米酢(こめず)|にっぽん伝統食図鑑

米酢

京都府米酢(こめず)
分類(大)
農産
分類(小)
醤油、味噌、その他調味料
主な使用食材
米、水、酢酸菌
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主な伝承地域
京都市内、丹後地域
食品概要(特徴・種類)
米酢は白米を原料として作られる食酢で、和食にとって欠かせない調味料である。
京都の食文化においても、米酢の果たしてきた役割は大きい。たとえば、江戸時代から伝わる「さばずし」は、酢の特性を活かした京都の郷土料理のひとつ。若狭湾で獲れた鯖を塩漬けにして京都まで輸送し、酢でしめることで保存性を高め、青魚特有の生臭さを抑えうま味を引き出す、酢の特性を活かした料理のひとつである。
京都の米酢の特徴は、素材である米と水の質の高さに加え、手間暇をかけた製造方法にある。百年以上続く老舗醸造所の多くは、伝統的な木桶を用いて、古くからそこに棲みつく微生物(酢酸菌)により発酵を行い、半年から一年ほどの熟成期間を経て完成させる伝統的な製法を守り続けている。時間をかけてつくられた京都の米酢は、総じて酸味やえぐみが少なく、まろやかで香りがよいと評される。それは、素材本来の味を活かした繊細かつ洗練された京料理の引き立て役として、多くの料理人から信頼されてきたことが証明していると言えよう。
歴史・文化、関連行事
京都では、古くから酢は欠かすことのできない調味料として扱われてきた。平安時代には、酢、酒、塩、醤(ひしお)の4つは「四種器(よぐさもの)」と呼ばれ、貴族の食事では小皿に入れた酢が塩や酒とともにお膳に並べられ、これらの調味料に料理を付けて食べられていた。また、海から遠い京の都では新鮮な海産物の入手が難しく、防腐のため塩漬けにしたり、酢漬けにしたりしてから運ぶ必要があったことも、食文化として酢が定着する要因となった。
一方で食品としてだけでなく、友禅染めの色止めに酢が多く使われた歴史もある。現代も続く京都市内の老舗の中には、もともと染物の色止め用に酢をつくっていて、その後に食用酢をつくり始めたという店もあったという。それほど当時、酢の需要は高かったことが伺える。こうした背景から京都には酢屋が立ち並ぶようになっていった。
江戸時代に刊行された『本朝食鑑』(日本の食物全般を紹介した書物)には「酢は近畿、特に京・伏見を良しとする」と記されるなど、京都の酢は評価が高かった。その後も京都の酢は、茶道の懐石料理、寺の精進料理、朝廷や公家の有職料理、料亭の会席料理などの現代まで続く多彩な食文化とともに洗練されていった。現在でも、伝統的な製法を守る老舗醸造所がそれぞれの味を守り続けるとともに、時代のニーズを取り込みながら新製品の開発を行っている。
製造方法
米酢は米、水のみを原料としてつくられる。まず蒸し米に麹菌をまぶして米麹をつくる。米麹ができたら水と蒸し米に酵母を加え、醪(もろみ)をつくる。醪とは純米酒をつくる際に、酒と粕を分ける前段階のものである。次に、醪に種酢と水を加え、一定の温度に保ちながら酢酸発酵を行う。ここで活躍するのが、それぞれの蔵に棲みつく酢酸菌である。2~3日すると酢酸菌膜が表面を覆う。このあと半年から一年の熟成期間に、表面の酢酸菌がゆっくり時間をかけてアルコールを酢に変えていく。京都の米酢は、この「静置発酵法」と呼ばれる昔ながらの製法でつくられるのが特徴である。醸造所ごとに使用する米や水が異なることや、蔵に棲みつく微生物(酢酸菌)が異なること、熟成期間の違いなど、様々な要素により最終的な味の個性が決まる。
保護・継承の取り組み
明治創業の蔵元では、契約農家や自社生産の米を用いた米酢づくりを行っている。米づくりにも関与することで、農家の保護や棚田の景観の保全に取り組むほか、田植えや稲刈りのイベントを行うなど、魅力発信を行っている。
また、多くの蔵元では酢を活かした商品開発も積極的に行っている。天保年間から続く西陣の蔵元は、果実酢やポン酢、たれ・つゆなど多彩なラインナップを揃えおり、自分好みのオリジナルの配合のポン酢が作れるイベントを開催するなど、消費者への積極的なアピールを行っている。
主な食べ方
お寿司の酢飯に使うほか、なますなどの酢の物、魚介のカルパッチョやマリネ、サラダのドレッシングなど、料理を引き立てる調味料としてあらゆる料理で使用される。老舗メーカーでは、ホームページ上で一般消費者向けに多彩なレシピを提供している。