありましたが、飼料自給率が高いほどコストの安定にも資する中、そうした意義を含めて、飼料生産の重要性や足腰の強い経営モデルを示していくことが重要だと考えます。都府県においても、耕種農家の継続的な飼料生産等による、国産飼料の安定的な活用が必要であると思います。他方で、飼料基盤の確保がなかなか難しい地域も都府県を中心にあります。40ページにおける例では、飼養管理の違いによってコスト差が生じる可能性も示唆されているところです。そうした点も更に深掘りいただき、飼養管理の向上も含め、地域実態に応じた収支改善の姿を描いていただき、その実現に向けた施策を講じていただきたいと思います。
最後に、論点9の牛乳価格についてです。適正な価格形成に向けて、改正基本法でも合理的な費用の考慮について明記された中、国の一定の関与の下、実効性が確保できる仕組みを構築していただきたいと考えます。また、価格と価値の訴求に向けては、私も構成員である農水省の適正な価格形成に関する協議会で議論されておりますとおり、生産から消費までの各段階における関係者の協調が重要であると思っております。1ページに「生産者も乳業以降に関与」と書いてありますが、どのような関与があるべきかは、幅広く議論を深める必要があると考えます。
なお、牛乳の小売価格の差は「流通過程で生じている」とありますが、原料乳価においても差があることも事実であり、生乳の生産・流通、各段階の適正な価格形成を阻害するメッセージとならないよう、御留意を頂ければと思います。
以上、意見とさせていただきます。


〇小針部会長
ありがとうございます。
リモートで石田委員の手が挙がっておりますので、お願いします。
 

〇石田委員
説明ありがとうございます。
私は一生産者という立場で、個々の酪農経営においてできる自助の点と、あと、こういった形で支援していただきたいというところの観点から発言させていただきます。
自給飼料生産のところで、自給飼料の割合が高い方が経営が安定しているといった、統計的なデータがありました。これは私も本当に同感で、経営の規模と収益のよしあしは必ずしも一致しないというのは、私自身も実感しております。特に2年前の酪農危機を通じて、私も経営をもう一度見直してみたときに、逆に経営規模を縮小した方が残るキャッシュが大きいと判断し、牧場の頭数の規模を4分の3に縮小した結果、何とか危機を越えることができた経験があります。これは北海道のような大規模にしろ、私がおります神奈川県のように都府県の都市近郊で自給飼料の生産基盤が弱い土地であっても、飼料自給率の拡大というところは、酪農の原理原則として今後も土台として推進していかなければいけない考え方であると思っております。
その考え方を踏まえて、乳飼費の考え方についてですが、私たちのような都市近郊の方では、どうしても自給飼料を全て生産するというのはとても難しいです。ですので、国の方でも推進していますが、、国産飼料を普及するためにも、例えば神奈川県の牧場のように自給飼料を生産することが難しい地域でも、耕畜連携で畑作農家に作っていただいたり、北海道などの生産基盤の強いところから国産飼料を購入して、餌として使ったりして経営していく必要があります。しかし、結局のところ、損益計算書上は飼料購入費となってしまうので、データ上は乳飼費は高く見えてしまいます。なので、先ほどのデータでは、実際、国産飼料化がどれぐらい進んでいるかについては分かりにくいのではないかなと、説明を聞いていて思いました。ですので、乳飼費というデータと経営指標は大事ですが、経営収支の安定を指導していく立場から見ると、乳飼費を更に細かく分けて、国産飼料をどう使っているのか、国産飼料の比率というところに経営を当てることが必要なのかなと感じました。
加えて、乳牛の繁殖についてですが、供用年数についてのデータが示されていましたが、私も普段から自らの経営を見える化している中で、妊娠率と分娩間隔を数字として重要視しており、信頼してます。妊娠率というのは発情発見率掛ける受胎率で算出されるものですが、これが二十二、三%あれば、おおむね繁殖がうまく回っていることが分かり、対策を立てやすいと考えています。酪農経営は経営を分析する上では意外とシンプルで、乳飼費と妊娠率を見ていれば、おおよその経営のよしあしというのは分かります。
ただ、先ほどの資料の中には妊娠率というデータが見当たらなかったので、妊娠率についても記載して頂けるとよりいいかなと思いました。あと、同じく繁殖のデータとして分娩間隔は、おおむね400日を下回っていれば経営は良好というところですが、分娩間隔というのは、前に分娩した日とその次に分娩した日の差なので、初産牛についてはこの分娩間隔のデータから漏れてしまう観点から、私は妊娠率を併用しています。例えば単純に分娩間隔が430日から400日に短縮したと、1か月短縮したというのを見るだけでも、収支的には後々大きな差が出てくるのと、単純に年間に生まれる子牛の数を予測することができ、副産物のスモールの販売についても予測が付きますので、分娩間隔というところも数値として普及・御指導していただければなと思っております。
あと、前回、前々回ぐらいの議論のところで御紹介いただきましたが、例えばA2ミルクやオーガニックミルクといった牛乳の付加価値を付ける側面が最近になってかなり出てきました。そういった消費者の嗜好(しこう)の多様化、そういうところにも対応できるような、A2遺伝子を持っているような精液の普及やゲノム解析の普及についても指導していただけると、個々の酪農家にとっては大変助かるなと思いました。
以上でございます。
 

〇小針部会長
ありがとうございます。
次、小椋委員、お願いいたします。
 

〇小椋委員
小椋でございます。よろしくお願いいたします。
先ほどから御意見が出ておりましたように、食料・農業・農村基本法の改正が決定し、現在基本計画が作られておりますが、この食料・農業・農村基本法において、「国内の農業生産の増大を図ることを基本」とすることがしっかりと明記されています。今後、次期酪肉近の生産目標も数字的に明記するようになるかと思いますが、現状の国内の生乳生産量は昨年で約740万トン弱であり、輸入の生乳換算が500万トン弱あります。したがって、国内では生乳換算で、1,300万トン弱の需要があります。したがって、今うたわれている780万トンという生産目標は、次期酪肉近においてもこれを下回ることのないよう、最低でも現状以上の生産目標を明記するべきだと私は思います。
また、この生産状況、それに伴う消費状況でありますが、資料にもありましたように、令和4年、5年と大きくだぶつきまして、生産抑制、入口対策を全国の酪農家が行いました。この生産抑制は、過去にも10年ぐらいのスパンで行っていますが、生産抑制は今後してはいけないと思います。そのためには出口で対策を講じる方法について検討していかなければならないと思います。
様々な出口対策がございます。先ほどもお話ししましたように、チーズの需要、輸入、生乳換算であるわけでありますけれども、こちらにシフトをしていくと当然、価格差というものが出てきます。輸入のチーズは安価で入り、今後、TPP等に基づき、チーズの関税も下がってきます。これらの状況の下で、いかに国産に振り向けていくか、価格面をどのように対処をしていくかが重要であり、この点についてもしっかり方向性を出しながら、次期酪肉近の中でうたっていくべきだと私は思います。生産現場で生産抑制をしなくても済むように、需給調整を取り進めることを文言的に明記するべきだと思います。
また、畜安法についてすが、酪農及び畜産の生産現場を棄損させないためには、食料安全保障の確保と、現在、農水省の方では十分、各団体と協議を取り進めておりますが、足かせとなっている点がないか、今後も鋭意、取り進めていただき、畜安法の目的達成に向けた具体的な生産方針を明記するようお願いしたいと思います。
私からは以上です。
 

