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農林水産省

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特集1 農業高校(3)

創立113年目、藩校の伝統を受け継ぎ、あまたの人材を輩出してきた宮崎県 高鍋農業高校はかつての全寮制を引き継ぎ、県の農業や畜産業を担う人材を育成しています。

寮生活で育まれる命と向き合う仕事の精神


宮崎県 高鍋農業高校
園芸科学科/畜産科学科
食品科学科/フードビジネス科
農業クラブ「肉用牛経営研究班」の15人が力を合わせて育てた未経産の雌牛「なつひめ1号」は地域の共進会でグランドチャンピオンに。
農業クラブ「肉用牛経営研究班」の15人が力を合わせて育てた未経産の雌牛
「なつひめ1号」は地域の共進会でグランドチャンピオンに。


尾鈴山の麓、高鍋城址に建つ高鍋農業高校の校舎。大手門跡や校門前の水堀が今も残る。
尾鈴山の麓、高鍋城址に建つ高鍋農業高校の校舎。大手門跡や校門前の水堀が今も残る。
園芸科学科
茶や野菜、花き、果樹の栽培や販売のスペシャリストを育てる。
茶や野菜、花き、果樹の栽培や販売のスペシャリストを育てる。

フードビジネス科
宮崎県のフードビジネス構想と連動する形で新設された学科。地域の農産物で郷土料理や菓子などを製造するほか、直販所で接遇も学ぶ。
宮崎県のフードビジネス構想と連動する形で新設された学科。地域の農産物で郷土料理や菓子などを製造するほか、直販所で接遇も学ぶ。

食品科学科
パン、ジャム、ハムなどの製造や食品の成分分析、衛生管理を学び、企業と共同開発も行う。写真は試薬の調整をしている様子。
パン、ジャム、ハムなどの製造や食品の成分分析、衛生管理を学び、企業と共同開発も行う。写真は試薬の調整をしている様子。

名君が創設した藩校の伝統を今に受け継ぐ
J・F・ケネディが尊敬する政治家として名前をあげた米沢藩主上杉鷹山(ようざん)。その兄であり、大規模な開墾や木炭製造などの事業を行ったことで、名君の誉れ高い高鍋藩主秋月種茂(あきづきたねしげ)が創設した藩校の明倫堂は寄宿制を採り、身分に関わらず学ぶことができました。

この明倫堂の伝統を受け継ぐのが、高鍋藩の城跡に建つ宮崎県 高鍋農業高校です。

1903年に自営者養成農業高校の全国第一号指定校となって以来、学校関係者は実習用地の確保に努め、日向灘に面する丘陵に広がる校地は今や53万平方メートルを超えます。ここで生産される農産物や加工食品は約100品目、販売収益は年間8000万円ほどになり、県の特別会計制度で運営され、施設・設備の充実が図られています。

高大連携も積極的に進めており、宮崎県 農業大学校での実習などを実施しています。昨年、11名が同大学校に進学しました。

同校の特徴の一つが学生寮の伝統を守り続けていることです。

湯地誠校長は「冬場のハウスの暖房管理、家畜の分娩など命と向き合う仕事を覚えるうえで、寮で生活することは大きな意味があります」と強調します。

園芸科学科と畜産科学科の生徒は全員3年間の寮生活を送るほか、他科の生徒も希望すれば入寮でき、現在、生徒411人の約半数が寮生活を送っています。

畜産科学科
乳牛や和牛、豚の飼育管理技術を習得する。酪農では40頭のホルスタイン種を飼育。
乳牛や和牛、豚の飼育管理技術を習得する。酪農では40頭のホルスタイン種を飼育。

カウコンフォート(乳牛の快適性)に気を配り、乳生産の向上を図っている。 カウコンフォート(乳牛の快適性)に気を配り、乳生産の向上を図っている。
カウコンフォート(乳牛の快適性)に気を配り、乳生産の向上を図っている。

「為せよ、屈するなかれ」不屈の精神がもたらす栄冠
同校が危機に直面したのは2010年でした。県内で口蹄疫が発生、飼育していた牛53頭、豚281頭の全頭処分を余儀なくされたのです。

全国から激励が寄せられ、山形県米沢市からは見事な子牛が届きました。指導役を買って出てくれたのは、口蹄疫で畜産をやめた地域の生産者でした。温かい支援に応えようと、防疫体制を徹底的に強化、牧場再建に取り組んだ生徒たちが手塩にかけた牛は昨年、8年ぶりに復活した児湯郡(こゆぐん)市育成牛共進会でグランドチャンピオンの栄冠に輝きました。

今年9月の第11回全国和牛能力共進会で新設される高校の部へのエントリーも決定。肉用牛経営研究班の15人は、3連覇のかかる宮崎県勢の一員として役立ちたいと、毎日登校前と放課後に40分かけて徒歩で学校の牧場に通い、候補牛の引き運動やブラッシングに余念がありません。

「明倫堂に学び、後に児童福祉の父と呼ばれた石井十次(じゅうじ)が残した『為せよ、屈するなかれ』という言葉をモットーに、何事にもくじけない若者を育んでいきたい」と湯地校長は語ります。

11月に開催されたイベント「農産物即売会」。
11月に開催されたイベント「農産物即売会」。
フードビジネス科では、生徒が丹精込めて育てた野菜など30種以上の商品を販売し、完売。
フードビジネス科では、生徒が丹精込めて育てた野菜など30種以上の商品を販売し、完売。



取材・文/下境敏弘
撮影/島 誠


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