明日をつくる 東日本の復旧・復興に向けて vol.4
漁師妻たちのめげない気質がお店も地元も元気にさせた
茨城県大洗町 大洗町漁協直営食堂かあちゃんの店
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漁師のかあちゃんたちの新鮮な魚料理が評判に
「このあたりは船びき網漁のしらすが名物ですが、漁期は限られ、漁獲量も日によって差があります。何とか売上を安定させたい、という思いがありました」と語るのは大洗町漁業協同組合女性部部長の川上 悦(かわかみ えつ)さん。
また、水揚げされる魚には、数やサイズがそろわないために市場に出しにくいものもあります。これらを活用しようと漁協女性部の有志の13人が魚市場の片隅で魚介類の加工販売を始めたのが平成17年。直売場にイートインのようなごく小さな店を併設しました。
「当初は思うように売れなかったのですが、続けているうち、新鮮な魚介類を用いた食堂の料理の評判が口コミで広がり、盛況になったのです」
この人気に注目した大洗町の小谷隆亮(こたに たかあき)町長や漁協の役員会が、女性部に本格的な食堂の運営を持ちかけます。
「漁協内には、素人に食堂の経営ができるのか、という慎重論もありましたが、女性部の有志のみなさんは諦めずに準備を進めました。そのパワーに圧倒されました」と振り返るのは、大洗町漁協参事の臼庭明伸(うすにわ あきのぶ)さん。
確かに、食堂の経営は素人です。失敗して漁協に迷惑をかけるわけにはいきません。本格的に働くとなると、家事との両立も大変に。それでも有志が中心となってみんなで話し合う中、「せっかくのおいしい魚をもっと多くの人に楽しんでいただこう! 何が何でも成功させて地域の漁業の役に立とう!」 と気持ちが一つにまとまりました。いったんやる、と腹を決めた漁師のかあちゃんたちは底知れぬバイタリティを発揮し、一致団結して開店に向けて邁進します。中小企業診断士を招いて経営の勉強会を行い、接客研修、衛生管理指導を受けるなど着々と準備を進め、ついに22年4月に大洗町漁協の直営食堂「かあちゃんの店」を開店しました。
大洗町漁協は大規模で、女性部員数も県内の漁協で有数の多さです。この女性部のチームワークを生かすことで、安定的な運営を行っています。
女性部の45人は3班体制を組み、1週間交代で働くことにしました。メニューは、魚を知り尽くした漁師のかあちゃんである女性部のみんなで考えました。とくに人気なのがしらすです。
臼庭さんは「水産試験場が開発した冷凍技術で、しらすを通年で提供できるようになったことも大きかった」と言います。
当初の狙い通り、食堂が地元で水揚げされる水産物を買い上げることで、魚価の安定にも寄与しました。
「このあたりは船びき網漁のしらすが名物ですが、漁期は限られ、漁獲量も日によって差があります。何とか売上を安定させたい、という思いがありました」と語るのは大洗町漁業協同組合女性部部長の川上 悦(かわかみ えつ)さん。
また、水揚げされる魚には、数やサイズがそろわないために市場に出しにくいものもあります。これらを活用しようと漁協女性部の有志の13人が魚市場の片隅で魚介類の加工販売を始めたのが平成17年。直売場にイートインのようなごく小さな店を併設しました。
「当初は思うように売れなかったのですが、続けているうち、新鮮な魚介類を用いた食堂の料理の評判が口コミで広がり、盛況になったのです」
この人気に注目した大洗町の小谷隆亮(こたに たかあき)町長や漁協の役員会が、女性部に本格的な食堂の運営を持ちかけます。
「漁協内には、素人に食堂の経営ができるのか、という慎重論もありましたが、女性部の有志のみなさんは諦めずに準備を進めました。そのパワーに圧倒されました」と振り返るのは、大洗町漁協参事の臼庭明伸(うすにわ あきのぶ)さん。
確かに、食堂の経営は素人です。失敗して漁協に迷惑をかけるわけにはいきません。本格的に働くとなると、家事との両立も大変に。それでも有志が中心となってみんなで話し合う中、「せっかくのおいしい魚をもっと多くの人に楽しんでいただこう! 何が何でも成功させて地域の漁業の役に立とう!」 と気持ちが一つにまとまりました。いったんやる、と腹を決めた漁師のかあちゃんたちは底知れぬバイタリティを発揮し、一致団結して開店に向けて邁進します。中小企業診断士を招いて経営の勉強会を行い、接客研修、衛生管理指導を受けるなど着々と準備を進め、ついに22年4月に大洗町漁協の直営食堂「かあちゃんの店」を開店しました。