〇小針部会長
ありがとうございました。
ここで事務局から御回答をお願いしたいと思います。それでは事務局の方から回答よろしくお願いします。
 

〇須永牛乳乳製品課長
御意見ありがとうございます。馬場委員から御指摘があった点から順にいきたいと思います。
これは小椋委員のお話の中にもありましたが、畜安法と需給調整機能についてです。
畜産部会では以前も御説明しましたし、今日も資料として引用させていただきましたが、農林水産省では、系統と系統外の方々を集めて意見交換を重ねております。その中で6月に実施した会の中では、我々の考え方として、生乳に携わる全ての方々に、牛乳の価格・需給を安定させる取組として必要な項目を三つ並べさせていただきました。それは、個体乳量の変動に応じた年間の安定取引、そして加工が必要であるということ、さらに、脱脂粉乳や牛乳という全国的な構造問題については、全国的に対策をし、みんなでやっていくべきであると、こういう内容であります。このようなものが生乳に携わる全ての方々に必要な取組であり、役割であると思っています。我々はこのようなものを国の様々な施策を使って、多くの方々に求めていくということだと思っています。
さらに、今年には生乳生産の申出期限という形で、一つ規律の強化を図りました。更に深掘りできる点がないかということは、今年度以降についても考えているところでもあります。引き続き畜安法の中でそれぞれの果たすべき役割、そして規律、このようなものには我々として取り組んでいきたいと思っています。
続いて、チーズ、そして脱脂粉乳のお話であります。
本日の資料の中でもありましたとおり、国産生乳の価格を前提とした需要量というものがありまして、それを超えると内外価格差に何らか対応していく必要があります。そこには内外価格差を埋めるべく、今までも対策を組んできたところです。引き続きこのような全国協調やTPP対策によるチーズなど、そうしたものを維持・拡大していく中で、その内容面で更にできることを深掘っていきたいということでもあります。
脱脂粉乳からカッテージチーズ、その他の高単価なチーズができるのではないかという御意見についてです。これも脱脂粉乳対策の中で需要拡大新商品というのもございます。今までもチーズについては需要拡大をしてく中で、ソフトチーズが伸びてきたと思っています。全てを内外価格差の大きなシュレッドやプロセス原料というところに向かわせるのではなく、できるだけ国産生乳を前提とした商品を拡充させていくということが、乳価の安定、生産者受け取り乳代の向上につながるものだと思っております。そうした用途別乳価の一つ一つに丁寧に地道に取り組んでいくということが、700万トンを超える供給量を支えていくことになろうかと思っています。
そして、頭数について、馬場委員おっしゃったことは全くそのとおりでございまして、乳量の伸びについて、過度に見積もれば頭数が少なくなるということもございます。そして、現在、足元で給餌の方法、そして猛暑という影響がまだ残っているという状態もございます。令和6年度以降、乳量がどのようになっていくのか、ここは慎重に見極めていく必要があるとは思う一方で、乳量の増減というのが、先ほど図で示したとおり、5%増という巨大な数字で突然湧いてくる恐れもあるわけで、両にらみで今後の需給状況を考えていく必要があると考えております。
そして、牛乳の価格についてもおっしゃるとおりで、各段階での適正価格というものはあると思っています。指定団体から乳業に渡す際に価格差があるわけで、その中で、余り大きな競争が起きると、生産者乳代の方に跳ね返ってきかねないため、やはり広く実態をよく見ながら、我々として、牛乳の需給が大きく乱れないように、情報をしっかり共有しながら、変なメッセージにならないような議論を今後進めていくことが大切だと思っています。
続いて、石田委員から規模の話や乳飼費について、幾つか御助言いただきました。特に分娩間隔、妊娠率については今回の資料の中でも一部触れようかなと思っておりましたが、資料が間に合わなかった部分もございます。頂いた御助言も踏まえながら、今後も実態と経営状態についての分析が進められるようにと思っております。今ここで答えるというよりも、今後に生かさせていただきたいと思いますし、今後の議論の中で分析できたものについては御紹介をするという形がよろしいのかなと思っています。
そして、A2ミルクなどといった新しい付加価値を追求していく生産というのは、非常に大切なものだと思っています。A2ミルク自体についてあんなに安く売るなとか、色々な声がありますが、一方で、それが一つ商品として需要を呼んでいるという現状もあります。そこに向けた生産者の取組もあると思っています。A2ミルク自体がよいかどうかは別として、そういう付加価値を追求していく商品というものが、価格を維持させる上でも需要を拡大させていく上でも非常に必要なものでもありますので、今後も少しどこかで触れられればと思います。
小椋委員のお話でありましたとおり、生産を増大させ、780万トンを目掛けてということでもありますが、この中でやはり大切なのは、需要されない量が生じると、それは必ず誰かが内外価格差を埋める形で対応していかざるを得ないというのがまず足元にございます。それをこれまで全国協調ですとかTPP対策ですとか、様々な形で取り組んできたものでもあります。今行っている対策を用途別にどのように拡大・維持できるかというところが、700万トン以上の生乳生産を支えるものでもあろうかと思いますので、ここは皆さんの様々なお知恵を頂きながら、今後も考えていきたいと思っています。我々としては、何か1個、例えばチーズのプロセスをやれば全てが解決するなど、そういったことはなかなかないと思っています。一個一個にしっかりと取り組んでいくことで、その積み上げによって需要量というのが出てくるのではないかと思っています。
最後、畜安法については、繰り返しになりますが、我々として規律の強化、そして全員参加をするような取組を進めていくということが大切だと思います。それと、生産現場に抑制を繰り返させないというお話もありますが、これは前回も申しあげたとおり、生産抑制が現場に多大なる苦しみをもたらすということは、我々もよく共感し、認識をしております。こうした生産抑制を繰り返さないような政策努力が必要で、そのためには安定した供給と需要の両方を作っていくことが必要だと思います。そのためには今までの経験も踏まえながら政策努力を更に重ねていくということだろうと思っていますので、引き続きいろいろな知恵、政策提案を多くの方々から頂きながら、我々としても考えていきたいと思っています。
以上となります。
 

〇小針部会長
ありがとうございました。
飼料課長、お願いします。

 

〇金澤飼料課長
馬場委員、石田委員から、国産飼料、自給飼料の関係で、御発言を頂きました。正に飼料生産を、どのようにしていくかというのも非常に重要な課題だと思っております。特に、今後生産年齢人口も減少してくる中でどのように増産していくのか、また、都府県を中心に畜産地帯と耕種地帯が離れているようなところも多々ございます。一方で、今、基本計画の見直しの議論もしていますが、いかに農地をフル活用して国内の生産基盤に立脚した畜産に変えていくかという視点で、基本計画の方でもしっかり議論していきたいと思います。是非生産現場の方にお願いしたいのは、やはり日和見で輸入粗飼料を使うということではなくて、石田委員がおっしゃったように、国産飼料の流通拡大も含めて、しっかり国産の飼料を使うんだという機運を是非高めていただくような方向に、この酪肉近も含めて、持っていければと考えています。引き続きよろしくお願いします。



〇小針部会長
和田畜産技術室長、お願いします。
 

〇和田畜産技術室長
畜産振興課でございます。
石田委員から繁殖能力、繁殖性についての御意見をいただきました。こちらにつきましては、酪肉近と同時に諮問されました家畜改良増殖目標、そちらで畜種別の研究会を今後開いて、議論していきます。乳用牛の検討に当たりましては、石田委員にも入っていただいておりますので、またそちらの方で御議論をさせていただければと思います。よろしくお願いします。

 

