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特集 太平洋クロマグロの資源管理 クロマグロ食す・守る(3)

クロマグロを「食す」  職人たちが語る魅力と味わい



圧倒的な存在感から“魚の王様”と称されているクロマグロ。長年扱ってきたプロの職人たちが、その魅力を語ります。


マグロは鮮度が命。1m近い胴切り包丁で素早く切り分けられていく様は「見事」の一言  包丁の写真
マグロは鮮度が命。1メートル近い胴切り包丁で素早く切り分けられていく様は「見事」の一言


季節やエサで味が劇的に変わる
クロマグロの目利きとして活躍する仲卸業者は、切り取られた尻尾、腹の一部、全体的な色合いや雰囲気だけを頼りに、一体数十万~数百万円もする代物を競り落としていきます。実際に解体してみるまではその良し悪しは分からず、まさに経験と勘が物を言う世界。

老舗仲卸「樋長」(ひちょう)を率いる社長の飯田統一郎(いいだとういちろう)さんは、「季節、漁場によってある程度味や質などの見当をつける」と言います。冬のクロマグロは脂がしっかり乗っていますが、それ以外の季節は比較的脂が少なく、食べているエサによっても味は劇的に違ってくるのだそう。「例えば、冬の津軽海峡でイカを食べているクロマグロは、脂が乗っていてコクとうま味が強いのが特徴です」。


複雑さと凝縮感がクロマグロの魅力
また、クロマグロは漁法によっても味が異なり、「はえ縄漁(※注)や一本釣りで獲った魚は、適度に暴れて疲れてから揚げられるので身の質が安定していて色持ちが良く、定置網漁だと繊細でやさしい味になる傾向があります」。さらに、船上で神経締めした後に氷で冷やすなどの処理をしたかどうかでも味がまったく変わるので、どの船で獲れたのかもチェックしているそうです。

「クロマグロの魅力は、食べたエサや部位によって変わる味の複雑さと凝縮感。”魚の王様”と呼ばれるだけあって、別格ですね」と飯田さんは言います。

その一方で、ここ10年ほどの間に市場に出回るクロマグロの数が激減したことには危機感を強めており、「資源量が回復するように漁獲規制などの対策を徹底して欲しい」と訴えています。

※注:「幹縄(みきなわ)」と呼ばれる1本のロープに、エサを付けた複数の「枝縄(えだなわ)」をぶら下げて漁場に仕掛け、後で回収する漁法。



「いい魚は骨が柔らかく、皮目が薄くてウロコに包丁がスパっと入る」(飯田さん)
「いい魚は骨が柔らかく、皮目が薄くてウロコに包丁がスパっと入る」(樋長・飯田さん)
セリ場で実際に目にできるのは、切り落とされた尻尾と切り込みが入った腹の内側(一部)のみ。産地や漁法も手掛かりにしてマグロの味をイメージする
セリ場で実際に目にできるのは、切り落とされた尻尾と切り込みが入った腹の内側(一部)のみ。産地や漁法も手掛かりにしてマグロの味をイメージする

岩手県・釜石で揚がった太平洋クロマグロ。定置網漁で揚がったマグロの味は、繊細な風味が際立つ
岩手県・釜石で揚がった太平洋クロマグロ。定置網漁で揚がったマグロの味は、繊細な風味が際立つ


樋長 飯田統一郎さん 樋長
飯田統一郎さん

1861年(文久元年)創業の老舗仲卸「樋長」の8代目当主。
http://www.hicho.co.jp


顧客が希望する価格帯で最高のマグロを競り落とす。オーダー通りの重さに切り分けて、丁寧に梱包する 顧客が希望する価格帯で最高のマグロを競り落とす。オーダー通りの重さに切り分けて、丁寧に梱包する




寿司通の間で話題!  こだわり抜いた究極のマグロづくし


太平洋クロマグロの食し方として、一番人気があるのは何と言ってもお寿司。「マグロといえばここ!」と寿司通たちが口をそろえる店を取材しました。
本マグロの握り


のれんに「近海」「生本まぐろ」の文字が大きく躍る、東京・奥沢の入船寿司。開店以来、近海で獲れた生の本マグロ(太平洋クロマグロ)にこだわり、1日も欠かすことなく本マグロを扱い続けて47年の本多克己さんが見せてくれたのは、その日仕入れたばかりの和歌山県・那智勝浦産(はえ縄)本マグロ。「6、7月は脂の乗りが良くないのですが、この時期としては最高の魚が手に入りました」。

お店の看板メニューは、“築地で一番”の本マグロを使った「鮪づくしにぎり」と「究極の鮪づくし丼」(下の写真)。大トロ、中トロ、霜降り、皮ぎし、赤身、大トロのあぶりなど、本マグロの美味しさを存分に味わうことができます。

「赤身は酸味があってさっぱりうまいし、中トロは程よく、霜降りや大トロはしっかり乗った脂の味がすばらしい。それを火であぶるとまた違った味わいが楽しめる」と本多さん。「食べて感動があるのが本マグロの魅力。お客さんの笑顔を見続けたいので、生涯現役で頑張ります」と語ってくれました。

和歌山県那智勝浦産のマグロ


これぞ究極のまぐろ丼!!

これぞ究極のまぐろ丼!!赤身、背側と骨に近い部分の身。しょう油漬けにして提供される。大トロ、「腹カミ」と呼ばれる腹側のカマに近い部分。脂肪分が多い	皮ぎし、皮付近の脂肪分が多い身。呼び名は本多さんのオリジナル。中トロ、「腹ナカ」「腹シモ」と呼ばれる腹側中央から尾にかけての部分。霜降り、大トロと中トロの中間。赤身の中に脂肪分が細かく入り込む。大トロのあぶり、さっとあぶり、にんにくのしょう油漬けをトッピングする。

入船寿司 入船寿司
東京都世田谷区奥沢3-31-7
開店以来約半世紀、冷凍、養殖モノは一切使っていないという徹底ぶり。その評判は海外にも広まり、外国人観光客も連日訪れている。


入船寿司 本多克己さん 入船寿司  本多克己さん