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農林水産省

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東日本大震災からの復旧・復興に向けて

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大規模経営を可能にする最新技術をフル活用

震災による津波で、被災した農家に代わり、
100haの農地を守る農業者集団、ただいま奮闘中!
[宮城県名取市/(有)耕谷アグリサービス]


東日本大震災による津波により、名取市沿岸部では1,245haの水田が被災しました。米作りを断念した農家に代わって立ち上がった農業者集団は、田起こし後に直接種もみを播く「乾田直播(かんでんちょくはん)」などの技術を導入し、少人数で100haもの農地を守る大規模経営を実現しています。

「乾田直播」を行った面積は、平成24年時点で60a。毎年、少しずつ拡大している
「乾田直播」を行った面積は、平成24年時点で60a。毎年、少しずつ拡大している

現在、スタッフは役員4人、正社員8人、パート10人の計22名。前列左から4番目が代表取締役の大友清康さん

現在、スタッフは役員4人、正社員8人、パート10人の計22名。前列左から4番目が代表取締役の大友清康さん


被災直後の農地の様子

水田はがれきの山に埋もれ、農機具はすべて流された。「耕谷ではなく、まるで〝荒野〞のようだった」と、前代表の佐藤さん

水田はがれきの山に埋もれ、農機具はすべて流された。「耕谷ではなく、まるで〝荒野〞のようだった」と、前代表の佐藤さん

水田はがれきの山に埋もれ、農機具はすべて流された。「耕谷ではなく、まるで〝荒野〞のようだった」と、前代表の佐藤さん

水田はがれきの山に埋もれ、農機具はすべて流された。「耕谷ではなく、まるで〝荒野〞のようだった」と、前代表の佐藤さん




文/梶原芳恵
写真提供/(有)耕谷アグリサービス
津波で農地の9割が浸水
宮城県の南東に位置する名取市。肥沃な土地と温暖な気候に恵まれ、米、野菜、果物、花きなど、さまざまな作物が栽培されてきました。

(有)耕谷アグリサービスは、平成15年、耕谷地区の4人の農家が設立。高齢者が多く、担い手のいない米農家・野菜農家から、農作業を受託し、地域の農業を支えてきました。

当初の経営面積は約35haでしたが、平成22年には76haまで拡大。収益も1億円を突破し、10人の社員を雇用するまでに成長しました。

しかし、平成23年3月11日、東日本大震災による津波で、農地の9割が浸水。トラクター3台も流されました。

「津波が引いた後、田んぼに行ってみると、一面、がれきの山でした。愕然としましたが、とにかく早く行動を起こさなければ、と思いました」と、代表取締役の大友清康さんは、当時を振り返ります。

大友さんらは、震災直後から農業機械の入手に奔走。がれきの撤去や農地の除塩作業も行いました。また、農地の排水施設が被災し、この年の米作りを見合わせることになった近隣の農家から依頼があったことをきっかけに、60haの農地に大豆を作付けし、事業を継続しました。

米の「乾田直播」を導入して、生産コストを3割削減!
津波により、沿岸部では、3分の2を超える農家が農業を断念しました。(有)耕谷アグリサービスには、そうした農家からの委託が急増。平成24年には、経営面積が約100haに達する一方、人手不足に悩むようになりました。

「委託されたものは、すべて受けたいと考えていましたが、とにかく人手が足りませんでした。それで少人数でも、大規模な農業経営ができるよう、農作業を効率化する技術の導入が必要だと実感したんです」

そこで、農林水産省が被災地の早期復興を目的に立ち上げた「食料生産地域再生のための先端技術展開事業」に参加することに。この事業は、農業者が研究機関や自治体と連携し、最新技術の実証研究を行うものです。

まず取り組んだのは、米の「乾田直播」です。これは、水を張っていない田に、直接種もみを播き、苗がある程度育ったところで水を入れる栽培法。育苗や代掻(しろかき)の必要がないため、作業時間が大幅に減り、生産コストを2~3割削減できます。農地に凹凸があると、生育にバラつきが出て収穫が下がるのが難点でしたが、耕谷アグリサービスでは、大型機械で農地を精密に平らにする新技術を導入。収量を、通常の栽培方法並みにすることに成功しました。

また、「ICT(情報通信技術)」を活用した栽培管理も実践。これは、作業内容をデータとして記録したり、降水量や日照時間などの気象情報を収集したりするシステムで、作業の効率化や、収穫適期の予測に役立っています。

このほか、アスパラガスの生育を早める「伏せ込み促成栽培」や、キャベツの周年栽培にもチャレンジ中です。

「この地域の復興と農業の未来のためにも、こうした技術開発に、いっそう力を入れていきたいですね」と、大友さんは力強く話してくれました。