〇小針部会長
ありがとうございます。
それでは、ここで10分程度、休憩を挟みたいと思います。14時35分から再開いたしますので、よろしくお願いいたします。
 

午後2時25分休憩

午後2時35分再開
 

〇小針部会長
それでは、審議を再開いたします。
御意見のある方は挙手をお願いします。
まず、先ほどから手を挙げていただいている井上委員からお願いいたします。
 

〇井上委員
よろしくお願いします。
私は、資料の確認を1点したいんです。それと、現況の生産者の感想、最後に意見を4分でお話しさせていただきます。
まず、資料の確認ですが、資料3の32ページのフランスと北海道、都府県における酪農経営収支の中の補助金の金額なんですが、これは%じゃなくて円ですよね。
 

〇須永牛乳乳製品課長
そうです。キロ当たり円で換算しています。
 

〇井上委員
それでは、フランスは57円の収入に対して7円が補助金、日本は135円に対して10円が補助金、そういう見方でよろしいですね。


〇須永牛乳乳製品課長
そうです。
 

〇井上委員
そうすると、割合的にはフランスは57分の7、日本は135分の10と、そういうことでよろしいですね。
 

〇須永牛乳乳製品課長
そういうことです。
 

〇井上委員
分かりました。
今回出席している委員の方のうち、本当の生産者というのは私を含めて4、5名だと思うんです。その生産者の現場としてのまず感想ですが、先ほどから松田委員、丸橋委員に生産者の意欲がなくならないような政策を打ってくれという、非常に有り難い御意見を頂いたところですが、実際、今回ここに委員として来られている方たちは、本当にこの日本の国で酪農をしている人たちの中でも、人一倍意欲のある方たちだと思うんです。その中に私も入っていますが、私は意欲がなくなってきています。非常にその環境は厳しいと感じています。
酪農に関する関係事業はたくさんあります。まず、生産に関しては、飼料、肥料、それから農業機械。その後、生産した後は牛乳を運ぶトラック、それから加工する乳業メーカー。その中で一番疲弊しているのは酪農家なんです。飼料メーカーも十分な売上と利益を上げている。飼料の販売店もきっと出している。肥料メーカーも機械もそう。建築に関しては、ここ5年の間、私たちの地元では、8億程度の会社が30億まで売上を伸ばしたと聞いています。私どもの牧場から牛乳を運ぶ運送会社さんについても、酪農家の牛乳を運んでいるからトラック会社の経営が悪くなったという話は聞きません。そして、乳業会社、大手乳業会社も十分な利益を上げている。酪農家の私どもだけが何か合わないなと、ひがみ根性ではありませんが、そんな感想を持っています。この業界全部が努力して、全部が苦しむのではなく、酪農家だけが苦しんで疲弊している印象を受けています。
次に意見を述べさせていただきます。先ほども小椋委員が、牛乳の供給を止めたり、廃棄したりすることは、絶対にしてはいけないという話をされたわけですが、全くそのとおりだと思います。そうすると疲弊するんですよ。私は、北海道の現状しか知りませんので、北海道に限った話かもしれませんが、コストを下げたり、乳量を上げたりといった生産に対しての努力はできます。一方で、販売に対しての努力はなかなか及びません。
私は、酪農と一緒に肉牛もやっていますから、肉牛と比べて考えるんですが、肉牛の場合は、もちろん相場の上げ下げがあって、原価割れすることもありますが販売すること自体はできます。それに比べて酪農はどうなるかといいますと、生産抑制によって生産を止めるということは、売上げがゼロになるということなんです。しかし、生産をしなくても、人件費も減価償却といった餌代以外のものも全部にコスト掛かってくる。これはすごく疲弊してしまいます。ですから、絶対そのような政策は打ってほしくないと思います。
先ほど生産者とこの状況を共有しなさいという話もありました。情報共有して、状況を生産者のみんなが理解し、10年ごとの経営の浮き沈みに対する備えをしなさい、そんな話もありました。しかし、これをどのように酪農家が対応するのかという話です。私も酪農家としてはおそらく規模的には大きくて、情報もある程度入っていると思いますが、できないです。ここについては私の意見があって、こういう話はなかなか難しいということは理解した上で言いますが、需要と供給を合わせるために、みんな一生懸命努力して政策を打ってくれていると思いますが、この需要と供給さえ合えば問題ないわけです。先ほども言ったとおり、我々生産者は販売戦略がなかなか打てない中で、これ以上もう要らないよと、牛乳を1回止めるよ、となるのが一番困るんです。ですから、お国がきちっと、せめて3年後、3年間ぐらいの乳量枠を決めてほしい。そうすれば、私ども農家は生真面目にやりますから、その3年間の目標さえ決めてくれたら、きちっとその乳量に合わせて生産していくことはできます。最短3年、できれば5年。現在いろんな知恵を出し合いながらやっていますが、荒っぽい言い方をしますと、過去50年間、ほとんど変わっていないと思います。必ず余って廃棄する。肉牛のように足りなくなって価格が暴騰すればいいんですが、生乳は暴騰しません。足りなくなっても、需要が増えても、価格は決まっています。そして、供給が多くなったときは、安くなるのではなくて捨てる。これでは酪農家は絶対疲弊しますし、意欲も湧きません。
酪農家の意欲が湧いていないという証拠に、今農村が汚くなっています。私が物心付いた頃の田舎の景観よりも。、今、農家の環境が悪くなっているとと思います。そこまでの余裕がないんだなというふうに私は思います。せめて3年先の生産量を決めてほしい。それに対して私たちはきちっと生産すると。そんなふうにしていただきたいなと思います。
以上です。
 

〇小針部会長
ありがとうございました。
それでは、二村委員、お願いいたします。
 

〇二村委員
御指名ありがとうございます。私からは、幾つか質問も含めて、意見を申し上げたいと思います。
一つ目は、コストに関わるところで、飼料の問題が今日も出ていました。御説明では、飼料の国産化をすることで経営的にも安定する、メリットがあるというお話がありました。食料安全保障の観点からも食料自給率の向上の面からも、飼料の国産化は非常に重要だと思います。積極的な施策を行うべきではないかと思います。
二つ目は、需要についてです。人口減と高齢化が進みますので、需要を伸ばすことは簡単ではないと思います。単純に需要を増やすことを目標にするのではなくて、構造的にどうなったらもっと生活の中で使っていけるかということを考えるべきではないかと思います。資料3のスライド55ページのところで三つの取組が紹介されておりましたが、ここの部分について質問があります。脱脂粉乳の在庫が積み上がっているというお話がありましたが、用途の開発ですとか、あるいはより使いやすいようにしていくために、何かサプライチェーン上、あるいはそれ以外の部分で課題があるのではないかと思います。ここをどのように分析されているか教えてください。
それから、二つ目の質問です。牛乳で飲むことのがすごく大事だということは分かりましたが、こちらも今のようなパッケージや流通の在り方以外に、もう少し賞味期間を延ばすとか、あるいはもう少し保管性をよくするとか、何かそのような工夫などはできないのでしょうか。そうした場合に、それは需要の変動を緩和することに役立つのではないかなと思うのですが、いかがでしょうか。
それから、国産チーズの需要増というお話がありましたので、ここは普及も含めて期待をしたいと思います。栄養的にも優れたものですので、消費者がもっと認知をしていくことも大事かと思いますが、やはりこれも消費者が手に取りやすいような条件、価格であったり使いやすさであったり、そういったことも必要になるかと思います。マーケティング面での工夫ですとか、サプライチェーン全体が改善されたり強化されることを期待したいと思っています。
それから、価格について、小売価格の資料がありましたが、小売の価格は単純ではないと思っています。例えば一つのスーパーマーケットで見たときも、マージンミックスを用いて価格を決定している場合もあると思いますし、プライベートブランドの場合であれば、宣伝費を抑えてこの価格にしているとか、例えば私たち生協などでは、宅配で利用されている方には、予約購入ということで毎週一定の量を買っていただいて、それで少し割引をするとか、そういうようなケースもあります。小売価格というのは、いろいろな要素があるということは踏まえた方がよいと思います。
それから、最後に経営についてです。10年に一度酪農危機が来るというお話があって、そうなのだということを素人ですので改めて思ったわけですが、ただ、それであれば、何かリスク分散のために、個々の酪農家さんだけではなくて、制度的に工夫をしたり、支援できることがあるのではないかと思いました。先ほど井上さんの御発言の中で、3年分の生産量を保証してほしいというようなお話があって、それが一つの方法なのかどうかは私には分かりませんが、中長期的で経営的に判断をしていけるような制度などがあるのであれば、そういったものも検討した方がよいのではないかと思いました。もし諸外国の事例などでそういう制度があるのであれば、是非研究していただきたいと思いました。
以上です。
 

