このページの本文へ移動

農林水産省

メニュー

令和6年度第6回畜産部会議事録

令和6年度第6回畜産部会議事録(PDF : 756KB)

1. 日時及び場所

日時:令和6年10月23日(水曜日) 13時09分~16時22分

会場:農林水産省 第3特別会議室(web併催)

2. 議事

○新井畜産総合推進室長
それでは、ただいまより令和6年度第回食料・農業・農村政策審議会畜産部会を開催します。
委員の皆様におかれましては、御多忙中の中、御出席を頂きまして誠にありがとうございます。
それでは、小針部会長に議事をお進めいただきたいと思いますので、どうぞよろしくお願いします。


小針部会長
皆さん、こんにちは。部会長の小針でございます。本日もどうぞよろしくお願いします。
まず始めに、松本畜産局長から御挨拶をお願いします。
 

松本畜産局長
畜産局長の松本でございます。
委員の皆様におかれましては、日頃より農林水産行政、とりわけ畜産行政に御協力、御理解賜っておりますこと、まずは御礼申し上げます。また、何かと忙しい時期ではございますが、本日は審議会に足を運んでいただき、また、リモートでも参加を賜っておりますことにつきましても、重ねて御礼を申し上げます。
先般開催しました畜産部会におきましては、酪農・乳業というテーマで議論していただいたところでございます。今回は肉用牛・食肉について、御意見を頂くことになりますが、これまでの畜産部会においてもヒアリングなどを重ねてきたところでございますが、本日は当方から資料を提供し、説明をさせていただいた上で、議論を深めていきたく、お願いしたいところでございます。
限られた時間ではございますが、皆様方の御意見などを拝聴しながら今後の行政の施策立案に進めてまいりたいと思いますので、本日は協力方、よろしくお願いします。
 

小針部会長
ありがとうございました。
撮影の方はここで終了となりますので、御退室願います。
 

(報道退室)

 
小針部会長
それでは、議事を進めます。
まず、本日の配付資料の確認、委員の出欠状況の報告などについて、事務局からお願いいたします。
 

新井畜産総合推進室長
まず、本日配付しております資料について確認させていただきます。
出席いただいている委員の方におかれましては、端末の方に資料1から4、また、参考資料1から4、計八つのシートが表示されているかと思いますので、御確認いただければと思います。
また、使用方法なり不明点がありましたら、お近くにいる職員に遠慮なくお問合せを頂ければと思います。
次に、本日、12名の委員の皆様に出席いただいております。このうち椛木委員、宮島委員、石田委員、井上委員、里井委員、丸橋委員におかれましては、リモートにて御参加いただいておるところです。宮島委員、丸橋委員は途中退席、里井委員は途中参加と伺っております。
また、本日、二村委員、川田委員、庄司委員、馬場委員、彦坂委員、前田委員、松田委員におかれましては、御都合により御欠席との連絡を受けております。
審議会に関する規定では、委員及び議事に関係のある臨時委員の3分の1以上の出席がなければ、会議を開き議決することができないと定められておりますが、規定数を満たしていることを報告いたします。
以上でございます。
 

小針部会長
ありがとうございました。
本日は、9月10日に諮問されました酪肉近の見直しに関し、肉用牛・食肉を中心に議論を深めてまいりたいと思います。
それでは、まずは事務局より資料3の肉用牛・食肉の現状と課題の整理の説明をお願いいたします。
 

