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農林水産省

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MAFF TOPICS(1)


MAFFとは農林水産省の英語表記「Ministry of Agriculture, Forestry and Fisheries」の略称です。
「MAFF TOPICS」では、農林水産省からの最新ニュースなどを中心に、暮らしに役立つさまざまな情報をお届けします。

MAFF PERSON  日本の漁場と資源を守るために。水産庁「漁業取締船」の24時間



東光丸の巽重夫船長(左)と、事務員の大窪朋子さん(右)。この制服は、寄港地に入港するときや対外的行事で着用するもの 東光丸の巽重夫船長(左)と、事務員の大窪朋子さん(右)。
この制服は、寄港地に入港するときや対外的行事で着用するもの
水産庁本庁所属船の「東光丸」(平成8年就航、2071t) 水産庁本庁所属船の「東光丸」(平成8年就航、2071t)


違法操業などから日本の水産資源を守る
日本の排他的経済水域(EEZ)は世界有数の水産資源を有しており、好漁場として知られています。そのため、隣接国にとっても魅力的な漁業水域であり、「海洋法に関する国際連合条約」にのっとって、日本が許可した外国船も漁ができるようになっています。しかしながら、ルールを無視した密漁や、違法操業が後を絶たないのも現状です。その取締りのため、重要な任務を担っているのが水産庁の「漁業取締船」です。

現在、漁業取締船は、水産庁本庁および全国6カ所の漁業調整事務所、沖縄の内閣府沖縄総合事務局、水産庁・沖縄総合事務局外国漁船合同対策本部に44隻が配備され、法令遵守の指導、違法操業の摘発などを行っています。


一時も気を抜けない過酷な取締業務
取締船の役割について、「沖縄周辺海域における外国漁船の集中取締り」に配備中の漁業取締船「東光丸」の船長を務める巽 重夫さんに聞きました。

「取締船は主に日本の取締り海域を航行し、漁業操業を行う日本および外国漁船が漁業法令を守っているか監視します。司法警察権を持つ我々漁業監督官が、法令の遵守状況を監視、検査することによって、漁業秩序の維持・確立と違反の抑止に貢献するのが最大の目的です」

ひとたび出港すると、10日~2週間は24時間体制で取締業務に従事。事件は日没後から日の出前にかけて突発的に発生することが多く、一時も気を抜くことはできません。

東光丸に乗船している事務員の大窪朋子さんは、「日々、レーダー画面や海図を見ながら、本船の状況把握に努めている」といい、外国漁船を拿捕したときには、検察庁に送付する送致書類の作成から、写真撮影までを行うこともあるそうです。



船の推進装置の運転管理を行う機関制御室での当直風景
船の推進装置の運転管理を行う機関制御室での当直風景


24時間3交代制で操舵室から海上を監視する漁業監督官
24時間3交代制で操舵室から海上を監視する漁業監督官


取締船に装備されている取締艇。外国漁船などへ乗り込む際に使う
取締船に装備されている取締艇。外国漁船などへ乗り込む際に使う


漁業取締船には警告に使用するスピーカーや電光掲示板を装備
漁業取締船には警告に使用するスピーカーや電光掲示板を装備


漁業監督官は防弾防刃チョッキやヘルメット等の特殊装具で身を守る
漁業監督官は防弾防刃チョッキやヘルメット等の特殊装具で身を守る



小笠原諸島周辺でのさんご船取締りでも活躍
最近の大きな事件といえば、昨年秋から急増した小笠原諸島周辺の領海やEEZにおける、中国漁船のさんご密漁でしょう。東光丸も急きょ航海予定を変更し、水産庁指揮船として他の取締船と連携しながら、11月には1日200隻を超える密漁船の対応にあたりました。過去に例を見ない数の船を前に、放水銃などの装備を駆使し、状況を的確に見極めながらさまざまな排除活動を実施。大しけの夜、無灯火で逃走するさんご船に接近して退去警告を行うなど、神経を使う場面も多々あったそうです。

こうした真摯な排除行動により、11月中旬にはさんご船の排除に至りました。

さて、こうした海上での違法操業に関する取締りは、海上保安庁の仕事という印象が強いかもしれません。しかし、海上保安庁は救命や沿岸警備の業務も兼務しているため、漁業取締りに特化していません。対する水産庁は、漁業関連法令の取締りに特化しているのが大きな特徴です。

そのため、取締船の乗組員は漁業調査船の乗船経験者など、魚種ごとの漁法や漁具に精通しています。そうした彼らの経験が、立入検査などの現場で、適正かつ厳格な漁業取締りにつながっているのです。

「これからも我々水産庁漁業取締船は日本全国の海を航行し、日本の水産資源の管理のため、漁業者や国民から信頼される漁業取締りを実践していきます」(巽船長)

こうした地道な活動により、貴重な日本の漁場と水産資源は守られているのです。




漁業監督官は防弾防刃チョッキやヘルメット等の特殊装具で身を守る
「乗組員全員が無事に東京へ帰港したときには、本当にホッとします」(巽船長)




POINT
沖縄周辺海域における外国漁船の集中取締りを実施

昨年に続き、沖縄周辺海域におけるマグロの盛漁期(平成27年4月から7月末まで)の間、日本の漁業者が外国漁船とトラブルなく安心して操業できるように、漁業取締船と取締航空機を日台民間漁業取決め適用水域周辺海域や八重山周辺海域に重点的に配備し、監視・取締りを強化しています。

最後の警告手段として放水銃で威嚇することも

最後の警告手段として放水銃で威嚇することも

外国漁船の甲板上で検査する漁業監督官

外国漁船の甲板上で検査する漁業監督官



文/小野 均    写真/武安弘毅