〇小針部会長
ありがとうございました。
それでは、椛木委員、お願いいたします。
 

〇椛木委員
今日は、さまざまな論点の中から説明していただき、ありがとうございます。自分も今後も酪農を続けていきたいと思っている一人なので、そういう細かい論点に目を向けていただけているんだなと思いました。
酪農家にとっては、先ほど井上委員もおっしゃっていたし、ほかの委員の方も言っていましたが、本当に生産意欲を持ち続けながら日々仕事をしていきたいなと思っているので、私たち酪農家自身も安心して生産できる環境が続いてほしいと思っていますし、生産抑制は今後繰り返してほしくないなと本当に思っています。
そういうことを考えたときに、私たちが生産した生乳が、ちゃんと加工されて消費者に渡るというのが一番の理想です。、そういう中では、やっぱりこの数年ですごく問題になっていた脱脂粉乳の問題に対して今後も対策を続けていくということでしたが、対策によって状況が悪化することはなくても、現状と変わらないままということであれば、、今していることに加えて、脱脂粉乳の在庫が増えないような対策というのが更に必要なのかなと思っています。ヨーグルトの消費とかを応援するというお話もありましたが、それだけでは足りないのかなというか、先ほど二村委員もおっしゃっていましたが、更にその脱脂粉乳を使って何かできることとか、そういった対策というのは考えていく必要があるのかなと思います。また、先ほど輸出の話もされていて、今は2万トン近い輸出量があるというお話がありましたがそんなに簡単に輸出先国を増やしたり、量を増やしたりするということができないのももちろん理解していますが、今このインバウンド需要があって、海外から来た観光客の方に国産の生乳の良さとかおいしさとかというのを感じていただいてもらって、今後の輸出とかにうまくつながれたらいいのになというのは個人的に思いました。
そして、あと、先ほども言った10年に一度酪農危機が来るという点について、今、国の施策で長命連産性の種牛を使うことに対しての補助が出ていますが、今年その種牛を付けたとしても、来年生まれて、その牛が母牛になるのは2年後で、長命連産ということは、その牛たちが生産を上げていくというのはそのまた先なんです。ということは、それこそ5年、7年、8年後ぐらいにその今種付けした牛たちが活躍していくわけだから、10年に一度の酪農危機の時期にぶつからないかなと思っています。そうならないように、これから生産していく牛たちが、ちゃんと10年後にも活躍できるような環境になっていってくれたらなとに思います。
以上です。
 

〇小針部会長
ありがとうございました。
では、ここで一旦、事務局から回答をお願いします。


〇須永牛乳乳製品課長
まず、井上委員からの生乳の価格、それから販売というお話であります。
生乳については、一元集荷・多元販売、そして用途別取引、指定団体制度、幾つか重なって、日本の国産生乳の価格というのは諸外国と比べても、変動幅が上下しづらい仕組みになっています。資料の中でも、EUとの価格の変動を比較したデータがグラフで示されています。EUの月別乳価変動を見てみると、ある一点を100と置いた時、70から140ぐらいまで上下変動するんですが、日本の乳価変動は余り変わっていないということが分かります。このように価格を安定させる仕組みでもあるというのが一つあります。
そのための仕組みの一つに指定団体制度というものがあり、個々の酪農家の代わりに、受託を受けた地域で生乳を集めたその団体が各乳業と交渉し、用途仕向け、そして価格が決まっていくという仕組みになっています。そういう意味で、それぞれの酪農家は、それぞれに仕向けている、多くは農協になりますけれども、農業協同組合の中でその販売戦略というものを考えていくというのが一つの仕組みになっているということであります。確かに肉や野菜、米のように、個別の酪農家が個々に販売戦略を打つことは難しいですが、それは地域の中で固まって販売戦略を打っていくという仕組みでもあるということは、一つ申し上げさせていただきたいと思っております。ですので、その中でに、組合全体としてどういう販売戦略を打っていくのかという調整をする必要がある仕組みでもあります。
そして、生乳生産について、生産者側の方としては安定した生乳生産というものを示していただきながら、その中で生産をするのが良いというお話はあろうかと思いますが、やはり集めた生乳は必ず誰かが売らなければいけないわけです。その売らなければいけないときに、売れないものが出てくることをできるだけなくすような計画を作っていくという意味で、需要と供給を国全体の中で合わせていくという努力は、必ず誰かがどこかでやっていかなければいけないということでもあります。それを多くの指定団体が苦しみながら、そして生産者も苦しみながら、これまでやってきたというものがあると思っています。この今の仕組みを踏まえながら、より安定させる、生産面でも供給する面でも価格の面でも、色々な面で酪農生産が安定できるように、今やっていることをより維持・拡充させていくということが、我々としては大切だろうと思っています。
今、現場が苦しんでいるということは、本当に承知をしております。酪農はこの数年間で多くの苦しみを味わい、それで多くの離農が生じてきたということも承知をしております。その中で、やはり我々は、今の制度を維持・拡充し、いろんな予算のチャンスを捉えながら、現場を支える支援措置をやってきたものでもあります。そういうものの中でまた更に知恵を絞っていくことが必要であると思っています。
続きまして、二村委員から幾つか御助言いただきました。
順に、脱脂粉乳について更なる課題についてですが、脱脂粉乳はバターを作ると同時に生まれる有価物であり、価値としては、生乳がバターと脱脂粉乳の二手に分かれまして、その両方が売れないと、価値としては半々ぐらいになりますので、、脱脂粉乳が売れないと生乳の価格が半分になると、それぐらいの感覚で思っていただければと思っています。脱脂粉乳は原料であって、発酵乳、それからヨーグルト、このようなものに使われております。脂と脱脂粉乳は商品の用途が違いますので、それぞれの需給の中で泳ぐことになります。脱脂粉乳でいいますと、先ほど申したヨーグルトと発酵乳飲料、これがコロナ直前ぐらいから大きく剥落したというのが、この脱脂粉乳需給の課題であります。このヨーグルトや発酵飲料とか、こういうものは、業界では踊り場的な状態にあるため、業界で協調して、もう一歩需要を拡大していくことが我々としては一つ地道な取組ではないかと思っています。
それと、先ほど牛乳が大切、飲用が大切だという話の中で、一つの御提案として、期間を延ばしたりすれば保管性が高まって、需給調整をというお話がありました。確かに、LL牛乳が代表ではありますし、チルドも技術が伸びてくるごとに保管期限、賞味期限というのは延びてきました。これが延びてくることによって安定供給ができるという側面は確かにあろうとは思いますし、ただ、LL牛乳は少し風味が違いますので、そこに需要がしっかりとあるのかどうかというお話とともに、ここは食品ロスだとか、いろんな話の中で言うのもなかなか難しいですが、牛乳がそれなりに高い値段が付くのは賞味期限があるからでもあります。フレッシュで足が短いからこそ、価値が高いものでもあるわけです。生産者の受け取り乳代を上げていく上で、仮に無限に賞味期限があれば、それは価値が下がっていくものだろうと思います。ここはバランスが非常に大切で、日本国内では成分無調整牛乳に対する非常に根強い需要がこの20年ほどあると思っていますし、このマーケットは大切にするということかなと思っています。ここは痛しかゆしなところが、保管期限の延びというところにはあろうかと思います。
それから、チーズは、先ほども課題を少し申し上げており、あまりマイナスの面を申し上げるのもよくないので控えますけれども、やはり内外価格差が一番大きな要素になるのがチーズだと思っています。小椋委員からも御指摘あったとおり、チーズの生産は増やせば増やすほど、その分だけ外国産の乳価と競合する価格で供給していかなければいけないという使命を持っているものでもあります。そういう意味で、今はできるだけ国産生乳の高価格な、その生乳で支えられる高単価チーズというものをしっかり増やしていく必要があると思います。
その取組は二つありまして、一つはモッツアレラとかカマンベールといったソフト系のチーズ、これは賞味期限が比較的短くて、国産に優位性があるものです。これらを更に需要を拡大していくことで、安定していくということ。それから、工房チーズを始めとする、ブランドチーズの芽をしっかりとまいていくということ。まだまだ小さな工房が多く、需要量としては僅かではありますけれども、ブランディングをしっかりとしていくことが、高単価チーズを国内の中でも拡大していく一つの道だろうと思います。
それと、小売価格が単純ではないというお話についてですが、それは全く承知しております。PBを始めとして、価格がこんなに分かれるのは、それぞれ流通についての考え方が違う、そしていろいろな経費の要素があるからでもあります。ですので、単純に牛乳は200数十円で売らなければいけないという世界ではなくて、いろいろな付加価値と流通構造の中で価格が決まっているということもあるので、その中での適正価格に目掛けた丁寧な議論を今後もしていく必要があると思っています。
それと、10年に一度の酪農危機への対応については、我々もこれは単に紹介するにとどまらず、これに向けた備えをして支えていきたいと思っています。加工原料乳の経営安定対策としてナラシ事業というのがあります。一定の価格変動が起きたときに少し保険的に支える仕組みなんですが、それを少し拡充して、このような危機に備えられないのかというようなことも、今年の概算要求の中で我々としてはアイデアとして染み出しをしています。それを予算編成過程の中での議論を通じながら形になってき次第、多くの生産者の方々の声も集めて、より備えとして実効性のあるものを作り上げていきたいと、そういう思いでこの10年に一度の危機があるということを紹介しております。
椛木委員からも今の説明に重なるような御指摘があったと思っています。
脱脂粉乳、更に新しい何らか対策がないかということで、我々としては、全国協調を拡充しながら、業界全体でこの脱脂粉乳とバターの需要の乖離の問題にいろいろな知恵を出していくということが必要だと思っています。酪農危機のお話、それから経営のお話ございましたが、やはり現場がしっかりと生乳生産を継続できるような支えられる仕組みというものを、いろいろ知恵を出しながらやっていくということと、需給というものを、需要だけ、供給だけではなくて、両方をしっかりと合わせる取組を地道に重ねていくことで、施策を充実させていくということが必要だろうというのが我々で思っているところであります。


