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日本全国の麺文化をご紹介! ニッポン麺探訪 第10回

みそ煮込みうどん[愛知県]




名古屋城(愛知県名古屋市)
名古屋城(愛知県名古屋市)
 


みそ煮込みうどん
名古屋名物として知られる、豆みそ仕立ての煮込みうどん。小麦粉と水のみを使った硬めの麺が特徴だが、一般的なうどんと同様に塩を使った麺や、きしめんで提供する店もある。鶏肉、たまご、ねぎ、しいたけ、かまぼこなどの具がポピュラー。


名古屋の伝統の一杯はみそが主役!?
ご当地麺の中には、古くから郷土料理として伝わっているものも多い。名古屋周辺で食されている「みそ煮込みうどん」もその一つだ。みそとうどんのコラボレーションという図式は、山梨県の「吉田のうどん」や「ほうとう」などにも見られるが、ほとんどはうどんが"主役"でみそは"脇役"。けれども、みそ煮込みうどんは汁のみそ味が決め手の料理で、むしろみそが"主役"な気すらしてくる。

うどんに精通している名古屋の友人に、大正時代創業という、みそ煮込みうどんが看板の老舗に連れて行ってもらった。

運ばれてきたそれは、土鍋に蓋がかぶさった"鍋焼きうどん"スタイル。そっと蓋を取ると中から一気に湯気が立ち上った。「熱々なので、蓋に取ってね」と友人。「そのために、通常は蓋に湯気を逃す穴が開いているけれど、これにはないでしょ」。なるほど!

頂いてみると、なんとも独特のみその風味がいい。「八丁みそと白みそを合わせて作るのです」と店の人が言う。八丁みそとは、岡崎城から西に八丁(約870メートル)離れたところにあった八丁村(現在の愛知県岡崎市八帖町)発祥の豆みそだ。八丁みそならではの深いコクと後を引く酸味を、昆布やかつお節、しいたけ、煮干しなどの和風だしが堂々と下支えしている。

みその風味を引き立てるがっしりとした麺
しかし一番驚いたのは、うどん自体の食感だ。一度ゆでたうどんを土鍋に移してさらに煮込んでいるのだが、意外にもがっしりとした硬い仕上がり。一般的なうどんは、小麦粉と塩と水で作るため、ゆでると徐々に塩分が抜け、そこに水分が浸透して柔らかくなる。だが、みそ煮込みうどんの麺は塩を使っていないので、長く煮込んでものびないというわけだ。

しかも、その店では国産100パーセントの小麦粉にこだわっており、太くてコシのある麺がみその味を引き立てている。最近では、愛知県産の麺類用小麦の新品種「きぬあかり」を使った地産地消の麺を出すうどん店が増えつつあるという。

その後、名古屋のさまざまなうどん店を食べ歩いたところ、バリエーションに富み価格がリーズナブルなところもあり、今でも広く日常に浸透していることに気付かされた。


文/はんつ遠藤
1966年生まれ。早稲田大学卒業後、海外旅行雑誌のライターを経てフードジャーナリストに。取材軒数は8500軒を超える。『週刊大衆』「JAL旅プラスなび」「東洋経済オンライン」などで連載中。著書多数。


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