

「ツキヨタケ(毒きのこ)」(写真提供/秋田森づくり活動サポートセンター)
日本には200種類以上の毒きのこがあると考えられ、中には致死性の猛毒を持つものもあります。ここでは、毒きのこの中でも特に食中毒などの事例が多い10種類を紹介します。
食べてはいけない!
毒きのこのコト
毒きのこの中には、食用きのことよく似たものがあるので注意が必要です。安全だと確認できないきのこは、「採らない」「食べない」「売らない」「人にあげない」ようにしましょう。
01
ツキヨタケ
(ツキヨタケ科ツキヨタケ属)

厚みのある肉質が特徴的。
(写真提供/森林総合研究所)

群生するツキヨタケ。
(写真提供/秋田森づくり活動サポートセンター)
ツキヨタケは、秋にブナやイタヤカエデなどの枯れ木に重なり合って発生します。カサは主に半円形で、大きさは10センチメートルから20センチメートル程度と大きめです。最初は黄褐色で、成長すると紫褐色、暗紫褐色になります。また、カサを割ると付け根付近の肉に黒っぽいシミがあります。
誤って食べてしまうと、嘔吐や下痢、腹痛などの中毒症状が現れます。時に幻覚やけいれんを伴うこともあります。
食用きのこ
ヒラタケ、シイタケ、ムキタケなど
02
クサウラベニタケ
(イッポンシメジ科イッポンシメジ属)

柄は細く、光沢がある。
(写真提供/森林総合研究所)

ヒダの裏は、薄いピンク色。
(写真提供/千葉県立中央博物館)
クサウラベニタケは、夏から秋にかけて、ブナ科の広葉樹林やマツとの混生林などの地上に発生します。カサの大きさは3センチメートルから10センチメートル程度で、乾燥時は光沢があり、灰色や黄土色です。成熟するとヒダはピンク色を帯びてきます。
誤って食べてしまうと、嘔吐や下痢、腹痛などの症状が現れるほか、発汗などもみられます。
食用きのこ
ハタケシメジ、ホンシメジ、ウラベニホテイシメジなど
03
テングタケ
(テングタケ科テングタケ属)

柄は根元にいくほど太くなっている。
(写真提供/大阪市立自然史博物館)

ツバが柄の中央から上に残る。
(写真提供/三河きのこ会 木村修司)

針葉樹林に生えるイボテングタケ。
(写真提供/大阪市立自然史博物館)
テングタケは、初夏から秋にかけて広葉樹林の地上に発生します。針葉樹林の地上に生えるのはイボテングダケという別種の毒きのこです。カサの大きさは6センチメートルから15センチメートル程度の中型。灰色がかった茶色や緑がかった茶色で表面に多数の白いイボがあります。ただし、イボが落ちてしまっている場合もあるので注意が必要です。
誤って食べてしまうと、嘔吐や下痢、腹痛などの症状が現れるほか、めまいや痙攣などが現れて呼吸困難になることもあります。
食用きのこ
なし
04
ニセクロハツ
(ベニタケ科ベニタケ属)

ヒダは、薄いクリーム色でまばら。
(写真提供/大阪市立自然史博物館)

柄は、灰褐色からやや黒色。
(写真提供/大阪市立自然史博物館)
ニセクロハツは、夏から秋にかけて、ツブラジイ(ブナ科シイ属)の木がある地上に発生します。カサは5センチメートルから12センチメートル程度で、色は灰色や黒褐色。成熟するとカサの中央がくぼんだ形になります。また、傷をつけると薄く赤変します。
誤って食べてしまうと、嘔吐や下痢などの症状が現れます。死亡事例も発生している毒きのこです。
食用きのこ
なし
05
カキシメジ
(キシメジ科キシメジ属)

柄の根元はやや膨らんでいる。
(写真提供/大阪市立自然史博物館)

木屑などが張り付いたカキシメジ。
(写真提供/千葉県立中央博物館)
カキシメジは、秋にブナ、コナラなどの雑木林や松林の地上に群生して発生します。カサの大きさは3センチメートルから8センチメートル程度で、色は赤褐色や黄褐色のものが多く、湿っている時は粘性があり、葉や木くずなどが張り付いています。
誤って食べてしまうと、頭痛を伴う嘔吐や下痢、腹痛などの症状が現れます。
食用きのこ
チャナメツムタケ、ニセアブラシメジ(クリフウセンタケ)、シイタケなど
06
ドクツルタケ
(テングタケ科テングタケ属)

ツバから下は、上向きのササクレで覆われている。
(写真提供/森林総合研究所)

袋状のツボがよく分かるドクツルタケ。
(写真提供/三河きのこ会 木村修司)
ドクツルタケは、初夏から秋にかけて針葉樹林、広葉樹林の地上に発生します。カサは表面がのっぺりとした白い卵型もしくは円錐形で、大きさは5センチメートルから15センチメートル程度と比較的大型のきのこです。柄の上部には膜状のツバ、基部(地上に近いところ)には袋状のツボの名残があります。
誤って食べてしまうと、嘔吐や下痢、腹痛などの症状が現れます。毒性が強く死に至ることもあります。
食用きのこ
シロマツタケモドキ、ハラタケ、ツクリタケなど
07
カエンタケ
(ボタンタケ科トリコデルマ属)

10センチメートルから15センチメートルの高さに成長する。(写真提供/大阪市立自然史博物館)

