緑茶の美味しさと機能性を両立する「水出し緑茶」
ポイント
- 冷たい水で緑茶を淹れると、うま味を呈するアミノ酸類のテアニンや渋味の弱いエピガロカテキン(EGC)は、お湯で入れた場合と同様に溶出されますが、渋味の強いエピガロカテキンガレート(EGCG)と覚醒作用を持つ苦味のカフェインの溶出量は溶出量が低下するため、うま味を感じやすいお茶を淹れることができる。
- 氷水などを利用して水温を0℃に近づけて緑茶を淹れると、カフェイン溶出量をさらに低減することができる。
- 水出し緑茶で溶出量の多いEGCは腸管免疫の働きをサポートする可能性がある。
- 緑茶浸出液にEGCとEGCGが同じ量含まれると機能が相殺される可能性がある。
- EGCは微量の過酸化水素でマクロファージの“食べる活性”を活発にさせる。
緑茶を冷水で淹れた場合のEGC,テアニン, EGCG, カフェインの溶出特性
80℃の湯で2分間溶出させた各成分の溶出量を100%とした場合の、冷蔵庫10℃での各成分の溶出率。EGCG:エピガロカテキンガレート、EGC:エピガロカテキン
冷蔵庫内10℃前後の冷水で緑茶を淹れると、うま味を呈するアミノ酸類のテアニンや渋味の少ないEGCはお湯で入れた時と溶出量は大きく変わらないのに対し、苦みを呈するカフェインの溶出量は約半分に、渋味を呈するEGCGは1/5程度に減少するため、うま味を感じやすいお茶になる。
ヒト培養細胞、マウス、ヒト介入試験の結果から推測される小腸におけるEGCの作用メカニズムの模式図
TRPM2:マクロファージの食作用の活性化に関わる温度センサー(カルシウムイオン透過性チャネルTransient Receptor Potential Melastatin 2 )
TLR:異物の種類を認識して、それぞれに対応したシグナルを出すためのセンサー(トル様受容体Toll-like receptor)
M細胞:異物を積極的に取り込む腸管上皮細胞
小腸粘膜直下にいるマクロファージなどの病原体等の異物を食べる細胞の“食べる活性”が落ちている場合、生体防御能が下がる。EGCが作用すると“食べる活性”が回復し、異物に対する反応が改善される可能性がある。EGCGは体内に異物が侵入した情報の伝達を抑制する可能性がある。
農林水産省のコメント
「水出し緑茶」の美味しさ、機能性及び淹れ方の簡便さが広く普及することで、緑茶の消費拡大が期待できる。
【生産局地域対策官】
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本研究成果の一部は「農林水産資源を活用した新需要創出プロジェクト」(課題名:タンニン類に着目したリンゴ・茶の生体調節作用の医学的検証と高含有品種育成など活用に関する研究開発)の支援を受けて得られたものである。
成果に関するお問い合わせ先国立研究開発法人 農業・食品産業技術総合研究機構 |
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