伊藤食肉鶏卵課長
食肉鶏卵課長の伊藤でございます。私の方からは、肉用牛・食肉生産の現状と課題について整理しましたので、資料3に基づいて御説明をさせていただきます。
1ページ、2ページをお開きください。資料の目次になりますけれども、今回は大項目6つ、需給動向、生産基盤、経営動向、消費者ニーズ、輸出促進、流通、この大項目ごとに現状と課題を整理し、それぞれ論点を整理させていただきました。
本資料取りまとめに当たって留意したことを始めに一言述べさせていただきたいと思います。
まず、肉用牛において、目の前で起きていることとしましては、御案内のとおり、枝肉価格の下落、それから餌代が高止まりしている中での子牛価格の下落という中で、消費の出口をどのように作っていくのかといったことが起きております。しかし、酪肉近に向けての議論になりますので、人口減少に対してどのように対応していくのか、それから牛肉に対する多様な消費者ニーズにどのように対応するかといった、中長期的な視点を持ちながらこの資料を整理しておりますので、一言申し述べさせていただきます。
それでは、続きまして3ページを御覧ください。牛肉の需給動向になります。
4ページ目、お開きください。肉用牛生産の位置付け・主産地についてです。左の円グラフを御覧ください。肉用牛産出額でありますけれども、畜産、肉用牛ともに10年前と比較して増えています。肉用牛の産出額は、都道府県別に見ますと、北海道と九州が大きくなっておりまして、鹿児島県と北海道は1,000億を超える状態になっております。
続きまして、5ページをお開きください。肉用牛の供給の構造をお示ししていますが、牛肉供給量の右の棒グラフを御覧ください。牛肉の供給量は全体の6割が輸入、そして、4割は国産ですけれども、そのうち半分が和牛、それから半分が交雑、乳用種となっております。後で数字の方も御確認いただきますけれども、1人当たりの牛肉消費量は6.1kgとなっています。これは輸入牛肉を含めた全体の数字で、和牛肉は大体この20%ぐらいなので、1kg強というような状況です。
6ページをお開きください。牛肉の供給動向になります。左下に棒グラフございますけれども、全体の供給量はかなり凹凸があるような状況になっていますが、下から見ていただくと、ピンクが国産、その上が輸入品です。長期的に見ると、国産は安定的に推移していて、輸入の動向によって、牛肉の供給の推移が変わってきています。足元を見ていただくと、米国の干ばつにより令和3年以降、牛群の減少が見られて供給量が減っているとか、円安で輸入牛肉が高くなっているような状況の中で、輸入牛肉の供給量も減ってきているという状況になっています。
それから、右上の国内牛肉生産量の推移と現行酪肉近の目標ということで、折れ線の方を見ていただければと思います。右の方に赤で書いてありますけれども、令和12年度の目標ということで、現行酪肉近では40万tという目標を設定しております。これは和牛、乳・交を全部含めた数字になっていますが、足元を見ていただくと、令和2年以降増加傾向で推移しており、35万tまで来ております。
続きまして、7ページを御覧ください。品種別の生産動向になります。乳用種は性判別精液や、黒毛ETなどもありまして、乳用種は減ってきている状況の中で、一方で和牛と交雑種は増えている状況でございます。
続きまして、8ページを御覧ください。和牛肉の生産量と肉質の動向でございます。左上の棒グラフですが、黒毛和種の出生頭数と受精卵由来の割合でございます。黒毛和種の母牛由来、それから受精卵由来とも、平成27年と令和4年の比較ですが、ともに4万t程度増えており、増加で推移しております。また、枝肉重量についても家畜改良でありますとか飼養技術の向上に伴い、順調に推移しており、520kg弱まで来ております。出生頭数と枝肉重量が増えますので、生産量もおのずと増えるということで、右の棒グラフを見ていただきますと、平成28年に14万3,000tだったのが、令和5年には17万1,000tまで増えております。
さらに、格付の方も10年間の比較をしました。令和5年度にA5が6割を超えるような状況になっていますが、11年前は2割でしたので、生産現場からは、A5というだけでは差別化が図りにくいという声も上がっていますけれども、このような格付状況になっております。
9ページをお開きください。消費の動向になります。国民にとって重要なたんぱく質をどこから取っているかを示しておりますが、食肉全体の一人当たり消費量は増えている状況の中で、魚介類は落ちています。左下の赤の折れ線グラフを見ていただくと、牛肉の方はBSE発生直前は7.6kgだったのが、その後落ち込みまして、また足元では6.5kg、6.1kgとなっております。
右上の折れ線グラフに、より詳細に出ておりますが、コロナ前の令和元年度が6.5kgでしたが、足元では少し落ちて6.1kgとなっています。物価高や、輸入の減少などの影響もあったと見ております。
それから右下に人口の推移がありますが、平成24年から令和5年の間の15年間で3%減少しておりまして、さらに、令和5年から令和12年の7年にかけて約400万人、毎年60万人ずつが減少する見込みでございます。こういった中で牛肉生産の在り方や、消費の在り方を考えていかなければいけません。
10ページをお開きください。消費構成についてです。左下の棒グラフに、消費の構成割合を示しておりますが、6割近くは外食・中食で消費されているという状況になっております。
11ページをお開きください。輸出動向についてです。輸出の国、地域別で見ていただくと左の円グラフの通り、香港、台湾、アメリカ、EU、シンガポール、それからイスラム諸国への輸出が見られます。
それから、右の棒グラフを見ていただくと、牛肉の輸出目標と実績の推移を示しております。足元では輸出額が578億円ということで、過去最高額を更新しておりますが、やはり中国等が解禁されていない中で、目標とのかい離が見られる状況です。
12ページを御覧ください。御案内のとおり、国内の人口は減っていく一方、海外では人口が増加することから、海外市場も視野に生産と供給を考えていくということになっております。
13ページは日本の輸入動向でございます。左下の折れ線グラフに、輸入牛肉のkg当たりの単価をお示ししております。一時期は800円ぐらいで推移しておりましたが、足元では1,000円から1,200円の間になっております。これは先ほども御説明しましたとおり、アメリカでの干ばつによる頭数減からの現地高や、為替高、こういった中で牛肉の輸入量が減少し、このように価格も高く推移している状況でございます。右の棒グラフを見ていただくと、輸入量が減少しているのが分かるかと思います。
14ページを御覧ください。日本は牛肉の6割を輸入しておりますが、安定輸入の観点から見てみたいと思います。世界の輸入動向について、左下の棒グラフを御覧ください。主な輸入国は、中国、アメリカ、日本、韓国になっております。その中で中国を見ていただきますと、2013年と2023年の比較ですが、26万5,000tから250万4,000tと、輸入量が約10倍に増えております。その中で、どの国から輸入しているのか見ていただきたいと思います。2019年と2023年の比較ですが、日本の主な輸入先であるオーストラリアのシェアが2割弱あったのが、足元では8%になり、南米からのシェアが増えているのが確認いただけるかと思います。
15ページを御覧ください。和牛枝肉卸売価格は、和牛の生産拡大や、物価上昇の中での消費者の生活防衛意識の高まりなどもありまして、一時期2,900円を超えていた時代と比べますと、足元では2,465円まで下がってきているような状況でございます。一方で先ほどから申し上げていますとおり、輸入牛肉の価格が上昇しておりますので、交雑と乳用の引き合いが強まっているというのが現状です。
16ページを御覧ください。肉用子牛の価格についてです。冒頭でも申し上げましたが、枝肉価格の下落、餌価格の高止まり、それから肥育農家の素牛購買意欲の減退などがございまして、子牛価格は低位で推移している状況で、全国平均では50万円を下回る水準になっております。BSEの影響を受けた直後の平成14年以来の子牛補給金の発動が見られている状況でございます。
17ページを御覧ください。和牛肉におけると畜頭数と枝肉価格の関係でございます。左の棒グラフから、と畜頭数が減れば価格が上がり、と畜頭数が増えると枝肉価格が下がる、負の相関関係が分かるかと思います。
右の図を見ていただきますと、基本的にはと畜頭数が増えれば価格は下がりますが、令和3年、令和4年、令和5年を見ていただくと、その傾向よりも高い価格で推移しています。これは、輸出による枝肉価格の下支え効果があったということが御確認いただけるのではないかと思います。
18ページを御覧ください。和牛における当面の需給の見通しについてです。黒毛和牛の出生頭数と子牛価格の推移ということで、繁殖雌牛は足元では少し減少していますが、令和4年まで見ていただくと、出生頭数はずっと増加しており、57万8,000頭になっております。令和4年度に生まれた子牛は、今後上半期に順次出荷していくことになりますので、現在も枝肉価格は軟調ですが、生産量は今後も増加が見込まれ、枝肉価格は軟調で推移する可能性があるということを図示しております。
19ページを御覧ください。ここまでの内容について短期的要素と中長期的要素に分けて論点を整理しております。
先に短期的要素から御説明させていただきますけれども、足元の物価高騰に伴って和牛の国内需要は減少しております。一方で、輸出については中国との解禁協議等が進まず目標には及んでいない中で、和牛の生産は増加傾向にありまして、当面、需給の緩和は継続するだろうと考えております。
中長期的に見ますと、我が国の人口は減少していく一方で、1人当たりの消費量は緩やかに増加し、世界のマーケットは拡大します。これらのファクトを念頭に置きながら、今後の対応を考えていく必要があるかと思いますので、下の方に論点を2つ整理しております。
まず、人口が減少局面の我が国において、国内外の需要を的確に捉え、1人当たりの国産消費を増やしつつ、輸出にも取り組むことで、牛肉の供給能力の維持を図ることが必要だと考えます。
2点目に、当面の間は、需給緩和を改善する必要があることから、増頭対策の中止は継続しつつ、新規需要開拓に取り組んでいくことが必要だと考えております。
続きまして20ページから、牛肉の生産基盤について御説明させていただきます。
21ページをお開きください。子牛の生産体制についてです。一番下の出生頭数の赤の部分を御覧ください。これが黒毛和種であり57万8,000頭となっておりますが、これがどこから生まれてきたのか、上にたどっていくと、黒毛和種のAI産子で48万4,000頭、約8割となっております。残りの16%ほどが黒毛和種のET由来ですが、その中でも約7割がホルスタイン由来で、約6万4,000頭でございます。そして、左の方を見ていただくと、酪農経営からはその他、ホルスタインや交雑が生産されております。
22ページを御覧ください。繁殖雌牛の動向についてです。左の図を見ていただきますと、令和5年には、64万5,000頭、令和6年には64万頭と、足元では繁殖雌牛が減少しております。雌牛の仕向け先について、右の棒グラフで示しておりますが、下のピンクが繁殖仕向け、それから青が肥育仕向けです。その仕向けの割合を表したものが、この赤の折れ線グラフになりますが、雌牛の繁殖仕向け割合は令和2年度には4割を超えていたのが、足元では31%と減少傾向になっております。
23ページをお開きください。酪農経営における肉用子牛の生産動向についてです。左の折れ線グラフを見ていただきますと、乳用種の通常精液が減っておりまして、他方で黒毛和種の受精卵移植、性選別精液の利用が増えております。黒毛和種の種付けも増えている中で、右の棒グラフを見ていただくと、交雑と黒毛和種がそれなりに増加している一方で、乳用雄牛が減少しているのがわかるかと思います。
24ページを御覧ください。酪農経営由来のET和子牛の生産動向について整理させていただきました。ETにつきましては受胎率も高く技術も上がっており、足元では価格が好調ということもありまして、既に技術が定着し、順調に推移してきているような状況でございます。これを後押しした要素を左に整理しておりますが、平成25年度以降、子牛の価格が高騰した中で、技術も追い付いてきたこと。あるいは、生乳生産コストが高騰する中で、副産物である和子牛の生産が進んできたという背景がございます。
続きまして、25ページを御覧ください。酪農経営における肉用子牛の収益性を御参考までにお示ししております。黒毛和種のETを付けられる方も多いですが、左の表を見ていただくと明らかなとおり、上から2行目の販売価格を見ていただくと、ほかと比べると桁が一つ異なり、32万円弱になっています。下から2行目の1頭当たり利潤を見ても、乳用雄やF1と比べると高いので、足元の利益を考える黒毛の受精卵を付けられる方も多いと思いますが、黒毛については哺乳の技術等もあり、手間もかかります。一日当たり利潤を整理してみると、F1が3,077円と高い数字になっております。
26ページを御覧ください。肉用牛の繁殖経営と酪農経営の関係についてです。肉用子牛の生産基盤の中で、それぞれがどのような位置付けになっているか、全体像を整理したものです。
まず、酪農経営については値頃感のある国産牛肉の供給源ということで、安価な国産牛肉を求める消費者に対して、それを提供する源になっていると我々は考えております。また、今後需要が急激に増加した場合に、繁殖農家で改良された受精卵を活用して子牛を増産することも可能です。他方、繁殖経営は、和牛の改良基盤ということで、高品質な霜降り牛肉を供給する源になっているほか、和牛の改良基盤を担っております。また、和牛卵子のドナーとして和牛受精卵を供給するという役割もあります。繁殖雌牛により支えられる和牛の改良基盤が我が国の肉用牛生産の基盤になっているといことが御確認いただけるかと思います。
続きまして、27ページを御覧ください。繁殖雌牛の課題と対応についてです。左上の棒グラフからも明らかなとおり、高齢の母牛から出てきた子牛ほど価格が安くなっているのが分かるかと思います。改良技術等が上がる中で、若い雌牛から産まれてきたものほど枝肉重量、脂肪交雑ともに成績が良好であることが右の折れ線グラフからも見てとれるかと思います。
左下を見ていただくとわかる通り、10歳以上の頭数が全体の2割を占めており、優良な若い繁殖雌牛に順次更新していく必要があると考えており、現在支援措置も用意させていただいているところでございます。
28ページを御覧ください。遺伝的多様性の課題についてです。左の棒グラフの種雄牛の子牛の市場出荷頭数等を見ていただくと、人気のある上位15頭で全体取引の約45%を占めており、我々が気にしておりますのが近交係数でございます。この上昇により遺伝的変異や適応能力の低下、繁殖能力等の低下等々の課題に繋がります。和牛は我が国固有の遺伝資源ですので、その多様性の確保が重要だと考えております。
29ページを御覧ください。遺伝的多様性の課題への対応についてですが、各種様々な取組を進めております。家畜改良センターにおきましては、希少系統の繁殖雌牛群を整備して、希少系統種雄牛を造成しているほか、右下の家畜改良事業団の取組のように、ゲノミック評価をするなど、このようなことに取り組んでおります。
30ページを御覧ください。ここまでの内容の論点です。改良基盤の充実強化についてまとめております。繁殖経営に支えられる和牛の改良基盤はきちんと守っていかないといけません。肉用牛生産の源であると考えております。一方で、高齢繁殖雌牛由来の子牛の価格低下が見られております。一部の種雄牛やET受精卵に利用が集中した結果として、近交係数が上昇し、遺伝的多様性が減少している中で、優良な若い繁殖雌牛への更新や、遺伝的多様性に着目した種雄牛造成、繁殖雌牛の導入推進が必要だと考えます。
続きまして、32ページをお開きください。ここからが肉用牛経営の動向になります。まず繁殖経営の戸数と頭数の動向ですが、繁殖雌牛の飼養戸数は4万戸から3万2,000戸まで減少しております。そして、飼養頭数の推移のところを見ていただくと、1戸当たり飼養頭数が約20頭になっております。
続きまして、33ページを御覧ください。次は肥育経営になります。足元では戸数が増えておりますが、繁殖肥育一貫経営が大体1,000戸弱ほど増えている中で、肥育経営も増えております。
右のグラフを見ていただくと、1戸当たり飼養頭数が大体120頭弱になっております。
続きまして34ページ、繁殖経営の規模別・後継者の動向についてです。左の棒グラフを見ていただくと、1から9頭の層が減少し、100頭以上の層が平成26年と比較して2倍の、1%から2%になっている状況です。左下を見ていただくと、100頭以上の層で、全飼養頭数の約4分の1、24%を飼養しているという状況になっております。
右上を見ていただくと、やはり繁殖経営の規模の小さい層ほど高齢化が進んでいます。下の方を見ていただくと、後継者の確保等が課題になっていることが見てとれるかと思います。
35ページを御覧ください。後継者対策の取組例についてです。こちらは大分県のクラスター事業を活用した事例を基に作成しております。地域おこし協力隊等により、一時的に人の確保を図りつつ、ヘルパー等に慣れていただいて技術習得をされた方に対し、牛舎をリースしたり、家保の職員から技術指導を受けながら新規就農していく。また、ICTを活用して経営の効率化、生産の効率化を図るほか、キャトルステーション等で外部化を図るような取組を一例として御紹介させていただいております。
続きまして、36ページを御覧ください。ここからがコストの話になります。まず、繁殖経営についてですが、左下の棒グラフを御覧ください。繁殖経営では飼料費が大体45%ぐらいを占めておりますので、令和3年から令和4年にかけて飼料費が高騰したことから、足元では生産コストが増加しています。1点注釈を付けさせていただきますと、生産コストが70万円を超えておりますが、配合飼料価格安定制度による補塡金など、そういった補助金が控除されていないものになりますので、少し高く出ております。飼料費が増加する中で、コストが増えているのは見てとれるかと思います。
右の棒グラフは規模別の生産コストになります。見ていただくと、飼養頭数が50頭を超えると生産費の平均が全体より下回るということで、コストの3割ほどを占める労働費の低減などが影響しております。これについては後で詳細を説明させていただきます。
37ページを御覧ください。肥育経営の方についてです。こちらはもと畜費が大体56%で、飼料費が約3割になっております。
それから、右のグラフには、もと畜費を除いた生産コストを整理しておりますが、規模を大きくしても、生産コストはあまり変わらないのがわかるかと思います。
続きまして38ページです。先ほど、繁殖経営では、飼養頭数が50頭を超えると一頭当たりの生産コストが下がっていくことが分かりましたが、全体の飼養費の内訳は飼料費が45%、労働費が28%になっております。まず、青の折れ線の労働費の方から見ていただくと、規模を増やせば増やすほど減少するのがわかります。全体で管理できるようになりますので、そういった意味で労働費が減ります。対して飼料費の方ですが、50頭に至るまでは若干下がっていきますが、50頭を超えたところで少し増加しております。これを分解して見てみますと、黄緑の線が牧草費等ということで、自給飼料になります。規模を大きくしていくと、ある時点から自給飼料で賄い切れなくなって購入飼料を使うようになり、オレンジの折れ線示された流通飼料費が増えております。
続きまして右側を御覧ください。こちらは折れ線を見ていただくと分かりやすいですが、労働費は規模を大きくするほど減少しますが、労働費が全体の6%程度なので、それほど変化は出ません。いずれにしても、もと畜費、流通飼料費は横ばいという状況でございます。
続きまして、39ページを御覧ください。生産コストを低減する取組は必要になってくるかと思います。発情発見装置や分娩監視装置、哺乳ロボット、それからAIカメラの設置などを記載させていただいております。
続いて、40ページを御覧ください。生産コストへの対応、早期出荷の取組についてです。令和6年度から実証事業を始めておりますが、肥育期間の短縮、出荷月齢の早期化に向けた実証ということで、繁殖農家、肥育農家、食肉流通事業者が一体となった取組を現在、進めようとしているところであります。
右を御覧ください。こちらは一つの試算ですが、早期出荷モデルと通常モデルの収益性の比較になります。通常、9か月齢の子牛を購入して30か月齢弱で出荷するのを通常モデルとして、子牛を8か月齢で買ってきて26か月齢で出荷するのを早期出荷モデルとして試算しております。赤、青、緑で色分けしておりますが、青の収入から御覧ください。やはり出荷月齢を早める関係で枝肉価格は少し下がるため、全体収入が125万円から116万円ぐらいに下がりますが、赤の費用のところを見ていただくと、飼料費なども大きく下がり、全体で120万円から110万円まで削減することで、費用の方の削減効果がかなりあります。全体の収益を見ますと、やはり早期出荷モデルの方が高く出ております。さらに、回転率が速まります。これまで30か月齢ほどで出荷していたのが26か月齢になりますので、単純計算で26分の30に回転率が上がりますので、年間の出荷頭数が、この試算では41頭から47頭になります。そのため、収益と頭数を掛け合わせると早期出荷モデルの方が年間収益は上がるという試算であります。こういった方法もあるのではないかということで書かせていただいております。
続きまして、41ページになりますけれども、放牧と粗飼料についてです。様々な飼料費、労働費を削減していく手法の一つとしても、放牧は有効だと思っていますし、青刈りとうもろこしや粗飼料についての取組というのも必要になってきます。
続きまして、42ページを御覧ください。国産稲わらは発生量に対して1割弱が飼料利用されているのは昔から言われていますが、このように国産稲わらの活用も進めていく必要がございます。
続いて、43ページを御覧ください。ここまでの論点をまとめました。流通飼料費を中心とした生産コストの増加が見られること、繁殖経営における高齢化・後継者不足が課題になっておりますが、一つ目にも書いてありますとおり、育成から肥育までの生産コストの低減に資する早期出荷の本格化といった取組が必要ではないかと考えております。また、国産飼料の生産・調達可能量に見合った繁殖経営でありますとか、放牧、青刈りとうもろこし、稲わら等国産飼料の利用促進、キャトルステーション等の外部支援組織を活用した労働負担の軽減、また、地域全体での後継者の確保、さらに、スマート農業技術を活用した生産性の向上、こういった取組が必要だと考えます。
続きまして45ページ、ここからが消費者ニーズの話になります。左の意識調査は令和5年度に日本食肉消費総合センターが調べたものになりますが、これを見て頂きますと、消費者の約5割は普段は赤身を購入されています。ただ、消費者の約6割弱が値段によっては霜降り肉を購入するという意向があります。国民のニーズ、消費者のニーズの観点から見ると、赤身肉を追求される方もいれば、ハイエンドの脂肪交雑牛のような高級なお肉を食べられる方もいるということで、様々なニーズがあります。そのニーズに対して牛肉がどのように応えているのかということですが、1等級から5等級までありますが、脂肪交雑については和牛で対応していますし、3等級では、手頃な価格で適度な脂肪交雑を追求するということでF1が中心であります。さらに赤身肉では、輸入牛肉、それから乳用種がございます。よく赤身志向についてお話がありますが、ある意味そこはこういった輸入牛肉や乳用種、交雑の取組が進んでいる中で、和牛で赤身を生産するとなると、さすがに価格優位性で課題があります。また、ここには書いておりませんが、和牛のA5といっても、部位で大分違います。例えばモモは赤身中心ですが、A5だからやわらかいという、A5ゆえのクオリティによる部分もあります。5等級の中でも部位によっていろいろ違いがあると考えております。
それから、46ページでは脂肪交雑について整理しております。左は脂肪交雑の現状ですが、和牛肉の脂肪交雑の多さというのは、外国産牛肉と差別化できる強みになっていると考えております。高齢化が進む中で、量は食べられないけれども、やわらかい牛肉を好まれるという方もおりますので、その傾向は今後も継続される見込みだと考えております。
他方で、先ほどから申し上げておりますとおり、A5の等級が6割を超え、A4も全体の4分の1、A4、A5を合わせて9割弱になっておりますので、このような中で更なる強みを探していく、見つけていくことが重要になっております。
右の方は、BMSで1から12まで、東京市場卸売価格が2019年と2023年でどのように変化したのか整理したものになります。それぞれBMSの1から12まで、取引された価格をプロットしました。BMSの5とか6が顕著かと思いますけれども、4年間の比較を見ると、上位の価格が高く出て、幅も4年前よりも出ているということで、これを加重平均で落とし込んだのが右下の折れ線グラフですが、BMSの5、6、いわゆるA4の辺りの価格が上方に推移しているということでございます。
47ページを御覧ください。おいしさの要素について御説明させていただきます。牛肉のおいしさについてですが、味、香り、食感、テクスチャーや、その方の嗜好など、こういったものがおいしさに影響しているだろうと考えておりますが、最近見られる取組として、脂肪交雑以外の、おいしさに関する形質、オレイン酸と小ザシを右に整理しております。オレイン酸、いわゆる不飽和脂肪酸は、脂肪の融点が低いので、口の中に入れたときにとろける感じがするとよく言われております。あるいは、細かい脂肪が分布している形状の小ザシですが、小ザシであればBMSNo.が高くても脂肪含有量を抑えられると考えられております。
それを分かりやすく示したのが48ページの左上家畜改良センターのところの写真です。これが粗ザシ、小ザシを表しておりまして、同じBMSですが、粗ザシの方の脂肪の割合が64.6%であるのに対して小ザシの方は35.3%となっています。こちらにつきましては、光学測定機器により、簡便に測定可能な小ザシの度合いを表す指標を検討しているところでございます。
また、右下を見ていただくと、全国の取組ということで、鳥取、長野、石川など各地で脂肪交雑にプラスした強みによって差別化を図るため、オレイン酸に取り組んでいる事例もございます。
49ページを御覧ください。早期出荷牛肉に対する理解醸成の推進についてです。先ほども御説明させていただきましたが、一つの方法として早期出荷があるのではないかという御提案をいたしました。左下を見ていただくと、食肉の専門家の方、流通事業者の方にお話を聞きますと、短期肥育だと長期肥育に比べて味が薄くなってしまうでありますとか、一方であっさりしていていいよねという声もあったり、その他にも締まりが悪いとか、様々な考え方があり、評価が統一されていないのが現状かと思います。そういう意味では、生産者が生産コストに着目して取組を進めても、この流通小売事業者の理解が進まないと取組が進まないので、現在も実証事業を進めておりますが、成分検査や官能検査を進めながら、科学的根拠に基づいた肉質データを基に生産・流通に関わる関係者に対し認知度向上、理解醸成を図ってまいりたいと考えております。
これをまとめたのが50ページになります。和牛における多様な消費者ニーズへの対応イメージについてです。上に棒グラフがありますが、例えば30か月齢で出荷していたものを26か月齢で出荷しても生産者の所得が変わらないようにすること。また、流通事業者の方にも、これだったら販売も流通できるよねと思って頂くような、関係者の理解醸成をどのように図っていくのか。それから、下のところですが、現在、脂肪交雑を重視して売り込みを行っておりますが、消費者ニーズがそのほかにどこにあるのか。多くの消費者や、流通事業者から見た真の消費者ニーズ、強みを見付けていくことが大切ではないかと考えております。
51ページが以上をまとめた論点になります。消費者のニーズは、赤身から霜降りまで多様にあります。それは黒毛和種、交雑種、乳用種、国産牛全体で対応していると考えております。そのうちの黒毛和種の脂肪交雑の改良は飛躍的に進展してきたと思っております。下の赤四角のところですが、和牛のブランドを守るためには脂肪交雑の強みは維持していく必要があると考えております。適度な脂肪交雑の中で脂肪の口溶け、香りなど食味が良い牛肉生産をどのように図っていくのか。それから、早期出荷牛肉に対する関係者の理解醸成をどのように図っていくのか。こういう観点が必要だと考えております。また、酪農経営からの肉用子牛生産につきましても、最後は酪農経営の方が経営の合理性の中で判断されることでありますけれども、肉用牛の全体の視点から見たときには、消費者が求める赤身肉で値頃感のある国産牛肉といった消費者ニーズに応える部分を踏まえることも必要だと考えております。
続きまして、53ページからは輸出の話になります。現在、農林水産物・食品の輸出拡大実行戦略に基づいた取組が進められております。
54ページは、国別の対応状況でありますが、中国と解禁協議を進めたり、台湾とは月齢制限撤廃の協議を進めるなど、様々な事項がありまして、輸出促進に関する実行計画に沿って対応しているところでございます。
続きまして55ページを御覧ください。主な輸出認定施設の御紹介です。現在アメリカ、EU等向けの認定施設が16施設、それから台湾、シンガポール等向け施設が29施設になっておりまして、2025年の目標はそれぞれ25施設、40施設となっております。施設を整備するだけでは進まず、技術が必要な食肉カット等が追い付かない等の課題もございます。そういった中で人材をどのように確保していくのか、また、スライス機の導入をするなど、稼働率をどのように高めていくのか、こういったことを検討しながら、輸出認定施設の整備を進めることが必要だと考えております。
56ページは、部位別の輸出動向ですが、アジアの方で火鍋など、比較的多様な部位が消費されますので、フルセットで輸出できている一方で、アメリカや欧米の方はステーキ肉向け需要が大きいのでロインが中心になっております。
続きまして、57ページですが、国内生産量と輸出量の関係を整理しております。国産和牛の生産量は大体17万トンほどですが、そのうち15%がサーロインやヒレなど、ロイン系と言われる部分になります。これが2万5,000tございますが、2万5,000tのうち約2割の4,480tが、輸出に回っているということで、ロインは輸出に回っている量が多くなっています。全体の牛肉輸出量に占める割合も全体の半分がロインであるというような状況でございます。
続きまして、59ページを御覧ください。主な論点です。輸出拡大の対応ということですけれども、現状では輸出先国における販路が限定的である、あるいは、輸出の過半はロインでありますので、消費の出口を作っていくという意味でも、輸出先国との解禁協議を進めていく。さらに、輸出するに当たっては、輸出対応施設の整備や施設の稼働率の向上も必要になりますし、また、輸出先国に合わせた販売網の拡大促進も必要になります。また、海外だとスライスの技術などもございませんので、非ロインのカタやバラ、モモなど、こういったところのスライスなども含めてプロモーションを図っていくことが重要になってきます。こういったことを総合的にやりながら、輸出拡大を推進していきたいと考えております。
続きまして、最後に流通の話になります。61ページを御覧ください。食肉の最大の特徴は、ほかの農産物と違って、生体のままでは流通・消費ができないということであり、食肉処理施設は必要なインフラ施設になっております。左上の方を見ていただくと、食肉処理施設の種類別施設数の推移を示しておりますが、合計の欄を見ていただくと、令和4年度の施設数が167、酪肉近で定める稼働率目標が70%から90%になっておりますが、右上の棒グラフと折れ線グラフを見ていただくと、稼働率が62%であり、目標にはまだ届いていない状況でございます。
続きまして、62ページを御覧ください。と畜や食肉加工がどのように推移してきているのか示しております。昭和の時代には生体取引も行われており、と畜や枝肉加工は消費地で行うのが一般的でありました。それが産地の方で枝肉加工、部分肉加工をするようになり、さらに、スーパー等のバックヤードでスライスする技術を持っている方も大分少なくなってきておりますので、こういった小割加工まで産地食肉センターで行うようになってきております。一方で産地の方でも人材不足など、さまざまな課題が見えてきております。そういう中で、一つの取組として産地食肉センターの方で輸出用の小割加工をしながら、消費地の方で国内向けの小割加工をするなど、そういった形態も見られるようになってきております。
続きまして63ページを御覧ください。施設整備事業の御紹介までですが、右下の赤の点線の部分を見ていただきますと、台湾などでは、輸出認定を受けた食肉処理施設以外の食肉加工施設からの輸出も認められるようになっておりますので、令和7年度に向けて予算を検討中ですが、こういった食肉加工施設設備の整備に向けた支援も考えております。
続いて64ページを御覧ください。食肉処理施設の施設整備のための中長期ビジョンと書いておりますが、先ほど申し上げました通り、食肉はほかの農産物と異なり、家畜の生体では流通できないので、絶対に必要な施設となります。現在、食肉処理施設は系統中心のもの、公設のもの、民間のもの、それからと畜だけやるもの、と畜とカットもやるもの、と畜とカットを別のところでやる併設型など、様々なパターンのものがありますが、いずれにしてもこの課題に記載してありますとおり、築30年以上の施設が全体の半分近くの77か所あるという状況です。現在、資材費や人件費の高騰で事業費が高騰していますが、浄化槽や様々な冷蔵施設などをも老朽化が進んできております。
一方で、二つ目の丸にも記載している通り、食肉処理施設の収入源は主にと畜料や加工料であり、と畜場の収益単体で見ますと、主に施設の減価償却費を差し引いて収益を上げなければならない中で、施設を維持していくためには、頭数の確保が見込めるかどうか。さらには枝肉で流通するよりは、部分肉での流通が一般的だと思いますので、技術が必要な食肉カットの人材を確保できるかどうかで、施設の稼働率が決まってきます。施設の安定運営を考えると、こうした稼働率というのは重要な要素になってきますので、老朽化対策などの施設整備を考える際には事業領域を広げる必要性だったり、隣県と協力してできることがないか、あるいは、隣に民間のカット施設がある場合に、協力できることはないかなど、幅広い選択肢で考えていく必要があるだろうと考えております。
その上で、中長期ビジョンについて見ていただきますと、老朽化が課題になっておりますが、現在の国の補助事業では、再編整備をする場合、あるいは輸出対応型としての施設整備を進めてきております。県域を越えた整備はかなりハードルも高いことから、こういったものに取り組もうする県が出てきたときに、どのように後押しできるかというのは一つの課題になっております。
それから同時に、県によっては再編等が進んでいる地域もあるかと思いますが、実際に稼働率が高く、処理頭数もそれなりに多い施設は安定的な運営が見込めるだろうと思いますので、そういった中核施設の整備を計画的に実施していくことが重要になってくるかと思います。
繰り返しになりますが、事業費が急騰する中で、現場や自治体からの支援を求める声も大きくなっているのが現状です。入荷する頭数、取扱い頭数の確保という意味では、地域の生産基盤や、ブランド化を中長期的にどのように推進するかという点と密接に関連している話だと考えております。そういう意味で、各自治体のリーダーシップの発揮が必要な局面も出てくるだろうと思います。各地で特徴も異なる中で、地域の実情にあった整備をどのように進めるかというのも現場から求められていると考えております。
続きまして65ページを御覧ください。家畜市場の現状及び課題についてです。こちらについても、平成14年には160ほどあった市場数が足元では120弱まで減少してきております。農協の合併等も進む中で、再編については落ち着いた状況になっているかと思いますが、市場は、一定規模での取引数や開催頻度などによって購買者の集まりやすさが大きく変わってきます。引き続きこういった家畜市場の再編整備を進めていく必要があるだろうと考えております。
66ページには家畜市場再編の具体事例を掲げさせていただいております。
その上で67ページを御覧ください。ここまでの論点でございます。食肉処理施設は食肉供給の重要なインフラ施設ですが、労働力不足、施設の老朽化、稼働率の低下等が課題となっております。また、家畜市場につきましては、特に中山間地域や離島など、条件不利地域では購買者が集まりにくいような状況で、価格が競り上がらないような状況になっております。
これを踏まえて、食肉処理施設については老朽化、稼働率の低下等に対応するため、今後の集荷、販売の展望、施設の経営安定といった観点を踏まえて再編・整備、それから省力化、高度化の推進が必要ではないかと考えております。また、家畜市場につきましては、競りの活性化を図るためにも再編・整備の推進が必要であると考えております。
以上が、私からの説明になります。ありがとうございました。
 

