このページの本文へ移動

農林水産省

メニュー

有機物含量の高い軽量育苗培土を用いた育苗期のもみ枯細菌病の発病抑制

ポイント

  • 有機物を多く含む軽量培土はもみ枯細菌病(苗腐敗症)の発生を抑制する。
  • 有機物を多く含む軽量培土はもみ枯細菌病菌の菌密度を低減させる。
  • 有機物含量が高まるにつれて発病が減少する。
  • 有機物含量が高く発病が少ない育苗培土は、培土の微生物性が強く影響している。

育苗培土の種類によって異なるもみ枯細菌病(苗腐敗症)の発生

もみ枯細菌病の発生

1)高度に汚染された種子をそれぞれの培土に播種し育苗した。

近年の温暖化傾向に伴い増加しているもみ枯細菌病は、防除が困難で、薬剤防除にも制限があります。一方で化学農薬に頼らない技術開発が求められる中で、育苗培土の種類によって本病の発生が大きく異なることを見いだしたことから、その要因を明らかにして、実用的な防除技術として一般化することを目指しました。

市販育苗培土ともみ枯細菌病(苗腐敗症)の発病との関係

発病との関係

1)NT:未試験を表す。
2)発病度:個体ごとの発病程度を加味した発病指数(0~100)。
3)原料の鉱物繊維:軽量タイプに属するが有機物を含まないマット素材。覆土には粒状培土を使用した。

5社12銘柄の市販育苗培土における苗腐敗症の発生は、培土の種類によって大きく異なりました。このうち、有機物を多く含む軽量タイプの培土は、年次を問わず苗腐敗症の発生が少なくなりました。


市販育苗培土ともみ枯細菌病(苗腐敗症)の菌密度との関係

菌密度

1)菌密度は播種後17日の苗の葉鞘部を採取し少量の滅菌水で懸濁した液をもみ枯細菌病菌のみ検出する培地に塗布して、発育した菌数を計測した(グラフは対数表示)。

有機物を多く含む軽量培土(A-1)における苗腐敗症の発生は明らかに少なく、播種後17日の苗葉鞘部の菌密度も大幅に低下しました。



育苗培土の種類と土壌理化学性

土壌理化学生

1)T-C:土壌中に含まれる全炭素の割合。
2)C/N比:土壌中に含まれている全炭素(C)量と全チッソ(N)量の比率。

発病の少ない育苗培土は、炭素含量(T-C)やC/N比が高く、これらは培土に含まれる有機物に由来していると考えられます。





育苗培土の有機物含量が 苗腐敗症の発生に及ぼす影響

有機物含量の影響

1)育苗培土は図中の割合で、母材となる赤土等に粗大有機物のやし殻(培土A-1と同じ原料)を混合して自作した。
2)図中のA-1は成果04-1~3の図中に表記された育苗培土と同銘柄。

育苗培土の有機物含量を増やすことによって、発病は減少しました。



育苗培土中に含まれる微生物特性(細菌群集)の評価(PCR-DGGE法による)

微生物特性評価

1)PCR-DGGE法:サンプル中に存在する微生物の種類や割合を解析する方法。
2)各レーンがそれぞれの育苗培土の細菌群集を表す。培土に存在する細菌類が種の違いにより異なる位置にバンド(レーン中の黒線)として現れる。多様性が乏しいとバンドが少なく濃く、多様性が高いとバンド数が多くなり相対的に薄くなる。
3)DNA量:細菌由来のDNA量。土壌中の細菌量の目安となる。
4)Richness:DGGE画像から解析した各レーンのバンド数。

発病の少ない育苗培土では、細菌由来のDNA含有量が多く、多様性を表す指数(Richness)も高くなりました。逆に発病の多い培土は、DNA量が少なく、Richnessも低くなります。これらの微生物特性がもみ枯細菌病菌の増殖や発病の軽減に関与していると考えられました。また、発病の少ない培土における土壌理化学特性や微生物特性は、培土の機能性の評価や品質管理への応用も期待されます。

農林水産省のコメント

育苗培土を変更するだけの取り組みやすい技術であり、特に種ほにおいては普及の可能性がある。
供試された培土は全国で入手可能なものであることから、富山県以外の地域においても試験が可能であり、省力的防除としての技術体系の確立が期待される。
【政策統括官付穀物課】

-----
本研究成果は平成28~29年度 物理的・生物的土壌消毒や作物の抵抗性等を複合的に利用した病害及び線虫害管理技術の開発(農研機構交付金)の支援の一部を受けて得られた成果である。

成果に関するお問い合わせ先

富山県農林水産総合技術センター
農業研究所病理昆虫課
電話番号:076-429-5249


他の農業技術を探す


農業最新技術・品種2021

お問合せ先

大臣官房政策課技術政策室

担当者:推進班
代表:03-3502-8111(内線3127)
ダイヤルイン:03-6744-0408