主に山林の中で営まれる原木栽培は、天然に近い味わいのきのこを育てることができる半面、気温や降水量など、自然環境が収穫に大きく影響するため、それらの変化に応じた細やかな対応が求められます。

しいたけの菌を植えるクヌギを伐採します。葉が3分から7分に紅葉した10月下旬から11月上旬の晴れた日が伐採のタイミング。伐採後は葉がついた状態で約1ヶ月間寝かせて乾燥させ、自然に水分が抜けるのを待ちます。
原木に水分が多すぎると雑菌が増えてしいたけの菌が負けてしまうため、水分量の見極めが重要です。

110センチメートル程度に切りそろえた原木に、直径約1センチメートルの穴を開け、駒状の種菌を植え付けていきます。

種菌は、おが粉に栄養分を与えてしいたけの菌糸を培養した「オガ菌」や、駒状に成形した木片に菌糸を培養した「駒菌」、オガ菌を駒菌のように固めた「形成菌」があります。

植菌した原木を、日当たりの良い林の中などに横積みしておきます。これを「仮伏せ」といいます。膝の高さまで積み上げて、乾燥する場所では、ネットや小枝で覆い、1カ月から2ヶ月間寝かせて菌を定着させます。
その後、5月から6月頃に、原木を組み上げる「本伏せ」を行います。小枝やネットを掛け、そのまま約1年半寝かせます。その年の秋口に積んでいる原木の上下、表裏を積み替えることもあります。

植菌した年の翌年の秋口に、原木をきのこの発生に適した「ほだ場（雨がよく当たり、直射日光が当たらない林の中など）」に移し、きのこを採取しやすい様に立てかけます。
10月中旬から下旬頃にきのこが生え始め、翌年の4月頃まで収穫作業が続きます。

菌床栽培は、すべての工程を温度や湿度が管理された室内で行うため、生育が早く、安定して収穫することができます。しかし、わずかな条件の変化によって育ち方が変わるため、温度や湿度、種菌の選び方、栄養の配合、雑菌対策など、細やかな調整が求められます。

温度管理や雑菌対策を徹底し、丹精込めて育てられるなめこの菌床栽培について、新潟県中魚沼郡津南町にある割野きのこ組合の今井さんにお話を伺いました。

なめこを育てるための培地（菌床）を作ります。おが粉と栄養材（米ぬかやふすま、おからなど）を混ぜた菌床をプラスチック瓶に詰め、培地を作ります。

1の菌床を詰めた瓶に蓋をして高圧殺菌釜に入れます。最高120度の高熱で6時間から7時間加熱して十分に殺菌し、その後、一晩おいて冷まします。

雑菌が入らないように、クリーンルームで培地に種菌を撒きます。

瓶に蓋をして培養室に移し、60日間培養します。室温は18度から20度で菌糸が満遍なく瓶内に行き渡るよう管理します。

蓋をはずしてシャワーで水をあたえると、3日から4日で小さななめこが発生し、それから約2週間で収穫できる大きさに育ちます。
1つの瓶から2回収穫しています。一番採りは機械で収穫しますが、収穫後の瓶からもう一度生えてくる二番採りのなめこは、大きく不揃いな形で育つため、手作業でひとつひとつカットします。