小針部会長
それでは、これより審議を行いますが、今回は議論をある程度整理して行う観点から、生産サイドの論点、今御説明があった資料の1から3と、あと流通、消費サイドの論点、今の資料の4から6の二つに分けて議論を進めていきたいと考えております。
委員の皆様におかれましては、前半か後半、又は両方でも構いませんので、挙手いただき、簡潔に御意見を頂ければと思います。なお、丸橋委員と宮島委員は途中退席されると伺っておりますので、お二人には始めにまとめて御意見を頂いて、事務局から回答いただきたいと思います。
まず、丸橋委員から御意見よろしくお願いします。



丸橋委員
聞こえますか。
 

小針部会長
はい、聞こえております。
 

丸橋委員
まずは肉用牛・食肉政策に関わる広範な内容について、6つの項目別に大きな傾向と課題を視覚的にも分かりやすい資料にしていただいた事務局に感謝いたします。
本日は3点についてお話ししたいと思います。
一つ目は、和牛肉のA5偏重についての対策です。消費者ニーズと提供される牛肉の関係について、資料3の45ページで分かりやすく説明されていますが、A5にも様々な部位があるので、特にロイン系の高級部位を追求する消費者は嗜好の変化もあり、減少傾向にあるのではないかという疑問があります。46ページにあるとおり、和牛肉の6割以上はA5であるという実態は、生産者にとっても差別化が図りにくくなっているのではないかと考えます。
我々食肉卸売市場を運営する立場からは、単価の高い枝肉の取引は経営上、大変好ましいものではありますが、消費者は手頃な価格を好みますので、将来にわたる牛肉の国内消費の安定確保は自給率維持と消費拡大の観点から中長期的に考えるべき課題であると思います。秋のこの時期、全国の食肉卸売市場では毎週のように共進会、共励会の名称で高級牛肉のセリが行われています。生産者は大きな枝肉になるサシの良く入った和牛生産を目指しますし、流通業者であるセリの参加者も「きめ」、「しまり」と合わせてサシの入り具合や枝肉の体形などを見て気に入った牛肉に高い値段を付けます。これが現状でございます。この現状を方向転換するための対策が、(ア)生産者に対する「早期出荷」の推奨と(イ)消費者に「おいしさ」を求める理解を進めるとのことですが、生産・流通関係者の理解が進まなければ方向転換は難しいように思います。この辺りの議論が必要になると思っております。
2つ目は、食肉処理施設の整備についてです。食肉・流通構造は62ページに整理されているとおり、昭和、平成、令和と消費地での部分肉処理から産地での部分肉や小割加工に移行しています。ただし、その中で牛肉の価格形成は依然として食肉卸売市場におけるセリに負うところが大きいことに留意することが必要だと考えております。卸売市場では、と畜、部分肉解体を実施していますが、施設が手狭になり、老朽化している事情は変わりません。食肉処理施設のグランドデザインを検討する際、価格形成の機能を持つ卸売市場についても留意していただければと考えております。
また、施設整備関連では輸出振興の観点での取組がありますが、食肉卸売市場、特に中央卸売市場は地方自治体が開設者ですので、その理解を得て設備することとなります。国策として進めていることについて関係自治体の理解醸成のサポートを是非お願いしたいと思っております。
3つ目は、牛の皮、原皮の将来の展望についてです。牛の原皮の生産者販売価格は平成では1頭1,000円を超えていましたが、令和2年9月以降、4年間にわたり1頭10円のままです。大きな金額ではありませんが、生産者の収入が小さくなっている要因の一つです。原皮の需要緩和は世界的な傾向とも聞きます。産業廃棄物にしたくありませんが、中長期的な観点でのケーススタディをしておく必要があると思います。
以上で私からの質問です。
 

小針部会長
ありがとうございました。
それでは、宮島委員、お願いします。
 

宮島委員
日本テレビの宮島です。よろしくお願いします。
私は畜産業そのものにとても精通しているわけではありませんので、一般的な見方、ほかの業界と比べての見方、あるいは、消費者の見方というような形で御意見を申し上げたいと思います。
まず、大変重厚な資料をありがとうございました。やはり、輸出も含めてですが需要に応じた生産、需要を精緻に見た上での生産。それから、スマート化、機械化、効率化、大規模化などによる全体的なコストコントロール。そして、早期出荷も含めた個々のコスト対応等の課題については恐らく皆様も共通に認識されており、努力をされているかと思います。
私が一番気になっているのは、やはり担い手不足のところです。これは今、日本における人口減少が極めて激しい中で、担い手不足というのはほぼ全ての産業が抱えている問題であると思います。一部の農業のように、都市部のサラリーマンがリタイアした後に兼業のような形で従事する分野もあるとは思いますが、畜産はそれよりは、がっつりと取り組む必要があるのではないかと理解しております。そうしますと、いわゆるリタイア世代ではなく、若い人たちを担い手として引き付けるということが非常に重要なのではないかと思います。
先ほどの資料で大分の例がありましたが、まずはこのような良い事例というのは広く横展開していただければと思います。
さらに言いますと、今示された事例では、もともと希望してそのエリアに関心がある人に対して経験を積んでもらって、引き付けるということだと思いますが、そもそも今、若年層の人口が都市部に次々と流れてしまっている問題がありますし、子供たちの生まれる場所も、どんどん都市部に偏ってきていると思います。だとすると、都市部にいる若者も含めてまずは関心を引き付けて、来てもらうというような努力が必要だと思います。都市部で生まれた子供たちは農業や畜産業を身近な職業ではないと思っていて、最初から就職先の選択肢から外してしまっている状況です。都会のサラリーマンになることと大差なく、農業や畜産業も将来の選択肢の一つとして、身近な職業に感じてもらえるような様々なシステムにおける環境を作っていただき、そしてそれを広めていただくことも、もう一歩魅力を伝えるという意味で必要なのではないかと思います。
それから、今度は消費者としての発言となります。私や私の周りは比較的牛肉を食べる方だと思いますが、多分関係の方々はびっくりしてしまうほどその品質について知りません。つまり何となく、もちろん和牛であるかどうかだったり、どの部位かは分かりますが、今、議論されているような様々な御努力というのは必ずしも理解しておりません。日常において、今日は肉を食べたいけど、別に安いお肉でいいよねというふうに食べるときと、お正月とかクリスマスに、よし、今日は頑張っていいお肉を食べようというようなときがあると思います。しかし、それぞれの選択肢についてそんなにしっかりとした情報を持っているわけではなく、特にハレの日に選ぶときには、単にブランドの名前があるかとか、何となく高くておいしそうかとか、どこで売っているか、みたいなレベルでしか判断をしておらず、実はしっかりと食べ比べてみてとか、その品質を知った上で選択している人は少ないのではないかと思います。せっかくこれだけいろいろな努力をされているわけですから、個々の需要というのもそうですし、それぞれの人がどのタイミングでどのような肉を食べたいのかということに対して、しっかり品質を理解した上で、選択できるようになれば、多様な肉種が売れていくのではないかと思います。
また、大学生がお肉を食べるイベントを見たことがありますが、良いお肉を食べる機会がない人たちはたくさんいると思うので、いろいろな局面でそうした機会を増やしていただけるといいかなと思います。
以上です。