一本ずつ生えるものも。
(写真提供/東京大学富士癒しの森研究所)
カエンタケは、夏から秋にかけてブナやコナラなどの枯木や埋もれ木などから生えます。赤色やオレンジ色の細長い円柱状または棒状のきのこで、土から手の指が出ているように群生または単生します。中は白くて硬いです。
毒性が非常に強く、触れるだけでも触れた部分の皮膚が炎症を起こすことがあるため、見つけても触らないようにして下さい。誤って食べてしまうと、発熱、悪寒、嘔吐、下痢、腹痛、手足のしびれなどの症状が現れ、脳神経障害により死に至ることもあります。
食用きのこ
ベニナギナタタケなど
08
スギヒラタケ
(キヒラタケ科スギヒラタケ属)

柄はほぼなく、フチは内側に巻いている。
(写真提供/森林総合研究所)

切り株に生えるスギヒラタケ。
(写真提供/秋田森づくり活動サポートセンター)
スギヒラタケは、夏から秋にかけて、スギやマツなどの針葉樹の倒木や切り株などに群生します。カサは真っ白で模様などもなく、耳のような形から扇のような形へと成長します。大きさは2センチメートルから7センチメートルと小型です。
かつては食用とされていましたが、食べてしまうと、脱力感やふらつき、そして急性脳症を起こし、死に至ることがあります。
食用きのこ
ヒラタケ、ウスヒラタケなど
09
ドクササコ
(キシメジ科カヤタケ属)

ヒダは、カサの色より薄い。
(写真提供/大阪市立自然史博物館)

上から見ると、中央のくぼみが分かる。
(写真提供/大作晃一)
ドクササコは、秋に広葉樹林や竹やぶなどの地上に発生します。カサの色は茶色で、中央がくぼんでいます。大きさは5センチメートルから10センチメートル程度の中型です。
柄は繊維質で縦に裂けやすいです。誤って食べてしまうと、激痛を伴いながら手足の先端が赤く腫れる症状が続きます。
食用きのこ
ナラタケ、ホテイシメジ、アカハツ、チチタケなど
10
オオシロカラカサタケ
(ハラタケ科オオシロカラカサタケ属)

ヒダが密に並んでいるのも特徴の一つ。
(写真提供/森林総合研究所)

群生するオオシロカラカサタケ。
(写真提供/三河きのこ会 木村修司)
オオシロカラカサタケは、初夏から秋にかけて、畑地や庭園、公園などの芝生や草地などの地上に群生します。熱帯・亜熱帯地方原産のため、以前は沖縄などでしか見られませんでしたが、現在は分布が拡大し、近年では関東地方でも比較的普通に見られます。カサは白い饅頭型で、大きさは7センチメートルから30センチメートル程度の大型です。カサは表皮が裂けて茶色のウロコ状になります。また、ヒダは成熟すると鈍い緑色になります。
誤って食べてしまうと、嘔吐や下痢、腹痛などの症状が現れます。
食用きのこ
カラカサタケなど
毒きのこに注意しよう!Q&A
毒きのこの見分け方などについて、さまざまな情報が言い伝えられていますが、なかには明らかな誤りがあります。例えば、次のようなことも誤った情報です。

1
虫が食べるきのこは、
人間も食べられますか?
虫は毒きのこでも食べます。ある生物にとって食用でも、別の生物には毒というケースは少なくありません。虫が食べているから人間も食べられるということはありません。

猛毒のドクツルタケも、虫は平気で食べると言われている。
2
香りの良いきのこは、
食べても問題ないですか?
マツタケやポルチーニ茸など、おいしいきのこには良い香りがつきもの。一方で、ドクササコやホテイシメジなど、香りが良い毒きのこも存在します。また、スッポンタケやキヌガサタケは不快臭がしますが、食べるとおいしい食用きのこです。香りで食用か否かを判断することはできません。

左:スッポンタケ、右:キヌガサタケ
(写真提供/千葉県立中央博物館)
3
加熱や塩漬けなどすれば、
毒きのこでも食べられる?
シャグマアミガサタケなど、加熱等の調理で無毒化されるものも一部にありますが、多くの毒きのこは調理しても無毒化されません。
食用のきのこでも、生の状態で食べると食中毒になることがあります。(生で食べることができるのは、マッシュルームやトリュフなど、ごく一部のきのこだけです。)
4
カラフルなきのこは
毒きのこですか?
赤いカサのベニテングタケなど、派手な色をした毒きのこは少なくありませんが、タマゴタケなど派手な見た目で美味しい食用きのこもあります。また、地味な色味の毒きのこも多く存在します。色やイメージに惑わされず、正しい知識を身に付けましょう。

タマゴタケ
(写真提供/森林総合研究所)
今回教えてくれたのは・・・

国立研究開発法人 森林研究・整備機構
森林総合研究所
服部 力 研究ディレクター
木材腐朽菌(木材を腐らせるきのこ類)や木材腐朽菌による樹木病害を専門とする。

この記事のPDF版はこちら
(PDF : 1,491KB)

-
不思議がいっぱい!
きのこの生態と豆知識 -
詳しく知って楽しく食べよう!
おいしいきのこ図鑑 -
だから美味しい!
きのこの生産現場を
のぞいてみよう -
本当に安全?
STOP毒きのこ
編集後記
食べても大丈夫と言われていたキノコが、実は毒を持っていたり、野生のキノコは“食べる”という点では本当に注意が必要です。しかし、毒キノコであっても、有機物を土へ戻し、生態系を支えるという重要な役割を担ってくれていることを忘れてはいけないですね。キノコは偉大なんです。ま、アニメ映画で気付かされたのですけれど。(広報室YT)
お問合せ先
大臣官房広報評価課広報室
代表:03-3502-8111(内線3074)
ダイヤルイン:03-3502-8449