

花のさらなる需要拡大に向けて、期待されているのが海外への輸出。輸送コストを中心とした課題を抱えながらも、日本の花は世界で高い評価を受けています。今回は、国外に輸出されている代表的な品目や輸送技術の紹介、画期的なアイデアで花の輸出実績を伸ばしている事例の紹介を通して、花の輸出の最前線に迫ります。
花の輸出の現状と課題

品種が多様で品質が高い日本の花は、海外でも屈指の高い評価を得ています。しかし、輸出額は伸び悩んでいるのが現状です。その一番の課題はコスト。他国に比べて生産コストが高い日本では、関税や輸送コストを加えると、価格競争においては難しい状況にあります。また、長距離輸送における鮮度や品質維持も課題の1つ。今後は、海外で勝負できる日本ならではの品目を戦略的に売り込むとともに、輸出相手国や地域のニーズに応じた品種の栽培や輸送技術向上の取り組みが必要です。

世界で活躍する日本の花
品質の高さが世界でも評価される日本の花。そうした需要をふまえ、海外へと市場を拡大すべく、さまざまな品目で輸出に向けた取り組みが行われています。ここでは、各地域が力を入れて開発しているオリジナルブランドから世界的コンテストで1位になった名花まで、世界へ羽ばたく注目の5品目をご紹介します。
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世界一に輝いた
ラナンキュラス
2012年にオランダで開催された国際園芸博覧会「フロリアード」の球根花部門コンテストにおいて、見事世界一に輝いた長野県のラナンキュラス。世界にその品質が知られることとなり、北米やアジア、ロシアへの輸出を開始しました。しっかりとした花弁で、開花が長期のものを厳選。低温でじっくり育て、病虫害には特に気を付けることで、輸出に耐えうる高品質な切り花づくりを実施しています。
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さらなる色展開に期待!
グロリオサ
海外での評価をみる試みとして2008年に台湾へ、2016年に上海へ輸出経験のある高知県・三里産の「グロリオサ」。日本産は、輸出用に給水剤を増量するなど、品質を保つ工夫もしています。現在では、赤系の品種が主流ですが、海外のニーズに応じたカラーバリエーションを増やすことで、さらなる輸出市場の拡大を目指しています。
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アジアで人気の高い赤と金の
ダリア
福島県のオリジナルブランドとして、2020年に輸出を開始。多くの花びらが集まって丸い形になる「ポンポン咲き」で衝撃に強く、日持ちもよいため、輸出に適しています。アジアの市場で特に人気があるのは、発色がきれいな赤色と金色の品種。つぼみの段階で保護ネットをかけ、通常より若干早い段階で収穫するなど、輸送時に花が痛まない工夫も施しています。
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時間をかけた高品質な花づくり
トルコキキョウ
ラナンキュラスと同じく、2012年のフロリアード の切り花部門コンテストにおいて、見事世界一に輝いた長野県のトルコキキョウ。夏の輸出には180日から240日、秋の輸出には120日以上という、通常の1.5倍の栽培日数をかけ、花弁や葉の厚い、高品質な花づくりを徹底しています。今後はアフリカや南米など、輸出経験のない国への輸出を目指しています。
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北米で人気の高い
スイートピー
北米で評価の高い日本産の花の中でも、特に品質が優れるとされている日本のスイートピー。2008年頃から、宮崎県の「オリジナルスイートピー」が北米に輸出されており、花色が鮮やかで香りがよいと高い人気があります。
近年は、日持ち性が高く長期の輸送に適した品種も育成されるなど、さらなる輸出拡大が期待されています。
こんなにすごい! 輸出の方法

輸送条件にもよりますが、通常輸出にかかる日数は中国などのアジアへは3日から5日程度、米国や欧州へは5日から7日程度かかります。そこで重要なのが、品質保持のための温度管理です。これには、リーファーコンテナや差圧予冷など、冷却技術を駆使した対策がされています。
リーファーコンテナとは?