小針部会長
ありがとうございます。
頂いた御意見に対して事務方から御回答をお願いします。
 

伊藤食肉鶏卵課長
それでは、私の方から丸橋委員、それから宮島委員の消費者の視点からの御意見に対して回答させていただきます。
まず、丸橋委員からございました早期出荷の推奨と消費者においしさの理解を進めるということについてです。関係者の理解が進まなければ方向転換は難しいという点について、そのとおりだと思っております。多様な消費者ニーズへの対応の一つとして、早期出荷牛肉を今回提案させていただいておりますが、これについても先ほど申し上げましたとおり、生産、流通に携わる関係者の間で合意形成が図られているかというと、まだまだ図られていないと思っております。特に先ほど御紹介しましたとおり、慣行肥育と比べると肉質が劣るおそれがあるのではないかとか、そういった御意見があるのも承知しております。そこでまず、今年度予算でも実施しておりますが、肥育期間の短縮、出荷月齢の早期化、こういったことに向けた実証支援や、成分検査、官能検査等の品質評価の支援、こういうことを行っております。しかし、これらを進めるにあたり何よりも重要なのは関係者の理解醸成を図っていくことかと思いますので、国としてもそういったところに力を入れて取り組んでいきたいと思っております。
それから、2点目の食肉処理施設でございます。当然卸売市場でも、と畜が行われており、大変重要な施設だと我々も考えております。先ほどお話にもありましたとおり、現在国でこの食肉処理施設の整備をするに当たって支援している事業といたしましては、再編合理化を行う場合に必要な施設の整備、あるいは、輸出拡大に必要な施設の整備、こういったものに対して重点的・計画的に支援を行っております。また、卸売市場につきましては、一定の要件を満たすものについては「強い農業づくり総合支援交付金」の活用も可能で、実際にこれを利用してセリ場や浄化槽の整備を実施しているところも現在ございますので、こういった実績なども踏まえながら、これらの事業を活用して総合的に対応していきたいと思っております。
また、食肉処理施設については関係自治体の理解醸成へのサポートをお願いしたいという御意見があったかと思います。先ほども少し御説明させていただきましたが、施設の収入源は、と畜料、加工料に限られます。その後整備すると、減価償却費が発生します。現在、資材費や人件費が高騰して事業費が急騰しているような状況でありますので、その後のランニングコストというのを考えますと、減価償却費の負担をなるべく軽くしてほしいという声が現場にあり、国だけでなく関係自治体からの支援もお願いしたいという事業者の声を我々も聞いているところです。
食肉処理施設はもちろん食肉を処理するというところでもありますが、その施設を核としてブランド牛を出荷しているところもあったり、あるいは、製品を運べる距離にも限界がございます。食肉処理施設の整備は、地域の生産基盤やブランド化を中長期的にどう推進していくかという点と密接に関連すると我々も考えておりますので、施設整備の検討に当たっては、各自治体においてリーダーシップを発揮していただくべきものと考えておりまして、事業者と一体となって地域の実情に合わせた整備を進めていくことが重要だと考えております。
それから、最後に原皮の将来展望についてのお話がございました。こちらの方ですけれども、国内で生産される原皮、これがどこに出荷されているかということについてですが、牛については約半数、それから豚についてはほぼ全量が輸出されております。しかし、合成皮革の性能が大分向上してきて、自動車の皮張りシートを始めとし、国際的に動物由来の皮革を避ける傾向も見え始めているところです。それらが影響して、原皮の国際相場の低迷につながっていると思います。
御意見の中でありましたケーススタディの件でございますが、コロナで一時原皮価格が低迷したとき、令和2年度補正事業におきまして、原皮事業者の経営の多角化を図る必要があるだろうということで、産業廃棄物処理業への進出、要は産業廃棄物処理業の許可、こういったものへの支援を行いました。事業者の中でもそういった免許、許可を取られた方もいたと承知しております。いずれにしましても、原皮というものは、食肉生産の過程で出る副産物を有効利用しているものであり、ある意味サステナブルな天然素材であります。現在、皮革を所管している経済産業省とも連携しながら、消費者にも訴え掛けしているところでありますので、こういった取組を引き続き進めていきたいと思っております。
それから、宮島委員からありました消費者の視点ということでございます。消費者はそこまで牛肉の品質とか細かいことを知らないよねという御意見につきまして、確かにそうかなと思いながらお伺いしておりましたが、資料3の45ページにありますとおり、牛肉については正に様々な部位によっても違うし、等級が1等から5等まである中で、さらに脂肪交雑もBMSが12まであるという状況で、大分ある、こういったような状況であります。それで、何が起きているかと、物価高の中で、より割安なものを求めて和牛よりは輸入牛肉、輸入牛肉よりは豚肉、豚肉より鶏肉というのがこの上半期の動きとしてあったわけです。牛肉だけ見ると、赤身肉の低コストの部分であれば輸入牛肉、それから乳用種やF1がある中で、和牛についてはお値段も少し高くてハイエンドであることから、先ほど御意見の中でもありましたとおり、ハレの日に食べる方が多いのではないかと思います。資料の初めの方で御説明しましたが、牛肉の1人当たりの消費量は全体で6.1キログラムで、そのうち和牛は大体2割ぐらいなので、年間の消費量は、あくまで試算値にはなりますが、1キロ少しと思っております。年に何回か食べられる和牛を含め、牛肉全体について、もっと消費者の方に御理解を頂けるよう、それぞれの品質や、特質などを生産者、流通事業者など、関係者一体となっていろいろと促していくことが、今後の牛肉生産を安定的にやっていくためにも必要だと考えています。
今この瞬間、何ができるのかについてはなかなか申し上げることは難しいのですが、少なくとも今回の説明における一番のポイントは、関係者の理解醸成であると思っておりますので、今後、我々そういうところにも注力していければと思います。
 

廣岡企画課長
宮島委員の方から担い手のことでお話がありました。確かに畜産業は毎日の家畜の飼養管理がございますので、なかなか兼業で取り組むことが難しい分野ではございます。その中で委員の方から、都市部の若い方々にも農業が遠いものではなくて、一つの選択肢になり得るような環境づくりが重要じゃないかというお話がありました。そのとおりだと思います。人手不足が全業種に及ぶ中でなかなか難しいところはありますが、例えば、資料の35ページにもありますとおり、畜産関係のヘルパーさんであるとか、あるいは、コントラクターといいまして外部の組織、飼料生産を作る組織への従事というものを足掛かりにするだとか、あるいは、酪農を始めるための学校のようなものも団体が作っております。これらを足掛かりにしながら、また、ほかの可能性がないかどうかについても考えていきたいと思います。
 

小針部会長
ありがとうございます。
それでは、ここから前半、後半と分けて議論したいと思います。
まずは、生産サイドの論点ということで、大項目の1から3、需給動向、生産基盤、経営動向が該当しますけれども、こちらについて御意見ございます方は挙手にてお願いします。
大山委員、お願いします。
 

大山委員
神戸大学の大山です。よろしくお願いします。
まず、膨大な資料を作成いただいて御説明いただいたことにまず感謝申し上げたいと思います。大変な作業だったと思います。
今日御説明いただいた中で、やはり牛肉の生産についても、人口が減少段階に入っている中で、また、コロナのような緊急事態も経験した中では、今までのように何が何でも増頭増産というばかりでは駄目なんだろうなと思います。やはり需要というのを的確に把握した上で牛肉生産というのを考えていく必要があるというのはおっしゃるとおりなのかなと、まず同意させていただきたいと思います。
ただ、私は、和牛に関しての立場でお話したいと思いますが、まだまだ世界に目を向ければマーケットがあるというのも間違いないことですので、その辺り、規模もあるわけですから、後半の方で少し御紹介いただいたようないわゆる二国間の交渉等については是非御尽力いただければと思っています。もう一方で、我々が普段食べるものとしての牛肉をどう位置付けていけるのかについて、もう少し長いスパンでは考えていくべきだろうなと思っています。
先ほどからの御議論にもありましたが、食べている量が1.数キロというような状況の中で、やはりハレの日の食材でとどまっていてはいけないのかなと思います。先ほどから申し上げたように、輸出や輸入を否定するわけではありませんが、国内が一番重要な顧客であるということを常に念頭に置きながら、もう少し日常的に我々が口にできるような食材として位置付けるにはどうすればいいのかということを考えていく必要があると思います。また、今後起きてはいけないことですが、新たな大きな感染症であったり、あるいは、家畜の伝染病であったり、そういうことが起きたときにどうなるかというのは、この数年の間に我々が学んだ一つの教訓だったのではないかなと思っているところです。
そういうことを考える中で、どういうことをポイントとして押さえておくべきなのか少し考えたときに私が思ったのは、昨今の和牛の改良の成果と、それと同時に起きている枝肉価格の低下、軟調な相場などがキーポイントになるのではないかなと思っているところです。というのは、和牛と、一口に言っていますが、98%は黒毛和種です。この数十年、霜降りを高めるための改良に重心を置いてきたというのも皆さんよく御承知のことであり、成果としても5等級が6割を超えるような状況ですが、このような関係者の努力とは裏腹に、皮肉なことに枝肉価格は低下している傾向にあります。何のために改良してきたのか、この状況には非常に憂慮しているところです。
これまでヒアリングいただいた方の中にも、やはりサシが強過ぎる牛肉は売りにくいというような御意見は何度か言われていたことだったと思いますし、その状況の中で一つの解決策として考えられるのは、今日御紹介いただいた短期肥育や早期出荷がポイントだと思っています。早期化を進める中で、これまで行ってきた改良というのがおそらく生きてくると思います。早く出荷することでサシのコントロールも十分できてきますし、5等級ではない牛肉の生産にもつながっていくのかなと思います。消費者にアピールしていくには、やはり消費者がそれぞれの実情に応じて取捨選択できるようなバリエーションのある牛肉を生産していくということがおそらく大事だと思いますし、その中では極端な例として言えば、和牛の放牧肥育とか、そういうことを考えてもいいと思いますし、一方で今までどおりA5のBMS12を狙っていく経営や量を求める経営があってもいいと思いますし、自給飼料を使った低コストで収益を上げるという経営もあってもいいと思います。そういうバリエーションを生産の中でも作っていき、その結果としてバリエーションのある牛肉ができてくるというような姿を作っていくことが大事なのではないかなと思っています。産業としては様々な経営の中にばらつきがあると支援しにくいこともあるかと思いますが、今後はそういうばらつきのある経営に対しても幅広くサポートできるような体制を取っていただければ非常に有り難いなと思います。
早期出荷のメリットについてもう一つ加えるとすると、餌についてはもちろんですが、突然死を防げるということもメリットであると思います。特に肥育の後期では、起立困難が起きてくるものです。何が一番もったいないかと言うと、健康な牛が突然死んでしまうということですよね。現在、素牛価格が安くなったとはいえ、それなりの価格がしますので、突然死により健康な牛を失ってしまう確率を一定程度下げられるという意味でも、早期出荷の技術というのはどんどん進めていっていただきたいなと思います。
先ほどから申し上げておりますが、何が何でも全てを早期出荷に向けるという必要はないと思います。やはり短縮すると、漠然とした言い方にはなりますが、いわゆる質の低下、かなり漠然とした言い方ですけれども、質の低下は多分平均的には起きると思います。ただ、そうはいっても個体ごとに見ると質の低下が見られない牛も当然いるわけなので、その辺りは研究をしていく必要があると思いますし、結果として消費者が求めるものになっていれば、先ほどから話に出ている合意形成も図れるのかなと思います。是非、このお示しいただいた短期肥育や早期出荷についても、しっかり後押しをお願いしたいと思います。
以上です。


小針部会長
小椋委員、お願いします。
 

小椋委員
小椋です。よろしくお願いします。
先ほどの資料の中で短期的な政策、中期的な政策についての説明がありました。今の現状を踏まえた短期的な政策、様々な牛肉の消費拡大、また、繁殖、素牛の事業等が取り進められておりますが、やはり短期的なものと次期酪肉近に向けた中長期的な方針をしっかりと住み分けをして取り進めなければならないと思います。
その中で短期的な面に関しては、やはり様々な御意見が出ておりますが、特に和牛肉単価の低迷によって、和牛飼育、また、肉牛肥育の生産者の皆様の経営が非常に圧迫しています。この価格を何とか取り戻すためには消費面での取組が必要であります。いかに消費を拡大していくかという短期的な面と、現行の酪肉近の生産数量目標は40万tでありますが、これは中国の輸出拡大も含まれている目標の生産であり、いかに中国を含めた諸外国に向けた輸出拡大の絵を描いていくかというところが、次期酪肉近における国内生産量の数字になろうかと思いますので、ここをきちんと協議をして数字を含めた明確な方向性を出していただきたいと思います。
また、早期出荷に対しての様々な提案、議論が出ておりますが、現状の30か月齢の肥育ですが、これを早期肥育・出荷月齢を24、26カ月にするには、中間業者ですね、肉屋さんの理解を得られないと、幾ら農水省として早期出荷の号令を掛けても価格に反映されませんので、ここは十分な論議が必要であると思います。また、お肉屋さんが理解をしていただかないと、早期出荷をすれば、コストは下がったとしても、枝肉価格がそれ以上に下がってしまう可能性がありますので、ここについても十分な議論が必要だと思います。簡単には答えが出ないのかなと思いますが、この早期出荷については今後も考えていかなければならないですし、現在早期出荷を取り進めている肥育農家の方もおりますので、農水省が旗振り役となって十分な協議をしていただき、肉屋さん、中間業者さんに理解をしていただいた上で、消費者の皆さんにも理解をしていただきたいなと思います。
それともう一点、特に和牛肉の差別化についてです。4等級、5等級という差別化がありましたが、今は上物が高くなってきて差別化がなかなかできていない現状であります。そこで資料でもありましたが、オレイン酸の含有量による肉のうまみに対するこの取組が今、差別化の一つなのかなと思います。現状取り組んでいるところもありますし、この差別化をいかに拡大していき、消費者の皆さんに脂っこい肉ではなく食べ頃のお肉だという、そういう商品のPRを取り進めていかないと、国内における消費が一向に上回かないのかなと思いますので、是非この部分も含めて農水省が旗振り役となっていただき、取り進めていただきたいと切にお願いを申し上げます。
以上です。