〇小針部会長
ありがとうございました。
それでは次に小山委員、お願いします。
 

〇小山委員
10年に1回酪農危機がくるというお話を聞いて、実は私も30年前に酪農をやめて和牛に切り換えたんです。その頃は、1頭につき17万4,000円ほどの補助金を頂いて、酪農をやめました。その15年ほど前に、赤い牛乳といって、食紅を入れて出せないようにするという、そんなことも乗り越えてきました。
でも、その後、受精卵によって和牛に切り換えましたから、受精卵が悪いとは言えないところがありますが、ただ、繁殖和牛なので、受精卵によって、繁殖農家が大変困っているというのも現実にありますし、地元で育ててきた獣医さんが、受精卵移植の獣医になりたいと言ってNOSAIをやめたとか、そういう話もあります。なので、何か切っても切れない、もちろん同じ牛ですから。ただ、畜産農家というのは本当に牛が好きじゃないと続けていけないので、生産者が意欲を持って続けられるようにというのと、また、やはり新規参入者が入ってこられるような状況を続けて作っていっていただきたいなと思う次第でございます。
 

〇小針部会長
ありがとうございました。
小椋委員からお願いいたします。
 

〇小椋委員
私からも再度発言させていただきます。日本全国には、酪農、畜産、様々な経営体、個人経営もあり、大規模法人経営もあり、色々な地域の特徴を生かした経営体がございます。その中で、先ほどの井上委員からお話ありましたように、酪農・畜産を営んでいる、その周りには様々な職種、産業の皆さんがいる、それが地域経済を支えている現状は、皆さん御理解いただいていると思いますし、その核となる酪農・畜産が疲弊している現状であります。この状況をどのように更なる発展を目指していくか議論していくのがこの会議かと思います。
様々な意見も出ておりますし、農水省の方でも色々な考え方を持って、この酪農・畜産を今後どう取り進めていくかという考え方、原案を示されていると思います。しかし、儲かる酪農・畜産でなければ、現状の農家の経営継続も無理ですし、魅力がない酪農・畜産では新規就農を幾ら募っても出てきません。儲かる酪農・畜産、これをどう取り進めていくかというのが基本的なところでありますし、それを支える行政、地域、そこの対策・対応というものを一緒になって考えていかなければ、地域経済の存続、また地域コミュニティの崩壊にもつながる恐れもございます。そこを今回の協議の中では十分踏まえていただいて、どういう対策・支援ができるのか、お答えを出していただきたいとお願いを申し上げます。
以上です。
 

