平成12年度天皇杯 正名字(鹿児島県大島郡知名町正)
特色
1.むらづくりの背景・動機
知名町は、奄美群島の一つである沖永良部島の南西部に位置し、さとうきびを基幹作物に 葉たばこ、ばれいしょ、切り花等を組み合わせた複合経営が営まれる農村である。
正名地区は島の西海岸に面し、台風、潮害、干ばつ等劣悪な農業条件を克服するため、 古くから地区民総ぐるみで、防潮林の植栽やため池の整備等の農業生産基盤を整備するとともに、 さとうきびとの輪作作物の葉たばこ、切り花等を導入し、農業生産体制の強化に取り組んできた。
しかし、昭和52年の沖永良部台風により壊滅的な被害を受け、当時121戸のうち72戸の住宅が 全半壊し、農作物・農業施設とも甚大な被害を受けた。
このため、「鳥より先に飛び起きて、増産見つめて農場へ」を合い言葉に、再び復興への話し合い活動が 盛んとなり、農業面では切り花の施設化とともに新品目の導入、基盤整備・近代化の推進、生活文化面では 活動拠点となる生活館の建設、生活道路の改良、青年・婦人グループ・子供会等による文化活動など 地域の歴史を大切にする村づくり活動が一層活発化した。
2.むらづくりの内容
(1)農業生産
- 防潮堤の設置、防潮林・防風林植栽、ため池の整備を住民一丸となって取り組み、 厳しい自然条件・地理条件を克服した。
- さとうきびを基幹とした高所得複合経営が確立され、さとうきびは製糖により地域経済を支える外、 防風、地力回復、土壌消毒、たい肥原料、粗飼料等の用途や効用があり、ユイ制度による相互扶助精神も 育ててきた。輪作体系としてユリ、葉たばこ、ばれいしょ等が組み合わされ、専業農家の平均粗生産額は約1千万 となっている。
- 農業後継者率が82%と高く、栽培技術の研さん、新品目・先端技術の導入、共同作業、受託作業等の実践を通じて 地域農業を牽引している。
- 流通のハンデを克服するため、ばれいしょ等県のリレー出荷の先駆け産地として生産体制を確立、先端技術を活用したユリの栽培・新品種 の優良種苗の育成、真空予冷施設・フリーザーコンテナによる出荷体制など高品質農業が確立されている。
- 牛糞ときびカスによる完熟堆肥と人糞・家畜糞尿による液肥の農地への還元、使用済み農薬廃液の施設処理、 廃ビニールの一括処理、生活ゴミの島内完全処理など環境保全・資源環境型農業が実践されている。
(2)農村生活
- 手作り遊園地を初めとして、共同墓地の設置、生活道路の拡張、街灯の設置、集会施設を建設 するとともに、子供会・老人クラブ・婦人会等による清掃や花の植え付け等の環境美化活動の実施など 快適で住みよい生活環境の整備に取り組んでいる。
- 大運動会、毎年元旦に帰省者をもてなす「新春、歌と踊(うどぅ)いあしび」、先人たちの水と風に対する 努力を思い起こし今日の繁栄に感謝する「暗川(くらごう)祭り」、300年の伝統をもつ町の無形文化財 「正名やっこ踊り」の子供達への伝承、子供達が教科書等を地区内の拡声機を通じて朗読する「朝読み・夕読み」 など世代を越えた地区住民のふれあいと活発な文化・教育活動が行われている。
- 婦人会・若妻会・サンサンミセス会(地区外から嫁いできた女性の会)等による行事での唄や踊りの披露、 老人世帯への声かけ運動、農産加工品の宅配便、労働時間の短縮をはじめとするライフスタイルの改善など 女性グループが活躍している。
![]() 空から見た正名字全景 集落から左側(西)が地区内の農地です |
![]() 永良部ユリ 百合の発祥の地といわれる永良部ユリ(テッポウユリ)です。 |
![]() 20年以上続けている子ども達の朝読み・夕読み 地区内の拡声機を通して、教科書等を朗読します。 |
![]() 若妻会も元気です。 歌に、踊りに、ときには組体操もやります。 |
お問合せ先
農村振興局農村政策部都市農村交流課
ダイヤルイン:03-3502-5946
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