 
小針部会長
事務方から御回答をお願いします。
 

伊藤食肉鶏卵課長
それでは、大山委員からまず1点目です。和牛の需要に応じた生産、これを基本としつつも、国内需要もハレの日だけでなく、機会を捉えていろいろと国内需要を開拓していくでありますとか、輸出をしていくといったことが必要であろうということについて、そのとおりだと思います。和牛については、需給が緩和する中で、消費の出口を作っていくという視点から見ても、国内消費、輸出ともに重要な視点だと思っております。現実的に次期酪肉近でどのような目標を出していくのかというのは、国内の人口も減少していく中で、輸出のバランスを見ながら、今後よく検討していきたいと思っております。
それから、和牛生産の在り方ですが、早期出荷だけで進めるというわけではなくて、今回の議論におけるポイントは多様性だと思っておりまして、様々な消費者の方のニーズがすごく多様化してきていると感じています。そういう中で、消費者の方の多様なニーズに応えていくようにするということがすごく大切だと思っておりますので、よく関係者の声を聞きながら、そして、理解醸成を図りながら進めていきたいなと思っております。
それから、小椋委員からありました短期的な視点と中期的な方針、これらの住み分けをした上で取りまとめをしていかなければいけないというお話は、御意見を踏まえて今後検討していきたいと思います。
それから、短期的な視点では、和牛肉の枝肉単価が低迷し、生産者の経営が逼迫する中で出口である消費拡大をどのように図っていくかというのはとても大切です。この資料の後ろの方にも付けさせていただいておりますが、昨年度の補正では、50億円の、和牛肉の需要拡大対策事業を措置させていただいております。どうしても現在の物価高の中でなかなか小売の方でも値段が上げられないような状況があります。卸価格を下げると、最後には枝肉価格に影響が出てしまいます。その結果、やはり間の流通のところで滞留が起き、サプライチェーン全体が苦しくなってしまうような状況がありますので、しっかりと出口を作っていく、こういった対策を引き続き検討していきたいと思います。また、次期酪肉近の目標につきましては、今回資料でお示しはしていませんが、今後よく検討していきたいと思っております。需要に応じた生産を基本としつつ、国内の人口減少、そして、一方で拡大する海外市場、そういうものを見据えながら、どういった目標が適切なのか、これらをよく踏まえて検討していきたいと思っております。
それから肉用牛の早期出荷について、国が旗を振るだけでは進まない側面があります。民間の方は経済活動でやられていますので、間で取り扱っておられる食肉の卸、流通業者の方の御理解というのも必要です。今回の資料の中でも御説明させていただきましたとおり、様々な立場の方がそれぞれ様々な意見を持っていらっしゃいます。やはり肥育期間を延ばせば延ばすほど食べやすい、味があるとおっしゃる方もいる一方で、短期肥育はむしろ脂肪交雑があっさりしていて良いという方もいらっしゃいまして、ある意味評価が定まっていないと思います。先ほど御紹介させていただいた事業なども活用しながら、まず科学的データをきちんと押さえた上で、その先のプロセスとして流通業者の方、生産現場の方、それから消費者の方からこれなら売れるぞと思ってもらえるものでなければ踏み込めないということだと思いますので、生産現場、流通事業者、関係者の理解を図っていくためにはどうしたらいいのか、どういうふうに進めたらいいのか、そういったようなことを考えていきたいと思っております。
それから、和牛肉の脂肪交雑の強みを基本としつつも、その上で差別化を図るものとしてのオレイン酸というのを今回、資料の方に掲げさせていただきました。現在地域での取組も進んできております。食味に関連するオレイン酸の向上に向けては、オレイン酸の測定データを収集する取組などを現在支援しております。測定器を導入する際の支援でありますとか、あと主要な市場には、オレイン酸の測定器があり、料金を払っていただければ測定できます。また、資料にありますとおり、長野県、鳥取県などの地域でブランド化の取組が出てきております。あとは全国の和牛の共進会でも新たにオレイン酸の含有量等を評価する脂肪の質評価群、これが設けられるなど、少しずつではありますが、こういった取組が出てきておりますので、それも踏まえながら、関係者の理解醸成を国としても進めていきたいと思っております。

 

小針部会長
大山委員、お願いします。
 

大山委員
ありがとうございました。
短期肥育についてですが、やはりバリエーションを作るというのは私も申し上げたとおり大事なことだと思いますが、例えばある肥育農家を考えたときに、その肥育農家で飼養している全ての牛を短期肥育しなくてもいいと思います。これは、ある程度経営のリスク分散のような形で、少しずつやっていくというのも一つの考え方なので、生産者が経営の方針をガラっと変えるような大きな決断を迫るようなことからスタートしなくてもいいのかなというのは議論を聞いていて思いました。ただ、全体的な産業の持続性という意味では、やはり短期的に肥育して仕上げていくという方向にもっていくのは、全体としてはおそらく必要だろうというところで、補足させていただきます。


小針部会長
畜産振興課長、お願いします。
 

冨澤畜産振興課長
畜産振興課長の冨澤でございます。
大山委員からお話ありましたとおり、早期肥育については、肉質面の評価の違いも確かにあるところです。飼養管理については、やはり子牛の早い段階から早期肥育に対応することで出荷月齢を早くしたり、肥育でも適正な餌の管理で進めたりすることが重要です。先ほど紹介にありましたとおり、現在、短期肥育・早期肥育に取り組むモデル的な事業をさせていただいており、その中で、飼養管理の面においてもいろいろな課題が出てくると思いますので、その課題を解決しながら早期出荷の取組を進めていきたいと思います。
また、早期出荷された牛肉について、資料にもありましたとおり、流通側からの評価に当たっては科学的なデータが必要であることから、食肉鶏卵課の事業と連携して、実際の成分検査を行い、一般的な肥育とどのような違いがあるのか、違いがないのかということを明らかにしていって、早期出荷された牛肉であっても使いやすいというようなことを御理解いただくのが一つ重要かと思います。
また、放牧肥育や自給飼料多給型の牛肉生産について、飼養管理の面では放牧の支援に係る事業がいろいろとございまして、ICTを使った放牧管理も含めていろいろできますので、そういった面からのアプローチもあると思います。また、現在事業があるわけではないのですが、放牧の牛肉がどういったものなのかということについて今後調べていくのも一つ方策かなと思いますので、いろいろな在り方を検討して、多様な牛肉生産を支援していくことが必要ではないかと考えております。
小椋委員からは、今は上物率が高まっているため、オレイン酸等が一つの売り込みの指標になるのではないかという御意見をいただいております。サシやオレイン酸の問題については、家畜改良も一つの要素であり、家畜改良増殖目標の検討の中でもいろいろお話が出ております。その中でも、サシの改良をどうしていくのかということもございますし、オレイン酸を評価の一つとして家畜改良の中でどう取り組んでいくのかということもございますので、本日の御意見も踏まえつつ、研究会でも委員の皆様に御議論いただきながら検討させていただきます。
以上でございます。
 

小針部会長
ありがとうございました。
ここで1回休憩に入りますので、休憩後、椛木委員からお願いします。
一旦ここで5分休憩を取りまして、2時51分から再開をしたいと思いますのでよろしくお願いします。
 

午後2時46分休憩
 

午後2時51分再開
 

小針部会長
それでは、審議を再開いたします。
先ほど申し上げたとおり、前半は生産や経営動向についてご議論いただきたいということでしたが、需給動向という話が入っているのと、どうしても両方にかぶるところが出てくると思うので、お話の中で切り分けられない部分については余り気にせずにお話しいただいて構いません。ただ、議論は基本、前半は生産、後半に流通・消費、あとそこに輸出が入るので、輸出のことに特化して御意見がある場合は後半の方で御意見を頂ければと思います。
それでは、椛木委員、お願いします。


椛木委員
私は北海道で酪農家をしておりますが、同じ牛でも正直肉牛農家さんのことを知らないところもあるので、もしかしたら見当違いなことを言うかもしれませんが、そのときはすみません。
子牛価格が以前よりもすごく変動しているなと感じています。乳牛やF1であれば今は本当に値段がつくかどうかというところまで価格が下がっており、うちの場合は1週間から10日で出してしまいますが、それぐらいの月齢まで育ってしまうと、値段がつかない牛も中にはいるような状況です。私たち酪農家にとっては副産物の一つにはなっていますが、ここまで値段の低い時期が続くのも少し大変だなというか、つらいなと思います。
そして、以前和牛受精卵を導入するに当たって補助金が出ていましたが、それをきっかけに和牛受精卵で分娩させるという酪農家さんが周りでもすごく増えていて、助成金がなくなった後も和牛子牛を産ませた方が収入を得られるという理由で続けている農家さんは多いのではないかなという印象を受けています。
先ほど大山委員から早期出荷すると事故率が減るという話があったと思いますが、素牛で8か月齢から9か月齢ぐらいで牛を買ってきて、そこから26か月齢まで肥育するのと、30か月齢まで肥育するので事故率がどのぐらい違うのかなというのが個人的にとても気になりました。
また、早期出荷についても家畜改良などで何とかならないのかなとか、早めに熟すというのか分かりませんが、そういう形で種牛の改良はできないのかなと個人的に思いました。現在、種牛がかなり一本化されているというか、人気なものとそうでないものの差が激しいのではないかなと感じております。先ほどの説明でもありましたが、早期出荷もできるような種牛が出てきたら、農家さんの中でも使う種牛の範囲が広がったりするのかなと個人的に思いました。やはり私みたいに乳牛を飼っている人からすると、近交係数の高さも本当に大丈夫なのかなと気になるところであります。
あと、これも本当に見当違いなことかもしれないのですが、これだけ優れたお肉、優れた血統で飼われた牛の肉が高く評価されていることが多いので、そういった血筋の例えば精液や受精卵などを輸出するといった話にはならないのかなと少し気になりました。
以上です。


小針部会長
ありがとうございます。
井上委員、お願いします。
 

井上委員
井上です。よろしくお願いします。
私は、北海道で和牛の生産を行っています。生産者としての意見を述べさせていただきます。
先ほどから議論されているように、早期肥育や放牧など生産方法というのは様々な形があっていいんじゃないかなと思います。その中で、赤身志向への対応ができていないという御意見もありました。サシを重視し過ぎているのではないかという御意見もありました。これについては和牛のコストを下げるための努力だと思いますが、もともと和牛は高いコストの中で生まれてくる動物ですよね。例えば鶏だと卵から産まれる、豚だと年に二十数頭子供を産む、一方で、和牛は1年に1頭しか子供を産みません。ですから、生まれたときから大きな経費がかかって産まれてくる。それを肥育していくので大きなコストがかかります。
サシを重視しないで赤身にしたらどうなるか。今の状況でコストは大きく変わらず、同じようなコストがかかってくると思います。若干安くなる程度です。その中で5等級の上物がコロナ禍でも高く売れている。やはり市場が消費に対して価格をつける、そういうものだと思います。今はその市場がA5等級12番に高い価格をつけてくれていることに対して、私は、市場がこれを求めているんだなと、そう判断しています。
その中で和牛の改良についてですが、基本的に私は今のままの改良、つまりサシ重視の改良でいいと思っています。確かにロイン系はもうこれ以上サシは要らないという話も聞きますが、和牛はロイン系以外のももやお尻、腕にもサシが入ってきて、様々な部位で様々な使い方ができるということが大きな特徴であり、これもサシを重視して改良した結果だと思います。
それから、農水省は何年も前から推奨してくれていますが、市場は国内だけでなくて海外も和牛の大きなマーケットになってくると思います。海外の牛肉というのは全て、赤身の改良を過去長い年月をかけてやってきた牛だと思います。その中でサシという特殊な改良をしてきたのは和牛だけですよね。海外がある程度のマーケットになってきた中で、赤身を重視して改良してきた海外のお肉と同じ土俵で戦う必要はないと思います。私は、今の和牛の特徴を前面に出して、海外展開した方がいいと思います。もう一つ、和牛のサシの改良の結果、交雑牛の成績がとてもよくなっています。
ただ、その中でこれまでの和牛の改良の欠点として、和牛が家畜として非常に飼いづらくなっていることがあります。生産現場として痛切に思いますが、弱く強健性がない。例えば私の牧場では毎月和牛、交雑牛とも300頭ほど初生を導入しますが、初生から素牛までの事故率は交雑牛の2.5倍あります。本当に強健性のない弱い和牛になってきているなと思います。あと、子育てができない和牛や受胎の悪い和牛もいます。これからの和牛の改良は、肉質の改良は今のままの形を取って、あとは家畜として飼いやすい方向の改良、群飼になりやすいとか強健性の問題など、様々な項目を挙げて改良していく。それが最終的にコストダウンにもつながるのではないかと思っています。家畜としての飼いやすさも改良目標にこれから設けてほしいなと思っています。
以上です。


小針部会長
ありがとうございました。
小山委員、お願いします。
 

小山委員
繁殖農家の小山です。
私は山間地に住んでおりますので、現状、自給飼料を増やすために効率の悪い農地にも繁殖牛を放牧させ、草を食べさせています。慣れた牛であれば自宅から離れたところも苦にせず農地を生かしながら、牛を生かしながら、水田と和牛の耕畜連携可能なところで地域計画を上手につなげたいと思いながら、牛を飼っています。
ただ、減反田で春から放牧したいと思っても、1番草は刈れとか毎年種をまかなくてはいけないという決まり事が多過ぎて、電柵を取り外したり、草を刈ろうと思うと線をモアに絡めてしまったりと様々なリスクがあるというのも悩みの種です。
あと、まだ少し足りないかなとも思いますが、今、農業後継者には就農資金も結構出ているので、私の地域でも羊を飼いたいとヘルパーになって地元に移住してきたり畜産を目指して羊から入ってきた方が2人くらいいるんですね。それで、牧草地での放牧の風景を思い浮かべると、やはり牛とか生き物を飼ってみたいという入り口になるのかなと思っています。実は私も高校1年生のときに1頭の雌牛、酪農の雌牛を飼い始めて、現在に至ります。畜産を始める入り口として放牧はとてもいいのではないかなと思いますし、大変ではありますが、もう少し自給飼料を増やして、頑張っていかないとなと思います。
あとは同じ格付でも粗ザシ、小ザシで脂の含有量が随分と違い驚きました。これは肉のおいしさに違いはないのかと疑問に思いました。オレイン酸の話も先ほどから出ていますが、短時間で検査できるのであれば、数値化して肉に生産者履歴と一緒に表示できれば牛肉の価値にも変化があるのではと思います。とにかく今まで霜降りの和牛、このために改良を進めてきたのですから、生産者にとってもこれからまた急に変えられても困りますので、このまま進めていってほしいなと思います。
以上です。

 
小針部会長ありがとうございます。
羽田委員、お願いします。
 

羽田委員
主に経営に関して、質問を含めてお話させていただきたいと思います。
まず、酪農及び肉牛生産の近代化を図るための基本方針を冒頭のところだけですが、少しだけ見させていただきました。結局どの産業においても、世界的なキーワードはやはり持続可能性だと思います。肉の価格を上げていくということは今の日本にとっても大変必要なことだと思います。経営にとっても必要なことだと思います。先ほどから説明として需要と供給のバランスを見ながら生産量を増やしていくとおっしゃっていましたが、やはり基本的には増やしていく方向という形で受け止めております。そこのところで生産量を増やしていくことの戦略がどうなのかなという疑問が一つあります。
価格を上げていくことで、その業界というのは持続可能性、持続はしていくわけですし、洋服とかほかのものと違って、胃袋に収められる量はやはり決まっています。今後日本の人口が減っていく中で、だったら30%人口が増えるとされている海外への輸出を拡大していく、というところだと思うんですけれども、果たして、ほかの国に牛肉の需要がどれだけあるのかというところを考えていくと、本当に今後生産量を増やしていくことがそもそも正しいどうかというところに私は少し疑問があります。
あと、消費者ニーズについての意見は後ほどとのことですが、経営のところでも、やはり持続可能性ということでSDGsとかESG経営について、主流な考え方をしなければいけないという動きが世の中的にもなっているので、お話しさせていただきます。そこを考えていくと、消費者ニーズを余りにも追い過ぎるというのはいかがなものかなと疑問に思います。やはり人間は欲望に限りがないので、与えられれば与えられるほど「これもできるんだ、あれもしてもらえるんだ」ということでニーズが多様化してきていて、やはりほかの製造業とは違って、そこで、肥育農家さんにそこの負担を背負っていただくことが果たして持続可能性につながるのだろうか、ということは消費者にもカスタマーにも少しその辺りを理解していただいて、多分ありものでも十分満足されているのかなと思います。消費者はお肉について余り分かっていないという話もありましたが、消費者ニーズに応えすぎるのも世界全体のESG、SDGsの観点からいくといかがなものかなと思いました。
あと最後に、生産コストについてです。経営が大規模、小規模でいうと、やはり小規模の方が生産コストはかかってしまうという説明を頂きましたが、それぞれの付加価値率はどんな感じなのかなと疑問に思いました。付加価値を算出できていれば、生産コストがかかっていても別にいいのかなと思いました。付加価値分だけ、利益が出ていれば経営は持続していくわけですので、業界として、経営としてというところで付加価値率はどうなのかなと疑問に思いましたので、もしお分かりになれば教えていただきたいです。
私からは以上です。


