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農林水産省

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第8回ロシア極東等農林水産業プラットフォーム会合(グローバル・フードバリューチェーン推進官民協議会ロシア部会) 議事概要

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日時:平成31年3月13日(水曜日)14時30分~16時10分
場所:TKP赤坂駅カンファレンスセンター

議事概要

1.開会挨拶(農林水産省 松島農林水産審議官)
 本年度のプラットフォーム会合は活発な活動を行った。
 2018年5月、グロムイコ前ロシア農業省次官を迎え、日露農業セミナーを開催した。同年7月と10~11月の2回、ロシア極東への官民ミッションを派遣した。同年10月、ロシア最大級の農業展示会「黄金の秋」にパートナー国として参加した。同年12月、アムール州、ノヴゴロド州の官民関係者を迎え、プラットフォーム会合を開催した。
 本日の会合を通して、ぜひビジネスのヒントを持ち帰っていただければありがたい。
 来年度もロシア政府と協力し、より有意義な会合となるよう努力したい。

2.議事
(1)平成30年度委託調査結果報告
((株)野村総合研究所 グローバルインフラコンサルティング部 石本仰コンサルタント)
(ア)ロシアの植物新品種登録制度
 日本企業により指摘された課題は、「育成者権とは別に使用権が必要」、「品種登録委員会が1年に1度しか開催されず手続きに時間がかかる」、「全12地域ごとに使用権が必要」、「EUでは認められている販売登録の申請期間中の仮販売について規定がない」という4点に集約される。
 ロシアはUPOV条約に加盟しているので、育成者権の基準や登録プロセスは加盟国と同じであるが、商用利用に関しては別途使用権が存在し、国内12地域ごとに登録が必要。
 使用権の登録プロセスでは経済的有用性の評価が特徴的。技術的評価、収穫量、食味評価、保存性など、試験栽培を通じて整理した上で登録が可能となる。1930年代から存在する規定で、安全性、農業事業者保護、Non-GMOの担保という背景がある。

(イ)ロシア物流ハブ計画の実態調査
 ロシアにおける最新の農業振興プログラムの中に物流計画が規定されている。
 農業関係の物流拠点整備の際の支援として低利ローンがある。
 物流拠点建設計画としては、極東からノヴォシビルスクを通ってヨーロッパロシアまでに複数の大きな拠点を造り、その周辺に小さな拠点を造っていくもの。
 現時点ではモスクワ郊外のセリャチノ、ノヴォシビルスクのロスアグロマーケット、ウスリースクのドライポートで広域物流拠点を造っている。一方、ロシア極東においては沿海地方やハバロフスクで、ハバロフスクのアグロハブ、沿海地方のDCプリモリエなどの地域物流拠点の建設が進んでいる。
 基本的に広域物流については、東側から西側へ水産物を、西側から東側へ生鮮農産物を持っていくという構造。今は冷蔵設備や冷蔵輸送に重きを置いている。今後は加工設備、包装設備など、高度な物流管理が予定されているので、日本の技術の導入の可能性があると考えている。

(ウ)ロシア極東の農地開発における協力の可能性
 ロシア極東の課題としては、「農業労働力の不足」、「未利用耕地の増加」、「かんがい・排水システムの機能低下」、「農業機械の老朽化や不十分な農業機械保有率」、「肥料(無機肥料・有機肥料)の低い投入率」という5つに集約される。
 課題を踏まえた開発の協力としては、「適切な土壌管理システムの構築」、「栽培管理作業の効率性向上」、「収穫・収穫後管理の改善」などが考えられる。これらを通じて、生産・貿易の増加、加工の付加価値化までつながる可能性がある。

