多様化するニーズに
応じた差別化を!
各地のオリジナル品種の開発
多様化するニーズへの対応が求められる今、キーワードとなるのが“差別化”です。新たな付加価値を生み出すために各地で行われているのが、その地域の特色を生かしたオリジナル品種の開発。ブランド化することで、数多く流通する花の中から選ばれる個性的な品種を目指しています。
各地のオリジナルブランド10
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岩手県
八重咲りんどう
ボリューム感と
花持ちの良さが魅力全国シェアの約6割を占め、岩手県の主要な花であるりんどう。切り花は盆や彼岸向けの仏花として、鉢花は敬老の日のギフトとして定着していますが、さらなる需要拡大のために育成されたのが「八重咲きりんどう」です。多様化が進んでいた花色の一方で改良が遅れていたのが花型。そこで着目したのがバラやカーネーションなどの八重咲き性(花びらが重なって咲くこと)です。幼苗期の葉から八重咲きの株を判別できる技術を活用し、効率的に育成を進めることに成功。つぼみが多く、花持ちが良好で、ボリュームのある高品質な鉢花用品種「いわてDfG PB-1号」が完成しました。市場には、2022年秋頃から本格的に出回る見通しです。
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福島県
キビタンイエロー
大きなロート型に映える
鮮やかな黄色会津地方が主な産地であるカラーの栽培には、大半が海外品種であり、輸入球根が高価で、球根の再利用が制限されているという問題がありました。その経済的な改善と産地拡大に向けたバリエーションの増加を目指して育成されたのが「キビタンイエロー」です。2004年にカラーの新品種開発が始まり、これまでに得られた約5000個体の中から形質が特に優れる1個体を選抜。花色が鮮やかな黄色であることから福島県のマスコットキャラクター“キビタン” の色にちなんで命名。ロート型に大きく開き、外観品質が特に優れているため、婚礼や贈答用などに向いています。市場には、2023年頃から本格的に出回る見通しです。
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新潟県
新紅
27年の開発期間を経て誕生した
赤いチューリップチューリップの切り花の生産量日本一を誇る新潟県。中でも赤色の品種として人気があり出荷量が多いのが、一重咲き(花弁が6枚)の「イルデフランス」です。しかし、同品種は長年の栽培により、近年は球根の品質劣化が問題となっていました。
そこで、新潟県の気候風土に合う新品種として2017年に誕生したのが「新紅」。開発のスタートは1990年まで遡り「イルデフランス」を種子親に、一重咲き品種「マルタ」を花粉親にして、7年越しに初めて開花した個体から選抜。特性調査をしながら球根を増殖し、さらに20年の歳月を経て「新紅」が誕生しました。楕円形の花型と明るい赤色が特徴で、花丈は40cm程度と比較的大型です。名前の由来は新潟県を代表する品種という思いを込めた「新」と印象的な深い「紅」からです。現在は、県内生産者の下で増殖中で、2023年頃の一般販売を目指しています。 -
東京都
みず穂の香
ウッディフローラルな香りの
新タイプのシクラメン花の大型化や花色の多様化といった品種改良を進める過程で、元々持っていた香りを失ってしまった東京都の主要鉢花であるシクラメン。芳香性と観賞性に優れた新しいタイプのシクラメンを目指し、香りの良い原種と交配。2011年までに3品種が誕生しました。3品種の中でも最も多く生産されている「はる香ミディ」は、さわやかなウッディフローラルの香りで、花弁の縁のレースのようなフリンジが特徴的。現在、「はる香ミディ」は生産地である瑞穂町の認定商品としてリバイバルされ、「みず穂の香」のブランド名で販売されています。
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静岡県
風恋香
世界初!