小針部会長
ありがとうございます。
ほかに御意見ある方は挙手をお願いします。
では、初めに大山委員に椛木委員から事故率についての御質問がありましたので、御回答できるところがあれば、お願いします。
 
冨澤畜産振興課長
 畜産振興課長の冨澤でございます。

椛木委員から何点か御意見、御質問いただきました。まず肥育期間が長くなると事故率は増えるのかということについてですが、事故率が短期肥育と通常肥育とで、どれだけ違うのかという具体的なデータとしては今手元にありませんが、一般的に肥育期間が長くなると体重が増加することから、例えば脚の問題で事故になってしまったり、起立不能や代謝異常が発生するなど、事故は増える傾向にあると考えております。
また、改良によって早期出荷できそうな種牛を造成していくということについてですが、確かにそういった方法もあるかと思います。ただ、今の改良の中でも、脂肪交雑が高くなるような改良によって、例えば30か月肥育で出荷していた牛よりも脂肪交雑が上がっていたり、増体が良くなっていたりします。その形質というのは例えば24か月とか26か月齢くらいの早期出荷でも、早めに増体がよくなりますし、サシという面でもある程度評価が高くなりますので、改良の方向としては同じなのかなと思います。ただ、本当に早期出荷に向いているのかということになってきますと、やはり今後のデータ蓄積が重要になってくると考えております。
3点目ですが、和牛の近交係数の高さに対しての御心配のお話かと思います。近交係数で言いますと、大体10%弱ぐらいというのが和牛の近交係数ということで、いわゆるいとこ同士よりも高い状況ということになっております。御心配のとおり、やはり遺伝病の発生がしやすくなったり、先ほど井上委員から実際のお話として、交雑種に比べて事故率が高くなるということがございましたが、御心配の点はそのとおりでございます。改良の方向性として、やはり和牛の中でも希少性のある血統というものに着目して、遺伝的な多様性を保っていくことが重要だと思いますので、その辺りについても御議論いただきながら検討していきたいと考えております。
4点目に、和牛の受精卵や精液、いわゆる遺伝資源の輸出についてお話がありました。我が国の和牛というのはやはり貴重な遺伝資源でございます。一部オーストラリアなどでWAGYUというものが作られていまして、我が国の牛肉とライバルになっているところがございますので、やはりこれは国内資源として守りながら、製品としての牛肉を輸出していくことが国内にとって重要であると考えております。
最後に、井上委員から全体の改良としては、今まで通りサシ重視の方向性で進めていき、強健性や受胎率の面で改良を進めていくべきではないかということで御意見いただきましたが、そういった面も併せて、家畜改良増殖目標の検討の中でもこういった御意見があったということを御紹介しつつ、検討を進めていきたいと考えております。
私からは以上となります。


小針部会長
食肉課長、お願いします。


伊藤食肉鶏卵課長
井上委員、小山委員からサシについてご意見いただきました。小山委員はサシについて生産方法を一気に変えられると困るという御指摘を頂きましたし、井上委員からもA5を市場が評価していて、赤身重視の生産をやっても同じようなコストがかかるというような御指摘をいただきました。
流通にも絡む話ですので、私の方からコメントをさせていただきます。まず、本日の資料にもありましたとおり、赤身に対応するものとしてF1や乳用種がありますが、赤身を目指すと、価格競争力という面で和牛肉は負けてしまいます。その上で今のA5の評価についてですが、今回の資料でも強調して書いてありますのは、脂肪交雑の強みは維持しつつも、適度な脂肪交雑の牛肉生産やオレイン酸などに着目した改良を推進していくということです。今市場ではA5とA4価格が逆転しているかというと、そういうことでもありません。諸説ありますが、A5の肉でも、ロイン系は荷動きが鈍い一方、モモは赤身中心で、柔らかく、それなりに荷動きもいいというのも一部聞いております。それはA5だから出せるクオリティーでもあり、同じA5でも部位によって状況が異なるということで、総合的にA5が評価されている側面があると思います。
ただ、本日の資料でも御説明しましたが、格付率で見たときにA5が6割を超えていると、生産者サイドから見たときに希少性という観点で差別化が図りにくくなっているのではないかという御意見もあるので、今後どう進めていくかということについては、脂肪交雑の強みを維持した上で更に消費者の求めるニーズがどこにあるのかというのを見ながら、強みというのを探していく、見つけていくということを今回提案させていただいています。
それから、羽田委員から御指摘が3点ありました。
一つは、今後も生産量を増やしていくという方向性についてお話がありました。今後、次期酪肉近でどのような生産量目標を設定していくか、現時点で定まったものもございません。繰り返しになりますが、需要に応じた生産を基本に考えていくということだと思っております。おっしゃったとおり、国内消費を見たときの人口減少、それから、輸出をどこまで伸ばせるか、そういったことを踏まえながら考えていきたいと思います。
それから、2点目、SDGsとの関係で見たときに際限なく消費者ニーズを求め続けると、持続可能性という観点で大丈夫なのかという御指摘を頂きました。バランスの問題だと思っています。先ほどの繰り返しになりますが、A5の牛肉が全体の中で増えていて、差別化を図りにくくなっている中、各地でオレイン酸に着目した取組をブランド化していくなど、生産現場としても差別化を図り、更なる強みを目指した取組が出てきており、そういったものを後押ししていくということだと思っております。
それから、付加価値率の話がありました。手元のデータで確認できる範囲ですが、所得で見ると100頭の層が付加価値率が最も高く出ており、これはコストが減るからだろうと思っております。子牛の場合はセリ価格で値段が決まり、かなり変動するものになりますので、そういう意味で言うと、コストだけではないとはいえ、やはりコストを下げていく努力が必要であると思っています。
 

小針部会長
飼料課長、お願いします。
 

金澤飼料課長
飼料課長でございます。
小山委員から放牧の関係で御発言いただきました。私どもも正に放牧というものは繁殖農家さんにとって、省力化や低コスト化というメリットがある一方で、委員御指摘のとおり、やはり地域の農地をいかにフル活用していくか、また、景観も含めて地域の魅力をどう高めていくか、様々なメリットがあると思っております。次回の部会の方では餌の関係の項目がございますが、まさにこれから人口減少や需要減というのは国内全体で進んでいきますので、私どもとしましても、今後いかに地域の農地をどのように活用していくか、そのための一つの選択肢として自給飼料生産もありますし、やはり向いているところでは放牧というのも一つの選択肢であると思っておりますので、こちらについても議論していきたいと思っております。
また、ちょうど今、各地域計画ということでどのように農地を活用していくかという議論をそれぞれの地域でしていただいているところかと思っておりますが、地域の実情に応じていろいろ選択していただく中で、その一つの選択肢として放牧利用というのも重要な選択肢になると思っております。
委員の御指摘の中で水田活用の交付金を使っている場合だと、やりにくい面もあると御意見いただきましたが、交付金の適正執行との関係なので少し勉強したいと思いますが、交付金ありきではなく、飼料課の事業でも中山間地域の飼料基盤ということで放牧利用も含めて支援するメニューなど、現場にしっかり根付くような、様々な形での支援策がございますので、現場に即した支援を今後も進めてまいりたいと思います。
 

小針部会長
里井委員、お願いします。


里井委員
既に皆さんの御質問と御意見を伺っておりましたので、少し重複するところがあるかなと思いますが、1点だけ消費者目線についての御意見を申し上げさせていただけたらと思っています。
資料3の9ページの食料需給率というところについてです。一言で消費者という言葉でくくられている流れになっているかと思うんですけれども、私もこの消費者という言葉を理解するときに、普通に牛肉や和牛、お肉を買って、普通に食べる方がほとんどの数なんだろうなと思っておりましたが、外食や中食の方も含めた数値であるというのを踏まえて改めて考えますと、一言で消費者のニーズというのをお家で買う方というのは今の大体の傾向として、価格重視というのがほとんどかと思いますが、外食・中食の方というのは価格だけではないというニーズを持っていらっしゃる、それでいうと消費者ニーズは非常に幅が広いということは取り上げられると思います。
今後ですが、やはり消費者の意見を聞き過ぎるのもどうなのか、という意見が他の委員の皆様からもありましたが、私も実はそう思うところはございます。ですが、やはり無視もできないなといろいろ考えたときに、是非きめ細やかな御対応といいますか、消費者はこう思っているというくくりではなく、例えば外食での傾向、中食での傾向のような、形態ごとのきめ細やかな御対応・施策をしていただければと期待を込めて申し上げさせていただきます。ほとんどの質問事項というのは先ほど伺っており、重複になりますので、私からはこの1点のみとさせていただきます。ありがとうございます。
以上です。


小針部会長
ありがとうございます。
井上委員、お願いします。
 

井上委員
格付に関する意見と、冒頭、宮島委員から消費者がお肉のことをよく知らないという話、これは本当に私も生産者として、関係者として、消費者の方にもっともっとお肉のことを理解してもらう、熟知してもらう、そういう働きかけの努力が足りなかったと、まずはこれを反省しております。
その上で格付についてです。今A5等級が増えてきていますが、この格付の等級に信頼性や正確性をもっと持たせるには、今のA5等級の格付では駄目だと思っています。これだけA5等級が出てきて、A5等級の中にもすごく幅があります。例えばBMSですと8番から12番、5段階もあります。A5の中でも複雑に何項目も分かれているにもかかわらず、みんなA5じゃないかと、その一言でくくられてしまいます。今の状態の和牛の肉であれば、もう一度ABC、1から5まである格付をもう一回見直す、検討する必要があると考えています。
以上です。
 

小針部会長
ありがとうございます。
それでは、ここで本日御欠席の川田委員、馬場委員から生産サイドの論点について御意見をお預かりしておりますので、事務局から代読をお願いいたします。
 

新井畜産総合推進室長
川田委員、馬場委員から意見を頂いておりますので、生産、前半関係に関する部分を読み上げさせていただきます。
まず、川田委員からです。
一つ目、牛肉の需給状況。輸入牛の主力であるアメリカ産、オーストラリア産の原価高騰、為替与件、アメリカ産牛の頭数減、人件費の増加などから国内産牛肉の販売強化が現状、小売では大きな売上げ確保施策になっています。中でも輸入牛の販売売価アップによりホルスタインとの価格差がなくなってきている状況で、各社一時ホルスタイン原料に集中したものの、需要供給のバランスが取れず、原料不足(各社使用したい部位が同じ)となり、ホルスタインの品ぞろえは縮小均衡になっています。そのため、焼き肉、ステーキ中心に交雑牛の商品が拡大しました。
ただ、使用する畜種が増えることは作業工数アップにつながる課題があります。現状は和牛又は交雑牛と輸入牛(アメリカ産、オーストラリア産)の品ぞろえ中心になっていると思います。輸入牛の需要が減少する中、国内産業肉の伸長は各社ありますが、バジェットの価格帯は特に平日、お客様のニーズがあり、そこに対応するための施策を各社次年度に向け考えています。ここはなかなか国内産牛肉では対応し切れないことが悩みです。
昨年よりひき肉や加工品においてはアメリカ、オーストラリア以外の産地の原料を使用する企業も増えており、今後も加工品を中心に継続すると思われます(豚肉も同様)。ロインやヒレ等の上級部位の輸出が増えれば、買いやすい価格と赤身のおいしさがある肩、もも部位が国内で消費できれば、牛肉の底上げにつながってくると思います。
次に、肉用牛経営の動向に関する意見です。
繁殖、肥育農家の状況変化、後継者不足、コスト増等の与件の中、早期出荷についてはどの期間が最適な肥育かは分かりませんが、生産者のコスト面においても、お客様に提供する売価も優位性が出れば価値につながります。また、説明いただいた中で早期出荷も味にこだわることができれば、牛肉の大きな需要増加につながります。
以上です。
続きまして、馬場委員の意見です。
まず、論点1の需給変化への対応に関する意見です。物価高騰等の影響により、和牛肉の需給状況が悪化する中、生産資材価格の高騰も重なり、生産基盤の弱体化に拍車をかける危機的な状況が継続しています。高齢化を踏まえ、今後20年間で肉用牛全体の従事者数は約4分の1まで減少する見込みとされる中、経営不振、悪化の課題も踏まえ、中長期的な牛肉の供給能力の維持を目指すことが最も重要であると考えています。
そのためにも当面は和牛肉の需要拡大に向けた緊急的な対策を強力に講じていただくとともに、中長期的には需要が見込まれる輸出先国との解禁協議を含む輸出の拡大や国内の消費拡大などを通じ、肉用牛経営基盤の安定を図っていただくようお願いします。
次、論点2の改良基盤の充実強化、論点3の経営の体質強化、担い手不足に関する意見です。
和牛肉の需給が緩和する中、増頭によらない繁殖経営の改善を図るためにも、高齢の繁殖雌牛から優良な若い繁殖雌牛の牛群への更新を促進し、子牛価格の回復を図ることは重要なことであると認識しています。
このような構造転換を中長期的に実現していくためにも、優良な繁殖雌牛への更新加速化に向け、十分な支援を継続していただきたいと思います。また、生産コストの高騰や人材不足が課題となる中、外部支援組織やスマート技術の活用、早期出荷、国産飼料の活用拡大などを促進いただくことはいずれも重要です。例えば外部支援組織については、省力化、コスト低減に大きく貢献することから、JAグループとしてもCS、CBSやコントラクターの運営などに取り組んでおり、その重要性は今後更に増していくものと考えています。
他方、この数年で子牛価格は大幅に下落し、繁殖経営が余りにも厳しい状況に置かれる中、肉用子牛生産者補給金制度や上乗せの緊急対策も通じ、繁殖経営への万全な支援を講じていただくようお願いします。
以上でございます。
 

小針部会長
ありがとうございました。
食肉鶏卵課長、お願いします。
 

伊藤食肉鶏卵課長
里井委員からの御指摘について、消費者について、一般家庭から外食・中食まで幅が広いので、きめ細かく対応していく必要があるという御指摘だと受け止めております。おっしゃるとおりでして、例えば中食・外食といっても焼き肉屋さんから、しゃぶしゃぶ屋さん、それから、和食の割烹、鉄板焼きとそれぞれごとに求められるニーズ、部位も違います。部位によって得手不得手もあります。
実需者であるスーパー、飲食店、そういったところに対しての結節点となっているのが食肉卸業者だと思っておりますので、食肉事業者、実需者の方々、そういった方々ともよく意見交換しながら今後のあるべき姿というのを考えていきたいと思っております。
それから、井上委員からは格付の等級がこのままだと駄目なのではないかと、そういう御指摘を頂いたと受け止めております。いずれにいたしましても、これは民間の取引規格である格付でございますので、その見直しに当たっては特に格付料を払われている生産者の方をはじめ、関係者の合意形成が必要だろうと思っております。今の等級を利用してブランド牛の中に組み込んでいるところもあります。そういう産地の関係者、それから、流通の事業者、そういった様々な関係者との調整が必要になる話であると思っております。いずれにしても、仮に生産・流通・消費の各段階において何か新たな価値を見出していくということであれば、まず何を目指すのかというところから議論をスタートさせる必要があると思っています。
要は、最終的にこれだったらみんなで合意が取れるという確たるものがない中で、格付を議論というのは難しいと思っております。まずは今回の資料でも提示させていただきましたが、脂肪交雑に加えてどこに強みがあるのか、そういうところをまずは見つけていくことからスタートと思っております。
 