(2)平成30年度シベリア鉄道による貨物輸送パイロット事業結果報告
(国土交通省 国際物流課 桒名専門官)
 海上輸送と航空輸送が日露・日欧を結ぶ物流モードとして確立されている。シベリア鉄道は第3の輸送手段の選択肢として有望であるとしてロシアと協議を続けている。
 公募により7つのパイロット輸送を選定し、2018年8~12月に実施し、2019年1~3月に結果を取りまとめた。
 「リードタイム(輸送日数)は長くないか」、「振動・温湿度の変化による輸送品質は大丈夫か」、「手続きは煩雑にならないか」といった課題について検証を行った。
 リードタイムは15~30日で、海上輸送の2分の1~3分の1の日数となった。今回が初めてのテストであったためリードタイムにばらつきが出たが、今後慣れてくるに従って日数は安定してくると思われる。
 温湿度については、冬期でも露点温度を下回った瞬間はなく、貨物の梱包外装からも温湿度差による結露・水漏れ等はなかった。振動については、日本国内での高速道路走行時と同程度であった。今回輸送した貨物には大きなダメージはなかった。
 手続きについては、幾つかロシア特有のものがあった。
 通関では、グローバルスタンダードであるMT B/L(Multimodal Transport Bill of Lading)は認められず、実際(アクチュアル)の荷送人および荷受人を記載したマスターB/Lの提示が求められる。事前輸入申告により通常1日程度で輸入許可が下りるため、リードタイムの短縮に役立つ。
 混載輸送はできないといわれていたが、方法に気を付ければ可能だと確認した。
 食品(一部の缶・ペットボトル等の清涼飲料水等を含む)は年間を通じてリーファーコンテナでの輸送が可能。一方で、ドライコンテナを使用した輸送に関しては、冬期(11~3月)および夏期(6~8月)は不可とされている。解決方法としては、荷受人からロシア鉄道宛に「万が一、品質劣化等が発生した場合でも、ロシア鉄道には補償等を求めない」という内容のレター(Claim Refusal Letter)を発行することで、ドライコンテナでの輸送が可能であることが確認できた。
 その他、危険品輸送や植物検疫などの手続きについても明らかにした。
 シベリア鉄道では海上輸送と比較してリードタイムを短縮できるので、「在庫圧縮を通じたコスト削減」、「食品輸送における販売可能日数の延長」、「海上輸送では間に合わない貨物の輸送」といった優位性がある。
 今後は航空輸送や海上輸送に対抗し得る主要な輸送手段として期待している。
 来年度はヨーロッパ方面への輸送についても検証したい。

(3)平成30年度補助事業結果報告
(ア)ロシア極東地域における牧草(チモシー)の試験栽培とロシア極東産木質ペレットの事業化可能性調査((株)JSN 濵野様、河尾様)
 チモシーはKing of Hay(牧草の王様)と呼ばれ、酪農および肉牛(子牛)粗飼料の中心的な牧草である。供給先の多角化としてロシアも候補に挙がっているため、ウスリースク市とカレノフカ村という沿海地方の2カ所で試験栽培を実施した。
 ウスリースク市では、沿海地方国立農業アカデミーの試験栽培場(3.5ヘクタール)で検証した結果、初年度は収穫までは至らず、2年目以降に収穫が可能になることが判明した。
 カレノフカ村の一般の農家(3.5ヘクタール)では、2年目以降は良質のチモシーが収穫でき、商品化できることが判明した。
 初年度に収穫できないことは事業化にとって経済的リスクとなる。また、チモシー単体で栽培する農家は少ないという課題もある。
 過去3年は雨が多く、土壌の水分が多くなっている。乾牧草のチモシーにとっては7~8月に雨が多いことは大きなリスクになる。
 また、ロシアでは口蹄疫が発生しているので、日本への輸出に当たっては加熱処理を行う必要がある。これには日露の官民一体の協力が不可欠である。一方で、加熱処理の際に品質が変化するという課題もある。
 木質ペレットは、第5次エネルギー基本計画を受けて需要が伸びる予測があるため、ロシア極東の供給ポテンシャルを調査した。
 林業の中心地であるハバロフスク地方では、加工残渣(かこうざんさ)に付加価値を与えて販売したいという意向があり、日本向けペレットの増産に意欲がある。
 RFPグループが日本企業と合弁会社を設立し、日本向けのペレット工場を建設中で、今年生産が始まる予定である。現在の年間生産能力9万トンであるが、将来的には50万トンに拡大する意向を持っている。
 シベリアにも非常に大きな木材企業がたくさんある。極東だけではカバーできないことを考えるとシベリアでの調達先の開拓を視野に入れる必要もある。
 極東の大手ペレットメーカーのアルカイムは2018年に経営破綻した。提携先を考える上で経営状態についても十分考慮する必要がある。

