V字状に幅広な破砕溝を構築できる全層心土破砕機「カットブレーカー」
ポイント
- V字状の刃で土塊を切断・持上げ、土塊の重さで深層に挿入して心土を破砕する。
- 幅広でV字状の膨軟な破砕溝を1~3連で構築、透水性と通気性を改善して根域の拡大と湿害を回避できる。破砕溝間に堅密な凸状の非破部により、機械走行の地耐力確保と保水性維持による干ばつ回避が期待できる。
- 破砕方法は、V字状に切断した土を持上げてそのまま落下させるため、土壌の攪乱が少なく、土壌の化学性を変化させずに物理性だけ改善できる。
- 10cm程度の石礫が衝突しても、斜めに配置された切断刃が上下方向にズレて、石礫が後方に抜け、表面まで持ち上がりにくい。
上段:左:2連用施工機、中:3連用施工機の装着状況、右:農耕用ブルドーザ装着状況
下段:小型~大型トラクタ用施工機のラインアップの装着状況
独自のV字状の刃を持つ全層心土破砕機「カットブレーカー」を開発しました。カットブレーカーは小型~大型のトラクタや農耕用ブルドーザに装着できます。
左:トラクタ走行と土塊の持上げ・破砕・落下の状況、右:破砕溝の構築方法
カットブレーカーは、牽引力で30~70cmの任意の深さにV字状の刃を挿入して破砕溝を構築し、堅密な土壌を改良します。施工方法は、V字状の切断刃を挿入して土塊を成型・持上げて破砕、後方に落下させて埋戻し、破砕溝を構築します。
カットブレーカー施工後の土壌断面
カットブレーカーは、V字状に切断した土を持上げてそのまま落下させるため、土壌の攪乱が少ない状態で溝内を確実に破砕できる特徴があります。このため、土壌の化学性の変化を抑えて物理性だけ改善できます。
各写真の左は未施工区、右はカットブレーカー施工区の作物の状況
堅密な土壌のため作物の生育が抑制される洪積土のほ場において、カットブレーカーで土壌を改善することで、作物を適正な収量の水準で栽培できるようになります。
農林水産省のコメント
排水不良ほ場の改善が期待できる。【生産局技術普及課】
近年、湿害による大豆の単収低下がみられる中、本工法は、使用できる時期が広く、施工後の残効年数も従来の心土破砕より長いので、同一圃場に対して毎年の施工は不要となるため、効果の高い排水対策であると考える。また、特定の土壌条件において排水性の改善効果が高くなるなど農業者にとって有益な成果であり、全国の排水性に悩む水田での大豆生産において、普及が期待される。【政策統括官付穀物課】
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本研究成果は農林水産省委託プロジェクト研究「収益力向上のための研究開発(多収阻害要因の診断法および対策技術の開発)」、生物系特定産業技術研究支援センター「革新的技術開発・緊急展開事業」(うち地域戦略プロジェクト)「タマネギ等高収益作物の多収・安定化技術と情報技術の活用による高収益水田営農の確立 」並びに「寒地大規模畑作の経営体を支援する省力技術やICTを活用した精密農業」の⽀援を受けて得られたものである。
成果に関するお問い合わせ先国立研究開発法人 農業・食品産業技術総合研究機構 |
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お問合せ先
大臣官房政策課技術政策室
担当者:推進班
代表:03-3502-8111(内線3127)
ダイヤルイン:03-6744-0408