ラベンダーの香りのマーガレットマーガレットとは異なる植物種との交配を進める中で、多様な色合いを持つハナワギクとサンデーリップルというマーガレットの交配によって誕生した「風恋香」。最大の特徴は既存のマーガレット品種にはないラベンダーの香り成分を含むことです。その優れた香りで「ジャパンフラワーセレクション2009-2010」にてフレグランス特別賞を受賞。名前の由来はさわやかな香りが風に乗って広がるイメージや、開花始めのほのかなピンク色から開花が進んで白色へと花色が移り変わる様から。香り以外にも、丈夫で育てやすく、一般のマーガレットに比べて開花期が長く、花も大きいといった魅力を持つ品種です。
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和歌山県
紀州ファインライラック
低い温度でもよく育つ
明るい紫色のスターチス和歌山県のスターチス栽培は、2005年頃からの重油価格の高騰を契機とした冬期の加温コスト削減により、需要期(3月頃まで)の切り花出荷本数の減少が問題となっていました。
そこで、夜間のハウス内の温度管理を、通常12度のところ、2度または無加温で栽培する低夜温栽培に適した品種の育成を目標に開発されたのが「紀州ファインライラック」と「紀州ファインオーシャン」の2品種です。
このうち、「紀州ファインライラック」は、名前からもわかるように色合いは赤味のある明るい紫で、ひとつの花房(小さな花の集まり)の形が丸みをおびており、小さくかわいらしいフォルムが印象的。
また、1本あたりの花房の数が多いことや、既存品種に比べて1株あたり1.4倍から1.8倍の切り花が得られることなども特徴です。 -
島根県
茜雲
夕日に染まる雲を想わせる
優しい色のアジサイ「アジサイプロジェクト」を立ち上げ、新品種の開発から販売まで一体となった取り組みを行っている島根県。国内最大規模の新品種コンテストでグランプリを獲得するなど、高い評価を受けています。オリジナル品種はいずれも室内でも育てやすく、個性豊かで美しい花が特徴。「茜雲」は、2020年4月に出荷が始まった新しい品種です。栽培過程で労力のかかる支柱立てが不要という利点がありながら、小さな花を多数つけたコンパクトな草姿がかわいらしいと人気。咲き始めは淡いピンクで、次第に濃くなるという花色の変化を楽しむことができ、名前の由来でもある夕日に染まる雲を想わせるような優しい色合いが魅力です。
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高知県
サザンウィンド
大輪で
ボリュームのあるグロリオサグロリオサ生産量70%以上のシェアを占める高知市三里地区。切り花として少し使用しづらかった従来の品種から改善すべく開発された「サザンウィンド」は、南風(まぜ)という高知県特有の風にちなんで命名されました。花全体が大きくボリュームがあり、茎が堅いのが特徴で、つぼみが多くあるので長く花を楽しむことができます。その品質の高さは10年に1度の花のオリンピック『フロリアード2002』でゴールドクラスを受賞し、花の品評会の最高峰『インターナショナル・フラワー・トレードショー 2002』で3位に輝くなど、世界的にも認められています。
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宮崎県
オリジナルスイートピー
多彩で特徴のある花色が
国内外で人気温暖多照な気象条件を生かし、スイートピー出荷量全国一位を誇る宮崎県。この地の気候風土に合い、特徴的な花色を有した品種として育成されたのが「みやざきオリジナルスイートピー」です。
県内に伝わる神話や伝説にちなんで命名された「美々」や「式部」など、これまでに21品種が発表されており、近年では巻きひげがなく栽培管理の省力化につながる品種や、輸出をはじめとした長距離輸送に対応可能な、従来よりも日持ち性に優れる品種も発表されています。 -
沖縄県
太陽のマライカ
バランスの取れた草姿を持つ
純白の菊全国でも有数の菊産地である沖縄。葬儀での需要の拡大により開発された白のスプレー菊(1本の茎から枝分かれしてたくさんの花をつける洋菊)「太陽のマライカ」です。マライカはインドネシア語で「天使」を意味し、天国へ送る思いが込められています。一番の特徴は花の純白さ。また、純白の花色と緑色の中心部のコントラストや葉の照り、日持ちが良いのも魅力です。特別な栽培管理を行わなくても、根や樹が強く、栽培しやすいという利点も。2015年、2017年の沖縄県花き品評会にて金賞を受賞。
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花で彩る私の時間
編集後記
今週は、日本各地のオリジナル品種について、その開発の道のりなども交えてご紹介しました。皆さんはどの花がお気に召しましたか?誌面を作る中で感じたのは、やはり花にはそれぞれ個性があって、人の心を和ませてくれるものだということです。近いうちに花屋さんをのぞいてみようかな。(広報室SD)
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