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MAFF TOPICS(3) NEWS 世界かんがい施設遺産を訪ねる(第3回)


歴史的・技術的・社会的価値のあるかんがい施設
世界かんがい施設遺産とは、かんがいの歴史と発展を明らかにすることで理解を高め、かんがい施設を適切に保全することを目的として、国際かんがい排水委員会(ICID)が認定するものです。

最終回の第3回は、平成26年度に登録された通潤用水と、27年度に登録された4施設を紹介します。


世界かんがい施設遺産を訪ねる

(1)通潤用水(つうじゅんようすい)
【熊本県・山都町(やまとちょう)】
四方を低地の河川に囲まれた地形の白糸台地。水不足を解消するために1855年に建設された。これにより水田面積は約3倍に増加。国の重要文化財である日本最大石造アーチ水路橋「通潤橋」をはじめ、日本固有の技術の集大成となっている。
1874年の通潤橋。
1874年の通潤橋。
現在の通潤橋。
現在の通潤橋。

(2)上江用水路(うわえようすいろ)
【新潟県・上越市、妙高市】
用水路建設以前のこの地域は、収穫期までの水の確保が困難だったが、1573年から130年間におよぶ水路建設プロジェクトで高品質な米の一大産地が実現。難度が高い危険なトンネル工事だったが、高度な技術により誤差はわずかだった。
1931年頃の川上隧道(かわかみずいどう)。
1931年頃の川上隧道(かわかみずいどう)。
水路建設の指導者は仏像になり、今でも崇拝される。
水路建設の指導者は仏像になり、今でも崇拝される。

(3)曽代用水(そだいようすい)
【岐阜県・関市他】
幕藩体制で統治が分断されていたため、干ばつ地帯でありながら大きなかんがい施設がなかった。農民自らが水路の建設を実施。岩盤掘削(がんばんくっさく)を「たがね」と「のみ」で行い、1669年に供用開始。荒れ地が新しい水田地帯として生まれ変わった。
「たがね」と「のみ」で行った岩盤掘削の痕跡。
「たがね」と「のみ」で行った岩盤掘削の痕跡。
現在の水路。
現在の水路。

(4)入鹿池(いるかいけ)
【愛知県・犬山市】
水を巡る争いが絶えない地域だったため、1633年に建設された。工事は難航したが、橋をかけて土を盛り、その後橋を焼き落とす「棚築(たなづき)工法」という当時の新技術で完成。1891年の大地震にも崩れない高い耐震性能を誇る。
1883年の入鹿池工事の様子。
1883年の入鹿池工事の様子。
現在の入鹿池の余水吐(よすいばき・余分な水を放流する設備)。
現在の入鹿池の余水吐(よすいばき・余分な水を放流する設備)。

(5)久米田池(くめだいけ)
【大阪府・岸和田市】
奈良の大仏建立に関わった僧・行基が、地域の人々と一緒に天皇に請願し、725年から14年の歳月をかけて完成させた。堤防は東南アジアとの技術交流により、粘土質と砂礫(されき)の間に木の葉を挟む「敷葉工法(しきばこうほう)」を採用している。
1965年ごろの久米田池の様子。
1965年ごろの久米田池の様子。
現在の久米田池の全景。
現在の久米田池の全景。




取材・文/細川潤子




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