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農林水産省

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MAFF TOPICS(1)



MAFFとは農林水産省の英語表記「Ministry of Agriculture, Forestry and Fisheries」の略称です。
「MAFF TOPICS」では、農林水産省からの最新ニュースなどを中心に、暮らしに役立つさまざまな情報をお届けします。

MAFF PERSON 地域と国有林をつなぐ“国有林の顔”森林官


林野庁関東森林管理局 群馬森林管理署倉渕森林事務所 大澤智也 森林官 農学部森林科学科を卒業後、2009年4月林野庁入庁。天竜森林管理署業務第一課、小笠原総合事務所国有林課を経て、2014年4月より現職
林野庁関東森林管理局 群馬森林管理署倉渕森林事務所
大澤智也 森林官
農学部森林科学科を卒業後、2009年4月林野庁入庁。
天竜森林管理署業務第一課、小笠原総合事務所国有林課を経て、2014年4月より現職


未来に受け継がれる森林を自らの手で残したい
「もともと自然や山が好きなので、森林に直接関われる現場は本当に楽しいです」

群馬森林管理署の倉渕森林事務所に赴任して2年目の大澤智也森林官の朝は、6時半に起床し、天気予報の確認から始まります。その後、宿舎と併設する事務所へ出勤してから山(現場)へ向かい、森林の調査や現場監督などの業務を遂行します。夕刻には事務所へ戻り、地域の方からの相談への対応や、事務作業を終えて勤務終了─というのが一日の大まかな流れです。

倉渕森林事務所が管轄するエリアは、昔から林業が盛んなため、造林・間伐業務が重点的に行われています。

資源量の調査や、春に行う植え付け、夏から秋に行う下刈り、つる切り、除伐・間伐などの保育、獣害対策、間伐材の搬出など、多岐にわたる作業の現場監督が、具体的な業務となります。

「自分が携わった仕事が、森林としてその場に残ることがやりがい」と語る大澤森林官。草木がうっそうと生い茂る山中で山道を切り開いていくこともあり、「イノシシやシカなどの野生動物に会うこともよくある」とのこと。


地域と連携して広大な国有林を管理
日本の国土全体の約2割、森林面積の約3割を占める国有林。全国7カ所の森林管理局が管轄し、その下にある森林管理署・支署等と森林事務所で、この広大な国有林を包括的に管理しています。そして、その国有林の”顔”として、最前線の現場で管理を行う林野庁の職員が、森林官です。

森林官の仕事は地域の方たちとのつながりも大切。長年地域に住み、その地を熟知している地元の人からの情報は、業務上も生活する上でも不可欠です。

最近では、地域の林業関係者とともに、共同利用できる路網や中間土場の整備、管内に生息する貴重な動植物の保護などの活動にも取り組んでいます。

その一方で、災害時などでは、中央行政機関と地元の方たちとのパイプ役を務めるのが森林官の役割。地域との信頼関係の構築のため、学校で実施される林業体験のサポートや地元の清掃活動等にも積極的に参加し、地域との交流を深める努力も行っています。

大学で専攻した林学を活かせる職場なので、森林官を志したという大澤森林官。「自らの判断で森林の保育と管理を行う森林官という仕事は責任重大。その土地に合わせて適切に管理し、自然とのバランスが取れた”いい山”にしていきたい」と精かんな表情で語ってくれました。



森林官の主な業務
伐採する立木の量を把握するための収穫調査。「輪尺(りんじゃく)」と呼ばれる専用の計測器を用いて、木の幹を挟んで直径を測る
伐採する立木の量を把握するための収穫調査。「輪尺(りんじゃく)」と呼ばれる専用の計測器を用いて、木の幹を挟んで直径を測る
地域の林業関係者と共同利用可能な林業専用道のモデル路線を作設。関係者と現地検討会を行うなど、地域と連携して業務に当たる
地域の林業関係者と共同利用可能な林業専用道のモデル路線を作設。関係者と現地検討会を行うなど、地域と連携して業務に当たる

生息密度が高くなっているニホンジカによる造林木への食害被害を防ぐため、設置したシカ柵を点検してまわる
生息密度が高くなっているニホンジカによる造林木への食害被害を防ぐため、設置したシカ柵を点検してまわる

事務所では、倉渕地区の国有林に関する地域の方からの幅広い相談への対応や、現場監督、収穫調査のとりまとめなどを行う
事務所では、倉渕地区の国有林に関する地域の方からの幅広い相談への対応や、現場監督、収穫調査のとりまとめなどを行う

小中学生を対象に森林整備の体験活動を実施。国有林のフィールドを活用して、一般の方が森林・林業への理解を深める機会を提供
小中学生を対象に森林整備の体験活動を実施。国有林のフィールドを活用して、一般の方が森林・林業への理解を深める機会を提供

群馬県の天然記念物に指定されているウサギコウモリとヒカリゴケが生息する洞窟付近を巡視。貴重な動植物の保護管理を行う
群馬県の天然記念物に指定されているウサギコウモリとヒカリゴケが生息する洞窟付近を巡視。貴重な動植物の保護管理を行う




POINT
森林官の日常的な装備とは?

野山に分け入って業務を遂行する森林官は、服装も装備もそれに適したものを身に着けています。基本スタイルは、丈夫な素材の業務服に、ヘルメット、スパイク付きの地下足袋や長靴、鉈(なた)とのこぎりの二丁差しを装備。森林調査の際には、国有林の地図や調査結果の記入簿などを入れたマップケースやGPSなども携行しています。

森林官の服装

(A)落下物や転倒から頭部を保護する保安帽
(B)鉈やのこぎり、ポーチなどを取り付ける腰ベルト
(C)革手袋
(D)障害物に絡まないようにズボンの裾は靴下の中へ。鎌などの刃物を使用する際は、すねをガードする「脚絆(きゃはん)」を着用
(E)裏にスパイクが付いた地下足袋

森林官の装備

(1)森林官用2ウェイバッグ。地図をバッグから出さずに、外側の透明ポケットから図面を確認できる
(2)GPS受信機
(3)木に印を付けるためのチョーク。水に濡れても消えにくい素材
(4)木に巻き付けて印を付けるための布製テープ。手で簡単にカットできる
(5)デジタルカメラ
(6)PDA。GPSと連動して位置や森林情報を視覚的に確認できる機器
(7)野生動物に人間の存在を知らせて遠ざけるための熊よけ鈴
(8)木の枝やかん木を切り払うのに使用する、鉈とのこぎりの二丁差し
このほか、蜂の時期には防蜂網を着用




倉渕森林事務所 倉渕森林事務所。
群馬県高崎市北西部倉渕地区と周辺の国有林約3,500ヘクタールを管理



文/神野恵美  写真/長谷川 朗