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農林水産省

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  • aff10 OCTOBER 2021
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不思議がいっぱい!きのこの生態と豆知識

身近な食材であるきのこは、自然界では樹木と“共生”して栄養を互いに与え合ったり、倒木や落ち葉などを“分解”して土へ還したりといった大切な役割を担っています。今回は、あまり知られていないきのこの生態や、難しいとされるマツタケの人工栽培に向けた取り組みについて紹介します。

きのこを知ろう!

きのこは何からできている?

シイタケ菌床(シイタケの下にある白い部分が菌糸体)。

私たちが「きのこ」と呼んでいるのは、植物では果実や花に相当する器官です。ここでは、植物の種子にあたる胞子が作られ、それらが、飛散して子孫を残します。では、きのこは何からできているのでしょうか?答えは「菌糸(きんし)」です。きのこは、微生物の真菌類がつくる糸状の菌糸が集まって塊状になったもので、例えばシイタケの柄を縦に裂いて、それを顕微鏡で見ると、長い菌糸がぎっしりと並んでいる様子を見ることができます。かさの部分も同様で、シイタケは全部「菌糸」でできているのです。また、きのこの下には菌糸の集合体である「菌糸体」があり、土や樹木、落ち葉の中に拡がり、栄養や水を得ながら生活しています。

子嚢菌類と担子菌類

左:子嚢菌類の「ヒイロチャワンダケ」、右:担子菌類の「オオワライタケ(毒きのこ)」。

きのこをつくるのは、たいていの場合「子嚢(しのう)菌類」と「担子(たんし)菌類」という2つのグループで、これらは、胞子(有性胞子)のつくり方が異なります。子嚢菌類は、子嚢と呼ばれる袋状の器官の内部に胞子をつくる菌類で、トリュフやアミガサタケなどの食用きのこはこのグループに属します。また、担子菌類は、担子器と呼ばれる構造の外側に胞子をつくる菌類で、マツタケやシイタケなどの食用きのこはこのグループに属します。

きのこはどうやって増える?

きのこで作られた胞子が、風などにより飛散して、倒木や落ち葉などの上に落ちて、条件が良ければ発芽します。そして、胞子から菌糸が伸び、養分を吸収して拡がり、菌糸体となります。その後、栄養条件や温度、湿度などの環境条件に応じて、まず、菌糸体の一部で菌糸が密に集合して、きのこの元になる原基が形成され、これが発達して柄と傘ができ、きのことなります。

きのこは分解/
共生して生きている

きのこは、栄養の取り方によって、大きく「腐生菌(ふせいきん)」と「菌根菌(きんこんきん)」に分かれます。

腐生菌とは

落ち葉や倒木、切り株などに生える菌で、セルロースやリグニンなどの植物体を構成する有機物素材を分解し、栄養分として利用します。腐生菌の生育によって分解された倒木や落ち葉は朽ちて、土へ還っていきます。腐生菌きのこの例として木の幹や枝などを分解する「木材腐朽(ふきゅう)菌」のシイタケやナメコ、落ち葉などを分解する「落葉分解菌」のマッシュルーム(ツクリタケ)などがあります。

菌根菌とは

生きた植物と共生関係を築いて生活している菌で、菌糸を土の中に張り巡らせ、植物の細根部に共生して菌根をつくります。菌類(きのこ)はチッ素やリン、カリウムなどの無機養分や水を吸収し、自ら利用するとともに菌根(植物の根と菌類が作る共生体)を介して植物にもそれらを届けます。一方、植物は光合成でつくった糖類などを菌類に与えます。菌根菌のきのこの例としてマツタケやホンシメジ、トリュフなどがあります。

自然界での
きのこの役割

分 解

腐生菌は、分解者としても生態系における循環システムの維持に役立っています。植物や動物の遺体などの有機物を分解して無機物へ還元し、植物の栄養として土へ戻す役割を果たしています。他の菌類や微生物が分解できない難分解性の物質であるリグニンを含む樹木の幹や枝なども分解することができます。森林が枯れ木や落葉で埋め尽くされないのは“森の掃除屋”と呼ばれる腐生菌のリグニン分解パワーのおかげといえるでしょう。