(イ)ロシア極東地域における産業用冷凍・冷蔵の現状と課題((株)前川製作所 加藤様)
 日露両政府の中で「8項目の協力プラン」により「極東の産業振興・輸出基地化」が重点的な課題として認識されている。しかし、極東はポテンシャルを生かし切れていないように思えるため、実態を正確に捉え、課題を抽出することを目指した。
 今回の調査事業の柱は、現地調査、セミナー、キーマンの招聘(しょうへい)の3つとなる。
 現地調査では、4度の現地出張で51日間の滞在し、42社を訪問、面談、ヒアリング、水産加工場や産業用冷蔵庫の視察を行った。
 セミナーは、カムチャッカ半島とウラジオストクで2回実施し、合わせて50名強が参加した。
 招聘事業では、ウラジオストクおよびハバロフスクの地域を代表する産業用冷蔵庫事業のディレクタークラスや工事業者の副社長など、4名から現地の話を伺った。
 一連の活動で、第1に「カムチャッカ半島の水産加工場の実態」について検証した。
 極東地域の年間漁獲量279万トンのうち、カムチャッカが95万トン(約35%)を占め、同地域最大の水揚げ量を持っている。日本の水揚げ量ベスト3を合わせても約50トンなので、ポテンシャルの高さを感じる。
 鮭鱒類(けいそんるい)の加工場のみで60カ所を超える。ただし、道路が整備されておらず、ヘリコプターでの移動となる。
 キログラム単価で見るとベニザケが最も高価で、スケソウダラの4~6倍である。ただし、ベニザケの水揚げは数カ所と限定的になる。北に行くほど、鮭鱒類に占める割合は単価が安いカラフトマスが多くなるので、高付加価値化に関心を寄せている。
 冷凍機など、事業のコアになる部分には日本製を採用している。
 付加価値向上への投資に興味はあるが、実績はごく少数になる。ただし、省人化への投資は惜しまない。サケの頭を落とすヘッドカッターのオートメーション化には、日本製品が多く採用されている。
 チリのサーモン加工場に比べると前時代的な構造である。ただし、養殖ではなく天然の鮭鱒類を扱うので、オペレーションの差異は考慮すべきである。
 水産加工場では、付加価値を向上させる技術・知識・ノウハウ、マーケットサイドの情報などを欲している。新技術や設備投資に対する投資も意欲的である一方、キャッシュフローが安定しないため、長期案件を白紙に戻されるリスクもある。
 バイヤーサイドでは、資源の豊富さに関心を持っている。ただし、「多額の前渡金を要求される」、「事前契約を結んでも、高価な買取価格を提示されると商品が流れてしまい、サプライヤーへの契約不履行が生じる」といったリスクの高さが指摘されている。
 第2に「カムチャッカ半島、ウラジオストク、ハバロフスクの産業用冷蔵庫の実態」については、現地の産業用冷蔵庫に関する情報の具体化・網羅化、そして電力代の単価や事業の展望などから日本製省エネ機器の導入の可能性を検証した。
 カムチャッカでは、各水産加工場が小規模(500~3,000トン)の保管庫を所有している。ウラジオストクでは、国内と海外向けに分かれるが、大小問わず冷蔵庫が存在し、比較的数も多い。ハバロフスクでは、2万3,000トンの冷蔵庫が最大で、他事業者は数千トン規模が多い。
 直近10年では2,000~4,000トン級の新築冷蔵庫の投資需要が旺盛で、初期投資の安さから欧州製小型冷凍機が第1の選択肢となっている。イニシャルコストの安さ、事業参入のしやすさ、法的な規制の緩さから、中小サイズが人気となっている。
 ウラジオストクを中心に巨大冷蔵庫(1万トンクラス)も散見されるが、老朽化が進み、改善の余地も多い。ただし、コアとなる冷凍機はメンテナンスの質が高く、数十年前の製品を使うことに抵抗がない。従って、冷蔵庫の更新にはあまり積極的ではない。
 加えて、電気代も日本の半額程度と安く据え置かれているため、高価な日本製省エネ機器の導入に関心はあるが、魅力的な提案にすることは難しい。

