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農林水産省

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  • aff06 JUNE 2021
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品種開発から輸送まで 花が私たちのもとに届くまでの物語

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特別な日の贈り物はもちろん、日常を華やかに、また心地よい空間にしてくれる存在である「花」。しかし、私たちのもとに届くまでの道のりついては、知らないことが多いのではないでしょうか。そこで今回は新品種の開発から消費者のもとへ届くまでを5つのステップに分け、すごろく形式のイラストとともに紹介します。

花が私たちのもとへ届くまで

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すごろくのPDFはこちらからダウンロードできます(PDF : 788KB)

新品種の開発

花の多くは品種改良されたものです。品種開発の目的は大きく分けて2つ。1つは色や形、香りなどの改良によって鑑賞価値を高めて消費者を魅了するため。もう1つは病気に強く、育てやすい品種をつくるためです。花への関心が高く嗜好性が多様な日本では、海外に比べて多くの品種が取り扱われています。品種開発には、性質の異なる品種同士をかけあわせる方法や、突然変異を利用する方法、染色体の数を増やす方法などが使われています。品種開発の選抜の効率を高めるためにDNAマーカーの利用も行われています。

世界初の“枯れん”カーネーション花恋かれんルージュ」

写真:花恋ルージュ

写真提供:農業・食品産業技術総合研究機構

品種改良によって誕生した、病気に負けない真っ赤なスタンダードタイプのカーネーション「花恋ルージュ」をご紹介します。カーネーションの栽培では、高温が続く夏に立ち枯れ症状を引き起こす「萎凋細菌病」が深刻な被害をもたらしており、抵抗性を持つ品種の開発が望まれてきました。そこで着目したのが、カーネーションの仲間であるダイアンサス属野生種が持つ強い抵抗性です。この野生種とカーネーションの交配を繰り返すことで抵抗性を15年以上かけて導入し、「萎凋細菌病」に強い品種の育成に世界で初めて成功しました。抵抗性の確認にはDNAマーカーが利用されました。さらにこの抵抗性を導入することで、スプレータイプの「ももかれん」と「ひめかれん」も育成されました。

※スタンダードタイプ:1本の茎に1つの花を咲かせるタイプ
スプレータイプ:1本の茎から枝分かれして複数の花を咲かせるタイプ

苗の生産

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品種開発によって新しい品種ができても、これを流通させるためには、大量の苗をつくることが必要です。苗を生産するための方法は、植物によって異なります。イメージしやすい種をまく方法(種子繁殖)のほかに、植物体の一部から同じ植物体を再生させる方法(栄養繁殖)があります。今回は、栄養繁殖の中で、さし芽(さし木)、組織培養という方法について、イラストも活用してご紹介します。

さし芽(さし木)では、栄養成長をしている芽(枝)を切り取り、土にさして根を出させ、苗をつくります。さし芽で増やしやすい花の代表がキクで、葉が3枚程度ついた茎を5、6cm程度摘み取り、土に植えると、10日前後で根が出始めます。

さし木のステップ

画像:挿し木のステップ

さし芽(さし木)では繁殖が難しい品種を増やす方法として組織培養が使われています。組織培養とは、植物体から取り出した一部の組織を培養容器に入れて、制御された環境の下で無菌的に繁殖させる方法です。多くの個体を早く増殖させる目的や、ウイルスに感染していない個体を得る目的でも利用されます。主にラン類やカーネーションなどの増殖に利用されています。

カーネーションを例にとってその過程をみると、まずは健康な株を選定し、雑菌やカビが入らないように殺菌。細胞分裂が活発な茎の先端部の成長点を摘出したら、必要な栄養分が入った無菌の試験管のなかで培養します。

組織培養のステップ

画像:組織培養のステップ

監修

国立研究開発法人 農業・食品産業技術総合研究機構
野菜花き研究部門

野菜及び花きに関する育種や栽培技術についての研究開発等を行っています。

https://www.naro.go.jp/laboratory/nivfs/index.html

花の栽培

品種開発と同様、花を栽培する方法も常に進化しています。昨今広がりが期待されているのがロボット技術やICT(情報通信技術)といった最先端技術を活用し、省力化・精密化や品質向上を目指した「スマート農業」。野菜に比べ、市場規模が小さいため遅れをとっていた花のスマート農業ですが、2019年から農林水産省が実施している「スマート農業実証プロジェクト」により、花でもその動きが加速しています。

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スマート農業で進化する小ギクの生産(秋田県 園芸メガ共同利用組合)