〇小針部会長
ありがとうございました。
畠中委員、お願いいたします。


〇畠中委員
畠中です。
先ほどの井上委員の御発言を聞きながら、同じ畜産家として非常に身につまされて、私も共感いたします。私もやはり同じ畜産家として同じような苦しい思いを持っていますので、本当にこの状況を何とかならないかなと思います。ただ、酪農とは違って、うちの場合は鳥インフルエンザなどの問題が一番大きいと思いますが、やはり鶏卵は値段が上がりにくく、値段が上がる時というのは、結局鳥インフルエンザが大量発生して、生産量が減少した時です。常に鳥インフルエンザの心配をしながら経営しないといけないということで、非常に生産意欲は下がり、疲弊しているように感じております。
昨今は、鳥インフルエンザや豚熱、口蹄疫などの大流行が発生していて、鳥インフルエンザや豚熱に関しては毎年のように起きているような状況です。今後もそのような感染症が起きる可能性が高い昨今では、食料安保の観点からも、小規模事業者の生産意欲をそがないような政策や計画の見直しなどを是非農林水産省にはお願いしたいなと思っております。養鶏農家では、小規模経営者の割合がどんどん減少し、寡占化が進んでおりますが、酪農の場合は全体的に中小規模経営が多いような状況だと思いますので、そのような中小規模経営者の生産意欲もそがずに経営を続けていけるような、計画見直しや政策をお願いしたいです。
もう一つは、皆さんも言われていますが、飼料自給率についてです。今後日本の農業を守っていくためには、いかに国産飼料の生産を維持・向上するかが本当に大切になってくると思いますので、是非それに対する支援をなるべく維持して、手厚くしていただきたいなと思っております。この国産飼料生産向上というのは、飼料自給率の向上のみならず、畜産にとっては耕畜連携によって堆肥や鶏ふんなどを利用してもらうことで、うまい循環型のシステムが出来上がると思っています。私の知り合いである大分県の20万羽規模の養鶏生産者も、非常にうまく耕畜連携による循環型農業をやっていらして、ここ数年は鶏ふんが足りない状況にあると聞いています。このような循環型農業がうまく出来上がると、畜産農家も耕種農家もお互いハッピーだし、国の飼料自給率向上にとっても非常にメリットがあるのではないかと思います。
一方で、循環型農業をしていくにはかなりの労力を必要としていて、その大分県の経営者も、自分のところで飼料を配合したり、さまざまな鶏ふんの設備にもすごくお金を掛けていたりするそうです。そういう経営でなければやはりなかなかうまくいかない部分もありますので、そこに対する堆肥生産のための設備などへの補助など、そういったことも是非やっていただけたらなと思います。
最後になりますが、私の周辺では今年の米不足の影響で、来年は飼料米を作らないという声を聞きます。今年のように米の相場が上がり、今年は飼料米を作らずに主食用米を作っておけばよかったという声も多く聞くため、来年の飼料用米の生産について心配しております。夏の猛暑により、米の作柄や量に影響が出ているため、来年は今年の情勢も踏まえて、飼料用米の量を減らして主食用米を増やす農家も出てくると思います。今対策を手厚くしておかないと、飼料米の維持は難しいのではないかと危機感を持っていますので、その辺も是非よろしくお願いします。
以上です。
 

〇小針部会長
ありがとうございました。
一旦ここで事務局から回答をお願いいたします。


〇廣岡企画課長
企画課長でございます。
小山委員や小椋委員からもありましたように、生産者が元気になるような施策、新規の担い手などが入ってくるような施策をお願いしたいということで、正におっしゃるとおりだと思います。私どももそういったことに向けて一生懸命考えていきたいと思います。
特に新規の担い手ということでいえば、畜産は技術的なハードルも高いですし、施設の値段も高い、あるいは労働の拘束性も高いとか、色々なハードルがあると思います。そのために農水省では、省力化に向けたどういった支援があるかとか、あるいは外部化に向けた支援とか、あるいは例えば第三者経営者に向けた施設整備の初期支援とか、そういったことを行っておりますが、御本人様もそうですけれども、自治体や地域の農業者組織などによる、地域に応じた就農支援や技術の支援、経営面の支援、生活面のサポート、そういった面も非常に重要であるため、畜産における全体的な支援やサポートについても皆様と一緒に考えていきたいと思っています。


〇小針部会長
飼料課長、お願いします。
 

〇金澤飼料課長
飼料課でございます。
先ほど飼料自給率が重要であり、維持していく必要があるという御意見がございました。本当おっしゃるとおりだと思っております。畜産経営側からすると、土地の基盤を使って、足腰の強い経営というのもそうでございますが、やはり農村地域の維持や農地のフル活用を含めて、資源循環もおっしゃる通りだと思っておりますし、飼料作物の生産・利用の拡大については、しっかり後押ししていく必要があるという認識でおります。
一方で、飼料用米を御心配される声もございました。米政策は米政策の方で、さまざまな議論を現在基本計画全体の中でもされてきているところだと思います。そういった米の施策としての議論、また、中山間地域を含めた地域の農村の維持をどうしていくかという議論も含めた、全体の議論の中で飼料の増産についても引き続き考えていく必要があるのかなと思っております。重要性はおっしゃるとおりだと考えております。
 

〇小針部会長
畜産技術室長、お願いいたします。
 

〇和田畜産技術室長
畜産振興課でございます。
畠中委員から堆肥利用について御意見いただきました。家畜排せつ物を堆肥として有効利用するということは、食料安全保障や環境負荷軽減の観点からも、非常に重要だと考えております。現在、堆肥の高品質化ですとかペレット化に必要な施設の整備などについて支援を行っておりますが、引き続き資源循環の取組の推進も進めてまいりたいと考えております。
以上です。

 
〇小針部会長
ありがとうございます。
井上委員、お願いいたします。
 

〇井上委員
すみません、先ほど無茶を承知で、お国が3年間先ぐらいの生産量をきちっと決めてくれという意見を出したんですが、その答えについては全くそういうお答えだろうと思って理解しています。ただ、今までも業界では、販売戦略も組合や組織で打ってきて、ずっと努力し続けてきたと思います、私の知っている限り50年間、その都度いろいろ努力してきた結果、こうなっている実態があるということだと思います。
次にもう一つは、経営規模と収益性の関係についてです。この資料に関して私は、納得して読んでいました。私は、今までどちらかというと、農水省は規模拡大を推奨しているのかなと思っていました。小椋委員からもありましたが、必ず農業にも、酪農にも、その地域による適正規模というのがありまして、それを超えてやっている企業体の農業者も散見されますが、それは同じ同業者としてもマイナスになります。私も現在550頭ほど搾乳しておりますが、これは適正規模ではないということは自分でも自覚しました。なので、北海道は大きいとはいえども、やはり農業には工業や商業と違ってスケールメリットばかりはない、スケールデメリットも必ず出てくるということを私も感じていますし、農水省の皆様にも今一度理解していただきたいなと思います。
以上です。
 

〇小針部会長
ありがとうございます。井上委員、御意見ということで、回答はなくてよろしいですか。
 

〇井上委員
いいです。
 

〇小針部会長
分かりました。ありがとうございます。そのほか御意見ある方。
前田委員、お願いします。


〇前田委員
九州で養豚をしていますセブンフーズの前田です。
本日は酪農を中心に議論を進めていただいていて、私はずっとお話を今聞かせていただいていました。本当に共感できる部分もいっぱいあるし、重い苦しい気持ちが伝わってきました。御意見がいろいろある中で、何か具体的な光や希望が見えるような、これまでの行政で行ってきたさまざまな事例だけじゃなくて、思い切った具体的な政策や動きがあることをを期待します。
また、脱脂粉乳の話が今日も随分出ておりましたが、私たちが何か協力できることとして、餌に脱脂粉乳を混ぜられるのかなと考えてみましたが、食用と飼料では価格が合わないんだろうなとか、また、それが餌に添加されれば、餌代がまた上がってしまうのかなとか、またいろいろ考えると難しく、軽々しく言えるような単純な状況に無いということも理解しています。
それと、最後に、本日の資料の中にあります青刈りとうもろこしは、二期作の場合、TDNが1,500kg/10aあるということで、優秀なのは理解できます。酪農においても、半分は濃厚飼料を使うとのことですが、今後も100%とは言わずともほとんど輸入に頼った考え方なのか、あるいは青刈りとうもろこしに対して手当を検討しているのか、これからの方向性をどのようにお考えか、お尋ねしたいです。
以上です。
 

〇小針部会長
ありがとうございました。
ほかに委員の方で御意見若しくはまだ言い足りないこと等々ありましたら、一度ここでお伺いしたいと思いますが、いかがでしょうか。オンラインの方もよろしいでしょうか。
では、飼料課長から御回答をお願いします。
 

