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農林水産省

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[Producer]大規模大豆農場を訪ねて



宮城県北部の平坦地を舞台に大豆生産に挑戦、土づくりにこだわり抜き、生育環境を整えて大きな成果をあげているのが、有限会社おっとちグリーンステーションです。

農地を集約して作付面積を40ヘクタールに拡大。
県平均の倍の単収を上げつつ高品質の大豆を生産する農業法人


小さなあぜを立てて排水性を高めることにより、湿害が軽減される。
小さなあぜを立てて排水性を高めることにより、湿害が軽減される。


生産技術を磨き375キログラムの単収を確保
農業経営の効率化を図るため、農地の集約を積極的に進めている宮城県は、大豆の作付面積で北海道に次ぐ主要産地です。

有限会社おっとちグリーンステーションが作付を行う約40‌ヘクタールの大豆畑は、宮城県有数の米どころで、大豆の作付面積でも県内2位の登米(とめ)市にあります。

追土地中央生産組合を前身とする同社は、1995年に3戸の農家が共同経営のため法人化した農業法人で、稲作・大豆・野菜・加工の4部門からなります。

「大豆づくりは稲作からの集落転作の受託です。集落内で話し合い、田んぼを借りて2年後に返すという大豆作2年・水稲作4年のローテーションで回しています」と説明するのは、大豆を担当する役員の芳村忠市(ただいち)さんです。

生産する大豆は熟期の異なる「タチナガハ」と「ミヤギシロメ」の2品種を栽培しています。特にタチナガハは10‌アール当たり375キログラムと、県平均の倍の収量を達成するに至っています。

2000年には経営の安定化のため利益率の高い枝豆を導入し、現在4‌ヘクタールで7月下旬から9月中下旬にかけて5品種をリレー生産しています。


おっとちグリーンステーションのみなさん。上段右端が大豆担当役員の芳村忠市さん、下段右端が柳渕淳一社長。
おっとちグリーンステーションのみなさん。上段右端が大豆担当役員の芳村忠市さん、下段右端が柳渕淳一社長。
近隣の集落転作組織と共同でコンバインを所有。1台で年間70ヘクタールを刈り取る。
近隣の集落転作組織と共同でコンバインを所有。1台で年間70ヘクタールを刈り取る。


大豆畑の団地化を進めるメリット
梅雨のある日本の気候風土では大豆の栽培に難しさがあります。

「窒素を取り込んで豆の育成を助ける根粒菌を活性化させる必要がありますが、この菌は湿害に弱いため、あぜを立てるなどの排水対策が不可欠です。特に水田だったところを畑に変える場合、集落で土地をまとめて整備することが土壌環境を整えるうえでも有効です」

「良質な作物は良質な土壌から」という信念から土づくりに強いこだわりを持ち、ビールの搾りかすをはじめ豆腐や乳製品の工場や水産加工場などから出る食品残さを利用した堆肥を施用するほか、一部の固定団地にはライ麦や燕麦を緑肥として畑にすき込む作業を行います。これは土を肥やすとともに連作障害を回避するためにも有効といいます。

さまざまな工夫をこらして育てられる大豆の品質に対する評価は高く、2012年度の全国豆類経営改善共励会の農林水産大臣賞受賞など、これまで数々の栄誉に輝いています。

大豆は全量、食品企業などの契約栽培です。昨年は宮城県に指名され、「仙台みそ」の地域団体商標の権利者である宮城県味噌醤油工業協同組合に供給することが決まりました。

「顔の見える関係はやりがいにつながる」と言う芳村さんは「需要者それぞれの要望にしっかり応えていきたい」と決意を語ります。


昨年度出荷した大豆の99パーセントが上位等級(1等・2等)。
昨年度出荷した大豆の99パーセントが上位等級(1等・2等)。
DATA
有限会社おっとちグリーンステーション
【所在地】宮城県登米市米山町中津山筒場埣860
【主な事業】大豆・米・野菜の生産、加工
【作付面積】約90ヘクタール(大豆約40ヘクタール)
【労働力】役員3名、社員11名、研修生2名、パート22名


大豆男子 Soybeans-Boy
目標は「毎年全量1等」 より良い大豆を提供していきたい!
将来の経営を任せられる人材を育成するため、おっとちグリーンステーションでは意欲のある若者を採用してきました。

宮城県古川農業試験場から「作物の組み合わせで1年を通して農業のできる複合経営に関わりたい」と希望して2009年に転職してきたのが大豆部門で働く佐藤雄亮(ゆうすけ)さんです。

佐藤さんは「6月に始まる播種は天気勝負ですから晴れ間があれば休み返上です。夏場の土寄せや中耕(ちゅうこう)、除草の作業を経て、秋に無事収穫でき、ホッとしながら空になった畑を眺めると、1年間ご苦労さまという気持ちになります」と思いを語ります。
「広々とした畑を大きいトラクターで進んでいく爽快感が大好きです」とほほ笑む、佐藤雄亮さん。
「広々とした畑を大きいトラクターで進んでいく爽快感が大好きです」とほほ笑む、佐藤雄亮さん。



取材・文/下境敏弘


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