世界各国の料理を楽しむことができる現代。さまざまな国の料理を作るのにかかせない香辛料も、今では身近な存在となりました。一般的に香辛料とは、こしょうやサンショウなどを指しますが、今月の特集では、香り付けや臭み消しとして料理を引き立てる香辛野菜や、日本で昔から使われているつまもの類なども含めて幅広く紹介します。
そもそも香辛料とは?
料理の香り、辛み、色付けに使われ、味にメリハリをつけ、風味や彩りをよくしてくれる香辛料。食品の調理のために用いる芳香性や刺激性を持った植物を指し、スパイスやハーブなどがあります。主に、スパイスは東洋からヨーロッパに持ち込まれたとされるこしょう、クローブ、ナツメグ、中南米が原産とされるオールスパイスやとうがらしなどがあり、遠路はるばる運ばれてくることから乾燥しているものが多いのが特徴。ハーブは、草木を意味するラテン語のHerbaを語源としているように、山野に自生しているものが多く、バジル、オレガノ、タイムなどがあります。また、ハーブは食用以外に薬用などにも幅広く活用されています。
時代とともにみる
香辛料の変遷
香辛料は時代によって、日本ではさまざまな用途で使われてきました。
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- 縄文時代
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- この時代の遺跡から、しそやサンショウの種子が出土。
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- 奈良時代
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平安時代 -
- 奈良県東大寺の正倉院には、奈良時代以来の御物が納められており、その中に、こしょう、クローブ、シナモンが保存されている。
- 日本最古の歴史書といわれる「古事記」や、「万葉集」「今昔物語」「源氏物語」など古典文学にも、にんにくについての記載がある。
- 日本現存最古の薬物辞典「本草和名」に、わさび、からし、しょうがなどが食用として明記。コリアンダーやウイキョウも登場。
- 奈良時代
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- 江戸時代
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- とうがらし栽培が定着。
- 末期にはサフランが栽培されるように。
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- 明治・大正時代
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- 明治初めに刊行された料理書で、この頃から普及し始めた牛肉の手軽な食べ方としてカレーの作り方が紹介されている。
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- 近・現代
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- イタリアンブーム、エスニックブームに続き、激辛ブームも。
日本でおなじみの香辛料
香辛料と一口にいっても、利用されている植物の部位はさまざま。日本でお馴染みの香辛料を8つ例にとり、その特徴と風味や用途の違いを見ていきましょう。
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パプリカ(ナス科)
<利用部位:果実(果肉のみ)>
(概要・用途)
香辛料として使われるパプリカは辛みのないとうがらしで、鮮やかな赤い色をつけるために使用されることが多く、料理に一振りすることでアクセントになります。ほのかな甘味が特徴的で、シチューやグラタンなどの洋食によく合います。 -
ごま(ゴマ科)
<利用部位:種子>
(概要・用途)
原産地については、メソポタミア、インド、アフリカなど諸説あります。プチプチとした食感が魅力で、油脂の甘み、旨味があり、わずかな苦味も。和え物のタレや、煎ってご飯にふるといった料理のトッピングから、もちや団子などの和菓子まで幅広く使われています。 -
サフラン(アヤメ科)
<利用部位:めしべ>
(概要・用途)
花のめしべを手摘みして採取し、乾燥させて作るサフランは、一般に流通している香辛料の中でも貴重で高価。清らかな強い香りが特徴ですが、主に色付けに使用され、鮮やかな黄色が印象的なパエリアがその代表格です。 -
ローレル(クスノキ科)
<利用部位:葉>
(概要・用途)
西アジア・ヨーロッパ南部が原産とされ、心地よい甘味と清涼感が特徴的。現在はヨーロッパ、アメリカなどで広く栽培されており、ヨーロッパ産は丸みのある葉でマイルドな香気、アメリカ産は細長い葉で清涼感と苦味があります。日本では月桂樹という別名でも呼ばれ、煮込み料理に活躍します。 -
クミン(セリ科)
<利用部位:種子(植物学上は果実)>
(概要・用途)
独特の芳香と辛味・苦味が特徴のエジプト原産のスパイス。カレー粉やガラムマサラの要としても知られ、料理の最初に油に入れて弱火にかけることで、芳香が引き立ちます。パウダーにしたものは、フムスやチリコンカンなどの料理に使うのもおすすめです。 -
シナモン(クスノキ科)
<利用部位:樹皮>
(概要・用途)
味も香りも甘く、シナモンロールやクッキーなどのお菓子づくりに欠かせないスパイス。辛みと清涼感もあり、ハンバーグなどのひき肉料理には臭み消しや香り付けとしても役立ちます。カレー粉の原料としても。 -
サンショウ(ミカン科)
<利用部位:果皮・葉・果実>
(概要・用途)
原産地は日本、中国などの東アジア。柑橘系の香りで、しびれるような辛みと刺激が特徴です。果皮を乾燥、粉末にしたものが使われ、蒲焼きや照り焼きなどのこってりとした料理に振りかければ爽やかさが増します。また、若葉は薬味として使われます。 -
ナツメグ(ニクズク科)
<利用部位:種子中の仁>
(概要・用途)
甘く豊かな芳香を持ち、バランスの良いスパイシーな風味。肉のうまみを増すとされ、ハンバーグやロールキャベツなどのひき肉料理によく使われます。乳製品とも好相性でホワイトソースやシチューの風味付けにも。
定番の薬味には
こんな意味があった!