シイの倒木から発生している木材腐朽性きのこ 「チャカイガラタケ」。

共 生

菌根菌は、土壌中で植物の根よりも広範囲に拡がり、さまざまな物質を分解する酵素の分泌により、植物の水や無機養分の吸収を促進します。植物は単独で生きるよりも、菌根性のきのこと共生することで、より多くの水や栄養を吸収することができます。また、細根部が菌糸に覆われることで、乾燥や病害に対する抵抗性が高まります。

マツ林を代表する菌根性きのこ 「チチアワタケ(要注意きのこ:中毒をおこす可能性のあるきのこ)」(写真提供:千葉県立中央博物館・吹春俊光さん)。

知らなかった!
きのこの豆知識

豆知識 1

きのこの胞子は何色?

胞子の色は、白色のシイタケ、赤錆色のマッシュルームをはじめ、⻩色や黒色、茶色などがあります。

さまざまなきのこの胞子紋。左:フウセンタケ属(赤錆色)、中:ハラタケ属(紫褐色)、右:テングタケ属(白色)。

豆知識 2

きのこの胞子の大きさは?

胞子の大きさは、きのこの種類によって様々ですが、胞子の多くは花粉(1000分の20ミリメートルから1000分の40ミリメートル程度)よりも小さいです。

胞子を飛ばすシイタケ(写真提供:千葉県立中央博物館・大作晃一 さん)。

豆知識 3

一番大きい&
一番小さいきのこは?

一番大きなきのこは、最大180キログラムの巨大きのこが発見されているニオウシメジ。一番小さなきのこは1ミリメートルから4ミリメートルの円盤状のきのこをつくるビョウタケといわれています。

「ニオウシメジ」(写真提供:千葉県立中央博物館・吹春俊光さん)。

「ビョウタケ」(写真提供:京都大学文学部図書館・忽那正典さん)。

どうしてマツタケの
人工栽培は難しい?

市場に出回っているきのこには、天然のものと人工栽培のものがあります。昨今では人工栽培の技術革新が進み、食卓で一年中色々な種類のきのこを楽しむことができますが、長年研究が進められる中、いまだ難しい課題が残るのがマツタケの人工栽培です。生きているマツの根に菌根を形成して共生するマツタケの栽培には、野外でのマツタケの生育環境を再現することが重要です。マツタケの生育には、共生するアカマツの生育を良好に維持することが必要であり、落ち葉掻きや雑木の伐採などアカマツの生育に適した環境整備が有効であることは知られています。しかし、無菌的に発芽させたアカマツにマツタケ菌を共生させて、その苗を野外に植栽し、菌の定着・増殖を目指した研究も行われてきましたが、マツタケ菌の定着には成功していません。この理由として、植栽地の土壌中に生育する多種多様な真菌や細菌との関係、菌糸の成長を妨げる要因など、マツタケの生育環境が非常に複雑であることが考えられます。マツタケの人工栽培に向けて、マツタケ菌の生態をより詳細に解明し、さらなる自然環境の忠実な再現を目指した研究が現在も続けられています。

自然発生したマツタケ。

マツタケの生育状況を再現。菌糸体が発達した様子(写真提供:茨城県林業技術センター)。

今回教えてくれたのは・・・

プロフィール写真

国立研究開発法人森林研究・整備機構
森林総合研究所 東北支所 支所⻑

山中 高史 さん

森林総合研究所

森林、林業、木材産業、林木育種にわたる森林に関係する研究を行う 110年の歴史をもつ研究所。

写真提供:特に明記のないものは全て森林総合研究所

ごちそう“きのこ”

編集後記

きのこそばが大好きです。恥ずかしいことに、菌糸がたくさん集まってきのこができているということを始めて知りました。「ニオウシメジ」にも驚きました。もしもですが、運よく30キログラムくらいの「ニオウシメジ」を見つけたとしてそれをソテーにすると、一体何百人分のきのこ料理を作ることが出来るのでしょうか。(広報室SD)

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お問合せ先

大臣官房広報評価課広報室

代表:03-3502-8111(内線3074)
ダイヤルイン:03-3502-8449

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