平成9年度天皇杯 南波多町農業振興協議会(佐賀県伊万里市南波多町井出野)
特色
1.むらづくりの背景・動機
南波多町農業振興協議会のある伊万里市南波多地区は、佐賀県の西部、 伊万里湾の内陸部に位置する旧南波多村(14集落)で、果樹、畜産(和牛肥育)、 水稲を組み合わせた山麓複合農業が経営されている。
昭和30年代半ば、山麓地帯の零細な農業が営まれ、炭焼き、 紙すき等の副業や出稼ぎで生計が立てられ、高度経済成長期の労働力流出により、 むらの活気もなくなっていく頃、南波多農協が中心となり、 「魅力ある山麓農村の建設」を目指した30年目標の長期ビジョン(第1期長期農業振興計画)を昭和35年に策定したことをきっかけに、 数々のむらづくりのための取組みが行われてきた。
この取組みの中心的な組織が、「南波多町農業振興協議会」であり、南波多農協等各種団体、 学校等と連携しながら、活発な活動が展開されている。
2.むらづくりの内容
(1)農業生産
- 昭和45年以降、基盤整備に着手し、地区水田の78%にあたる 267haのほ場整備、 山林原野の開発による13集団126haの梨園の造成、 干ばつ常襲田の畑転換によるブドウ園12haの造成がなされ、 生産性の高い大規模果樹団地が形成された。
- 水稲では、2つの生産組合が組織され、生産から販売まで組合が一貫経営を行い、 収益を各農家の水田所有面積割りで配分する協業経営に取組み、 梨や肥育牛農家の規模拡大に貢献している。
- 梨は、造成園と在来園と合わせて210haで栽培され、 大型機械の導入やハウス栽培により、早期出荷の出来る糖度の高い高品質生産が可能となり、 全国の市場から高い評価を受けている。
- 肥育牛は、果樹園の土づくり対策として規模拡大され、独自の配合飼料により、 徹底した肉質改善に取り組み、全国トップレベルの高品質牛としての銘柄を確立した。
- また、新たな農業振興として、「ふるさと村」(道の駅)を開設し、 「都市と農村の交流、生産者と消費者のふれあい」の場として、都市住民との交流を推進している。
(2)農村生活
- 農協及び女性部が、町内の小学生を対象に、 毎月第4土曜日に農業体験学校「ちゃぐりんスクール」を開設し、子供達に、土との親しみ、 農業の大切さ・楽しさを教え、農業への関心を高めている。
- 地区の高齢者が中心となって、「京の峰塾」を平成6年から開設。 郷土の歴史や自然を学び、新たな地域文化の創造を図っている。
- 女性部が平成2年から「花いっぱい運動」に取組み、コスモスや菜の花・ひまわり等を植え、 四季を通じて花が咲き、農村景観に彩りを添えている。また、独居老人に対して年6回、 弁当を配布する活動を行い、老人から喜ばれている。
- 女性が中心となった生活環境改善の取組みが契機となって、 伊万里市では初めての集落排水施設整備が地区の3集落で実施されている。
![]() 山林原野の開発による整備された集団梨園 隣地所有者、耕作希望者の徹底した話し合いで複雑な土地利用調整が図られた。梨園は現在、13集団、126haが造成されている。 |
![]() 特産の梨を原料に使った「梨ワイン」と「佐賀牛」 |
![]() 特産の豊水 平成2年、「伊万里っ娘 豊水」と命名。西日本一の銘柄産地品目に成長する。 |
![]() 町のシンボル「大野岳」 自然公園として、町民のレクリエーションの場として親しまれている。「花いっぱい運動」で播かれた一面の「菜の花」が道行く人を楽しませる。 |
![]() 都市との交流の拠点「ふるさと村」 農産物の直販、農産加工、ふれあい農園、陶芸教室、イベントなど、地域住民と消費者との交流が積極的に行われている。 |
![]() ふれあい農園 「ふるさと村」に隣接し、43区画(1区画140m2)の貸し農園を市民や都市住民に提供。近隣の農家が指導にあたる。 |
![]() 伊万里っ娘豊水 ロードレース大会 毎年12月に恒例となったレース大会には、町内はもちろん県内から600人が参加。 |
![]() 中国・東南アジアからの研修生の受け入れも盛ん。 |
![]() ちゃぐりんスクール 町内在住の小学生を対象とした農業体験学校「ちゃぐりんスクール」には、30人が参加農作業体験を通じ農業の大切さを学ぶ。 |
お問合せ先
農村振興局農村政策部都市農村交流課
ダイヤルイン:03-3502-5946
FAX:03-3595-6340