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農林水産省

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特集1 みかん(3)

[生産地を訪ねて]徹底した品質管理と選別 ゼリーのような食感の麗しきみかん 紅(べに)まどんな

愛媛県松山市


希少でおいしいフルーツとして人気の紅まどんな。この新しい品種を生んだ愛媛県ではかんきつのプロたちが
優良品種の開発に取り組み、生産管理を徹底し、厳しい選果基準を設けてブランド化を推進しています。

松山市のJAえひめ中央堀江選果場での作業。紅まどんなは果皮が薄く傷つきやすいため、箱詰めは人の手で慎重に行われる。
松山市のJAえひめ中央堀江選果場での作業。紅まどんなは果皮が薄く傷つきやすいため、箱詰めは人の手で慎重に行われる。


恵まれた気候を活かし多様なかんきつを育種
62年前、松山市の伊予柑(いよかん)農家、宮内義正さんが草刈りの際、めずらしい枝を見つけ、接(つ)ぎ木で育てたところ、味の良い実がたくさんなりました。発見者の名から命名された宮内伊予柑は今や愛媛県のかんきつ生産の柱の一つです。

「愛媛が全国の生産量の9割を占める宮内伊予柑、温州みかん、不知火(しらぬい)(デコポン)の3つを私たちは基幹品目と位置づけ、これに加えて新品種の紅まどんな、甘平(かんぺい)、せとか、はれひめ、カラマンダリンを重点推進品目としています」と言うのはJAえひめ中央営農部果樹課の野中賢二さん。

宮内伊予柑がそうだったように、かつて新品種の多くは「枝変わり」という自然な突然変異の個体を育てることで作り出されました。農林水産省果樹試験場興津支場(現在の農研機構果樹茶業研究部門カンキツ研究拠点)が温州みかんとオレンジの特性を併せ持つ清見(きよみ)の交配に成功。1‌97‌9年にタンゴール農林1号として登録され、それ以降、栽培しやすくて食べやすい温州みかんにほかのかんきつ類を交配させたせとか、はれひめといった味や香りに優れた多くの新品種が誕生しました。

かんきつ類の生産量で全国一の愛媛県は、多様な品目を栽培できる恵まれた気候条件を活かし、生産者の所得の安定を図るべく、希少性があり高単価を見込める新品種の開発や生産に力を入れてきました。


かんきつ類のブランド化に取り組むJAえひめ中央営農部果樹課課長の野中賢二さん(左から2人目)と果樹課のみなさん。
かんきつ類のブランド化に取り組むJAえひめ中央営農部果樹課課長の野中賢二さん(左から2人目)と果樹課のみなさん。
紅まどんなの立木
紅まどんなの立木


厳しい基準を設定してオリジナルブランドを確立
重点推進品目の一つ、紅まどんなは全農えひめが商標登録し、愛媛県のみで生産されるオリジナル品種です。専用のハウスで、一つずつにしっかり日光が当たるようひもで枝を吊るなど、丹精込めて育てた実は光沢があり、果皮は薄く、紅い果肉はゼリーのようにとろとろと滑らか。

1990年に南香(なんこう)と天草(あまくさ)の交配を試み、2005年に品種登録に至った愛媛果試第28号のうち、糖度や酸などが一定の基準に達したものだけを紅まどんなの名称で出荷します。ブランド管理は徹底しており、毎年、収穫前にJAや市場の関係者が集まり、選果基準を確認する選果目あわせ会を開催するほど。

中晩柑(ちゅうばんかん)としては成熟が早くて、出荷は11月下旬には始まります。収穫後は一定期間、貯蔵庫で温度管理を行い、甘みを強めたうえで選果場に運び、糖度や熟度などを1個ずつ確認し、基準をクリアしたものを手作業で丁寧に箱詰めにしていきます。

「高級フルーツとして認知され、消費者の反応も上々で、出荷額も伸びています」と野中さん。

かんきつの一大産地では関係者が手間暇を惜しまず、おいしいみかん作りに打ち込んでいました。


紅まどんなは毎年、11月下旬ごろから出荷され、1カ月ほどで旬が終わる。
紅まどんなは毎年、11月下旬ごろから出荷され、1カ月ほどで旬が終わる。
みかん研究所が17年の歳月をかけて品種として確立した甘平。紅まどんなと同じ愛媛県のオリジナル品種。
みかん研究所が17年の歳月をかけて品種として確立した甘平。紅まどんなと同じ愛媛県のオリジナル品種。

光センサー選果機で糖度や酸度を自動的に測定。
光センサー選果機で糖度や酸度を自動的に測定。
糖度などは人の目でも厳しくチェックする。一定の基準をクリアしたものだけを、紅まどんなブランドで出荷。
糖度などは人の目でも厳しくチェックする。一定の基準をクリアしたものだけを、紅まどんなブランドで出荷。


都道府県唯一の専門研究施設 愛媛県「みかん研究所」
異なる品種を掛け合わせて、それぞれの良い特性を受け継ぐ品種を作り出すのが「交雑」と呼ばれる手法ですが、成熟の遅いかんきつ類の場合、育種の結果が出るまで長い歳月を要します。

この事業に取り組む愛媛県農林水産研究所果樹研究センターみかん研究所は、これまで約4万本で交配を行い、8品種を選抜しています。

県有数の産地である宇和島市吉田町にある同研究所の約4ヘクタールのほ場では、さまざまなかんきつ類が将来の生産者のために育てられています。

愛媛県宇和島市にあるみかん研究所。
愛媛県宇和島市にあるみかん研究所。
みかんの新品種の育種や、生産技術の研究などに取り組んでいる。
みかんの新品種の育種や、生産技術の研究などに取り組んでいる。



取材・文/下堤敏弘


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