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今月の農林水産大臣賞 vol.11

紀州南高梅をふんだんに使った 高校生発のご当地バーガー



高校生がご当地食材を創意工夫して調理した絶品グルメを競う「ご当地! 絶品うまいもん甲子園」。
見事、優勝した和歌山県 神島(かしま)高校のレシピには、紀州南高梅への思いがいっぱい詰まっていました。


第5回ご当地! 絶品うまいもん甲子園農林水産大臣賞 受賞 将来の農林漁業の担い手となる高校生の夢を応援し、食や農林水産業を通じて、地域の活性化につなげていくことを目的に、農林水産省ほかの主催のもと、2012年から年1回開催。優勝校に農林水産大臣賞が贈られます。


第5回「ご当地! 絶品うまいもん甲子園」で農林水産大臣賞を受賞した、「紀州うめどりの親子バーガー ~カリカリ梅のタルタルソースを添えて~」。
第5回「ご当地! 絶品うまいもん甲子園」で農林水産大臣賞を受賞した、
「紀州うめどりの親子バーガー ~カリカリ梅のタルタルソースを添えて~」。


和歌山県 神島高校 左から、小池つきうさん、松下彩夏さん、岩さき実子さん(※「さき」は山へんに竒) 和歌山県 神島高校
左から、小池つきうさん、松下彩夏さん、岩さき実子さん(※「さき」は山へんに竒)

神島高校は1916年に田辺実業学校として創設され、田辺商業高校を経て、2006年に現名となり今に至る。3人とも経営科学科3年に在籍。今春、進学・就職が決まっている。
所在地/和歌山県田辺市文里2-33-12
http://www.tanabe-ch.wakayama-c.ed.jp/[外部リンク]


若者が食べたくなる絶品グルメ
もっちりしたバンズの間に、香ばしく焼き上げた鶏肉とたっぷりのタルタルソース。思わずかぶりつきたくなるおいしそうなバーガーです。

生みの親は、和歌山県 神島高校3年生の松下彩夏(さやか)さん、 岩さき実子(まこ)さん、小池つきうさんの3人。地元の特産品・紀州南高梅を使った、この「紀州うめどりの親子バーガー ~カリカリ梅のタルタルソースを添えて~」は、全国の高校を対象にしたオリジナル料理のコンテスト、第5回「ご当地! 絶品うまいもん甲子園」で、優勝(農林水産大臣賞)に輝きました。

タルタルソースにはピクルスの代わりにカリカリ梅を使い、それを鶏肉にかけて食べやすいバーガーに仕上げた点は、さすが10代ならではの発想。まさに、若者が食べたくなる絶品グルメです。


昨年度、創立100周年を迎えた神島高校。グラウンドの先には跡之浦(あとのうら)湾が広がっている。 昨年度、創立100周年を迎えた神島高校。グラウンドの先には跡之浦(あとのうら)湾が広がっている。
昨年度、創立100周年を迎えた神島高校。グラウンドの先には跡之浦(あとのうら)湾が広がっている。


特産品の消費拡大と地域の活性化を目指して
神島高校がこの大会に参加したのは、今回で3回目。2014年の初参加では審査員特別賞を、翌年には食料産業局長賞(準優勝)を受賞し、今回ついに優勝を果たしました。

出場作すべてに共通しているのは、地元の特産品である紀州南高梅はもちろん、その梅酢をえさに混ぜて育てた「紀州うめどり・うめたまご」も必ず使用している点。そこには、地域にある唯一の専門学科として、特産品の消費拡大や地域の活性化に少しでも協力したいという思いが込められています。

「2012年度から経営科学科の課題研究として『商品開発』の講座を設け、梅を用いた商品開発に取り組んでいます。もともと地元のイベントに年間30回近く『神島屋(かしまや)』を出店し、『梅やきとり』を販売。この大会へも授業の一環として参加しています」と語るのは、那須正樹先生。担当は簿記ですが、梅農家として梅も栽培しています。

この那須先生に「今年も参加するから、レシピを考えてな」と言われたのが、小池さん、松下さん、岩さきさんの3人でした。過去2回の出場作は地元の米を使ったごはん系だったため、今回はその米粉を使ったパン系がいいのでは? という那須先生のアドバイスのもと、親子バーガーというアイデアが浮かびました。


試作を食べては「おいしい!」と3人を励まし続けた那須正樹先生。
試作を食べては「おいしい!」と3人を励まし続けた那須正樹先生。
決勝大会で調理する3人。
決勝大会で調理する3人。
東京・丸の内で行われた実売イベント「ジャパンハーヴェスト2016」の参加者と記念撮影。
東京・丸の内で行われた実売イベント「ジャパンハーヴェスト2016」の参加者と記念撮影。


紀州南高梅を使った梅酢をえさに混ぜて育てたもの。
毎回、食材に使用した「紀州うめどり」と「紀州うめたまご」
毎回、食材に使用した「紀州うめどり」(左)と「紀州うめたまご」(右)。紀州南高梅を使った梅酢をえさに混ぜて育てたもの。


ほかの梅を食べると「何か違う」と思う
紀州うめどりのソテーは松下さん、タルタルソースは小池さん、パンや野菜は岩さきさん、と担当を決めて、商品開発の授業や放課後に試作に取り組むこと10回ほど。中でもタルタルソース作りには試行錯誤を繰り返したそうです。

「たまたま学校にあったカリカリ梅を刻んで使ったら、梅の味や食感が『何か違うね』と……」(松下さん)。よく見るとそれは中国産の梅を使ったものでした。生まれたときから紀州南高梅を食べて育ち、「ほかの梅の味を知らない」(小池さん)という彼女たちの味覚は、他地域産の梅を見分けられたのです。

先生方や友人たちに試食してもらっては感想を聞き、最終的に自分たちが「おいしい」と思える味にたどりついたものの、優勝できるとは思っていなかったとか。

「でも、とても楽しかったです。それまで話したことのない人とも仲良くなれたし」と岩さきさん。小池さんもにっこりうなずきます。2人は卒業後、就職予定。松下さんは管理栄養士を目指して進学予定。進む道は違っても、今回得た経験と友情はこれからの大きな糧となることでしょう。

そして、「こういう先輩たちの活躍を見て、『神島高校へ行こう!』という中学生が増えてくれるとうれしい」という那須先生の言葉は、若者たちによる地域の活性化をさらに促進するに違いありません。


神島高校の卒業生が代表を務める「熊野米プロジェクト」。熊野米も毎回使用しており、今回は米粉でパンを作った。
神島高校の卒業生が代表を務める「熊野米プロジェクト」。熊野米も毎回使用しており、今回は米粉でパンを作った。



取材・文/岸田直子


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