小針部会長
ありがとうございます。
では、続きまして、後半の流通・消費サイドの論点ということで審議を続けたいと思います。御意見ある方は挙手にてお願いします。
小椋委員、お願いします。
 

小椋委員
小椋です。よろしくお願いします。
流通・消費に関しての意見ですが、55ページにありますように、輸出向けの食肉処理施設は現状、アメリカ、EU、香港向けが16施設、台湾、シンガポール向けが29施設ですが、2025年、来年の輸出施設整備目標では、16施設から25施設、29施設から40施設という目標を立てて取り進めをしております。やはりこの、輸出向け施設整備もそうですし、また、既存の食肉と畜場の施設整備をいかに取り進めていくかということが非常に重要だと私は思います。
御存じのように、食肉は肥育牛が直接消費されるわけではありません。と畜場で解体し、それを流通業者さんが小売に持っていって、店頭のスーパーにパックで並ぶという循環になっております。現状、この施設整備を補助金等々で対応されており、施設整備に向けた農水省の指標も出ておりますが、さらなる施設整備の充実化に向けた対策を取っていただきたい。そのためには、やはり予算というものもありますけれども、輸出には衛生条件が伴います。これは国と国との約束事ですから、相手国との衛生条件や、それに伴う施設整備というのは簡単にはいきませんけれども、ここをいかに充実していくか、今和牛肉について議論されておりますが、国内の和牛という遺伝資源を、いかに日本以外の国に更に発展、消費拡大をしていくかということが、この施設整備に十分含まれていると思います。また、現状日本の和牛肉が香港、台湾から中国に入っています。日本と中国の直接の貿易交渉にはなっておりません。中国には大きなマーケットがあるわけですが、現状では直接中国には輸出できない状況になっております。
しかしながら、今お話ししましたように、日本の和牛が香港、台湾経由で中国に入っていますし、オーストラリアで生産されている和牛もどきも、オーストラリアから中国に直接入っている状況です。中国との貿易交渉は簡単ではないと思いますが、現行の酪肉近でも中国への輸出を前提とした生産量を掲げていると思いますので、この目標を実行できるような国と国との貿易交渉を是非とも農水省には果敢に求めていっていただいて、大きなマーケットへの突破口を切り開いていただきたい。それが流通と消費に大きくつながると思いますので、よろしくお願いします。
 

小針部会長
ほかに御意見ございます方は挙手をお願いします。
畠中委員、お願いします。
 

畠中委員
福岡の畠中です。
私は養鶏農家なので、消費者目線での話になってしまいますが、先ほどからも話されていた、今の格付のA5偏重に関してなんですが、資料の46ページを見て、なるほどと思いました。私が学生の頃はA5は本当に希少価値があって、とてもぜいたくな肉で、学生ではとても口にできないような感覚でしたが、今や全体の63%がA5である。確かに、私も最近は消費者としてさまざまな様々なところで肉を食べますが、昔は憧れていましたものの、やはり私も年を取りましたし、食べるたびに脂っこいな、もう脂はない方がいいなという感覚になってきているので、少しここまでの霜降りは要らないんじゃないかと、つい思っていたところです。確かに、A5の割合がこれほどあれば、これだけ出てくるよなという感覚になりました。
確かに井上委員も言われたように、そうしないと経営も成り立たないので、コストが同じであればそんなに脂肪交雑を減らせばいいというものではないというのも非常によく分かります。一方で、うちでも昨日、家族で焼き肉を食べましたが、家族が多くて31歳から21歳までの子供が5人いまして、手早く食事をするためには焼き肉は早くていいんです。昨日焼き肉を食べましたが、買物に行くと、いい国産の肉はやはり霜降りの肉ばかり並んでいて、それも買いますが、やはり若い人には赤身を食べたいというニーズがものすごくあります。このニーズは、若い人の方がありますが、赤身を買いたくても、国産の赤身はスーパーにほとんど置いていません。赤身は結局オーストラリア産などが多く、国産の赤身を買いたくても買えない。これには流通の都合や、安い赤身は国産じゃない方が売りやすいというのがおそらくあるのかと思いますが、買えないというのは個人的には非常に困る、国産を買いたいと思いますし、若い子供が5人いてつくづく思うのは、最近の若い人たちはやはり高たんぱく・低脂肪・低糖質がよいことだという認識がすごく根づき始めています。ダイエットやボディメイクをする人など、健康志向の人たちにとってはやはり、高たんぱくというのは重要で、今ではコンビニに行くと、どんな商品でもたんぱく質の量が書かれています。私たちもネットショップをしていますが、ネットでは何も差別化していない商品でもたんぱく質の量を書いておけば売れるようなことがあるぐらい、若い人たちは本当にそのような思考になっています。
だから、もしかすると、若い人たちは脂が多い食べ物にとても罪悪感があるような生活をしていて、今はそれが常識になっているのかもしれない。低脂肪なものはクールだ、高たんぱく質のものはクールだという感覚がとても広まっているので、この若い世代が大人になって、高い給料をもらったからといって、果たしてサシが多く入ったものを食べるかというと、食べないと思います。
なので、今は物価高で牛肉など高いものが敬遠されているという認識が今回のご説明にもありましたが、コロナ禍で牛肉から豚肉、鶏肉へと消費が移行したのも、コロナや物価高だけではなく、もしかするとその辺りの影響も多少はあるのではないでしょうか。もしそうだとしたら、今後物価が仮に安くなったり円高になったりしても、その傾向はある程度は残っていくのではないでしょうか。ましてや老人がどんどん死んで、若い人たちがどんどん大人になっていく中で、長い目で見るとそういった傾向が残っていくかもしれない可能性を考えていかないといけないのではないかと思いました。
あとは、今、赤身は外国産の輸入品の方が絶対安い。赤身が多い肉は安いので、国産の赤身だと負けてしまうのかもしれませんが、長い目で見たら、高くても国産を買う消費者を育てていかないと、この先の日本の農業を守れないのではないかと思うので、そこも含めて是非考えていきたいなと思いますので、よろしくお願いします。
 

小針部会長
ありがとうございます。
井上委員、お願いいたします。
 

井上委員
素牛市場とと畜場の再編に対する意見です。前回もお話しさせていただいたことと重なるかもしれません。
素牛市場は規模が大きければ大きいほどいいです。牛の移動距離が長くなったり、購買者や販売者の移動が大きくなるというハンデはありますが、それを補って余りある成果が購買者側にも販売者側にもあります。素牛市場は規模が大きくなればなるほどいいので、そういう再編を求めます。
と畜場ですが、と畜場は逆に距離の長い移動はとても大きな問題、ハンデになります。出来上がった牛も長い距離だと事故が出ます。私も東京へ出荷していますが、真夏だとある程度の事故も覚悟しなければならない。また、枝肉の瑕疵にも直結して関係します。ですので、と畜場に関しては、全国にある程度満遍なくあるのが望ましいと思います。
その上で、先ほどの小椋委員の意見とも重なりますが、和牛や交雑の輸出は増えてきています。やはり海外マーケットも視野に入れなければならないので、海外に対応できる、認可してもらえるようなと畜場の再編を希望します。
以上です。


小針部会長
ありがとうございます。
石田委員、御意見ありましたら、お願いしてもいいですか。

 
石田委員
ありがとうございます。
私も酪農をしており、肉は専門分野ではありませんが、資料と、皆さんの発言を聞いていて、やはり前回の酪農の話とも共通して国産飼料、自給飼料主体の生産体系に移行していくことが必要なのかなと思いました。やはり飼育コストが上昇している中で、無理をして肥育している、穀物を給与して無理して肥育しているということ。また、この肥育の結果できた霜降りが多い肉が、必ずしも現代の消費者の志向に合ってきていない。少しずつずれてきているというところからも、少し粗飼料の割合を増やしていく。そのことで生産コストも落ちるでしょうし、それによって消費者のニーズに合っていくのであれば、生産コストと販路拡大にもマッチするのではないかと思いました。ここについては、やはり酪農と共通するところになるのかなと思いましたので、意見を述べさせていただきます。
 

小針部会長
ありがとうございます。
では、食肉鶏卵課長、お願いします。
 

伊藤食肉鶏卵課長
まず、小椋委員からの食肉処理施設の整備の話について、御意見をしっかりと受け止めさせていただきたいと思います。施設整備はとても大切でございます。食肉処理施設はブランド牛などの拠点としての位置づけもありますし、また、施設を整備するだけではなく、最後の食肉カットまで計画的にできなければ施設の運営は回っていきませんので、ソフト面も含めてしっかりと対応していくことが必要ではないかと思っております。
畠中委員から御指摘ありました。現在のA5偏重の中で若い人の消費者ニーズはそれとは異なるかもしれないという御指摘と理解します。本日も御説明させていただきましたが、牛肉の需要は赤身の肉から霜降りまで幅広くあります。赤身の部分につきましては、既に乳用種ですとか、交雑などで応えている部分もありまして、幅広い国民の消費者ニーズに対して、現在は和牛だけでなく、和牛、F1、乳用種、こういった牛肉全体で応えていると思っております。
今日の資料の15ページでお示ししましたが、この上半期の動きを申し上げますと、折れ線グラフにもありますとおり、和牛の方は価格が落ちましたけれども、実は乳用種、それから、F1も価格が上がっている、結構引き合いが強かったという状況です。これは為替とか、それから、生産地で供給量を減らした関係で、輸入牛肉よりも国産の方がいいという声が強かった時期もありました。F₁などが赤身のニーズに応えている側面があると思っております。
この脂肪交雑については、先ほど申し上げました通り、A5の格付比率は確かに高くなっておりますが、一方で海外のお客さん、インバウンドで来られるお客さんが食べたいものの中に和牛はありまして、脂肪交雑というのは一つ強みになっています。海外から安い牛肉が入ってくる中で、差別化を図るものの一つとして脂肪交雑があり、それが強みになってブランドになっていると思っております。牛肉は、和牛だけではなく、全体でニーズに応えていくということ、それから、こういった脂肪交雑の強みを維持した上で、何を目指すのか。先ほど小ザシの説明をさせていただきましたが、小ザシでは脂の含有率が少し違うのではないかということについて、まだ研究の余地があります。また、オレイン酸は食べたときに食べやすさが違うともいわれますが、まだまだ研究の余地があります。
さきほども格付の話になりましたが、現段階では消費者の評価やニーズも様々で定まっていない状況ですので、脂肪交雑の強みを維持した上で、まずはどこに強みがあるのか、そういったことについて考えていかなければならないということが、今日説明したいことでありました。
それから、井上委員からの御指摘について。家畜市場の話はやはり、再編・合理化を進めると、品ぞろえがよくなりますし、トラックを出せば市場で全部買いそろえて帰ってこられるなど様々なメリットがありますので、こういった市場の再編整備は進めていきたいと思います。また、食肉センターの再編にはいろいろと距離の問題などもあると受け止めております。先ほども申し上げましたが、ブランド牛の出荷拠点になっている地域もありますし、生産基盤に直結するところでもありますので、どういった形の施設整備がよいのか今後引き続き研究を進めたいと思っております。
 

沖田動物衛生課長
輸出の検疫協議のお話がございましたので、動物衛生課からお話しさせていただきます。
輸出を進めていく上で、相手国の求める検疫条件をクリアしていくということは、売る側としては当然なことだと思います。政府を挙げて輸出戦略に取り組んでおりますが、その中で輸出の実行計画を定めて、中国をはじめとする有望な市場については戦略的に輸出の検疫協議を進めているところであります。特に中国に関しては、小椋委員からありましたとおりポテンシャルが非常に高いと思われ、重要な相手だと考えております。現在のところは輸出の検疫協議、技術的な協議を進めているところであり、相手国の食品の安全に関するリスク評価が行われている状況でございます。これは日本が輸入する場合も同じですが、相手国に定められたステップの中で進めていくことが重要で、あらゆる機会を捉えて進めていきたいと思っております。
以上です。

 
廣岡企画課長
石田委員から、肉用牛についても、消費者ニーズに合うのであれば国産飼料に移行していく取組が必要ではないか、というお話がありました。正にそのとおりだと思います。粗飼料がコスト削減につながるということであれば、それは進めていくべき取組だと思いますし、実際に青刈りとうもろこしを肥育牛に与える動きは出てきています。この畜産部会でも、生産者からのヒアリングの中で、長崎の壱岐の生産者の方が肥育牛に青刈りとうもろこしを給与する取組を行っていくということを発表されておりました。しっかり見ていきたいと思います。
 

小針部会長
ありがとうございます。
ほかに御意見ある方はいらっしゃいますか。
大山委員、お願いします。
 

大山委員
大山です。よろしくお願いします。
先ほどの話の中でも、やはり枝肉価格がBMSに連動しているという様々なデータなどを見せていただいたわけですが、もちろん市場の中では歩留りに重きを置いて評価するバイヤーさんももちろんおられるし、もう少し言えば、BMS以外にやはりしっかりと価格のよりどころになるものがもしかするとないのかもしれないというか、BMSが価格にもたらす影響がかなり弱くなっているにもかかわらず、BMSに取って代わるものがないというのも一つ傾向としてあるのかなというのは感じています。だから、昨今こういう形で少し価格差が詰まってきているのかなというのが見ていて思うところですが、その一つの受皿になり得るのが、今日も御説明いただいたオレイン酸であるというのが一つの可能性としてあるのかなと思っています。
おいしさというものがオレイン酸だけで決まっているわけではないというのは当前のことで、様々なファクターが複雑に関与しているのだと思いますが、これは口どけなど、健康面でのポイントでもあるため、こういうものを和牛の一つの特徴として取り込んでいき、このオレイン酸の数字を小売の段階までいかに下ろしていけるのかということを考えることが重要だと思っています。消費の段階で、例えばお肉屋さんに行って消費者が「これがA5というのは分かったけれども、オレイン酸は何%なんですか」というところまで興味を持ち出すようになれば、先ほどから議論にあがっている関係者の合意形成も自然にできてくるのかなと思いますので、いかにオレイン酸を後押ししていくかという事。また、小ザシであったり、今後のことを言うと、環境負荷やアニマルウェルフェアなども消費者にとって取捨選択の一つの材料になるような形にできないのかなというのは少し考えていく必要があると思います。
その中で、今日示していただいた資料3の48ページ。右下のところに幾つか特徴的なブランドというのを挙げていただいています。最近のことはあまり把握していないですが、恐らく今でも牛肉ブランドは全国で200以上はあると思います。その中でも非常に先進的な取組をしているブランドについては、より強い後方支援みたいなことをしていただければ有り難いなと思っているところです。ここに挙げてあるもの以外でも例えば、和歌山県の紀州和華牛は県産の副産物を利用した飼料を使いながら、ビタミンAのコントロールをせずに飼育し、等級2~4に限って5等級は除外するというようなブランドです。そういう新たなユニークなブランドも出てきていることは非常にうれしいことだと思います。様々なブランドが地域で出来上がってきて、それぞれの様々なブランドの基準が置かれているということは、私の専門のところで言うと、要するに様々な遺伝子を残すということにつながっていき、前段の話の中で御紹介のあった遺伝的多様性にもすごく大きく貢献してくるものだと思いますので、是非その辺りも御支援等お願いできればと思います。
以上です。

