このページの本文へ移動

農林水産省

メニュー

特集1 農業高校(4)

多くの農業高校で、地域や他団体と連携しユニークな活動が行われています。最近の事例をご紹介します。

農業高校ニュース


[北海道]中標津(なかしべつ)農業高校
[北海道]中標津(なかしべつ)農業高校
農業高校が地域の食育を担う。高校生が子どもたちの先生に
中標津農業高校では、生徒が先生となり、地元の子どもたちに農畜産のことを教える「食育学校」を開催しています。対象は幼稚園児から小中学生。幼稚園児にはきゅうりの苗植えやいも掘り、小学生には年間を通して畑づくりの指導。中学生には、食肉の生産工程を教える授業やエゾシカ肉の加工体験などを行っています。

年齢の近い高校生が先生になることで、子どもたちも農や食に自然と興味や親しみを持つようになっています。中には、同校への進学を決めた子どももいて、良い循環を生んでいます。生徒たちにとっても、知識の定着に役立つほか、相手に合わせた話し方や言葉選びが身に付くなど、コミュニケーション力を高めるよい経験となっています。


[北海道]岩見沢農業高校
[北海道]岩見沢農業高校 [北海道]岩見沢農業高校
北海道最大の農業高校で「ノケジョ(農業系女子)」が活躍中!
北海道中央部に位置する岩見沢市にある岩見沢農業高校は、7つの学科を持ち、800人以上が通う道内最大規模の農業高校です。同校では年々女子生徒の数が増加し、現在は全校生徒の半数近い340人です。

昨年10月、札幌市の商業施設にて行われた特別展示は、企画内容から当日の客対応まで、女子生徒が中心となって成功させた一例です。出展した生活科学科は瓶の中で花を咲かせる「インビトロフラワー」を販売。地元の方も初めて見る花の形に興味津々の様子でした。農業クラブの技術競技大会でも優秀な成績を残している女子生徒たち。卒業後も北海道の農業界を引っ張っていく存在として、活躍が期待されています。

[岩手県]遠野緑峰(とおのりょくほう)高校
[岩手県]遠野緑峰(とおのりょくほう)高校
地域農家と共に伝統野菜を復活、商品化へ
岩手県遠野市の伝統野菜「遠野早池峰菜(はやちねな)」。遠野緑峰高校は、平成18年からこの伝統野菜の栽培普及に取り組んできました。当初は地元でも栽培農家はほとんどありませんでした。地域のPRに役立てたいと考えた生徒たちが自ら栽培マニュアルをつくり、栽培してくれる農家を探すなど普及に努めた結果、生産組合が作られることに。「伝統野菜研究会」も発足しました。

生産量が増え、知名度も上がってきた最近では、生徒たちは販路拡大と商品化に力を入れています。東京での商談会に参加したり、地元のフレンチレストランと協力してメニュー開発を行ったり、自らスープを作ってイベントで振るまったりと、6次産業化を実践的に学ぶ機会となっています。

[栃木県]矢板高校
[栃木県]矢板高校
学校と地元農家に学ぶデュアルシステム
矢板高校の農業経営科では、3年次にデュアルシステムを導入。学校での勉強と並行して、地元の農家や関係団体で年間を通して実習を行っています。

生徒は現場の仕事を学ぶだけでなく、経営者としての視点や知識に触れてよい刺激を受けています。受け入れ先の方々は、開業する場合の初期経費や就職先の候補を教えてくれるなど、生徒たちが卒業後の進路を考えるうえで大きな役割を担っています。

将来の夢を見つけたという声もあり、非農家の生徒が増えるなか、この活動の重要性はますます高まっていきそうです。

[兵庫県]播磨農業高校
[兵庫県]播磨農業高校
「食育アプリ」を共同企画。コンテストでベスト10入り
播磨農業高校は、地元企業や兵庫県立大学など、地域のさまざまな団体と協力しながら課題研究の授業を行う高校です。昨年からは、地元だけでなく沖縄県内の4つの高校とも共同研究を開始。お互いの県を調査し合い、地域の課題を解決するビジネスプランを作成しました。

考案したのは、種をまいてから作物を収穫するまでを体験できるゲームアプリ。農園と提携して収穫物を届ける仕組みで、遊びながら農業を知り、収穫の喜びも味わえます。このアイデアは、日本政策金融公庫が主催する「全国高校生ビジネスプラン・グランプリ」で見事ベスト10に選ばれ、東京工科大学の協力で実際にアプリが制作される予定となっています。

[高知県]幡多(はた)農業高校
[高知県]幡多(はた)農業高校
「孫100人の農援隊」で地元支援
高知県西部唯一の農業高校である幡多農業高校。約10年前から始まった活動が「孫100人の農援隊」です。

その名の通り、「孫のように手伝う」ことをコンセプトに、きゅうりの植え付けや文旦(ぶんたん)の交配作業など、農家の方が猫の手も借りたいほど忙しい時期に、生徒たちが農作業を手伝います。

農家の方にとって大きな助けになるだけでなく、生徒たちにとっても地元農家と触れ合いながら現場を学ぶことができるよい機会になっています。

[佐賀県]佐賀農業高校
[佐賀県]佐賀農業高校
農業界のグローバルリーダーを育成
昨年4月より、文部科学省が取り組むスーパーグローバルハイスクール(SGH)に農業高校として初めて指定を受けた佐賀農業高校。国際的な視点を持ち、日本の農業分野を引っ張っていくグローバルリーダーを育成するためのカリキュラムが実施されています。

主軸となるのは、3年間一貫して取り組んでいく課題研究です。1年次には佐賀県の農業を調べ、2年次に佐賀県と近い地形を持つベトナムでの研修、3年次に共通点と相違点を研究し発表を行います。県内の大学や県の農林水産部、JETRO(日本貿易振興機構)なども講師として協力し、生徒たちも興味津々で取り組んでいます。将来、自ら輸出を行う農業者や、輸出をサポートする人材の育成が期待されています。

[熊本県]熊本農業高校
[熊本県]熊本農業高校
規格外海苔を鶏の飼料に。地域資源活用が成果を生む!
卒業生の海苔生産者から、廃棄せざるを得ない海苔が大量にあるとの連絡をきっかけに、規格外海苔の飼料化プロジェクトを立ち上げた熊本農業高校。

県内の漁業関連団体との共同研究により、シュレッダーで細かく粉砕し、飼料に3パーセント添加する方法を確立。海苔を与えると、EPAやカロテンなどの栄養価もアップすることが分かりました。この卵は「海苔ノリたまご♥黄身に夢中♥」と名付けられ、昨年1月に商標登録を完了。2月には、第4回「食品産業もったいない大賞」で、食料産業局長賞に選ばれました。同校で販売するほか、県内養鶏農家にも飼料を広く活用してもらいたいと考えています。

農業を学ぶアメリカの学生と国際交流
アメリカの農業クラブ連盟「FFA」の学生たちが、1月22日~ 2月1日の日程で来日。東京都の瑞穂農芸高校で行われた歓迎交流会で都内の農業高校生たちと国際交流を図りました。また、農業視察、全農東海支店の工場見学、愛知県内でのホームステイなどを実施。農業という共通の夢を持つ同年代と触れ合う機会は、双方の学生にとって大きな刺激になりました。
歓迎交流会では、餅つきや弓道体験を行った。
歓迎交流会では、餅つきや弓道体験を行った。



取材・文/千葉貴子


読者アンケートはこちら