風味や味わいだけでなく、季節感の演出など、さまざまな役割を果たす薬味。料理との組み合わせをご紹介します。
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焼き魚 × はじかみしょうが(棒しょうが)
6月から8月が旬の新しょうがを早どりした茎部分を使った棒しょうが。味も見た目も清涼感があり、夏の彩りを添える焼き魚のあしらいとしてよく使われます。季節感を演出するだけでなく、魚の臭みを和らげてくれたり、口の中をさっぱりとさせてくれる効果も。飾りとして目で楽しんだあとは残されてしまうこともありますが、味わってこそ焼き魚のあしらいとしての良さが堪能できます。
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そうめん × みょうが
6月から8月頃に旬を迎える夏みょうが。淡白な味わいのそうめんにみょうがを合わせると、華やかな色と独特の香りが添えられて、味だけでなく視覚や嗅覚でも楽しめます。みょうがは色つやがよく、丸みがあって、身がしまっているものを選んでください。
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カツオのたたき × 薬味ミックス
カツオの生臭さをとってくれるにんにく、大葉やしょうがなどの薬味。それらをミックスすることで、食べ進める中で味わいの変化が楽しめるのも魅力です。
食べるだけじゃない、
スパイスの活用法
料理に使われることの多いスパイスですが、実は食べる以外にも活用法があります。例えば、ウコン。別名ターメリックと呼ばれ、カレーに添えるターメリックライスなどでおなじみですが、防虫に役立つとされ、高価な着物や絵画、陶器を包んで保管する用に、ウコン染めの布が重宝されてきました。
また、より日常的に利用できるものとしては、別名丁子とも呼ばれているクローブがあります。甘い芳香を生かし食器棚の防臭に使ったり、お茶パックに入れたものを綿布に包み、シューキーパーとしても活用することができます。
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クローブは、花の蕾を乾燥させたもの。スーパーマーケットなどで比較的簡単に手に入ります。
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グラスや小皿にクローブを入れ食器棚に。爽やかな香りで、こもりがちな食器の匂いもすっきり。
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シューキーパーにはクローブだけでなく、乾燥タイムを入れても爽やかに。
今回教えてくれたのは・・・
【各種香辛料紹介・コラム・一部写真提供】
ハーブスペシャリスト・
Yumenoki Factory主宰
榊田 千佳子さん
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知れば知るほど奥深い!
香辛料の魅力再発見 -
「辛味」のスパイス
とうがらしとこしょうの世界 -
食卓を彩る
香辛野菜&つまものの魅力 -
活用法はさまざま
フレッシュハーブの世界
編集後記
最近、カレーといえば具材だけはその時の気分で選ぶものの、カレーソースは市販のものを使っていました。8月号の編集作業をしていて、久しぶりに玉ねぎを炒めるところからカレー作りをしたくなりました。とはいっても作るのは数種類のスパイスだけで比較的手軽に完成する、鶏ひき肉を使ったキーママターです。さっぱりとしていてこの時期にピッタリ、そして、なによりも冷たいものを飲みながら玉ねぎを炒めているあのひと時が幸せなんです。(広報室SD)
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