 
伊藤食肉鶏卵課長
大山委員もお分かりだと思うので簡潔に申し上げさせていただきます。まず格付での後押しということについて、繰り返しになってしまう部分はありますが、消費者が真に求める基準がどこにあるのかというのをまず見定めることが今必要なことかなと思っております。現在の規格は、地域によっては各産地のブランド牛と結びついていますので、格付料をお支払いになっている生産者の方をはじめ、流通事業者の方、それから、消費者の方、そういった各段階の関係者との十分な合意形成がまず必要であろうと思っております。
オレイン酸について言うと、オレイン酸を測定する機械の導入支援であるとか、先ほど御説明しましたとおり、市場にも置いて計測できるようにするなどしております。また、一例として申し上げると、オレイン酸の数値を格付のオプションとして評価する手法というのも選択肢として考えられるところ、一部のブランド牛では格付業界に依頼してオレイン酸を測定してもらった後、その情報を還元して肥育技術の改善、成績の向上につなげているというところもあります。そういった地域の取組は、他との差別化をしようというのがポイントだと思います。そういったところに対して何ができるのかよく考えていきたいと思います。
新たな強みを実際に枝肉の評価に結び付けるかどうかについて、繰り返しになりますが、各段階での理解醸成、それが関係者みんなの間で評価されるものなのかということをよく検証した上で、ということになると思いますし、オレイン酸についても、御案内のとおり測定器や測定方法によって大分数値が違っていたりします。測定手法の標準化ができるか、測定精度や再現性の問題なども出てきます。技術的な話になりますが、そういったことにも留意が必要だと思っております。
いずれにしても、各地の取組、脂肪交雑以外の新たな強みを見つけることは重要だと考えておりますので、連携を取りながら進めていきたいと思います。

 
小針部会長
ありがとうございます。
それでは、ここで本日御欠席の川田委員、馬場委員の御意見の代読をお願いします。
 

新井畜産総合推進室長
まず、川田委員の方からいただいております消費者ニーズに関する意見を読み上げます。
脂肪交雑については、お客様の価値の重要なポイントになっています。赤身需要が強いと言われていますが、ほどよいサシは重要です。赤身のステーキはニーズが強くても、赤身の焼き肉や切り落としについては適度なサシの入りようで大きく売上に変化があります。現状の等級構成を見ても、技術力の進歩は飛躍的に伸びておりますが、お客様により和牛ブランドのよさを伝えることも今後重要と考えています。お客様にとっては和牛も交雑牛も同じ国内産牛肉として同様に捉えている方がいます。違いが分からないくらい交雑牛の品質向上も要因ですし、価格帯も和牛と比較して買いやすい、交雑牛の方があっさりしているし、柔らかくておいしいという声も聞きます。交雑牛の扱いが増えている理由です。
サシが適度に入っている、肉が薄い鮮やかなピンクであることに価値を見いだしているお客様が多いように思える中、味へのこだわりは必要であり、和牛独特の香りや脂肪の口どけをしっかり伝え、和牛というブランドを守ることは重要です。という意見でございます。
続きまして、馬場委員からでございます。
二つありまして、最初に消費者ニーズの対応に関する意見でございます。生産者、関係者の御努力により脂肪交雑の改良が飛躍的に進展し、そのことが外国産牛肉と比べた和牛肉の強みであることは間違いないと認識しています。他方、現在のように和牛枝肉価格が低調に推移する中では、この強みを維持しながらも多様な消費者ニーズを的確に捉えて、差別化や消費拡大を推進し、少しでも枝肉価格の向上につなげることが必要だと考えています。
あわせて、生産資材価格が高騰する中で、早期出荷をはじめ適度な脂肪交雑の和牛を低コストで生産する技術の確立、関係者に対する普及などを通じ、所得の向上を図ることも必要です。次期酪肉近においては、多様な消費者ニーズを踏まえた牛肉生産と持続可能な経営の料率を目指し、こうした取組を着実に進めていただきたいと思います。
もう一点、輸出拡大への対応と流通体制の強化に関する意見です。
牛肉の輸出増加が国内牛枝肉卸売価格を優位に上昇させる効果があることも踏まえれば、国内向けの供給を主とする産地にとっても輸出拡大は重要であり、世界の市場が拡大傾向であることも踏まえて、和牛をはじめとする更なる輸出拡大を強力に推進いただきたいと思います。そのためには、輸出に対応した食肉処理施設の整備も重要であり、建設費の高騰や技術者の労働力不足などの課題に対応し、十分な支援を講じていただくようお願いいたします。
他方、食肉処理施設の多くが老朽化する中、全ての施設が再編、輸出に対応できるわけではないことから、我が国への食肉供給が途絶えないようにする観点でも、必要な食肉処理施設の整備に対し、柔軟かつ十分な支援を講じていただくようお願いいたします。
以上でございます。

 
小針部会長
ありがとうございました。
ほかに御意見なければ、最後に私から意見を言わせていただければと思います。
全体として、まず5年前、前回の酪肉近のときとかなり情勢が変わっているということを念頭に置かなくてはいけません。一番象徴的なのは為替と物価かなと思っていますが、そこが大きく変わっている中で次をどのように考えていくのかというのが、やはり重要だと思います。
もう一つは、やはり輸入肉が6割、国産が4割となっている中で消費者から見えている牛肉の姿と生産者が自分の目で見ている牛というもので、やはり見ている世界、見えている世界、見たい世界というのが、それぞれのステークホルダーによってどうしても違うし、これまでの議論にあったとおり、ニーズや品質にしても、ものによっても非常にバラエティーがあるので、合意形成を取っていくというのはやはりなかなか難しい部分があると思います。しかし、それを作っていくという意味で、先ほどから合意形成や議論していくべき様々な論点が今日出てきたのは非常によいことだったと思いますし、本日は非常に細かいデータを出していただいて、事務局の方からしっかりと論点を示していただいたたと思います。
これだけではなくて、私にとっては少し象徴的だなと思って、お願いしたいなと思った部分がございました。繁殖の生産コストが規模によって低減していくという図があったと思いますが、規模が大きい方が生産コストは低減しているけれども、よく見ると、流通飼料費は上がっているよねというようにも読めること。また、羽田委員から付加価値というお話もありましたが、少しあの図だけ見ると、もしかしたら誤解を与えてしまうところもあるかもしれないというのも含めて、今回事務局から出していただいた論点と今日の部会で出された論点を加味して、もう一歩丁寧な議論をしていくことが次につながっていくのかなと思っています。
ということで私のコメントは以上となります。川田委員と馬場委員からのコメントも含めて事務方から御意見、御回答がありましたらお願いします。
 

伊藤食肉鶏卵課長
しっかり対応していきます。ありがとうございます。


小針部会長
ありがとうございます。
では、意見交換は以上としたいと思います。
次に、食料・農業・農村基本計画の見直しに関して、10月16日に食料・農業・農村政策審議会企画部会が開催されておりますので、その概要について事務局から御報告をお願いいたします。
 

新井畜産総合推進室長
それでは、資料4をお開きいただければと思います。
食農審の企画部会は8月末から基本計画の見直しに向けた議論が始まったところですが、第3回企画部会が先週16日に開催されましたので、要点のみになりますが、概要を報告いたします。
第3回は環境と調和の取れた食料システムの確立・多面的機能の発揮というテーマと農村の振興というテーマの二本立てになっております。
数枚おめくりいただいて、右下に3と振られたページを御覧いただければと思います。
最初に、農業生産活動における環境負荷低減に向けた現状の関係でございます。気候変動や生物多様性への懸念から、これら地球規模課題への取組というのが世界的な潮流となっているところです。我が国の農業分野におきましても、2021年にみどりの食料システム戦略を策定しまして、環境と調和の取れた持続可能な食料システムに向けた取組を推進してきたところでございます。
気候変動対策においては、農業分野でも温室効果ガスの削減目標を立てまして、2022年実績で13年度比729万トンのCO2削減となっているところでございます。
4、5、6ページは省略しますが、それぞれ化学肥料や有機農業、バイオマスの現状が記載されておるところです。
8ページをお願いいたします。ただ、こういった環境負荷低減の目標達成のためには、各分野において更なる取組の強化が必要となっているところでございます。例えば右側の検討の視点の4つ目のポツにもありますが、畜産で言いますと、家畜排せつ物の管理方法の変更や温室効果ガスの排出量を抑制する飼料などの開発・利用などを進めることで排出削減を進める必要があると記載されているところです。
次、9ページをお願いします。ここも右の2つ目のポツにありますが、化学肥料の使用低減に当たっては、国内資源を利用した堆肥化や施設整備などを推進する必要があるだろうというふうになっております。
続きまして、12ページをお願いします。
また、こちらも環境負荷低減の取組を加速化するためには、そういう取組の生産者への拡大が必要であるということで、いわゆるみどり認定を受けた農業者の支援ですとか、予算事業で環境負荷低減の取組を義務化するクロスコンプライアンス、そういったところの本格実施が必要ではないかといったことが書かれているところでございます。
続きまして、14ページをお願いします。
ここから食品産業・消費における環境負荷の低減に関する話になっております。1つ目のポツですが、食品産業では環境や人権に配慮して生産された原材料の調達、食品ロスの削減、プラスチックの資源循環などに関する議論が国内外で進展をしているというところでございます。
15ページをお願いします。環境負荷低減の取組に対する消費者の意識です。調査によれば、これは下の右に円グラフなり棒グラフがありますが、環境に配慮して生産された農産物を購入したい消費者はいるものの、どれが環境に配慮した農産物か分からないため購入できていないと、そういった状況も見られるのではないかとなっております。
次のページをお願いします。
また、図がありますが、環境負荷低減の取組を商品ラベルに表示する見える化です。この上はラベルですが、見える化の取組ですとか下のJ-クレジットの取組、そういったものも推進してきたところでございます。
19ページをお願いします。
このような取組を加速化するための検討の視点というものが右側に記載されているところですが、畜産の関係ですと、例えば1つ目でありますけれども、先ほどの見える化に関して言いますと、畜産物や花卉などの更なる対象品目の拡大に向けた検討ですとか、3つ目にあるJ-クレジット制度、更なる取組の追加に向けた検討が必要ではないかと、そういうことが記載されているところです。
21ページをお願いします。
ここからは少し話が変わりまして、農業の多面的機能の発揮です。1つ目のポツですが、農村で継続的に農業生産活動が適切に行われることにより、国土の保全、水源の涵養、自然環境の保全、良好な景観の形成などの多面的機能が発揮されますが、こうしたこのような意義に関する国民理解に向けた周知が必要であると、記載されております。
次のページも1つ目のポツについてですが、農業生産活動の継続的な実施の観点から、地域共同で行う地域資源の保全活動支援、中山間地域の農業生産条件の不利補正、環境負荷低減の取組支援を行う日本型直接支払を実施しているところでございます。
24ページまでお願いします。一方で人口減少、高齢化により農村部で地域の共同活動の継続が困難となっておりまして、日本型直接支払により多面的機能が発揮される農用地面積も今後減少することが見込まれる。このため、外部団体などとのマッチングや多様な組織、非農業者の参画を推進する必要があるのではないかといったことが書かれてございます。
続きまして、そのまま下にスクロールをしていただき、右上に資料3と書かれている資料をご覧ください。農村の振興について御説明をします。
1ページを御覧ください。
農村におきましては、都市に先駆けて人口減少、高齢化が進行しておりまして、農村の地域社会の維持が困難な状況となっています。このような中、特定の地域に継続的に多様な形で関わり、地域の社会課題解決や魅力向上に貢献する関係人口の創出・拡大について政府全体で議論がされているところでございます。
2ページ目、農村における所得と雇用機会の向上に向けて、6次産業化や農泊・農福連携などの取組が行われておりまして、コロナの影響もあったところですが、おおむね堅調に推移をしているというところでございます。
3ページ目をお願いします。
また、農村の生活環境の改善に向けて地域で暮らす人々が中心となって地域運営組織─RMO─を形成し、集落機能を維持する取組が各地で行われています。ただ、そのうち農業・農村に関する活動を行うRMOは少数にとどまっているということが書かれています。
4ページ目をお願いします。鳥獣とジビエの関係ですが、鹿やイノシシ、猿などの野生鳥獣による農作物被害額は令和4年度で156億円になるなど影響が生じているというところでございます。
5ページ目が今後の検討の視点などについてです。このように農村の人口減少、高齢化が進行することが予測される中、労働生産性が現状のままにとどまる場合、農村地域において創出される付加価値額が現状より減少することが予測されるとなっています。このようなことを踏まえ、経済面の取組とありますけれども、農泊や農福連携などを含め、付加価値のある内発型の新事業を創出することが必要であろうとなっております。
また、6ページ、生活面の取組についてですが地域内外の者が連携した農用地保全、地域資源の活用、生活支援などに取り組む農村RMOの形成や地域の共同活動を継続するための集落拠点のネットワーク化、また、多様な組織の活動参画に向けた体制づくりが必要となっております。
最後、7ページお願いします。鳥獣害対策に向けましては、ICTなどを活用した遠隔監視や捕獲データの収集・分析によって見回り作業を省力化することや捕獲可能性の高い地点の特定など効率的・効果的な対策を推進することやジビエ利用を更に拡大していくことが必要であろうというふうになってございます。
説明は以上でございます。企画部会は今後も定期的に開かれますので、また、状況を報告したいと思います。
以上でございます。
 

小針部会長
ありがとうございました。
このことについて委員から何か御意見等ございますでしょうか。よろしいですか。
それでは、企画部会における審議内容の報告は以上といたします。
本日は長時間に及び熱心に御審議を頂きまして、ありがとうございました。今後も議論が続きますので、引き続きそれぞれのお立場から御意見を頂ければと思います。
最後に、事務局からお願いいたします。
 

新井畜産総合推進室長
本日も長時間にわたりまして御審議いただき、ありがとうございました。
次回は飼料とその他の課題を主なテーマとして議論いただければと考えてございます。日程はまた改めて御連絡しますが、11月の中旬を予定しておりますので、どうぞよろしくお願いいたします。
以上です。
 

小針部会長
それでは、これで畜産部会を終了します。ありがとうございました。
 

午後4時22分閉会

お問合せ先

畜産局総務課畜産総合推進室

担当者:請川、松山、細川
代表:03-3502-8111(内線4888)
ダイヤルイン:03-6744-0568

PDF形式のファイルをご覧いただく場合には、Adobe Readerが必要です。
Adobe Readerをお持ちでない方は、バナーのリンク先からダウンロードしてください。

Get Adobe Reader