同プロジェクトの初年度の実証課題のひとつとして選ばれたのが秋田県の園芸メガ共同利用組合が手がける小ギクの生産です。これまで生じていた課題として、大きくは以下の2つがありました。

課題1

屋外で栽培をするため気象条件に開花時期が大きく左右され、盆や彼岸のよく売れる時期に安定した出荷ができない点。

課題2

需要期に合わせた作付により作業が集中してしまい、規模の拡大に限界がある点。

これらを解決するために、
機械による栽培の効率化と、電照技術による開花調節などの取り組みが行われています。

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半自動乗用移植機による苗の定植の様子。

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夜間にLEDを照らして、開花時期を調節します。電灯の点灯状態は、圃場から離れた場所でもスマートフォンなどで確認できるようになっており、トラブルがあった場合にはメールで状況が通知されます。

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収穫機による一斉収穫の様子。電照技術により開花時期をそろえたことで、一斉に収穫することができるようになりました。

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切り花調整ロボットによる調整の様子。

こうした技術を導入することで・・・・

成果1

電灯を照らして開花時期を揃え、従来の6割から7割程度だった出荷率が9割を超えるまでに向上しました。

成果2

半自動乗用移植機や収穫機、切り花調整ロボットといった機械の導入により、労働時間が約3割短縮しました。

はじまったばかりの花におけるスマート農業ですが、
業界全体へのさらなる広がりが期待されます。

取材協力:秋田県農業試験場 野菜花き部

花の輸送

収穫された花は水を吸わせた後、地域で決められた規格に選別され、市場まで輸送されます。そこで大切なのが、花を長持ちさせるために行う、品質保持剤を使った事前処理や適切な温度管理。花持ちは、温度×時間で決まると言われています。気温の高い期間が長くなっている近年では、いかに温度を低く下げて運ぶかが長持ちさせるポイント。常温のトラックから保冷車へシフトし、温度管理のさらなる徹底が重要です。花の輸送方法には、大きく分けて乾式と湿式の2種類があります。これらの輸送方法について、詳しく見てみましょう。

乾式輸送って?

輸送中の切り花に吸水させる手立てをとらず、通常の商品と同じように段ボールケースに切り花を箱詰めして運ぶ輸送方法。輸送コストが安く、取り扱いしやすい反面、小売店で再度水を吸わせるまで切り口が乾いた状態なので、品目によっては鮮度が落ちる場合もあります。乾式と湿式のどちらでも品質面に差が出にくいキクやガーベラなどは乾式が主流です。

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乾式輸送によるキクの輸送の様子。

湿式輸送って?

花の切り口を水などの溶液に浸して、吸水できる状態で輸送する方法。水を入れたバケツに切り花を立てて入れるバケットによる方法と、下部に水を入れた容器を収め、横に倒しても水がこぼれない工夫がされた水入りの縦箱を使用した方法があります。輸送コストが高く、取り扱いがしづらい反面、鮮度を高く保てるメリットがあります。湿式が適している品目として、バラ、トルコギキョウなどがあります。

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湿式輸送によるバラの輸送の様子。

消費者のもとへ

野菜や果物と比べて少量多品種がつくられている花は、それを集約する役割を担う市場での取引がほとんどで、約8割の花が市場を経由しています。市場や仲卸から仕入れた花が専門の小売店に渡ってからは、十分な吸水や低温ショーケースの利用といった小売店による鮮度保持の対策が重要です。また、“すぐに枯れてしまうからあまり花を買わない”といった取り扱いに慣れていない購買層にむけた情報提供・啓発も重要なポイント。花を長持ちさせる方法を簡単に紹介したリーフレットを配るなど、購入を促進する活動にも取り組んでいます。

監修

日本花き振興協議会

日本の花き産業、花き文化の団体で構成され、日本の高い花の品質や、花文化を発信することで、日本の花需要の拡大を進める。

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特集タイトル

編集後記

デザインをリニューアルしたaff、いかがでしたか?今月は、花をテーマに、オリジナルブランドやご家庭での楽しみ方など、さまざまな切り口からお届けします。1週目は、私たちのもとに花が届くまでに関わっている技術や取組を中心にご紹介しました。新品種や栽培技術の研究開発を行う方、苗や切り花の生産を行う方、鮮度を保って輸送や販売を行う方。私たちを魅了する美しい花、その裏側にはさまざまな方の工夫や努力があることを、改めて感じました。(広報室AY)

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大臣官房広報評価課広報室

代表:03-3502-8111(内線3074)
ダイヤルイン:03-3502-8449

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