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農林水産省

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ナシ黒星病の被害軽減のための農作業機械を用いた落葉処理技術

ポイント

  • 農作業機械を用いた落葉処理により、落葉からの子のう胞子飛散量が減少し、生育初期のナシ黒星病の発生を軽減できる。
  • 落葉処理には、乗用草刈機やロータリー等の一般的な農作業機械が使用できる。
  • 地表面に残る前年の落葉量(残存落葉量)が少ないほど黒星病の罹病率は低くなる。
  • 乗用草刈機による落葉の粉砕、ロータリーによる中耕すき込み等、処理方法によって残存落葉量が少なくなる最適な作業速度、作業回数は異なる。

ナシ黒星病の発生状況

黒星病の写真

ナシ黒星病の被害果(品種「幸水」)

平成27年(2015年)に富山県のニホンナシ主産地において黒星病が多発(「幸水」被害果率50.1%)したため、耕種的防除も含めた新たな防除体系の開発が求められていました。

落葉処理の連年実施がナシ黒星病の子のう胞子飛散数および発病果そう率に及ぼす影響(2016~2018年)

落葉処理の効果

上:各園地における3月~5月までの胞子採取器(静置式)により採取した子のう胞子飛散数。調査期間は、処理1年目は2016年3月16日~5月31日、2年目は2017年3月14日~5月31日、3年目は2018年3月27日~5月31日。
下:5月中旬時点の各園地における発病果そう率。1園地当たり50果そうを調査(品種「幸水」)。調査日は2016年5月16日、2017年5月17日、2018年5月17日。

(1)乗用草刈機での粉砕処理、(2)ロータリーでの中耕すき込み処理、(3)乗用草刈機での粉砕後ロータリーでの中耕すき込み処理、(4)乗用芝刈機での収集・持ち出し処理と、異なる4つの方法で落葉処理を毎年実施した現地「幸水」園において、ナシ黒星病の子のう胞子飛散数と発病果そう率は、処理1~3年目を通して、いずれの落葉処理区も無処理区に比べて少なく、年を追うごとに減少する傾向にありました。

残存落葉量とナシ黒星病の累積罹病葉率との関係(2017年)

落葉量と黒星病の関係

薬剤防除は慣行に準じて実施(供試樹は「幸水」2年生樹)。

現地「幸水」園から採取した落葉(秋型病斑罹病率約30%)、0~200g/m2を地表面に配置し、その区画内で「幸水」2年生樹を栽培した結果、設置した落葉が少ないほど累積罹病葉率が低くなりました。

残存落葉量を減少させる効率的な落葉処理方法

落葉処理の手順

各処理方法の作業速度・回数等の目安
(1)乗用草刈機による粉砕処理:走行速度45分/10a(時速約2km)で落葉を粉砕。同一園地内を2回以上実施
(2)ロータリーによる中耕すき込み処理:走行速度は1時間45分/10a以下(時速1km以下)、ロータリーの回転方向は正転、中耕深度5cm程度で落葉を土中へすき込む。同一園地内で1回実施。
(3)粉砕+中耕すき込み処理:乗用草刈機での粉砕処理を30分/10a(時速約3km)で行った後、ロータリーでの中耕すき込み処理を45~60分/10a(時速1.5~2km)で行う。同一園地内で一回実施。
(4)収集・持ち出し処理:集め残しが無いように完全落葉後に実施し、収集した落葉は園地外で適切に処分する。

農作業機械を用いた落葉処理について、より残存落葉量が少なくなる処理速度や作業回数を検討し、作業方法の目安を設定しました。所持する機械や園地の状況に合わせて処理方法を選択することができます。

落葉処理の導入による経営試算(10a当たり)

経営試算

現地実証試験において、落葉処理実施園の果実被害率は1%に減少し、無処理園と比較し収穫量は7%増加しました。処理経費を差し引いて約51,600円/10aの利益増が見込めます。

落葉処理の導入効果(2015~2019年、品種「幸水」)

導入効果

富山県ニホンナシ主産地における「幸水」の黒星病被害果率(8月収穫期)

富山県のニホンナシ主産地では、ほぼ全ての生産者が乗用草刈機による粉砕処理を中心に毎年落葉処理を実施し、更に防除体系の見直し等にも取り組んだ結果、黒星病被害果率は大幅に減少しました。
団地化しているニホンナシ産地においては、生産者全体での技術導入がより効果的です。

農林水産省のコメント

農薬に頼らない、耕種的防除によるナシ黒星病被害軽減技術として、広く普及することが期待される。
【生産局園芸作物課】

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本研究成果は【生物系特定産業技術研究支援センター「革新的技術開発・緊急展開事業(うち地域戦略プロジェクト)」】(「モモ・ナシの高品質・安定生産を実現する病害防除体系の実証研究」 )の支援を受けて得られたものである。

問い合わせ先

富山県農林水産総合技術センター
園芸研究所果樹研究センター
電話番号:0765-22-0185


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お問合せ先

大臣官房政策課技術政策室

担当者:推進班
代表:03-3502-8111(内線3127)
ダイヤルイン:03-6744-0408

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