ブドウの鳥獣害対策を省力・安全化する「果実保護ネット」
ポイント
- ブドウの鳥獣害対策では、棚上や圃場周囲へのネット・電気柵の設置や維持管理に多大な労力を要する。
- 短梢せん定栽培で直線状に配列された多数の果房を一度に保護できる「果実保護ネット」を開発した。
- 設置時に脚立や踏み台を使う必要がなく、傾斜地や狭い圃場、高齢者や初心者でも短時間で安全に作業できる。
- 約50%の果房が大きな被害を受ける圃場でも、果実保護ネットにより被害を数%に抑えられる。
果実保護ネットの模式図
A:展開図、B:ブドウ果房被覆時
耐久性のあるポリエチレン製のネットを用いて、短梢せん定栽培により直線状に配列された果房のみを被覆することで、多数の果房が一度に保護できる。ネットに装着された固定用治具を棚線に固定した後、ネット外周の面ファスナー(マジックテープ)で接合することで果房がネット内に保護される。
果実保護ネットの設置状況
広島県立総合技術研究所農業技術センター果樹研究部にて撮影
ネットの設置を棚下で実施できるため、脚立や踏み台などを使う必要がなく、傾斜地や狭い圃場でも安全に作業できる。
果実保護ネット設置時の動画
広島県立総合技術研究所農業技術センター果樹研究部にて撮影
果実保護ネット区および慣行の防鳥ネット区における設置時間の一例
果実保護ネット区:一文字型整枝樹1樹の全果房を4名の作業者で被覆するのに要した時間
慣行ネット区:一文字型整枝樹1樹の棚上、棚下全体を4名の作業者で市販の防鳥ネット被覆するのに要した時間
はt-検定により1%水準で有意差あり(n=3)
慣行の防鳥ネットの設置には一樹当たり約16分を要したのに対し、果実保護ネットでは約5分であり、設置時間を3分の1以下に短縮できる。
果実保護ネット区および無被覆区における食害発生推移の一例(「安芸クイーン」)
被害程度:無(被害なし)、小(数粒の被害)、中(房の欠損または半分程度の被害)、大(残粒皆無)
防鳥獣対策を施さない無被覆区では、収穫日までに約50%の果房が鳥類ならびにアナグマ、テンなどの小動物により中~大の被害を受けたのに対して、果実保護ネット区では被害を約6%に抑えることができた。
農林水産省のコメント
ぶどう栽培で拡大している鳥獣害被害に対して、省力・簡便な対策技術として普及が期待される。
【生産局園芸作物課】
詳細情報
園芸学研究 袋状ネットの利用による短梢せん定栽培ブドウの鳥獣害対策の省力化(PDF:927KB)[外部リンク]
2018年度普及成果情報 果実保護ネットによる短梢せん定ブドウの鳥獣害対策の省力化[外部リンク]
特許第5388064号 果房や果実の保護方法、果房や果実の保護ネット[外部リンク]
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