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農林水産省

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素材選びから製造まで一切妥協なし! ひたすら丁寧に作る納豆



納豆好きの間で「日本一小さい、でも、日本一おいしい納豆屋」として知られる愛知県岡崎市の山下食品。
創業以来、すべての工程で手と目と耳を駆使する、こだわりの製法で納豆作りを続けています。


第21回全国納豆鑑評会農林水産大臣賞受賞 全国納豆鑑評会は、全国納豆協同組合連合会主催で行われます。商品名がわからないように並べられた納豆を、大学教授や食品関係者らが審査。最高点を獲得した商品に、最優秀賞の農林水産大臣賞が贈られます。


糸引きがよく、見るからにもっちりやわらかそうな大粒の「心和」。1箱(70グラム×2個)で1,080円(税込み)。
糸引きがよく、見るからにもっちりやわらかそうな大粒の「心和」。1箱(70グラム×2個)で1,080円(税込み)。


山下食品株式会社(愛知県)山下哲男さん・正枝さん 山下食品株式会社(愛知県)
山下哲男さん・正枝さん

哲男さんは1942年生まれ。サラリーマンを経て、1965年に「山下食品」を設立。正枝さんは1946年生まれ。1973年に哲男さんと結婚。以来、夫婦二人三脚で納豆作りに励んでいる。
所在地/愛知県岡崎市暮戸町字元社口9
http://www.yamashita710.co.jp(外部リンク)


もっちりふっくら 素材の良さを引き出す
一粒15~16ミリメートルはある豆の大きさに驚きながらかき混ぜると、抜群の糸引き。ふわとろの粘りをまとった納豆は、口に入れるともっちりとやわらかく、ほんのりした甘みが広がります。

「豆の味がしっかりするでしょう? 『心和(こころなごみ)』には、極大粒の北海道産『鶴の子大豆』を使っています」と山下食品の山下哲男さん。以前、地元の岡崎にあった百貨店から「百貨店用の納豆を作ってほしい」と依頼されたのをきっかけに、それまで手掛けたことのなかった極大粒納豆作りに取り組み、誕生したのが「心和」です。

「どんなにいい豆でも、納豆になったときにおいしくなければダメなので、実際に作っては食べ、を繰り返して、豆を選びます」

こだわっているのは、"素材の良さが生きた納豆"。そのため、山下食品の納豆にはすべて国産大豆が使われています。


「心和」に使われる極大粒の鶴の子大豆。浸水させると約1.5倍の大きさに。 「心和」に使われる極大粒の鶴の子大豆。浸水させると約1.5倍の大きさに。


昔ながらの手作業にこだわり抜く
素材の味を最も生かし、納豆の味を左右する生命線とされる工程が、豆を水に浸しておく「浸水」という作業です。大手メーカーでは数時間から1日が目安といわれますが、「心和」の場合は48時間(!)水の中で寝かせるそうです。

「豆自体にも多少の大小があるので、一粒一粒に芯までたっぷり水を吸わせてやらないと、すべてがふっくらやわらかい納豆になってくれない。だから、水も豆の芯まで浸透しやすい軟水を使って、雑菌が繁殖しない1度の冷蔵室で、豆の様子を見ながら途中で水を入れ替え、ゆっくり浸水させます」

充分に吸水して膨らんだ大豆からはピチピチと音がする、とうれしそうに語る山下さん。まさに豆に真摯(しんし)に向き合う職人だからこそ聞こえる素材の声なのでしょう。

浸水に限らず、どの工程でも直接豆の様子を見て、触れることで時間や温度などの微調整を行う。山下さんは創業以来、この完全な手作り製法にこだわっています。


納豆ができるまで
1.何度も水を替え、手で丁寧に豆を洗ったあと、1度の冷蔵室で豆を浸水させる。
1.何度も水を替え、手で丁寧に豆を洗ったあと、1度の冷蔵室で豆を浸水させる。
矢印 2.回転釜で豆を40~50分蒸し、その後40分ほど蒸らす。
2.回転釜で豆を40~50分蒸し、その後40分ほど蒸らす。
矢印 3.蒸らし終わった豆に納豆菌をかける。
3.蒸らし終わった豆に納豆菌をかける。
矢印
 
4.容器に入れ、ビニールで被膜するのもすべて手作業。
4.容器に入れ、ビニールで被膜するのもすべて手作業。
矢印 5.発酵室で18時間発酵させる。
5.発酵室で18時間発酵させる。
     


"日本一"の称号は50年間のご褒美
もともとサラリーマンだった山下さんが、23歳で山下食品を立ち上げたのは「岡崎で製造販売をやったらおもしろいぞ」という、父親の知人の勧めによるものでした。

実家が大豆の分別機(異物除去)を発明した鉄工所だった関係から、大豆に詳しいみそメーカーや腕利き職人がいる納豆メーカーと知り合い、大豆のことや納豆の作り方を一から教わってのスタート。

創業8年後に結婚し、妻・正枝さんという頼もしいパートナーを得て、6~7人の従業員とともに、小さな工場でひたすら納豆作りに打ち込んできました。

そんなご夫婦を営業・PR面で支えているのが長男・将生(まさき)さんです。

父親がこだわり抜いて作っている納豆だからこそ、とさまざまな品評会やセレクションに出品し、多くの賞を得てきましたが、ついに今年の全国納豆鑑評会で、最優秀賞である農林水産大臣賞を「心和」で受賞。念願の"日本一"の称号を獲得したのです。

「主人が50年間、コツコツ真面目にやってきたご褒美にいただけたのだと思っています」と正枝さん。その横で山下さんは「これだけ手をかけて作っているんだから、おいしくないわけはないよねえ」とニコニコ。

「日本一小さい納豆屋」から、今日も朝早くから珠玉の納豆が生まれています。

さまざまな賞を受賞している山下食品の納豆。奥から「旨造(うまづくり)」、「煌(きらめき)」、「納豆職人」。
さまざまな賞を受賞している山下食品の納豆。奥から「旨造(うまづくり)」、「煌(きらめき)」、「納豆職人」。
懐かしい雰囲気の工場。
懐かしい雰囲気の工場。
 



取材・文/岸田直子
撮影/原田圭介


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