(ウ)ロシアにおける水産物のフードバリューチェーンについて
((有)フーズシステムクリエイター 佃様)
 この調査は(株)日ソ貿易が事業主体で、当社は調査の一部を委託されている。
 日ソ貿易は2010年に活魚の輸出試験を実施したが、通関に1週間かかることが分かり諦めた。2012~2017年、養殖ハマチ(鮮魚・フィーレ)の輸出へ向け、モスクワ、サントペテルブルグ、エカテリンブルグ等でセミナーを行い、需要拡大を図ってきた。
 2017年に日ソ貿易がロシアの鮮魚の輸入の中で25位となったが、輸入数量は3.5トンと少なく、ロシアへの鮮魚の輸出はかなり難しいことが分かった。
 日本国内の経費は、産地からの物流・箱代などで約3,000円、通関で約19万円である。ロシア国内の経費は、通関で約3万3,000ルーブル、手数料・輸送料で約1,700ルーブルである。トータルで約30万円、1キログラム当たり約2万円の経費が掛かる。基本的には数量を確保しないと難しい。
 5年前に比べると、ロシアの水産物を取り巻く環境が変化している。
 第1の変化は生産基盤で起きている。2019年1月から新たな漁業制度が施行された。大型船による産業漁業に変化はないが、沿岸漁業では水揚げが義務化された。その結果、漁港のインフラ整備が必要となり、投資意欲も出てきている。
 投資クォータは、老朽化した漁船や加工施設の近代化促進のための経済的支援として位置付けられている。
 ウラジオストクの冷蔵庫は、日本における昭和40年代後半から昭和50年のレベルである。水産物は主に中国向けに輸出されており、高性能・高品質な製品とする意味合いも薄く、経済合理性に合っている部分もある。
 ムルマンスクでは、設備投資が進み、急速なインフラ整備が進んでいる。オートメーション化も図られ、われわれが認識しているロシアの加工場と違ってきている。投資枠による加工場の新設が進み、政策効果が出てきている。
 ロシアで冷凍魚の流通がメインであり、生鮮魚の流通は淡水魚が中心となっている。生産構造は輸出依存型である。
 HACCP、ISOなどの認証を取得し、高品質化が進んでいる。
 第2の変化は外食業界で起きている。日本食レストランは減少しているが、すしを出す店は多い。つまり、すしは珍しいものではなくなり、一般化してきていると考えられる。
 厳しい外食店同士の生存競争と欧州産の輸入規制の中で、日本産カキが使われるといった素材品質の向上と、接客サービスの向上が図られている。
 さらに店舗がおしゃれになっている。こういった点でも、日本のビジネスチャンスも出てきている。
 焼き鳥を出している店では、神田の居酒屋と同程度の価格で人気となっている。
 第3の変化は小売・総菜の分野で起きている。ヨーロッパのスーパーマーケットやハイパーマーケットがチェーン展開を始め、物流そのものが変わってきている。
 ロシアでは冷蔵庫の温度がマイナス18度である。その社会的な状況を踏まえて冷凍水産物の物流を考えていくべきである。
 ロシアの水産物流通は小売主導型でシステム構築していく可能性が大きい。小売の変化をきちんと見ていけば、冷凍水産物の流通の変化は自ずと見えてくる。
 ただし、肉が中心の国であるということも常に意識しておく必要がある。

(エ)日露農業投資フォーラム開催とモスクワビジネマッチングの実施
(有限責任監査法人トーマツ)
 資料の配布のみ。

(4)平成 31年度ロシア極東等農林水産業プラットフォームの活動予定(農林水産省)
 来年度もプラットフォーム会合の開催、官民ミッションの派遣、国内セミナー、委託調査などを予定している。

3.閉会

以上

お問合せ先

輸出・国際局国際地域課

代表:03-3502-8111(内線3511)
ダイヤルイン:03-3502-8058

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