“<w天>防除体系”~薬剤抵抗性が発達しにくい、天敵が主役の新しい果樹のハダニ防除
ポイント
- 抵抗性が発達しにくく、環境にもやさしい持続的な果樹のハダニ管理技術。
- 土着天敵と天敵製剤の合理的活用で殺ダニ剤への依存を大幅に削減。
- ハダニの薬剤抵抗性の発達を抑制し、殺ダニ剤の薬効維持に効果。
- 施設栽培におけるハダニ防除を省力化。
- 輸出時における相手国の残留基準値問題にも対応。
- リンゴ、オウトウ、ナシ、施設ブドウ、施設ミカンの5作目で体系化のポイントを整理。
天敵(カブリダニ)と<w天>防除体系を実施する果樹園
(左)ハダニを捕食するカブリダニ、(右)クローバーが優占するリンゴ園(撮影:舟山健氏)
カブリダニはハダニの主要な天敵であり、適正な草生管理はカブリダニを保全しハダニが増えにくい環境を作る。
<w天>防除体系を構成する4つの要素
<w天>防除体系の基本的枠組みは、(1)天敵に配慮した病害虫防除、(2)天敵にやさしい草生管理、(3)補完的な天敵製剤の利用、(4)協働的な殺ダニ剤の利用の4つの要素で構成される。
リンゴ<w天>防除体系の概略図
害虫管理には土着天敵類に影響の小さい殺虫剤を使用する。下草を維持し天敵類を保全する。殺ダニ剤は、ハダニの増加が著しい場合やハダニの越冬密度を抑える場合に使用する。
オウトウ<w天>防除体系の概略図
雨除け被覆前の5月中~下旬頃に天敵製剤を設置する。害虫管理には天敵類に影響の小さい殺虫剤を使用する。製剤の効果が不安定な場合には、殺ダニ剤を臨機的に併用する。
ナシ<w天>防除体系の概略図
下草を維持し土着天敵類を保全する。ニセナシサビダニの防除後は非選択性殺虫剤を控え、6月上旬を目安に天敵製剤を設置する。夏のハダニ急増期初期に補完防除として天敵類に影響が小さい殺ダニ剤を散布する。
施設ブドウ<w天>防除体系の概略図
デラウェア、2月上旬加温
ジベレリン前期処理期に天敵製剤を設置する。害虫管理には天敵類に影響が小さい殺虫剤を使用するとともに、下草を維持し、天敵類を保全する。ハダニによる被害が認められた場合は、天敵類に影響が小さい殺ダニ剤を併用する。
施設ミカン<w天>防除体系の概略図
11月下旬加温
満開3週間後を目安に天敵製剤を設置する。すでにハダニが発生している園では、設置後に気門封鎖剤によりハダニ密度を下げる。収穫1か月前までは天敵類に影響の小さい薬剤を使用する。製剤の効果が不十分な場合は、まず気門封鎖剤を散布し、結果により製剤の追加設置を検討する。
農林水産省のコメント
天敵を中心としたハダニ防除体系であり、化学農薬の使用量を削減し、ハダニの薬剤適応性の発達の抑制が期待できる。
【生産局園芸作物課】
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本研究成果は【生物系特定産業技術研究支援センター「イノベーション創出強化研究推進事業」】(「土着天敵と天敵製剤<w天敵>を用いた果樹の持続的ハダニ防除体系の確立」)の⽀援を受けて得られたものである。
問い合わせ先国立研究開発法人 農業・食品産業技術総合研究機構 |
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