〇金澤飼料課長
前田委員から、青刈りとうもろこし、また濃厚飼料の関係、御質問を頂きました。
青刈りとうもろこしにつきましては、委員も御案内のとおり、やはり高い生産性といいますか、栄養性も高いところでございます。特に、搾乳牛にとっては非常に向いている飼料ということで、以前は北海道の根釧などだとなかなか生産できない地域もありましたが、さまざまな新しい品種が出てきたり、温暖化の進行によって、北海道を中心に生産を伸ばしていただいているところでございます。そういう意味では、やはり土地生産性的には非常にいいので、限られた国土を使っていくという部分では重要な飼料の一つだと思っています。
一方で、確かに濃厚飼料についてかなりの量を輸入しているのはもう御案内のとおりかと思います。国内の農地自体は非常に限られているということと、生産に向いている地域、向いていない地域というのは非常に格差が大きいと思っております。特に湿潤な日本の気候でもございますので、そこは全ての地域で濃厚飼料を作っていくということではなくて、生産できる地域では生産するなど、さまざまな工夫の中でやっていただく必要があると思います。ただ、やはり絶対量的に農地の面積は足りていないので、まずはは、青刈りとうもろこしを始め、飼料作物、粗飼料の方を優先的にしっかり作っていくということが、地域の農地の面においてもは重要であると思っております。


〇小針部会長
前田委員、よろしいでしょうか。
 

〇前田委員
はい。
 

〇小針部会長
ありがとうございます。
では、全ての方から御発言を頂いたと思いますので、最後に私の方から発言をしたいと思います。
今日の資料で御説明があったことは、大きくマクロとミクロに分けられると思っております。マクロの状況でいうと、まず、需要そのものが少し減少気味にある中で、これから更に人口減少と高齢化の進行によって、更なる需要の減少が見込まれる一方で、今データから見えているものでいうと、供給の基盤としては、1頭当たり乳量が安定しているとか、まだ上昇の可能性があるということも含めて、やはり供給側の生乳の生産としては、一定程度の基盤がありますので、状況としては上振れしたり過剰になるような可能性が想定されます。このような状況から、論点(ア)にあるように需給ギャップが生じてしまうのだと思っています。
この需要が人口減少等々で更に減少していく局面については、これまでも言われてはいましたが、現実にこのことを矢面にして考えていくということを、今後は一番本格的にしていかなければいけないと思います。そういう意味で、新しい局面でのマクロとしての計画や数量をどのように考えていくのかというのは、一つのポイントだと思っています。
一方で、ミクロのところに関しては、需要と供給の両面あると思っています。需要の面については、先ほど二村委員からの御意見にもあったとおり、全体量として減少してしまうのはしょうがない部分と、1人当たり消費量を増やせる部分など、先ほどの付加価値の部分という意味での、人口減少の中においてある意味、量以外の部分をどのように上げていくのかという観点で考えていくのが重要になってくるのかなと思いました。
また、ミクロの供給面、酪農経営について考えたときには、先ほどお話があったとおり、例えば計画において量を増やしていかなければならないということであれば、それがあったからこそ規模拡大や増産というのがこれまであったと思いますが、井上委員や、石田委員からもありましたが、ミクロでどうしていくのかという話になったときに、必ずしも増頭がよいことではなく、適正規模で本当に効率のよい経営をしていくにはどのようにすべきかという論点については、今日の資料からも見えていた部分だと思います。今日の資料はすごく詳しく作成していただいたので、これを読み込んでいくことが重要だと思いますが、恐らくこれを全部理解し切れる人も少ないので、その辺りをもう一歩整理を進めていただくことで、さらなるポイントが見えて、次の議論につながっていくのかなと思っています。
そのときに、もう一点、今日は酪農・乳業ということで、先ほど耕畜連携でふん尿などを上手に活用できるという話がありましたが、ここで一つ問題提起をさせていただきます。経営費用を見るときに、ふん尿処理にかかるコストをその経営の中でどう捉えていくのかというのは、念頭に置いていただきたいなと思います。
これは、私が今、別の事業で価格形成の調査をやっており、生産費の調査をしておりますが、例えば卵1個を作る際のコストというのを見ると、ふん尿の処理コストは入らないんです。おそらくそこの部分は、今の生産費調査でも生産費には入らないという整理になっているのではないかなと思います。これからの持続可能な経営ということを考えたときには、きちんとそこの処理コスト自体も、生産にとって必要な費用として扱うべき部分でもあると思いますし、消費者に御理解を頂くという面でも、作るのに幾らなんですよということではなくて、実際にふん尿処理にかかる費用までもきちんと理解をしてもらい、それらを認識していただいた上で議論していくことが重要であると考えます。表面上のコストだけで価格について議論を進めていくと、ふん尿処理費は考慮されず、その部分が生産者の負担になるという、スパイラルが生じてしまう可能性もございます。これから経営の費用について考えるときは、その辺りも考慮したような形で議論をしていくと、今後の議論にも繋がっていくのではないかなと思うので、その点検討いただければと思います。
私からの意見は以上です。
では、、須永課長、お願いします。
 

〇須永牛乳乳製品課長
小針部会長からの御意見の中で、最後の処理費用や効率の良い適正規模ですとか、必ずしも増頭ではないといった辺りについて、私どもが今回の資料の中で申し上げたかった一つとしては、収支をちゃんと見ましょうということです。これは当たり前の話にはなりますが、単に売上げではなく、コストも踏まえた上での経営全体での収支が良いもの、経営効率が良いもの、それが酪農経営の安定において一つ大事な論点としてあると思いますので、その分かりやすい示し方については引き続き検討したいと思います。
それと、若干補足が2点ございます。
一つは、「基盤」という言葉の指す範囲です。「基盤」というものが指す内容は人によって様々でして、生乳生産量や牛の頭数も一つの基盤ではあります。一方、農村部においては戸数も基盤ではあると思っています。ですので、それぞれの言い手によって基盤、何を支えるのかというものは変わってくるというのは、我々もよく認識・注意をしながら議論をさせていただければとは思っています。そういう意味でいうと、頭数や生乳生産量は、全体で合わせてしまえば、確かにここ数年はまだ供給がある程度あるとは思う一方で、やはり現場それぞれが疲弊をしていて、戸数や一つ一つの経営体ということでいうと、その基盤について多くの方々が疲弊し、いろいろな声を上げている状況を踏まえると、今後戸数が減少する可能性があるということはあろうかと思うので、この両面があるということは補足をさせていただきます。
それから、人口減の話についても補足させていただきます。日本はこの10年余り人口減については恐らく同じようなペースで進んできています。もう少しすると加速しますけれども。今回のターゲットになっている向こう5年、10年というのは、既にこれまでの5年、10年で受けていた人口減、それから人口構成の変化、それが続いていく環境にあり、新しい事象が突然のように大きく生まれるということは考えにくいと思っています。
ですので、我々が、もう一つここで申し上げたかったのは、今この数年間抱えた課題というものをよく踏まえて、その中で維持・拡充できるものをしっかり探していって、地道に積み上げていくということが大切で、イノベーションは必要であっても、新しい大きな何かハードルが出てきた際に、全く新しいアプローチのものをやらなければいけないということではなく、やはり今持っている課題をしっかり整理していくということが、向こう、足元の課題の解決につながっていくのではないかと思っております。
以上です。


〇小針部会長
ありがとうございます。
前田委員、お願いします。
 

〇前田委員
すみません。部会長のお話の中で、コストを積み上げて計算するときに、ふん尿処理費が入っていなかったとおっしゃいました。それは間違いないですか。


〇須永牛乳乳製品課長
営農類型統計だと入っているかもしれないです。多分持たれているデータの中に入っていなかったのではないかなと思いますがと、一応統計の中には入っているようです。
 