コンテナ内部には冷却装置を備え、壁の中には断熱材が入っています。これにより、内部を低い温度で一定に保つことができます。
差圧予冷とは?

差圧予冷とは?
穴の開いた段ボールに花を入れ、差圧ファンを利用して圧力の差を作り出し、段ボールの内部に冷気を引き込んで冷却します。
また、輸送コストの削減と作業効率化のための梱包用段ボール箱のパターン化をすすめています。段ボールは主に3パターンあり、みかん箱と呼ばれる低価格で最も一般的なタイプ、箱の開閉が便利で差込があるタイプ、ギフトボックスに使用されている身とフタが分かれている3タイプです。

福島県の花を世界へ!
日本国内での花の生産から、輸出先での販売までを自社で行うことにより、課題となっている輸出のコストを抑え、着実にマーケットを拡大している会社があります。それが福島県を拠点に活動する「フラワーキング」です。

フラワーキングが中国で展開する生花店の様子。カスミソウ、リンドウ、トルコキキョウ、ダリアといった日本ならではの人気品目を多く取り揃えています。

福島県の復興を花で世界に見せたいという思いから開発されたオリジナル品種のダリア「メダリスト」。塙町にダリアの供給をしている秋田国際ダリア園園長の鷲澤さんの協力の下、3年をかけて開発。知名度の低い新品種は生産者にとってリスクが高いことから、作付けしてもらうためのブランディングとして、自社でも3ヘクタールほどの農地を借りて生産し、販売実績へとつなげました。
輸出業務に加え、日本国内での花の生産をスタートさせようと全国を巡った同社。輸出に適した花の生産地として選んだのが、輸出先で人気のあるダリアや桜などの産地、福島県・塙町。廃校となった小学校の校舎の一部に本社を構え、集荷や輸出の拠点としています。また、輸送コストの削減に加えて革新的なのが、輸送時間の短縮。荷造りや手続きなどを自社で行うことにより、朝収穫した花を同日中に空港便で運び、翌日の昼には現地の店頭に並ぶという、通常より2日程の短縮に成功しました。

廃校となった小学校の校舎の一部に構えた本社の様子。

空港にて輸出用段ボールに入れた花を積み込む前の様子。
さらに、花の価値向上のための品質保持にもこだわっています。輸出の要といえるのが梱包。形が崩れないようつぼみの段階からネットをかけたり、横箱で品質を保持しながら効率よく運送できる独自の段ボールを開発したりといった工夫に加え、産地、輸送中、輸送先の温度差を意識した温度管理を徹底しています。

形がくずれないようにつぼみの段階からネットをかけます。梱包の工程も自社で行うからこそできる工夫です。
「福島のハブとなって、品質の高い福島県の花をさらに海外へ届けていきたい」と語る社長の遠藤氏。自社での花の生産から輸出先での販売まで、一貫した取り組みを通して、課題とされているコストと時間の削減に成功した同社。次の目標は、福島県から直接海外へ、という新しい輸出の形を実現すること。最近では、県内の生産者を回って自らが出荷先となり、コストがかかる東京までの運送費を抑える取り組みをはじめました。今後は、そうした福島県から直接海外へ、という新しい輸出の形をさらに積極的に展開していきたいと語ります。ますます進化するフラワーキングと福島県のこれからに期待が高まります。
取材協力
株式会社FLOWER KING
http://flowerking.co.jp代表取締役 遠藤大輔さん

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編集後記
先月の母の月に子ども達から鉢植えのカーネーションを貰いました。ピンク色の花びらに、濃いピンクの絞り模様が入ったカーネーション、見るたびに元気をもらっています。花のプレゼント嬉しいものですね!今週は世界からも高く評価されている日本の多彩な花々と、その繊細な花の輸出には、品質を保つための様々な工夫が行われていることを紹介しました。日本の花が諸外国に届くまでには、輸送中の予冷など、丁寧な対応が行われているのですね。(広報室KM)
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