大洗町漁協は大規模で、女性部員数も県内の漁協で有数の多さです。この女性部のチームワークを生かすことで、安定的な運営を行っています。
女性部の45人は3班体制を組み、1週間交代で働くことにしました。メニューは、魚を知り尽くした漁師のかあちゃんである女性部のみんなで考えました。とくに人気なのがしらすです。
臼庭さんは「水産試験場が開発した冷凍技術で、しらすを通年で提供できるようになったことも大きかった」と言います。
当初の狙い通り、食堂が地元で水揚げされる水産物を買い上げることで、魚価の安定にも寄与しました。
![]() 一番人気のメニュー「生しらす丼定食」972円 |
![]() 連日のにぎわいを見せる「かあちゃんの店」 |
震災の被害を乗り越え年商は1億円を突破
ところが、順調に開店1周年を迎えようとした矢先、東日本大震災が発生。3度にわたって津波が漁港に押し寄せました。魚市場は地盤沈下、多くの漁船が被災し、「かあちゃんの店」も建物こそ残ったものの、壁には穴が開き、電気器具も食器も使えなくなり、休業を余儀なくされました。「水道も止まってしまい、仕方なく海水を汲んで店の掃除をしました」(川上さん)。
それでも「食べてもらうことを復興につなげよう」と、めげずに復旧に取り組みました。復旧費用は水産庁と県の補助事業を活用し、震災後81日目の6月1日には再開にこぎつけます。
店が再開すると、事前に懸念したほどの風評被害はなく、それどころか待ち構えていたように客足が戻ったのです。
連休中などは長蛇の列ができ、長時間待たせてしまうこともあり、店を拡張して席数を約40まで倍増させました。
さらに、漁協は町の復興事業の一環として、大洗港に面する漁協の漁具倉庫跡地に、団体客用の食堂と干物の加工場を併設した、鉄骨造り2階建ての別館の建設を決めました。
そして昨年11月、港に面した眺望のよい客席50の食事処が完成。周辺には他にも地魚料理を出す店が増え、これらを目当てに前浜地区への観光客も増加。今では浜全体が活気づいています。
積極果敢な事業拡大が功を奏し、現在、来客数は平日で200~300人、土日は400~500人にも。売上は昨年1億円を超え、震災の前年を大きく上回っています。
「漁家の所得も増えましたが、それ以上にうれしいのは女性部の親睦が深まり、店がみんなの生きがいになったことです」と川上さんは笑顔で話してくれました。
ところが、順調に開店1周年を迎えようとした矢先、東日本大震災が発生。3度にわたって津波が漁港に押し寄せました。魚市場は地盤沈下、多くの漁船が被災し、「かあちゃんの店」も建物こそ残ったものの、壁には穴が開き、電気器具も食器も使えなくなり、休業を余儀なくされました。「水道も止まってしまい、仕方なく海水を汲んで店の掃除をしました」(川上さん)。
それでも「食べてもらうことを復興につなげよう」と、めげずに復旧に取り組みました。復旧費用は水産庁と県の補助事業を活用し、震災後81日目の6月1日には再開にこぎつけます。
店が再開すると、事前に懸念したほどの風評被害はなく、それどころか待ち構えていたように客足が戻ったのです。
連休中などは長蛇の列ができ、長時間待たせてしまうこともあり、店を拡張して席数を約40まで倍増させました。
さらに、漁協は町の復興事業の一環として、大洗港に面する漁協の漁具倉庫跡地に、団体客用の食堂と干物の加工場を併設した、鉄骨造り2階建ての別館の建設を決めました。
そして昨年11月、港に面した眺望のよい客席50の食事処が完成。周辺には他にも地魚料理を出す店が増え、これらを目当てに前浜地区への観光客も増加。今では浜全体が活気づいています。
積極果敢な事業拡大が功を奏し、現在、来客数は平日で200~300人、土日は400~500人にも。売上は昨年1億円を超え、震災の前年を大きく上回っています。
「漁家の所得も増えましたが、それ以上にうれしいのは女性部の親睦が深まり、店がみんなの生きがいになったことです」と川上さんは笑顔で話してくれました。
![]() 刺身と煮魚の「とおちゃん御膳」(1,404円) |
![]() 刺身とかき揚げの「かあちゃん御膳」(1,404円) |
![]() 新たに建てられた別館(左)。2階は漁港の見える食事処 |
![]() 大洗町漁協は女性部員も多く、女性部のチームワークを生かすことで安定的な運営を行っている |
※このページに掲載しているメニューの価格は総額表示です。
文/下境敏弘