〇小針部会長
分かりました。失礼しました。
 

〇前田委員
現在ふん尿処理費用はとても大きなものですので、もしふん尿処理費が入っていないとしたら、その他費用の中でいろんなものへの費用が漏れている可能性があるのかなとふと思ったわけです。ですから、生産費を積み上げていくときに、やはり一つ一つは小さいようなものでも、それが積み重なっていくと、大きな費用額になると思いますのでそれをしっかり拾い上げていただいて計算していただくことが、生産者の持続にもつながるかなと思い、お尋ねしました。
以上です。
 

〇小針部会長
ありがとうございます。
では、意見交換は以上としたいと思います。
次に、食料・農業・農村基本計画の見直しに関し、10月2日の食料・農業・農村政策審議会企画部会において審議されておりますので、その概要について事務局から御報告をお願いいたします。
 

〇新井畜産総合推進室長
資料4を御覧いただければと思います。
前回の部会でも御説明しましたが、食農審の企画部会で8月末に基本計画の見直しに向けた諮問が行われまして、議論が始まったところです。第2回の企画部会が今週の2日に開催をされましたので、概要の御報告をいたします。
第2回のテーマですが、「国民一人一人の食料安全保障・持続可能な食料システム」となっておりまして、食品アクセス、食品安全・消費者の信頼確保、食品産業、合理的な価格形成というテーマで、説明及び意見交換がございました。
3ページ、お願いします。
まず最初に、食品アクセスです。
まず現状分析がございます。これまで国としては、食品の総量が確保できれば、食品アクセスは大丈夫との考え方に立っていたところですが、資料にもあるとおり高齢化や単身世帯の増加、地元小売業の廃業などにより、過疎地域のみならず、都市部においてもいわゆる買物困難者が増加しています。また、低所得者層の割合が増加する中で、経済的理由により健康的な食生活が実践できていない方の割合も増加している状況です。
次のページでは、このような状況を打破すべく、地域や民間が主体となった食品アクセスの確保に向けた取組が挙げられています。例えば、移動販売や宅配、ミニ店舗開設など、ラストワンマイルの物流、また買物支援バスの運行などが進んでいるというところです。また、フードバンクやこども食堂の数も、年々増加している状況にございます。
次のページ、お願いします。
ここ、5年後の趨勢(すうせい)が上にございますが、今後、単身の高齢者や世帯所得100万円以下の独り親世帯が増加する見込みであり、5年後もこういった困窮者の方が大きく減ることはないだろうと書かれております。このため、下の右側の方にある地域のフードチェーンの確保・強化に向けた体制作りへの支援ですとか、ラストワンマイル物流の確保の推進、フードバンク、こども食堂の食料受入れ・提供機能の強化などが必要ではないかとなっているところです。
7ページ、お願いします。
次に、食品安全と消費者の信頼の関係でございます。
現状としては、食品安全に関するリスク管理措置として、科学に基づくリスク管理により健康被害の未然防止を図ることが重要、また、食品安全に係る知識の普及については、若い世代での意識が低い状況になってございます。
下の方の食品表示ですが、こちらは食品表示法に基づく指示・指導の件数は、長期的には減ってはいますが、下のグラフにも示されているとおり、近年ではやや増加となっている状況でございます。
8ページ、お願いします。
今後の課題についてですが、そういった状況を含めて、食品安全に関するリスク管理の推進や食品表示の適正化に向けた監視が必要になるというふうになっております。
次、10ページ、お願いします。食品産業についてです。
こちらは現状分析です。まず、食品産業ですが、国内農林水産物の主要な仕向け先として、国民への食料の安定供給はもとより、地域経済・社会の維持・発展、雇用創出などで重要な役割を担っている一方で、食品産業は、各段階、いずれも大半が中小零細企業であり、労働生産性が低い状況にございます。また、長引くデフレ経済下で価格競争が普遍化をしておりまして、流通に関して言えば、トラック輸送に多くを依存しているので、ドライバーの減少や時間外労働規制による輸送力不足が懸念される状況となっております。
次のページです。
海外ではどうなっているかといいますと、国内市場は人口減少によって縮小をしているところですが、海外市場は拡大の傾向にございます。また、その反面、国際的な原料調達競争が激化しており、輸入原材料の調達リスクが増大してございます。
12ページをお願いします。
5年後の趨勢(すうせい)についてです。こちらも同様に、単身世帯や共働き世帯の増加などで、食の外部化・簡便化が進むだろうとなっています。また、1人当たりの食料支出額は、生鮮食品は減るが、加工食品と外食は増加する、また、訪日外国人旅行者の飲食消費額は増加しているだろうということが見込まれているところでございます。
13ページ、お願いします。
食品産業の事業者数は高齢化で減少が見込まれる、また輸送能力も減少見込みとなっております。先ほど申しましたが、海外動向としては、我が国の農林水産物・食品に関しては、輸出額拡大の余地があると書かれているところです。
このため、14、15ページについてですが、農林漁業者との安定的な取引関係の確立、流通の合理化、事業基盤の充実、そういったものが必要になってくるのではないかとまとめているところです。
最後、17ページです。合理的な価格形成でございます。
グラフがございますが、2021年以降、肥料・飼料などの資材価格の上昇が続き、食料システム全体に幅広く影響が及んでいる一方で、国内の農産物価格は多くの品目では僅かな価格上昇にとどまっているという状況にございます。長期的にも、長引くデフレ経済下で安売り競争が常態化し、食料品の値上げを敬遠する意識が定着してきたとなっております。
18ページお願いします。
そうした中で、コストに対する理解醸成を進めるためのコスト構造の明確化や、消費者の理解醸成のための情報発信、また合理的な費用が考慮される仕組みの構築が必要ではないかとなっているところでございます。
資料はこのような内容でございまして、こういった説明を行った上で、企画部会の委員の皆様から意見を聴取してきたところです。概要については、また議事概要が出るかと思うので、そちらも御覧いただければと思いますが、食品産業やアクセスに関する意見もありましたし、価格形成に関する意見・議論はそれなりにありまして、生産コストが上がっている中で是非進めるべきという意見もある一方で、需要と供給で決まるべきであるので、慎重に進めていく必要があるのではないか、消費者の視点が必要なのではないかといった意見などもあったところでございます。
次回の企画部会に関しては、環境と調和の取れた食料システムの確立、多面的機能の発揮、農村振興がテーマとなって開催されることになっているところです。
私からは以上です。
 

〇小針部会長
ありがとうございます。
このことについて委員から御意見、また御質問等ありましたらお願いいたします。
それでは、企画部会の報告は以上といたします。
本日は長時間にわたり熱心に御審議いただきまして、ありがとうございました。今後も議論が続きますので、引き続きそれぞれのお立場から御意見を頂ければと思います。
最後に、事務局からお願いいたします。
 

〇新井畜産総合推進室長
本日も長時間にわたる御審議いただきまして、大変ありがとうございました。
次回ですが、肉用牛、食肉を主なテーマとして議論を頂ければと考えております。日程などについては、改めて御連絡いたしますが、10月の下旬で調整したいと思いますので、どうぞよろしくお願いいたします。
以上でございます。


〇小針部会長
それでは、これで畜産部会を終了いたします。ありがとうございました。
 

午後3時44分閉会

お問合せ先

畜産局総務課畜産総合推進室

担当者:請川、松山、細川
代表:03-3502-8111(内線4888)
ダイヤルイン:03-6744-0568

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