日本全国の麺文化をご紹介! ニッポン麺探訪 第7回
讃岐(さぬき)うどん[香川県]

金刀比羅宮(ことひらぐう)と讃岐平野(香川県)
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写真提供/公益社団法人香川県観光協会
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"うどん県"香川の県民食。「かけ」(写真)のほか、濃いめのだし汁をかけた「ぶっかけ」、しょうゆをたらした「しょうゆ」、生卵としょうゆをかけた「釜玉」、ゆで汁と一緒に桶に盛った「釜揚げ」など、食べ方はさまざま。 |
うどんの概念を変えた衝撃の出会い
「讃岐うどん」の歴史は古く、遣隋使、遣唐使の時代に伝来したという説や、弘法大師空海が唐から持ち帰ったという"ネタ"のような話もある。実際、江戸時代にはうどん店が存在していた。
生まれも育ちも東京都区内の僕にとって、うどんは「そば店で片手間的に出されるメニューの一つ」といった程度のなじみの薄い麺料理。そんなうどんの概念を、本場・香川で食べた讃岐うどんが真っ向から変えてくれたのだった。
現在の讃岐うどんブームの火付け役となったのが、香川のタウン誌だ。うどん店を紹介する連載が話題となり、1993年に書籍化されたのがきっかけ。今から15年ほど前、僕はその本を片手に3日間で20軒の店舗を回り、あまりの衝撃に心を奪われた。
到底店があるとは思えない山奥に行列ができていたり、狭い路地の先に隠れるように建っているなんてことは茶飯事。「ひやひや(冷たい麺に冷たい汁)」などと書かれたメニューの独特さに乱舞し、何より器に麺をもらい、自分で汁をかけ、ネギなどの薬味を載せるセルフ方式に目をみはった。
その数年後、東京・渋谷に全国チェーンのセルフうどん店が進出し、一大ブームを巻き起こした。
適度な弾力の麺とイリコのだしが秀逸
讃岐の地では、古くから上質の小麦が生産されており、香川県農業試験場で生まれた讃岐うどん専用小麦「さぬきの夢2000」、その後継品種の「さぬきの夢2009」まで、脈々と受け継がれている。現在、讃岐うどんのほとんどはオーストラリア産の小麦を原料としているが、県産小麦を使ったうどんを提供する「さぬきの夢こだわり店」も存在する。かめば歯を押し戻す適度な弾力を備えた太めの麺は、作り手の真剣さも相まって、また格別な味わいだ。
さらに秀逸なのが、イリコと呼ばれる煮干しのだしが効いた汁。中でも伊吹島(いぶきじま)名産のイリコは、上品な風味が楽しめると特に評判だ。
とにかく、讃岐うどんは"超"おいしい。しかしそれだけでは語り尽くせない"楽しさ"が香川にはある。本場を訪れると、長年続く素朴な町のうどん店がいたる所に存在し、追求するほどに新たな発見がある。そしてさらにハマる。まさに、恐るべき讃岐うどん!
文/はんつ遠藤
1966年生まれ。早稲田大学卒業後、海外旅行雑誌のライターを経てフードジャーナリストに。取材軒数は8500軒を超える。『週刊大衆』「JAL旅プラスなび」「東洋経済オンライン」などで連載中。著書多数。
1966年生まれ。早稲田大学卒業後、海外旅行雑誌のライターを経てフードジャーナリストに。取材軒数は8500軒を超える。『週刊大衆』「JAL旅プラスなび」「東洋経済オンライン」などで連載中。著書多数。